弐式炎雷と共に! ≪一時休載≫   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第24話 双黒

ヤルダバオト撃退を祝う宴会を終えた後、ニシキはナーベラルを伴って、カリンシャの屋敷に飛雷神の術で転移した。

 

転移して早々、ニシキの屋敷にいるはずのないケラルトとグスターボを見つけ、驚いていたが、ニシキを見たケラルトが目に涙を浮かべて抱き着いたことで、驚きを増すことになる。

 

ケラルトとニシキが抱擁している姿を見たナーベラルが、只ならぬ感情と殺意によって、剣の柄に手を添えたのは、言うまでもないだろう。

 

ちなみに、ツアレも視線だけはナーベラルに勝るとも劣らずだったとか…。

 

一方、ケラルトからしてみれば、ツアレという存在とナーベラルという存在が驚きであった。

 

ツアレに関しては、ニシキが助けた一般人として、まあ、受け入れられなくもなかった。

 

しかし、ナーベラルは別であった。

 

地位あるもので、その名を知らぬものはいないほどに、聖王国にとっては知れた名であった。

 

なぜなら、ニシキがずっと探していた、仲間の名であったからだ。

 

しかも、自身が敬愛するカルカと同等、若しくはそれ以上の美貌を持ち、加えて自身と同じ第五位階の魔法を扱うというのだから驚きである。

 

将来的には、ニシキをカルカ様の王配に、自分が側室(正確には異なるが)になる予定であったがだけに、些少のしこりが生まれる。

 

しかし、今はそれを深く考える時ではなかった。

 

「魔皇ヤルダバオト…王国の王都に現れた、その強大な悪魔との戦いのために、影分身を解除されたということなのですね…」

 

「ええ。さすがに、エスターク・イスナを超える存在との戦いで、出し惜しみはできませんでしたから…」

 

「エ、エスターク・イスナを超える⁉そ、それは本当なのですか⁉」

 

「はい、正直、漆黒のモモンが一緒じゃなかったらどうなっていたことか…。奴が本気で戦うつもりがなかったのが、不幸中の幸いでした」

 

ケラルトは、大きく動揺して見せる。

 

そして、震える唇を何とか開く。

 

「それは…ニシキ様でも勝てない…ということでしょうか?」

 

「んー…。万全の状態で戦えたとして、勝率5割と言ったところですかね?」

 

勿論、嘘である。

 

ヤルダバオト…正式にはデミウルゴスであるが、守護者の中では直接戦闘力は最弱と言っていい。

 

ユグドラシル時代のニシキですら余裕で勝利を収めることができ、且つ今は人間としての新たな職業レベル取得による力と能力もある。

 

万が一にも負けはないだろう。

 

しかし、このナザリックが生み出した魔皇ヤルダバオトは、今後要所要所であらゆる汚名を背負ってもらうことになっている。

 

故に、その戦闘力についても、多少尾ひれを付ける必要があるのだ。

 

「ニシキ様を以てして…5割…」

 

今となっては『元』がつく話であるが、カルカや姉であるレメディオス、そして自分を含めた聖王国の最高戦力を含めた精鋭部隊でも、傷一つ、手も足も出なかったエスターク・イスナ。

 

それを単騎で討伐して見せたニシキが、全力を出しても勝てるかわからないというのは、ケラルトが言葉を失うのに十分すぎるものであった。

 

「(これはすぐにでもカルカ様に知らせなくては…)」

 

ケラルトは、再びニシキに影分身体を要求し、それをニシキは受け入れる。

 

そして分身体ニシキは、一定範囲内にいる人物や物体を転移させることのできる時空間忍術『転雷神の術』の術をもってして、ケラルト一行と共に首都ホバンス近郊に転移した。

 

 

ヤルダバオトの襲撃に際し、王都引いては王国を救ったとして、モモンとニシキには、リ・エスティーゼ王国の国王、ランポッサⅢ世より、感謝状が贈られた。

 

モモンは王国の冒険者であり、且つ翌日以降も王都に滞在していたため、直接謁見し受け取っていた。

 

しかし、ニシキは聖王国の冒険者であり、且つ翌日には王都から離れていたため、聖王女宛に送る形となった。

 

距離が離れているため、届くのはだいぶ先であったが、ヤルダバオトとの一件を含め、この書状が聖王国がニシキを物理的に囲い込むきっかけとなるのだが、それも同じく先となる。

 

さて、ヤルダバオトの襲撃から数日が経った王都では、未だに先の戦いの傷も興奮も収まりを見せない状況であったが、王都を中心に、ニシキとモモンを『双黒の大英雄』と呼称する動きが、爆発的な広がりを見せていた。

 

互いに冒険者チームに『黒』を関することに加え、旧友にして同郷の仲間という情報が、この呼称を広げる手助けとなったのだ。

 

国の垣根を越えて活動する冒険者が、まさしく国を越えて手を取り合うという意味合いに捉えるものも多く、冒険者ギルドとしては、非常に宣伝しがいのある呼称であった。

 

 

 

さて、興奮冷めやらず、と言った王都であったが、王城では緊迫した様相を見せていた。

 

「これが、ヤルダバオトの探していたというマジックアイテムか…」

 

王国の第二王子であるザナックは、そのアイテムを些少の手の震えをもってして持ち上げる。

 

ヤルダバオト騒動の際、場内で縮こまっていた第一王子のバルブロとは違い、彼は六大貴族筆頭であるレエブン候の兵を率いて王都に侵攻した悪魔達を退けたのだ。

 

それもあり、現在独自に冒険者を雇って悪魔と対峙した第三王女ラナーと共に、民衆から多くの支持を受けている。

 

また、同時に国王派閥の力を増す結果となり、バルブロと同じく王城に縮こまっていた貴族派閥が発言力を失いかけている。

 

ザナックは、その悪魔像のようなマジックアイテムを一通り見回した後、目の前のテーブルにそっと置く。

 

「モモン様の話では、このマジックアイテムには第10位階魔法『最終戦争・悪』が封じ込まれているとのことです」

 

ラナーは発言の内容とは裏腹に、冷静な口調で答える。

 

「第10位階魔法⁉そのような神話級の魔法が…まさか本当に…」

 

同じくソファーに腰かけ話を聞いていたレエブン候が酷く驚いていた。

 

「強大且つ多数の悪魔を召喚し、使役することのできる魔法…マジックアイテムとのことです…」

 

「なるほどな…それだけのマジックアイテムであれば、あのヤルダバオトが王都に攻めてきたのも納得がいく…」

 

「自分たちを使役することのできるアイテムとあれば、奴も必死になるということですね…」

 

ラナー、ザナック、そしてレエブン候は確認し合うようにして言葉を並べた。

 

「このアイテムが八本指のアジトから見つかり、八本指の連中が一人残らず姿を消したっていのも…」

 

「恐らくは、ヤルダバオトの手の者によって始末されたと考えるのが自然でしょうね…」

 

「しかし、モモンとニシキの登場により、回収は叶わなかった…というところでしょうな…」

 

一連の事件の点と点が酷くしっかりと繋がりを見せたことで、ザナックとレエブン候は疑う余地もなくその予測を信じ込む。

 

ラナーに関しては、デミウルゴスとの繋がりで、これがナザリック勢の策であることは承知しているが、それを一切表情に出すことはなかった。

 

「それはそれとして、兄上を陥れるための証拠は回収できたのか?」

 

「はい、バルブロお兄様だけでなく、貴族派閥の貴族との関わりが明確であると断定できる証拠も回収済みです」

 

「…とりあえずは、一歩前進と言ったところですかね…」

 

3者による怪しげな会議は、その後も秘密裏に行われていった。

 

 

ニシキからケラルトに齎された一連の騒動の真相は、すぐさま聖王女であるカルカ・ベサーレスの耳に入るところとなる。

 

「一先ずは、ご無事で何よりです。ニシキ様」

 

「ご心配をおかけし、申し訳ありません」

 

首都ホバンスにある宮殿、カルカの執務室で分身ニシキは軽く頭を下げる。

 

「一通りのお話は、ケラルトから聞いています。魔皇ヤルダバオトなる強大な悪魔と刃を交えたとか…」

 

「はい、旧友でもある王国のアダマンタイト級冒険者漆黒のモモンと共に、これと戦闘を行いました」

 

「それで、彼の大悪魔が、地獄の帝王であるエスターク・イスナを上回る強さであるというのは本当なのでしょうか?…それに、ニシキ様を以てして勝率5割というのも…」

 

カルカは、些少の恐怖を言葉に滲ませながら口を開く。

 

自身を蹂躙した相手であるイスナよりも強大な存在がいるなど、到底信じられないといった気持ちであった。

 

「はい、その通りです」

 

「そ、そうですか…」

 

非常に苦悶に満ちた表情をしている。

 

そんな中で伝えるべきではないとも思ったのだが、ニシキは覚悟を決めて口を開く。

 

「もう一つ、カルカ様にお伝えしなければならないことが…」

 

「…なんでしょうか?」

 

ニシキの雰囲気から察するに、あまり良い話ではないと察したカルカは、真剣な表情でそれを迎える。

 

「実は、地獄の帝王は…エスターク・イスナだけではないのです」

 

「……は?」

 

ニシキの発する言葉の意図が分からず、カルカは思わず呆けた声を発する。

 

「地獄の帝王であるエスターク・イスナ…。奴は正確には、『地獄の三神』と呼ばれるものの内の一体なのです」

 

「ッ!そんな…そ、それでは、あのイスナに匹敵する化け物が、まだあと2体も…!?それに加えて、魔皇ヤルダバオト…ッ!」

 

カルカは椅子から滑り落ちかける。

 

魔皇ヤルダバオトという存在だけでも厄介だというのに、それよりも劣るとはいえ、イスナに匹敵する存在が2体も残っているとなれば、それも当然の反応であろう。

 

「いえ、それが違うんですよ、カルカ様」

 

「…何が違うのでしょう?あ、まさか地獄の三神の内の一体が魔皇ヤルダバオトであると?」

 

些少の希望が生まれる。

 

3体の強大な存在が、実は2体という話であれば、絶望も少しは和らぐというもの。

 

しかし、ニシキから齎されるその話は、より深刻なものであった。

 

「魔皇ヤルダバオトと、地獄の三神は別物です」

 

「…では、一体何が違うのでしょう?」

 

「…イスナに匹敵するのではありません…。残る2体の地獄の三神は『イスナを超える』存在なのです」

 

「な、なん…ですっ……って…」

 

目の焦点が合わず、目の前に立つニシキが二つにぼやけて見える。

 

「と、言うよりも…『ヤルダバオトを超える存在』と言えるでしょう」

 

「ちょ、ちょっとお待ちください!」

 

カルカは、思わず王としての矜持を忘れ、バッと椅子から立ち上がって見せる。

 

「ヤルダバオトを相手に、ニシキ様は勝率5割なのでしょう?…残る地獄の三神が相手となると…どうなのですか?」

 

「はっきりと申し上げますと、1体1では勝ち目はありません」

 

「ニ、ニシキ様が…勝てない?…は、ははっ…」

 

渇いた、それでいて絶望に満ちた笑い声をあげる。

 

「…かつて、私は仲間と共に、その内の一体である『エスターク・クーク』と戦闘をしたことがあります。その時は、私含め、6人で相手取り、勝利を収めました」

 

「6人…そ、それは、お仲間がニシキ様と同じくらい強いお方たちで…ということでしょうか?」

 

「その通りでございます…」

 

「そ、そのお仲間の方々は…ッ!見つかっているお仲間は、漆黒のモモン様と、王国で話題となっているアインズなる魔法詠唱者様以外には、いらっしゃらないのですか?」

 

カルカは、自身の得ている情報の中で、現状ニシキを含めて3人しか対応できないであろう状況に焦りを見せている。

 

そして、ニシキは別の意味で焦りを抱く。

 

「(その3人だと、実質2人なんだよなー…)」

 

モモンとはアインズで、アインズとはモモンなのだ。

 

つまりは同一人物である。

 

しかし、カルカの放った3人というのは強ち間違いではない。

 

「もう一人、ヘロヘロという男がいるのですが…今は度重なる疲労で昏睡状態にあります」

 

「ヘロヘロ…様でございますか?…なんだか変わったお名前ですね…。あ、ニシキ様のお仲間の方を侮辱しているわけではないですよ?」

 

カルカは、思わずニシキに平謝りしながら、少し早口で弁明する。

 

「承知しておりますよ。なんなら、私自身ちょっと変わった名前だと思っておりますので…」

 

「そ、そうですか…。しかし、ヘロヘロ様という方が無事にお目覚めになったとしても、それでもニシキ様を含め4名となると…」

 

「厳しい戦いになるのは、間違いないですね…」

 

カルカはぐっとこらえるような表情を見せる。

 

そして、何かに気付いたような反応を見せる。

 

「それで、その残りの地獄の三神は、居場所など確認済みなのですか?」

 

「実のところ、わかりません…。既に滅んでいるのかもしれませんが、イスナがいた以上、この世界のどこかに潜んでいる可能性もあるかと思い、お伝えさせていただいた次第でございます」

 

「確かに、警戒するに越したことはありませんね…。ニシキ様、お手数なのですが、もう一度詳しくお話をして頂けますか?書面に起こし、宮廷会議の議題に上げたいと思います」

 

「承知いたしました」

 

ニシキは、更に詳しい情報を伝えながら、再度説明することとなった。

 

 

 

王都で起こったヤルダバオト騒動から早1か月…。

 

バハルス帝国帝都アーウィンタールは皇城の執務室にて、皇帝ジルクニフが長椅子に座りながら三枚にも及ぶ報告書に目に真剣な表情をしていた。

 

 「ふむ。この報告が本当なら、黒金と漆黒が益々欲しくなるな…」

 

薄ら笑みを浮かべるジルクニフの傍に居たフールーダが小さく頷く。

 

「王国のアダマンタイト級冒険者、青の薔薇を始め、有名な冒険者…加えて王都の民の多くが同じようなことを言っております…。信ぴょう性は、非常に高いものかと…」

 

ジルクニフが手にしていた報告書は、先の王都で発生したヤルダバオト襲撃事件に関する報告書である。

 

 

 

「爺から見て、この2人をどう思う?」

 

「歴戦の冒険者たちが目で追いきれない程の戦いを繰り広げるとなると、相当な…それこそ逸脱者と呼ばれている者達を大きく上回る力を持っていると言わざるを得ません」

 

フールーダはジルクニフから報告書を受け取り、改めてその中身へ目を通す。その中でも突飛した内容が2つ…。

 

「ふふっ!面白いじゃないか…」

 

ジルクニフは非常に興奮したように呟く。

 

単純に一人の男として、大英雄などと言われるモモンとニシキへのあこがれに似た感情が芽生える。

 

ジルクニフは目の前に立つフールーダへ声を掛ける。

 

「ここは一先ず、親書としてモモンとニシキへ称賛の手紙を送ろうではないか…。後は…そうだな…。贈り物だな…」

 

 「で、あれば、マジックアイテムなどはいかがでしょうか?」

 

 「ふむ…。では、どのようなマジックアイテムを添えるかは、精査の上で、爺が決めてくれ」

 

ジルクニフの指示に、フールーダは深々と頭を下げる。

 

「(黒金のニシキに、漆黒のモモン…、時間がかかったとしても、何とかして帝国に来てもらえるように事を進めておかなくてはな…)」

 

フールーダが執務室から退出しようとするその背中を眺めながら、ジルクニフは不敵な笑みを浮かべていた。

 

 

 

ローブル聖王国、城塞都市カリンシャ。

 

黒金の屋敷と呼ばれるここで、久しぶりの休暇に興じていたニシキの元へ、アインズから伝言が飛んでくる。

 

非常に狼狽した、しかし興奮と歓喜が入り混じったその伝言は、ニシキをも、酷く狼狽させるものであった。

 

アインズからの伝言の内容は、こうであった…。

 

 

 

 

 

 

『ヘロヘロさんが意識を取り戻しました』

 

 

 

 

 

 




※現在の弐式炎雷のレベル

・Lv97

※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)

・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1 ・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M ・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M ・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M ・水遁忍術Lv2 ・土遁忍術Lv1

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