弐式炎雷と共に! ≪一時休載≫   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第4章 襲撃編
第20話 クライム


ナザリックの面々と再会を果たした1か月後…。

 

ニシキは、王国の王都でとある情報を収集をしているセバスとソリュシャンに会うため、王都の大通りを歩いていた。

 

聖王国のアダマンタイト級冒険者『黒金』の噂は、王都に更に浸透を見せているのか、街ゆく人々がヒソヒソとニシキを見て話している様子が見られる。

 

そんな住民たちに些少の殺気を漏らしていたナーベラルであったが、ニシキの軽いチョップで即座にそれを止める。

 

…ちょっと嬉しそうにしているナーベラルが怖い。

 

そんな風に歩いていると、大通りに何やら人だかりができていた。

 

耳を澄ませると、怒号のようなものが聞こえた。

 

ニシキは詳細を確認するため、人込みを縫うようにして先に進む。

 

目の前で、小さな子どもが大人数人にリンチにされていた。

 

「おい、やりすぎだ」

 

「ああ?なんだてめーは?」

 

ニシキは睨みつけながら近寄ってくる大男の顔面に目にも止まらぬ速さで拳を叩きこむ。

 

男は数メートル吹き飛ばされ、地面に落下する。

 

それを見ていた他の仲間らしき男たちは、動揺しながらもニシキの顔と胸元を確認する。

 

「お、おい!こいつ、聖王国の…」

 

「アダマンタイト級冒険者…黒金のニシキだ!」

 

既に戦意喪失といった様子で、完全に怯え切っていた。

 

そんな男たちに、ニシキは止めとばかりに剣の柄に手を添える。

 

「まだ、やるか?」

 

「ひ、ひぃ…。すみませんでしたー!!」

 

男たちは情けない声を上げながら、走り去っていった。

 

ニシキは一呼吸置き、リンチされていた子どもへと振り向く。

 

と同時に、青年らしき男の声が聞こえた。

 

「大丈夫か!しっかりしろ!!ポーションだ…飲めるか?」

 

ニシキはそれを横目で見て、ふっと小さく笑う。

 

腐っているとはいえ、王国もまだ、捨てたもんじゃないな…などと心の中で思いながら、歩き出した。

 

 

さて、そんなニシキが違和感を覚えたのはその直後であった。

 

誰かにつけられているような感覚である。

 

「ニシキさーん…」

 

「わかってる…」

 

誰が、何時からつけているのかは明白であったが、用があるのか問いただす意味も込め、少し入った先の路地で足を止める。

 

案の定、後をつけていた男も同じように路地に入ってくる。

 

「あの、お待ちください!!」

 

「…何かご用ですか?」

 

その男をじっと見る。

 

先ほどリンチにあっていた子どもに、ポーションを渡していた青年であった。

 

「…まずはお名前を聞いても?」

 

「私はクライムというもので、この国の兵士の一人です。本来であれば、私の仕事を代わりにやっていただき、ありがとうございました」

 

「とんでもない。当たり前のことをしたまでです…あ、そうだ。私の方がまだ名乗っていませんでしたね…。私は…」

 

「聖王国のアダマンタイト級冒険者、黒金のニシキ様とナーベラル様、ですよね。お噂は兼ねがね…」

 

クライムはそう言うと、軽く頭を下げて見せる。

 

「ええ、ご存じでしたか…。それで、お引き留めになった理由をきいてもよろしいですか?」

 

「あの、もしよろしければ…私に稽古を付けてはいただけませんか?」

 

「稽古…ですか?それは一体どういう意味でしょうか?」

 

「私はより強くなるために、日々研鑽を積んでいるのですが…。あなたの素晴らしい功績をお聞きしていたのと同時に、先ほどの素晴らしい動きを見て、是非にと思いまして…」

 

ニシキは、少しばかり悩んで見せる。

 

「なるほど…ちなみに、なぜ強くなりたいのですか?」

 

「そ、それは…」

 

クライムは、ニシキの言葉を聞き、少し俯いて見せる。

 

そして、先の質問に答える形で、一人の女性を思い浮かべる。

 

自身を地獄のどん底から救ってくれた、金髪の美しい女性であった。

 

「男…ですから…」

 

「…なるほど」

 

ニシキは、顔を少し赤らめて答えるクライムに、些少の笑顔を見せる。

 

「そうですね…。ではまずはあなたのことを少し見させていただいてもよろしいですか?」

 

「は、はい…」

 

ニシキは、クライムの返答を聞き、写輪眼を発動させる。

 

「ニ、ニシキさーん、その眼は⁉」

 

今迄黙りこくっていたナーベラルが、非常に驚いた様子で目を見開く。

 

そこで、ナーベラルにもアインズさんにも新たに得た力の話をしていなかったことに気付く。

 

だが、そんなことよりも驚くべき情報を見つける。

 

「なるほど…クライムさん、あなたは非常に稀有なタレントをお持ちのようだ…」

 

「え⁉私が、ですか⁉」

 

クライムは心底驚いたという様子で狼狽する。

 

「その反応を見るに、認知しておられないようですね…。おっと失礼、この眼、名を写輪眼というのですが、この眼は見た相手の種族、強さ、能力、タレント等…あらゆるものを見通すことのできる能力を有しているのですが…。クライムさん、あなたは、『極度のストレスを経験することで、上限を超えて成長することができる』というタレントをお持ちのようです」

 

「じょ、上限を超えて、成長⁉ほ、本当にそのようなことが…」

 

「おっと、極度のストレスをもってして、ですよ?」

 

クライムの発言に、ニシキが訂正を加えながら口を開く。

 

「その極度のストレスを経験し、乗り越えることができれば、あなたは英雄にすら足を踏み入れる強さを手にするでしょう……。まあ、その域に達するまでにストレスに潰されず、生きていられれば、ですが…」

 

「私が…英雄の域に…それは…本当に…」

 

クライムは顔が綻ぶのが分かった。

 

目の前にいる男は英雄である。

 

聖王国で数々の武功を上げ、たった一人でアダマンタイト級にまで上り詰めた大英雄。

 

その男から、『英雄になれる』と言われたのだ。

 

嬉しくないわけはない。

 

「そうですね…。一番最初に行うべき修行が決まりました」

 

「えっ…」

 

ニシキはナーベラルに下がるように指示し、背中を向けて少し歩くと、再度クライムに向き直った。

 

「もう一度、確認のためにお伝えします…。死ぬかもしれませんが、よろしいですか?…あなたに大切なものがあれば、大丈夫だとは思いますが…覚悟はありますか?」

 

「覚悟はあります!お願いします!!」

 

クライムは一瞬考える素振りを見せたが、決意に満ちた目で答える。

 

「わかりました…では、最初の稽古はここで行いましょう」

 

「ここで…ですか…」

 

「ええ、武器を構えてください」

 

ニシキは、そう伝え、背中から一本の刀を引き抜く。

 

その洗練されたまでの動きに、クライムは思わず見惚れてしまうが、即座に頭を振り、同じように剣を構える。

 

「…では行きます…。意識をしっかりとお持ちになってください…」

 

クライムは言われた通り、剣を握る手に力を籠め、意識を集中させる。

 

…瞬間、世界が変わった。

 

いや、変わってなどいない。

 

しかし、変わったと錯覚するような圧倒的な殺気と力の奔流が自分に向けられているのだ。

 

それで錯覚してしまったのだ。

 

剣を握っていた腕が…いや、身体全体が震えだす。

 

「…切っ先が緩んでいますよ…。あなたの大切なものとは…この程度ですか?」

 

力の奔流が更に増す。

 

感じたことのない、強大な力であった。

 

歯を食いしばって耐えるが、目尻には恐怖で涙が浮かぶ。

 

その涙を気力で吹き飛ばし、再度踏ん張って見せる。

 

「…いいでしょう…。では、死んでください…」

 

ニシキは構えた剣を、クライムの顔めがけて突く。

 

死ぬ。

 

そう思った。

 

その瞬間、大切なものが…主人の顔が脳裏に浮かんだ。

 

瞬間、クライムはわずかに顔を左に反らす。

 

そのスピードは、圧倒的な力を誇っており、周囲に衝撃波を生むほどであった。

 

…しかしそれは、クライムの顔を突き刺すことなく、虚空を貫いた。

 

今迄にない足の震えに、限界とばかりにへたり込む。

 

一瞬で解放されたような感覚を覚え、ぜーぜーと大きく呼吸する。

 

そんなクライムの様子を見て、ニシキは小さく笑って見せた。

 

「よく耐えましたね…。死の恐怖を克服した感想はいかがですか?…これで多少は成長の余地が生まれたと思いますが…」

 

クライムはゆっくりと見上げる。

 

先ほどまでの圧倒的な殺気と力はなく、とても温厚で落ち着いた雰囲気のニシキがそこにはいた。

 

「あなたは…一体何者なのですか?」

 

自身がいままで知りえてきた強者など、足元にも及ばないであろう圧倒的な力…。

 

立ち向かうことすら許されないほどの力…。

 

それを身をもって感じてしまった。

 

もし、彼が、ニシキが世界最強と言われても、酷く納得してしまう程の力を感じたのだ。

 

「少し腕に自信のある、冒険者にすぎませんよ」

 

ニシキはそんなクライムの気持ちを否定するようにして、小さく笑いながら答えた。

 

 

「まずは、お2人の時間をお邪魔したことをお許しください。私はブレイン・アングラウスと申します」

 

ニシキとクライムの会話に入り込むようにして入ってきた男が、謝罪を述べながら口を開く。

 

ニシキの知り合いでもなければ、クライムの知り合いでもなかったため、2人は些少の困惑を見せていたが、名前を聞いた時点で、クライムは何かに気付いた様子であった。

 

「お名前は…王国戦士長と互角に渡り合った戦士とお伺いしております」

 

「なるほど…それで、なにか御用ですか?」

 

ニシキが質問を投げるが、どうやら用があるのはクライムの方だったようで、視線をニシキから外す。

 

「…何でしょうか?」

 

「…なぜ、なぜ君はあの殺気を前に立っていられたんだ…」

 

「えっ…」

 

「聞きたいんだ…あれは常人では耐えられないものだった…。私だって耐えきれないほどのものだった…。だが君はちがう…どうしてできたんだ…あれだけのことが…」

 

クライムは思い出すようにして俯く。

 

「…わかりません…。ですが、もしかしたら主人のことを考えていたからかもしれません…」

 

「主人…?」

 

「はい。私の仕えているお方のことを考えたら、頑張れました」

 

「そんなことで…」

 

ブレインは心底信じられないといった様子であった。

 

「ブレインさん…でよろしいですか?」

 

「はい…」

 

「クライムさんには、恐怖を乗り越えるだけの忠義があったということです。人は、大切なもののためであれば、信じられない力を発揮することができます。それが、人の強さだと私は思います。他に譲れない何か…まずはそれを見つけることです」

 

「…私には捨ててしまったものばかりですね」

 

ブレインは酷く落ち込みながら俯いて見せた。

 

「大丈夫です!私にもできたのです、アングラウス様であれば必ずできます!」

 

「…君は優しく、そして強いんだな…ありがとう」

 

 

 

クライムとの修行を終えたニシキは、今後も修行に付き合うという約束をしたことに、些少の後悔を抱いていた。

 

「なんか、めんどくさいことになったな…」

 

ちょっとした出来心で引き受けたそれは、クライムの期待に満ち溢れた視線を思い出す。

 

「であれば、今からでも殺し…断ればよろしいのではないですか?」

 

「…一度引き受けたからな…やるっきゃないやろ…」

 

ナーベラルの筋のない意見に、ニシキは大きくため息をつく。

 

ニシキは当初の目的であった、セバスとソリュシャンが滞在する高級住宅街へと足を運んでいた。

 

アインズから聞いた情報を頼りに、一つの屋敷のドアをノックする。

 

「はい、どちら様でしょうか?」

 

「セバス、俺だ。ニシキだ」

 

扉は即座に開かれ、それと同時にセバスが片膝を突いて平伏する。

 

「よせよせ、こんなところで…」

 

「で、ですが…」

 

「…じゃあこれは命令だ」

 

「…承知いたしました」

 

セバスはゆっくりと身体を起こして見せる。

 

「今回はどのような用件で参られたのでしょうか?」

 

セバスは非常に緊張した面持ちで口を開いた。

 

先ほどニシキ本人から(ひざまず)く必要ないとのことであったが、セバスの心情でそれをおいそれと受け入れられはしない。

 

加えて、アインズと同様、至高の41人と言われる存在。

 

セバスにとっては、いや全ての僕にとっては、それだけで忠義を尽くすに値するのである。

 

それに加えて、ナザリックや僕たちは、ニシキに数々のご高配を賜っている。

 

「いや、ちょっと聞きたいことがあってな…ソリュシャンもいるのか?」

 

「お聞きになりたいことですか、承知いたしました。ええ、おります。ご案内いたしましょうか?」

 

「ああ、頼む」

 

「では、こちらに」

 

ニシキはセバスに案内される形で、ソリュシャンのいる一室へと向かった。

 

 

「なるほどな…俺が得た情報と同じだな…」

 

「はい、ニシキ様が潰されたという娼館、そこにあった証拠品から、八本指なる裏組織のものであったと確証を得ています」

 

「俺が調べた以上の情報だな…しかし、裏組織か…」

 

ソリュシャンの疑問に、ニシキは短く答える。

 

もちろん、ニシキの言葉に嘘はない。それは事実であった。

 

しかし、ナーベラルやソリュシャン、セバスからしてみれば、それは謙遜に映っていた。

 

ナザリックにおいてニシキは、アインズと同等の頭脳を持っている、である。

 

故に、全ての行動に意味があり、全ての言葉に裏があると考えられている。

 

ニシキは、『デミウルゴスの足元にも及ばないよ』と言っているが、3人がそう考えてしまうのも無理はない。

 

「しかし、この第三王女ラナーの情報は確かなのか?」

 

「はい、何度も調査を繰り返し、確信を得ています」

 

「…類まれなる頭脳の持ち主か…セバス、具体的にどの程度だと考えている?」

 

「はい、アインズ様やニシキ様には遠く及ばないものであることは間違いないですが…、アルベド様やデミウルゴス様に勝るとも劣らないかと…」

 

なるほど、ということは、俺などでは話にならない程の知略の持ち主ということだな…などと心の中で呟く。

 

「危険…ではあるが、うまく利用すれば王国を丸ごとアインズ・ウール・ゴウンが裏から操れるってことか…」

 

「さすがはニシキ様、仰られる通りでございます。恐れ多くも同じ考えで、デミウルゴス様が動いております」

 

ソリュシャンが頭を下げながら、感嘆にも似た声を出す。

 

デミウルゴスが動いている、というのを知り、少し寒気が走ったが、とりあえず今は気にしないことにした。

 

「で、麻薬に貴族連中との繋がり…他にも多岐に亘って犯罪を行っているわけか…」

 

「はい、仰られる通りでございます」

 

「どこの世界も同じかー」

 

「どこの世界もとは…どういう意味でしょうか?」

 

「俺の、いや、アインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーが元居た世界『リアル』もこんな感じだったんだよ。ブラック企業とか、巨大複合企業とかが世界を混沌に陥れていた…。実際、俺がガンになったのも、ヘロヘロさんが過労で昏睡状態になったのも、それこそナザリックが消えかけてたのも、元をただせばそいつらが原因だ…。やつらがいなければ、まだギルドメンバーの多くがナザリックに残っていたかもしれないなー…」

 

ニシキは、些少話を盛りつつ、そして特に嘘は言わずに虚空を見つめながら小さく呟く。

 

それを聞いたセバスたちは、ぐっと拳を握りしめ、憤怒の表情を浮かべていた。

 

「ニシキ様…そのブラックキギョウやキョダイフクゴウキギョウなる愚か者は、我々僕が倒すことは叶わぬのでしょうか?」

 

「…無理だね…。そもそも次元が違う…」

 

うん、現実とゲームだからね。物理的に次元が違う。

 

「そんな…ッ!」

 

「くっ…ッ!」

 

ニシキの言葉に、ソリュシャンとナーベラルは酷く悔しそうにしている。

 

「まあ、とりあえずはアインズさんとデミウルゴス達に相談だな…今後どう動くのか…みんなの意見を聞きたいしね…」

 

「…奴隷娼館なる施設により、ニシキ様を不快にさせた八本指は確実なる誅殺を行うべきかと…」

 

ナーベラルは、酷く怒りのこもった声で呟く。

 

「まあ、そうなんだけどさ、ただ潰すだけじゃ面白くもないし、何より利益がない…」

 

「…と、おっしゃいますと?」

 

セバスはニシキの考えを聞き出そうと疑問をぶつける。

 

「どうせ騒ぎになるなら、一石二鳥を狙うってことさ」

 

ニシキは、ふふふっと不敵な笑みを浮かべたが、この時これが、一石四鳥になるとは、夢にも思っていなかった。

 

 

 

ニシキとの出会いを果たしたその日の夜…。

 

クライムは、自身の主人ラナーがいる王城の一室の前で立ち止まる。

 

二回に分けてノックをする。

 

「クライムですね。入ってください」

 

聞きなれた可憐な声が聞こえる。

 

「遅くなり、申し訳ありませんでした」

 

クライムは部屋に入り、ラナーの姿を捉えると、少し頭を下げる。

 

「心配しました…」

 

ラナーが胸の前で手を組み、少し悲しそうな表情を見せた。

 

いつもよりも帰りが遅かったことが、ラナーの心情に不安を抱かせたのだろう。

 

「本当に心配したんですからね…それで、一体何があったのですか?」

 

クライムは、自分如きを本気で心配してくれているラナーに心底感動しながら、今日の出来事を話した。

 

 

クライムが退出した後、ラナーは今までにないため息をついて見せる。

 

そして、鏡の前に立ち、頬を何度も触り、表情を作るように動かす。

 

「まさか…あの黒金がクライムに接触するとは…予想できなかったわ…」

 

「しかも…クライムが『極度のストレスを経験することで、上限を超えて成長することができる』というタレントを持っているなんて…」

 

ラナーは、生まれて初めて、クライム以外の人物に興味を抱いた。

 

クライムについて、自分の知らないことを言い当てられたことに悔しさはあったが、それ以上に嬉しさがあった。

 

「…彼とお近づきになるのもいいかもしれない…。聖王女には何か言われるかもしれないけれど…なんとでもなるわ…」

 

ラナーは作りたかった表情が完成したのか、ゆっくりと頬から手を離すと、メイドを呼ぶベルと鳴らした。

 

 

ブレインは、居候先である、王国戦士長のガゼフの屋敷へと入る。

 

用意されたパンにシチュー、ワインを呷りながら、会話が弾む。

 

「ほお、あのクライムがお前が耐えきれないほどの殺気に…」

 

「ああ、すさまじかった…。彼に剣の才能はなかったが、ある面では俺以上だ…」

 

ガゼフは少し神妙な顔つきになる。

 

「さっきの話に出てきた、ニシキ殿は…一体どれほど強いのだ?」

 

「そうだな…俺とお前、2人掛かりでも傷一つつけられないだろうよ…」

 

「…そうか。できれば、俺も会ってみたいものだ」

 

「あの人なら、きっと快く会ってくれるだろうさ」

 

ブレインはワインの入ったコップを呷る。

 

「…できれば、是非とも王国に居ていただきたいものだな…」

 

「そりゃ、聖王女様が許さないだろうよ…巷じゃニシキ殿にゾッコンだって話だしな…」

 

「しかし、お前があったというシャルティーなる化け物も気になる…」

 

「シャルティアな、シャルティア・ブラッドフォールン。正直、あれに勝てるのは、ニシキ殿くらいだろうよ…」

 

その話を聞き、ガゼフは反論の意を唱える。

 

「いや…もう一人だけいる…アインズ・ウール・ゴウン殿なら…先の2人の強さに匹敵するやもしれん…」

 

「…お前が助けてもらったという、あの大魔法詠唱者か…。そういえば、ニシキ殿が探していたというのも…」

 

「ああ、アインズ・ウール・ゴウン殿だ。俺も後から知ったのだがな…。それに、エ・ランテルでアダマンタイト級冒険者になったというモモンガ…いや、モモン殿もニシキ殿の旧友らしい…」

 

ガゼフはふっと笑って見せると、コップに入ったワインを思いっきり呷ってみせた。

 

 

「店主さん、エールを一つ頂いても?」

 

「…はいよ」

 

ニシキはカウンターに腰かけると、ぶっきらぼうな親父に注文をする。

 

リ・エスティーゼ王国のとある酒場で、ニシキは休憩がてら酒を呷ることにした。

 

ニシキとナーベラルの顔と胸元のプレートを見て、一瞬驚いた様子を見せたが、特に畏まるようすはなく、短く返される。

 

「ナーベラルも座れ…なんか飲むか?」

 

「では、失礼します。私は大丈夫です…。しかしニシキさーん、このような下賎な場所でお食事など…」

 

「口を慎めー。ご褒美暫くお預けにするぞー」

 

「も、申し訳ありません…」

 

ナーベラルのポンコツっぷりと口の悪さになれつつあったニシキは、ナーベラルを即座に制止できる決まり文句を垂れる。

 

出てきたエールを口に運ぼうとした瞬間、客の一人に声を掛けられる。

 

「よお、もしかしてあんた…聖王国の黒金のニシキじゃねえか?」

 

ニシキは声を掛けられたことで、エールを持つ手を下げ、振り向く。

 

まるでゴリラのような、大柄な女性であった。

 

「ええ。そうですが…。あなたは?」

 

「やっぱりな!俺は、ガガーランってんだ。蒼の薔薇っていうチームで冒険者をしてる」

 

ニシキは大きく目を見開いた。

 

「蒼の薔薇というと、あのアダマンタイト級冒険者の、蒼の薔薇ですか?」

 

「ああ、そうだ」

 

「これはこれは、お会いできて光栄です」

 

ニシキは敬意を表し、カウンター席から立ち上がって挨拶をする。

 

「そりゃこっちのセリフだぜ…なあ、あっちで俺たちとのまねえか?互いに仲間を紹介しつつよ?」

 

ガガーランは、ニシキの横に座るナーベラルを見据えながら男勝りな笑顔を見せる。

 

「そうですね、是非に」

 

ニシキは、ガガーランから案内される形で、その席へと向かった。

 

 

 

「こっちはイビルアイ、んで、こっちがティアってんだ」

 

「イビルアイだ…。噂は聞いている…。相当な実力者だとな」

 

「ティア…あなたと同じ忍者…よろしく」

 

仮面をかぶった少女、イビルアイと、まさしく忍者と言った格好をした青がトレンドマークのティアを紹介される。

 

「私はニシキです。それで、こちらが最近再会した仲間のナーベラルです。こちらこそよろしくお願いします」

 

ナーベラルは、ニシキから紹介されたこともあり、渋々と言った様子で頭を下げる。

 

「…確か、探していた仲間の一人だったな…」

 

「よくご存じで…まあ、あれだけ探し回っていれば、耳にも入りますか」

 

「…他国の、それもアダマンタイト級冒険者がはぐれた仲間を探しているとなれば、誰もが気になる」

 

イビルアイの言葉に反応を見せたニシキを、ティアはじっと観察していた。

 

その視線に気づき、ニシキも思いだしたように口を開く。

 

「そういえば、ティアさんも忍者でしたね…」

 

ニシキはティアを注意深く観察する。

 

忍者とは、アサシンなどのレベルを複数習得しないとなれない、いわば高レベル高ランク職業である。

 

しかし、彼女からはそんな気配は一切感じない。

 

そのチグハグさに、ニシキは違和感を覚えていた。

 

「そう。…あなたはイジャニーヤ出身?」

 

「イジャニーヤ?…いえ、私は遠い南方出身ですね…」

 

「そう…。ならいい…」

 

「…?」

 

ニシキはどこか腑に落ちないと言った様子を見せたが、ガガーランが助け舟を出す。

 

「あー、ちょっと訳ありでな、あんたが悪いわけじゃない、気にしないでくれ」

 

「そうですか…」

 

「それよりもよ、エスタークっつー地獄の帝王を倒したんだって?魔神にも匹敵する強さだったらしいじゃねーか」

 

「あー、エスターク・イスナですね…。確かに、強いか弱いかで言えば、強かったですね」

 

ニシキはどこか素っ頓狂な様子で答える。

 

「ほう?魔神に匹敵する相手だったのだろう?随分余裕な言い回しだな…」

 

「余裕…ですか…。まあ、確かに余裕はありましたが…」

 

「………」

 

皮肉たっぷりに言ったつもりのイビルアイであったが、それが全く伝わっていないどころか、想像の斜め上を行くニシキの回答に、思わず口を紡ぐ。

 

「なあ、そのエスタークを倒したのも、忍術なのか?どんな忍術を使ったんだ?」

 

「んー、まあそうですね。転移魔法に似た飛雷神の術とか、火や風を生み出す術とかですかね?あとは、結界とか、まあ色々です」

 

「火に風?」

 

ニシキの発言に、ティアがピクッと反応して見せる。

 

ナーベラルも興味があるのか、食い入るように聞いていた。

 

「ええ、他にも雷、土、水なんかも生みだせますよ」

 

「…私の忍術とは違う」

 

「なるほど…もしかしたら流派が違うのかもしれませんね」

 

ティアが考え込むように視線を落とすと、酒を呷ていたガガーランがぷはっと盛大な飲みっぷりを見せる。

 

「忍者にも色々あるんだな…で、他には何かあるのか?」

 

「んー、そうですね…。あ、この眼なんかは珍しいと思いますよ?」

 

ニシキはそう言って写輪眼を発動させる。

 

黒目がいきなり真っ赤な鮮血に似た眼に変わり、ガガーラン達は驚きを見せる。

 

「なっ…赤い目…吸血鬼か⁉」

 

「あー、よく間違えられます…。これは様々なモノを看破できる特殊な目で、瞳術という特殊な忍術の一種です」

 

イビルアイの驚きようが尋常ではなかったが、ニシキはそれに動じることなく冷静に説明して見せる。

 

「この眼は、動体視力があがったり、相手に幻術をかけたりできるんですが、一番は相手の種族やタレント、能力を看破することができて…ッ!」

 

ニシキは説明をしながら、あることに気付き、目を見開いて驚いて見せる。

 

「種族にタレントの看破だと…お前、まさか…」

 

イビルアイが怪訝な表情を浮かべ、些少の殺気を放つと、瞬時にナーベラルが剣の柄を握ってニシキを守るように躍り出る。

 

「よせ、ナーベラル」

 

「ニシキ様…ですが…」

 

「やめろ」

 

「…はい」

 

ニシキの短くドスの聞いた声に、ナーベラルは何とか引いて見せる。

 

それを見ていたガガーランは、がははっと大きく笑う。

 

「なんだ、ずっと黙ってるから喋れないのかと思ったが、結構可愛らしい声してんじゃねーか」

 

「………余計なお世話よ」

 

「うちのが申し訳ない」

 

「いや、先に殺気を飛ばしたのはうちの子。謝るのはこっち…でも確かに可愛い声。何なら顔も可愛い、身体も素敵」

 

ナーベラルが一言言葉を発したことで、ニシキ以外が女性だというのに、妙に色めき立つ。

 

しかし、そんな色めきも雰囲気も関係ないとばかりに、イビルアイは多少焦りながら口を開く。

 

「おい、ニシキ。お前…」「ニシキ様」

 

だが、それはとある声によって遮られる。

 

声の主は、クライムであった。

 

「お?童貞じゃねえか?なんだ、ニシキと知り合いなのか?」

 

「ガガーランさん、その童貞というのはやめていただけますか。はい、と言っても知り合ったのはつい最近なのですが、修行を付けていただいておりまして…」

 

「ほう?ニシキよ、お前さん、随分と優しいんだな?」

 

ガガーランは、急にニシキへの好感度が上がったとばかりに表情が綻ぶ。

 

「なりゆきですよ…。それで、私に何か御用ですか、クライムさん」

 

「はい。実は、ラナー王女から伝言を預かって参りました」

 

「ラナー王女って…王国の第三王女?なんでまた…」

 

「実は、私はラナー様の護衛を務めているのですが、ラナー様がニシキ様に是非ともお会いしたいと…」

 

ニシキは、はえーと言った表情を見せる。

 

「なるほど…。王女様直々のご要望とあれば、いかないわけにはいきませんね…」

 

「感謝いたします」

 

ニシキはイビルアイの視線を半ば無視する形で、ラナーの元へと向かった。

 

 

 

 

 

 





※現在の弐式炎雷のレベル

・Lv96

※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)

・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1 ・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M ・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M ・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M ・水遁忍術Lv2
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