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ニシキの影分身が突然消失したことで、カルカと偶然執務室にいたケラルトは悲鳴にも似た声を上げ、宮殿内にて緊急事態を発令する。
「カルカ様ッ!これはまさか…」
「ええ、ニシキ様が影分身を維持することが難しいほどの強敵が現れたということだわ…」
執務室にいた秘書官や大臣に、至急首都ホバンス、並びに各都市に伝令を走らせる。
その折、執務室のドアが乱雑に解放される。
「カルカ様ッ!」
その正体はレメディオスで、後ろにはグスターボも控えていた。
「レメディオス!ニシキ様の影分身が…」
「途中の秘書官から聞きました。それで、状況は?」
カルカの言葉を遮るように、レメディオスが声を張る。
「今のところ確認できていることはありません。しかし、影分身が予告なく解除されたことを考えると…」
「…エスターク・イスナに匹敵する強敵が現れたということか…」
ケラルトの言葉を補うように、レメディオスが苦々しい表情を浮かべる。
その言葉を聞き、カルカは過呼吸に似た様相を呈する。
「カルカ様…ッ!」
それにいち早く気づいたレメディオスが、カルカに寄り添い、その身体を抱き寄せる。
酷く震えているおり、恐らくはイスナ戦の時のことを思い出しているのだろう。
レメディオスはカルカの柔らかい身体をぎゅっと抱きしめ、落ち着かせる。
「…レメディオス、ありがとう…」
「いえ、今の私にはこのくらいしか…」
カルカはレメディオスの温もりを感じ、些少の冷静さを取り戻す。
「カルカ様…急ぎ、カリンシャに馬を走らせましょう…私が少数の聖騎士と神官を率いて向かいます」
「ケラルトッ!ならばそれは私が…」
「いえ、姉さま。ここは私が…ニシキ様の影分身がいないとなれば、この宮殿で一番の戦力は姉さまです。カルカ様をお願いします。カルカ様、どうかご許可を!」
未だ震えが止まらないカルカであったが、何とか心を震わせてケラルトに視線を合わせる。
「わかったわ…ケラルト。副官にグスターボを連れて行くのです。グスターボ、よろしいですね?」
「もちろんでございます、聖王女殿下!」
カルカの承認を受けたことで、ケラルトとグスターボは、ニシキのホームであるカリンシャに向けて馬を走らせる準備に取り掛かった。
聖王国でケラルトとグスターボが首都ホバンスを出立した頃…。
低位の悪魔たちを相手取っている、ラキュースを含めた冒険者たちは、一瞬劣勢に立たされたが、国王であるランポッサ3世に加え、それを守護する戦士長のガゼフの加勢により、危機を脱する。
まだ低位の悪魔たちは残ってはいるものの、戦況は優勢に傾き始めた。
「このまま押し込みます!!」
「陛下に悪魔を一匹たりとも近づけるな!!」
ラキュースとガゼフの掛け声のもと、兵の士気も高まりを見せている。
「悪魔たちが後退を始めたぞっ!」
兵士の一人がそう叫んだことで、戦線の責任者の任を負っているラキュースが、声を張り上げる。
「一匹たりとも逃がさないでっ!」
ラキュースの持つ暗黒剣キリネイラムから、負のエネルギーが発動し、横一列に並んだ悪魔たちが即座に爆散する。
「鬼ボス、もう悪魔は殆ど掃討された」
「先に進もう」
ティアとティナがラキュースの背中に語るようにして呟いた。
「なるほど…やはり私の相手はあなた方二人ですか…」
そう呟くのは、この騒動の元凶であるヤルダバオトであった。
その身は真っ黒なスーツに赤いネクタイという、酷く様になっている服装を纏っていた。
「予想はしていただろう?」
「それとも、今更怖気ついたのか?」
モモンとニシキはそんなヤルダバオトを挑発するようにして口を開く。
そんな2人にヤルダバオトは不敵な笑みを浮かべる。
「…バラバラにして差し上げましょう」
イビルアイは、ニシキとモモンがヤルダバオトと対峙できるよう、アルファとデルタと名乗るメイド悪魔と交戦していた。
「くっ…」
精度の高い連携に苦戦を強いられていたが、土埃をあげながらイビルアイのほうに後退してくるものがいた。
類まれなる美貌に、しかし同じように苦戦しているのかその表情は鋭く、その身体には傷や汚れも見て取れる。
別のメイド悪魔と交戦しているナーベラルであった。
イビルアイは横目でそれを確認し、横に並ぶ。
「まだ戦えるか?」
「無論、問題ありません」
互いに短い言葉であったが、意思疎通を図る。
イビルアイは、仮面の下で目を尖らせ、前方を見据える。
こちらは自分とナーベラルの2人…。
それに対し、向こうは4人のメイド悪魔がいる。
モモンの連れであるルプーがこの場に居れば、もう少し優位に戦えたものであるが、高位の神官であることを考慮され、彼女は後方で傷ついた冒険者や兵士の手当てに従事している。
そうして幾ばくか睨みあっていた両陣であったが、大きな崩壊音と共に、両陣の真ん中を滑るようにして乱入してくる2つの影により、それは終わりを迎える。
片や漆黒の鎧を身に纏い、両手に巨大な剣を有し、片や黒金の防具に双剣を携えている。
モモンとニシキであった。
「モモン様ッ!」
その姿を目にし、イビルアイは甘く高い声を発する。
モモンをその両の目でしっかりと捉えつつ、一応ニシキの様子も窺う。
両者とも、特に大きな怪我はしていない様子であった。
「なるほど、なるほど…素晴らしいお力ですね…」
瓦礫の中から、不吉な声が聞こえる。
瓦礫を掻き分けるような音がしたかと思うと、徐々にその姿を現す。
「…ッ!ヤルダバオト…」
苦虫を噛んだような声を上げるイビルアイの背中に、無数の足音が聞こえる。
「イビルアイ!ナーベラルさん!」
その声の主は、2人の名を叫びながら近づいてくる。
それを察し、イビルアイはばっと後ろを振り向く。
「ラ、ラキュース⁉なんでここに…ッ!」
「こっちの悪魔たちは片づけたわ…加勢にと思ってきたのだけれど…」
「バカ言えッ!あのモモン様に加勢など…」
「…ガガンボ、ニシキさんもいます」
先ほどからニシキの名が出ていないことが、酷く不快であると言った様子で、ナーベラルが睨みを利かせる。
「まだ戦っているのか…」
「がっつり戦闘中…」
ティアとティナが、ヤルダバオトに対峙するモモンとニシキの姿を捉え、口を開く。
少しして、ガガーランやガゼフと言った面々も集まりを見せる。
ヤルダバオトは、まるでそれを待っていたのように、ゆっくりと口角を上げた。
「何やら、虫けら共がたくさん集まってきたようですね…」
ヤルダバオトの言葉に、ラキュース達は身を震わせるような恐怖を覚える。
対峙しただけで、その圧倒的な力を感し、まるで身体が拒絶反応を起こすかの如く固まってしまう。
「まあいいでしょう…それではそろそろ、再開と行きましょうか…モモンさん、ニシキさん…」
「そうだな…」
瞬間、モモンとニシキの姿が掻き消える。
圧倒的なスピードでヤルダバオトに迫り、左右からそれぞれ攻撃を仕掛ける。
ヤルダバオトは両者の攻撃をそれぞれ片手で受け止めつつ、不敵に笑う…。
2人と1体がぶつかり合ったその衝撃は、大地を割り凄まじい衝撃波を生む。
近くにいるだけで身体が持っていかれそうなほどの力に、イビルアイ達は身体を強張らせて驚く。
「…久々に戦いを楽しめそうですね…」
「そうか…なら楽しませてやるとするか…ニシキ!」
「ああ、モモン!」
刹那、モモンとニシキは、跳び退くようにしてヤルダバオトから距離を取るが、またしても凄まじいスピードでヤルダバオトに迫り、衝撃する。
それが何度も繰り返されるが、2人と1体の姿を目で追うことは難しい。
ガキンッ、キンッと剣と爪がぶつかり合うような音と閃光だけが響き渡る。
「な、なんて速さなの…」
「全く見えない…」
「こ、これは…」
ラキュース、ティア、ガゼフが口々に驚きの声を上げる。
その刹那のようなぶつかり合いが一瞬収まりを見せると、ヤルダバオトは大きく地面へと着地をする。
地面に降り立っただけだというのに、大地は抉れ、亀裂が走る。
モモンとニシキを挑発するように、両手を大きく広げる。
「では、参ります!」
ヤルダバオトが言い終えた瞬間、モモンとニシキは、再度目にも留まらぬ速さで接近し、その剣を振るう。
モモンとニシキは、何度も互いに共闘してきた戦友のような連携を見せ、ヤルダバオトに剣戟を仕掛ける。
しかし、ヤルダバオトもその剣戟を全てさばききる。
「おいおい、なんつー戦いだよ…」
「すごすぎる…」
ガガーランとティナは口をポカンと開けたまま、呟くようにして言葉を発する。
まるで仕組まれたような圧倒的なまでの剣戟は、モモンが大きく後ろに後退することで終わりを見せる。
モモンはグレートソードの一本をヤルダバオトに向けて投擲した。
ただ力任せに投げただけであるのに、その速度は凄まじい。
しかし、ヤルダバオトは特に驚きもせずに、片手で飛んできたグレートソードをはじき返す。
その隙を狙うように、ニシキが双剣を逆手に持ち替えて肉薄する。
ヤルダバオトの両の爪と、ニシキの双剣が、何度もぶつかり合う。
互いが互いの攻撃をすんでのところで避け、受け止め、はじき返し、まるで肉弾戦のような様相を見せる。
「本当に…モモン様と同じ…」
「あれがニシキ…」
「速い…そして強い…」
イビルアイとティア、ティナはそれぞれに違う感想を抱くが、驚愕という感情は同じものであった。
目で捉えることなどできようはずもない戦いであったが、それでも目を離すことのできない戦いがそこにはあった。
ヤルダバオトとニシキは暫く肉弾戦を続けていたが、スピードはニシキの方が上回るのか、斬撃がヤルダバオトの身体を捉え、胸の部分に切り傷を生む。
「くっ…ッ!」
と同時に、いつの間にかヤルダバオトの後ろを取っていたモモンがグレートソードの一本を振りぬく。
グレートソードの腹に滑り込むようにして身を捩ったニシキは、ギリギリでモモンの攻撃を躱し、それがそのままヤルダバオトに接触する。
「ぐっ!」
両手で受け止めるが、衝撃を吸収しきれずに、空中へとその身を投げ出す。
態勢を立て直すと同時に、真っ黒な翼を有して空中に留まる。
ニシキは些少の血の付いた短剣を振りぬいて血を落とし、モモンは先ほど投げたもう一本のグレートソードをゆっくりと回収する。
その余裕のある洗練された動きに、イビルアイ達は目を奪われていた。
仮面の下で、ヤルダバオトが些少の焦りを見せているのがわかる。
「驚きましたよ…正直、想像以上ですね…」
「俺たち2人を相手取って戦えている、お前の方が驚きだよ…」
「全くだ…」
ニシキとモモンは、皮肉めいた言葉を発する。
「なんという3人だ…」
「……ッ」
イビルアイの吐息のような言葉に、ラキュースはただ黙って肯定する。
「では、少々趣向を変えてみるというのはいかがでしょう?」
ヤルダバオトは両手を振り払うようにして魔力を放つ。
その言葉の意味と行動にいち早く気づいたのは、モモンであった。
「ッ!まずい、ニシキ!奴のねらいは…ッ!」
「ッ!」
その言葉で、ニシキも気付く。
「『獄炎の咆哮(ヘルファイヤーロアー)』!」
圧倒的な火炎が、イビルアイ達へと向かって進撃する。
それに気づいたイビルアイが魔法で壁を生みだし防ごうとするが…。
「(だめだ…間に合わない!…ッ!)」
そう思った矢先、黒金の背中がイビルアイ達の前に現れる。
「『水遁・水陣壁ッ!!』」
ニシキから放たれた水は、凄まじい勢いで天高く昇り、迫りくる火炎を防ぐ。
「すげーなッ!」
「水の壁ッ!」
「ニシキの忍術…」
「次元が違う…」
ガガーラン、ラキュース、ティア、ティナが感嘆にも似た声を上げる。
ニシキは、それを背中で聞きながら、新たに印を結ぶ。
「『水遁・水龍弾!』」
周りから突如として現れた、洪水とも言えるほどの水は、頭上で固まるように集まると、水の竜を形成する。
「水の竜だとッ!」
「なんと凄まじい…」
イビルアイとガゼフが狼狽したように目を見開く。
水の竜は咆哮するように大きく口を開けると、勢いをなくしかけていた獄炎を一気に飲み込み、ヤルダバオトに直撃する。
「…ッ!」
凝縮され鋼のように固くなった水の竜は、ヤルダバオトを空中から叩き落し…地面へと衝撃させる。
そのタイミングを狙ってモモンが両手のグレートソードで攻撃を仕掛けるが、寸でのところで回避したヤルダバオトを捉えることはできなかった。
ニシキはイビルアイ達の前に、モモンはヤルダバオトと対面するようにして、動きを止める。
「…本当にあなた方はお強い…」
「お前もな…」
ヤルダバオトは、不敵な笑みを浮かべると、スッと体勢を直立に変える。
「提案があるのですが……この辺りで引きますので、勝負はこれくらいにしませんか?」
その提案にいの一番に怒りを表したのはイビルアイであった。
「ふ、ふざけるなッ…」
「かまわない…」「同じく…」
しかし、モモンとニシキがそれぞれ受け入れたことで、イビルアイは驚愕の表情を見せる。
「ニ、ニシキ…殿!なぜだ!モモン様とあなたが居れば、あのヤルダバオトもッ!」
「お2人がなぜ、このような頭の悪い小娘を連れてきたのか、理解に苦しみますね…。少し考えればわかるんじゃないですか?悪魔の群れが、いつでも王都全域を襲えるよう、待機させております」
ヤルダバオトの言葉に、イビルアイ達が驚きの表情を浮かべる。
「王都を…人質に…ッ!」
ラキュースが苦々しい口調で口を開く。
「加えて、お2人はこの虫けら共をお守りしたいご様子…。虫けら共を守りながらでは、あなた方は本気では戦えない…違いますか?」
「………」
ニシキは、沈黙をもってそれに答える。
先ほどまでの戦いが本気でなかったというのも驚きだが、自分たちが足かせとなっていることに、イビルアイ達は苦悶の表情を浮かべる。
そして、それまで戦いを見守っていたメイド悪魔4人がゆっくりとヤルダバオトの後ろに移動する。
「では、これで撤収させていただきます…。残念です!アイテムを回収するという目的も果たせないのはッ!!」
転移の魔法だろうか…。ヤルダバオト達は一瞬で姿をかき消す。
と同時に、王都の一部を覆っていた炎の壁、ゲヘナの炎も消え失せる。
「…行ったな…」
モモンがそう小さく呟くのと同時に、イビルアイはニシキの横を疾風の如く疾走し、モモンに抱きつく。
「わああッ!やったー!勝ったー!さすがはモモン様だー!!」
「いや、すまないが離れてくれないか…」
「んんー、照れなくてもー…」
同時に、多くの兵士や冒険者たちがゾロゾロとモモンとニシキのいる広場へと集まりを見せる。
モモンとイビルアイがイチャコラする中、その様子に鋭い眼光を向けながら、ナーベラルがニシキへと歩み寄る。
「お見事です。ニシキさん…」
「…ナーベラル、お前もよくやった」
「はっ!ありがとうございます」
ニシキの言葉に、ナーベラルはサッと頭を下げる。
「驚いたぜっ!まさかこんなに強いとはな…」
「私、思わず叫んでしまいそうでしたわっ!」
ガガーランとラキュースが、ニシキとモモンを交互に見ながら称賛の言葉を送る。
「別格の強さ…」
「是非ともあなたの忍術を教えて欲しい…」
ティアとティナが非常にキラキラとした視線をニシキに送る。
イビルアイを降ろしたモモンが、ニシキの元に歩み寄る。
「とりあえずの脅威は去ったな…」
「ああ、仕留めきれなかったのは残念だったが…」
モモンとニシキは、思ってもいない言葉を口にするが、それが嘘であると見抜けるものは、ナーベラルだけであった。
「モモン殿、ニシキ殿…どうか、皆に勝利の宣言を咆えてはくださらぬか?」
ガゼフは、2人の会話に割って入るようにして語り掛ける。
「…恥ずかしいな…」「同感…」
モモンとニシキは、内心で「えー…」といった微妙な気持ちを抱く。
「これは、最も武功を上げたお二方がすべきものです」
「むっ…そうだな…すべきだな…」
「えー、まじ?」
ガゼフの意見に、モモンとニシキは乗り気ではなかったが、それぞれ剣を一本ずつ天に掲げ、叫んだ。
「モモン様とニシキ殿の勝利だッ!!!」
「「「「おおおおおおおおおおおッ!!!!」」」」
2人が上げた勝鬨の叫びに、皆は勝利の咆哮をもってして、これに答えた。
壮大なるマッチポンプを伴い、幕を閉じた八本指への誅殺は、ナザリックに大きな利益を生みだした。
犯罪者収容区画を中心に展開されたゲヘナの炎により、ナザリックの運営維持に必要な各種物資の強奪、スクロール作成やその他実験棟の利用による犯罪者の誘拐。
そして、副次的な効果として、黒金のニシキと漆黒のモモンの、王国における英雄的活躍である。
王国において集められた犯罪者の集団は、八本指関係者を合わせると1000人を超える。
一部八本指の幹部級クラスの人間は、調教の上で王国を裏から操り、ナザリック勢にとって都合の良い、しかしなれどより良い国作りのために利用されることとなるのであった…。
魔皇ヤルダバオトの襲撃を受けた王都。
悪魔との戦闘に加え、モモンやニシキが繰り広げた戦闘によって、王都の一部では多大な被害を生んでいたが、死者はさほど発生していなかった。
戦闘がゲヘナの炎の内側のみであったことに加え、そこの住民が収容区画に隔離されていたことが大きい。
強大すぎる敵の侵攻にしては、微々たる損壊であった。
加えて、あの場で戦闘を目撃した蒼の薔薇や他冒険者、ガゼフなどから噂が広がり、モモンとニシキの英雄に勝る強さと戦いに興奮冷めやらぬ、といった感じで街は活気に満ち溢れていた。
さて、そんな興奮が収まらない王都であったが、戦いの後は祝賀をあげると相場が決まっている。
ランポッサ3世とザナック第二皇子、ラナー王女の計らいで、王都の最高級宿屋の酒場で宴会が設けられた。
当初は王城で行う案も出たが、城内に引きこもっていた第一皇子のバルブロと貴族派閥の反発や介入を考慮し、この形に落ち着いた。
もちろん、今回の戦いの一番の功績であるモモンとニシキを労うものであった。
様々な冒険者や貴族、住民のひっきりなしの挨拶と称賛を受けたモモンとニシキは、酷く狼狽し、疲労を見せる。
その内、宴会が些少の落ち着きを取り戻し、2人の席の周りには、蒼の薔薇のメンバーと、ブレインが見て取れた。
「モモン様…とっても素敵な戦いでした…///」
「ああ、どうも…」
モモンの横に座っていたルプーを退かせ、イビルアイは擦り寄るようにしてモモンに密着する。
「ひ、ひどいですわ…。いきなり押し退けるなんて…」
ノーベル演技力賞受賞も夢ではない程の演技力を見せるルプーは、弱弱しい可憐な神官の様相を見せる。
そんなルプーの姿を見て、ニシキの隣に座るナーベラルの目線は、まるでゴミを見るかのようなものと化していた
「ちょっと、イビルアイ?ルプーさんが可哀そうよ…。申し訳ありません、モモン殿」
イビルアイの行動に、ラキュースは些少の怒りを滲ませながらモモンに頭を下げる。
「あなたが謝ることはありませんよ。ラキュースさん」
「しかし、私のチームのメンバーなので…」
ラキュースは心底申し訳なさそうに口を開く。
今のモモンは、当たり前のように兜を脱いでその顔をさらけ出している。
幻影で作った、冴えない30前後のおじさん…の姿ではなく、ニシキからもらった人化の指輪で、人間と化した顔であった。
まあ、冴えない30前後のおじさん顔というのは、同じであったが…。
しかし、それ以上にモモンにとっては変化をもたらしたアイテムであった。
なんと、人化したことで、食事がとれるのである。
それを知ったモモンが、冒険者や貴族連中との挨拶対応の後、狂ったように食事を楽しんでいたのは、内緒なのである。
さて、そんなイビルアイの様相に気が付いたガガーランが、面白いものを見つけたように大笑いする。
「なんだよ、イビルアイ!お前、モモンに惚れたのか?」
「なっ!ガ、ガガーランッ!わ、私は別に…ッ!」
「これはガチ惚れ…」
「完堕ち待ったなし…」
ティアとティナもガガーランの悪乗りに答えるようにして言葉を続ける。
「まあ、あの強さを見せられればな…」
「皆さん、その辺で…イビルアイさんが困っていますよ」
モモンが牽制したことで、イビルアイは先ほどまでの勢いをなくし、もじもじとした様子で両手を絡める。
笑いが絶えない雰囲気であったが、ここでニシキが一つの爆弾を投下する。
ニシキがイビルアイをじっと見つめているのだ。
それを見て、なぜかラキュースが些少の嫉妬に似た表情を浮かべる。
しかし、イビルアイもまた、別の意味で恐怖を感じていた。
イビルアイは吸血鬼なのである…。
ニシキはそれを警戒しているのかもと感じたからである。
しかし、その緊張と恐怖はさ一気に消失する。
「…イビルアイさんは…モモンが好きなんですか?…」
ニシキは些少の意地悪をもってして、イビルアイに語り掛ける。
「ニ、ニシキ殿!!わ、私は…その、モモン様の強さがす、素敵だなーと思っているだけで…」
「…強さって面で言えば、ニシキさんも同じだよな?」
イビルアイの言い訳に、ブレインは笑いながら呟く。
「う、うるさいッ!た、ただ…その…」
「ニシキ…イビルアイさんが私のような冴えない男に惚れるわけはないでしょう…」
イビルアイがもじもじしているのを見ていられなくなったのか、モモンが助け舟を出す。
しかし、その言葉に、イビルアイが激しく反論する。
「モ、モモン様はさえない男などではありません!かっこよくて、素敵で…あっ!!」
イビルアイは、そこで自分が何を言ってしまったのかを理解する。
恐らく、仮面の下では顔が真っ赤になっているに違いない。
「…自分から墓穴掘ってんじゃねーか!!」
ガガーランのツッコミに、皆がくすくすと笑いだす。
「あああああああああああっっ!!こ、殺してくれーー!!!」
イビルアイは、頭を抱えて絶叫するのであった…。
※現在の弐式炎雷のレベル
・Lv97
※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)
・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1 ・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M ・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M ・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M ・水遁忍術Lv2 ・土遁忍術Lv1