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ヘロヘロが帝都でレイナース相手にナンパをしている頃…。
王国の王城の一角にある訓練場で、2人の男が木剣をもって向き合っていた。
「はーッ…はーッ…」
「どうした?まだ身体は動くだろう?」
「は、はいッ!」
大きく息を荒げ床に転がっていたクライムは、何とか身体を起こす。
足は小鹿のように震え、視点も定まらない。
「自分で限界を決めるな…レベルア…成長は限界のその先にある」
「はいッ!」
ニシキは、言葉を詰まらせながらも、かっこいいことを言い放つ。
クライムが雄たけびを上げながら何度もニシキに木剣を振るう。
何度か剣戟を繰り返した後、互いが押し合うようにして膠着する。
ぎぎぎっと気が軋む音が響く中、ニシキが片方の掌をクライムの胴体に押し当てる。
「『風遁・風裂掌』」「ッ!」
何度目かの忍術であったが、それを防ぐことも避けることもできずに、クライムは吹き飛び、壁へと激突する。
「ぐはっ!!」
苦悶の悲鳴をあげ、クライムは床に伏せる。
「………」
そして、そのまま意識を失い、身体が動きを止めた。
ニシキは特に急ぐ素振りもなく、ゆっくりとクライムに近づき、真っ赤なポーションをクライムに振りかける。
「うっ…も、申し訳ありません…ニシキ様…」
「いや…合格だ…。なあ、ナーベラル?」
「はい。最初よりも大分良くなっているかと…」
「ほ、本当…ですか?」
クライムは、未だ痛む身体を起こし、壁にもたれ掛かる。
ニシキが二本目のポーションをかけると、殆ど痛みが消える。
「今日はここまでだな…」
「ありがとうございます、ニシキ様」
クライムはスッと立ち上がって頭を下げる。
「そして、今回をもって、一先ず下地作りは終わりだ」
「そ、それはどういうことでしょうか?」
クライムは、ニシキの発言の意図が読めず、不安な表情を浮かべる。
「そうだな…。クライムは、俺の殺気を受けて死の恐怖を克服し、幻術世界でラナー王女を救う過程で精神的恐怖を克服、そして今俺にボコボコにされたことで肉体的恐怖を克服した…」
ニシキの発言に、納得の表情を表すクライム。
同じく納得と言った様子を見せていたナーベラルであったが、クライムよりももう一段階考えが及ぶ。
「なるほど…一定の上限突破を達成した…ということでございますね…」
「流石はナーベラル…その通りだ」
「お褒めに与り、光栄でございます」
ナーベラルは、ニシキからの称賛に、見てわかるくらい嬉しそうにしている。
「一体…どういうことなのでしょうか?」
しかし、クライムは未だ理解が及ばず、疑問を投げかける。
「『極度のストレスを経験することで、上限を超えて成長することができる』、そのタレントの効果の部分の、『上限』を底上げすることができた。…一定というのは、今のクライムの精神と肉体が耐えられる限界まで、ではあるがな」
「…なるほど。つまり、今の私は成長の上限がある程度上がった状態…ということでしょうか?」
「そういうことだ…。今のクライムの上限は…そうだな…。ブレインやガゼフと五分五分の戦いができるほどになっている」
「なっ!!ガゼフ様と、ブレインさんと同等ッ!ま、まさか、そんな…」
ニシキの発言は、クライムにとって驚き以外の何者でもなかった。
両者ともに、強者と呼ばれる存在なのである。
まあ、漆黒のモモンやニシキにには遠く及ばないものの、それでも現地民にとっては、それこそクライムの考える『強者』の括りに間違いなく入るレベルである。
それを、『今のお前ならそのくらいまで成長できるよ』と言われれば、驚くのも無理はない。
「が、上限を取っ払っただけだ…。まあ、多少はレベ…いや、成長はしているが、本格的に実力をつけていくのはこれからだ」
「は、はいッ!よろしくお願い致します!」
クライムは心を躍らせる。と同時に、気を引き締める。
自分がガゼフやブレインと同等になるには、いくら上限が解放されたからと言って、生半可なものではないだろう。
そう気持ちを奮い立たせていると、思い出したようにニシキが再度口を開く。
「ああ、あともう一つ…。なんで俺がわざわざ忍術を使ったのか、わかるか?」
「えっと…。様々な攻撃に対処するため…でしょうか?」
「ああ、それもあるが、それ以上に大切な意味がある…。それは、お前に忍者と忍術のスキルも会得してもらうためだ」
「わ、私が…忍者と忍術のスキルを…⁉」
クライムはニシキの忍術を、頭の中で思い起こす。
その身を瞬時に動かすことのできる忍術や、風の力を発生させることのできる忍術を覚えられれば、戦闘の幅が広がる。
そしてそれは、敬愛するラナー王女を守る手段が増えることにもなる。
クライムは、思わず顔が綻ぶのを感じていた。
「だが、本来忍者というのは、高難易度のクラス…。あーっと、会得するのが難しいものなんだ…。それは、いま上限を底上げしたクライムでも不可能なほどに…」
「そ、それでは、今はまだ無理だということでしょうか?」
「いや…それを可能にするために、先の訓練で『お前に忍術を使って』攻撃したんだ」
「え…?」
やはり意味が分からず、聞き返す。
そんなクライムの態度に、なぜかナーベラルが苛立ちを見せる。
「ガガンボ…そこまで言われて分からないの?目を閉じて集中。己が内の力を確かめなさい」
しかしそれは、クライムに助け舟を出す発言であった。
クライムは戸惑いながらも、言われた通りに目を閉じ、神経を尖らせる。
すると、今までに感じたことのない力を感じる。
「こ、これは…ッ⁉」
「お前に俺の忍術をぶつけ、意図的にお前の内に力を流し込んだ。まあ、言ってみれば、力の譲渡みたいなものだ。それでお前に忍者としての才覚を生みつけた。確か、魔法戦士を目指しているんだろう?魔法で同じことはできないが、忍術なら似たようなことができる」
「私が、ニシキ様のように剣と忍術を扱えるようになるということですか?」
「まあ、端的に言えばそうなるな」
クライムは、己が内に生まれた力を感じ取りながら、期待感に満ちた表情をしていた。
一方、ヘロヘロから上級解呪薬を受け取ったレイナースは、帝国で一番の魔法の知識を持つ人物の元を訪れていた。
ヘロヘロの人格と雰囲気から、その薬が偽物であるという感情は抱いていなかったが、やはり不安はあるもので、すぐにでも飲みたい気持ちを抑え込み、今に至る。
「お待たせした。レイナース殿が私の元を訪れるとなると、顔の呪いのことかな?」
白く長いひげを擦るようにして見せた人物は、非常に老齢の男性であった。
「フールーダ様。お時間を頂き、ありがとうございます。実は、鑑定していただきたいアイテムがございまして…」
レイナースは、机を挟んで向かい合うように座るフールーダに、一本の小瓶を渡す。
「このアイテムを授けてくれた方は、『上級解呪薬』と言っておりました」
「上級解呪薬じゃと?…なるほど、確かに見たことのないアイテムだな…」
「これが本当に私にかかった呪いを解除できる代物であるのか、調べていただきたいのです」
「よかろう…。『道具鑑定(アプレイザル・マジックアイテム)』………、こ、これは⁉」
フールーダが鑑定魔法を発動してすぐ、驚愕の表情を浮かべる。
その様相に、レイナースが困惑を見せる。
「いかがされましたか?フールーダ様ッ!」
「なんという…なんというアイテムじゃ!レイナースよ!一体だれじゃ!このアイテムをお主に授けたのはッ!!」
「そ、それは一体どういう…」
フールーダの慌てっぷりに、レイナースは酷く驚く。
「これはすごいッ!よもやこのようなアイテムが存在していたとはッ!!…よいか、よく聞くのじゃ!このアイテムの効果は、『あらゆる呪いを解呪する』アイテムじゃ!…。」
「あ、あらゆる呪いを解呪⁉…と、ということは…ッ!」
「そうじゃ、お主の顔にかかった呪いも、このアイテムにかかれば、即座に治るじゃろうてッ!!なんと素晴らしいッ!!魔法で例えるなら、第6位階…いや、第7位階にも相当するアイテムやもしれん!!」
フールーダの言葉を聞き、少しの膠着の後に、レイナースはガバッとフールーダから解呪薬を奪い取るようにして手に取り、蓋を取って一気に飲み干す。
すると、まばゆい光がレイナースの身体を包み込む。
そして、ゆっくりと光が収まると同時に、レイナースの顔に変化が訪れる。
「おおッ!!なんということじゃ!!本当に一瞬で治りおったぞッ!」
フールーダが、レイナースの顔を覗き込んで、驚愕の声を上げる。
それを一番感じたのはレイナースであり、ずっと顔の右半分に抱いていた不快感と異物感が消失していた。
レイナースは、自身の顔をそっと触ってみる。
驚く。
ベタベタ感もネチョネチョ感もない…、手を通して、本来の皮膚の感覚を得る。
「う…うそ…」
レイナースは、自身の手だけでは信じられず、バッと近くにある大きな鏡にその身を写し、髪を掻き上げる。
…美しい顔であった。
とある日、とあるモンスターと戦う前の…自身の顔であった。
先ほどまでの呪いが、膿が、嘘のように消えている。
そうしてまた顔を触り、鏡に映った顔を眺める。
何度も繰り返す。次第に涙が零れる。
「ほ、ほんとうに…治って…る…」
レイナースの目から、更に大粒の涙が零れる。
涙は、これまでの苦悩と悲しみ、絶望が含まれているような感覚があった。
それがドパッと流れるような、そんな感覚である。
あの男が、ヘロヘロが言っていたことは本当だったのだ。
フールーダは、そんなレイナースの様相を見て、一瞬口を噤んだが、しかし自身の気持ちを抑えきれずに声を張り上げる。
「一体、だれがこのような素晴らしいアイテムをお前に渡したのだ!!」
「うぐっ…。ヘ、ヘロヘロと…名乗る、カッパーの…冒険者です…」
泣きながら、何度も詰まりながら発した声であったが、それはフールーダを驚かせるには十分なものであった。
「カッパーの冒険者だとッ!なぜカッパーがこれほどのアイテムを…ッ!!」
フールーダは理解しがたいと言った様相で狼狽している。
「し、しかし…。身なりも雰囲気も、カッパーのそれではありませんでした…。もしかすると、遠い国の有名なお人なのかもしれませんッ!冒険者として活動を始めたのも、最近だとか…」
「そ、それを先に言わんかっ!そ、それで、その御方は一体どこに…」
「帝都の冒険者ギルドに行けば、会えるかと思います」
「ならば、すぐにでも会いに行くとしよう!他にも素晴らしいアイテムをお持ちやも…。いや、それよりも、まずは陛下にお伝えするのだ…。その御仁は、帝国にとっても有益なものとなろう!」
フールーダとレイナースは、急ぎ皇帝の元へと報告に向かった。
レイナースに解呪薬を渡して少しした後…。
ヘロヘロは、武王なる闘技場最強の存在がいることを知る。
興味がわいたヘロヘロは、闘技場へ行き、武王との対戦を申し込もうとしたのだが…。
「申し訳ありませんが、基本的にはある程度の実力がなければ、武王との対戦はお受けできません」
「そうですか…。これでも結構腕に自信はあるのですが…」
闘技場の受付の女性は、あからさまに申し訳なさそうな顔をして見せる。
「そう仰られましても…。あなたはカッパーの冒険者。個人的にはお美しいあなたのお願いとなれば…。あ、いえ…その、我々としては、実力を信用できかねますので…」
「へロ…お兄様が弱いと仰りたいのですか?」
受付嬢の態度に、ソーイは一瞬演技を忘れ、殺気を漏らすが、それをヘロヘロに叱咤されて抑える。
「そうですね…。あなたの言っていることは正しいです。無理を言って申し訳ありません…」
「い、いえ…。私としては本当に不本意なのですが…決まりですので…」
なぜか何度も頭を下げる受付嬢に、ヘロヘロは申し訳ない気持ちを抱く。
「で、ですが…。抜け道がないわけでもないです…。興行主で最も力をもつオスク様や、皇帝陛下のご許可があれば、申し込みも可能かと…非常に難しいことですが」
「ほ、本当ですか⁉」
「はい…その、私にはそのくらいしか出来かねますが…」
受付嬢は、些少顔を赤く染め、俯く。
それを見越してか知らずか、ヘロヘロは受付嬢の手を両手で包み、真剣な表情で顔を近づける。
急に手を掴まれ、剰えその美しい顔を近づけられ、受付嬢は一気にゆでだこのように顔を真っ赤に染める。
「お願いできますか…?」
「は、はひ…」
受付嬢は、喉から呻き声に似た声を発し、承諾する。
しかし、ヘロヘロも、ゆでだ…受付嬢も、その申請が比較的すんなり通ることになるとは、この時は思いもしていなかった。
「ほ、本当に呪いがとけているな…」
皇帝ジルクニフは、執務室にて、レイナースの顔を見て、大きく目を見開きながら呟く。
フールーダとレイナースが、急ぎ報告したいことがあると伝え聞き、何事かと会ってみればそれは非常に困惑と驚きを生むものであった。
「しかし…上級解呪薬か…聞いたこともないが…」
「私も、寡聞にして聞き及んだことはありません…」
ジルクニフが向けた視線に、何を孕んでいるのかを瞬時に理解したフールーダが、それに答える。
「なるほど…爺も知らぬか…となると、そのカッパーの冒険者…ヘロヘロだったか…一度会って話を聞いてみる必要があるな…」
「ヘロヘロ様は、その薬をお与えくださった際、何かあれば冒険者ギルドにと仰っておられました」
レイナースは、酷くヘロヘロを敬うような口調で呟いた。
「なるほど…。お前はその男に恩ができたということか…」
「はい。私は四騎士を辞め、ヘロヘロ様の元へ向かおうと思っております」
その言葉に、ジルクニフは些少の苦い顔を浮かべる。
四騎士の一人であるレイナースに、今抜けられるのは非常にまずい。
しかし、レイナースに四騎士を提案した際の条件は、『顔の呪いが解けるまで』という内容で、この状況は、その条件に合致している。
「確かにお前との契約はそうだった…。だが、暫し待て…。奴が帝都の冒険者であるというのであれば、彼に私の元へ来るように提案してみる…。お前が警戒するほどの殺気を放った男であれば、実力も備わっているはずだ…」
「正確には、殺気を放ったのは妹のソーイの方ですが、それを瞬時に止めたヘロヘロ様であれば、実力はあるかと…」
ジルクニフの言葉に、レイナースは一先ず従う形で頭を垂れる。
「あれだけのアイテムを持っているのですから、四騎士と同等か、あるいはそれ以上の実力を持っていても不思議ではありますまい…」
「それに、ヘロヘロ様と妹のソーイは、どちらも天上の美しき容姿を持つお人でした」
「ほう?…少し聞きたいのだが…、ヘロヘロの方は短い金髪で筋骨隆々、ソーイの方は金髪で縦ロールの女ではなかったか?」
ジルクニフの発言に、レイナースは思わず目を見開く。
「え、ええ。陛下のおっしゃる通りですが…。ご存じなのですか?」
レイナースの発言に、今度はジルクニフが大きく目を見開く。
「なるほど…。ふふっ…。なるほどな…」
「陛下…。どうされました……?」
ジルクニフの不敵な笑みと、隠しきれない興奮した様子に、フールーダは少し怪訝に思う。
「これは今しがた入ってきた情報なのだが…、テルユ村が、デスナイト2体とアンデッドの群れに襲撃されたらしい」
「な、なんじゃと!!そ、そんな、デスナイトが2体など…ッ!しかもテルユ村は帝都のすぐ近く⁉討伐隊の編制は済んでおられるのかッ!」
フールーダは酷く狼狽して見せる。
たった一体で都市を壊滅させうる伝説級アンデッドが、帝都の近くに、それも2体も現れたとなれば、その狼狽も理解できる。
しかし、それとは対照的に、ジルクニフは至って冷静であった。
「すでに討伐済みだ…。テルユ村を担当していた兵士隊の隊長から、短い金髪の男がデスナイト2体を、アンデッドの群れを金髪縦ロールの女が討伐したとな…。しかも、デスナイト2体はそれぞれ一撃で葬られたそうだ…」
「ば、バカな…あのデスナイトを一撃で…」
「そ、それってまさか…」
フールーダはデスナイトを容易く討伐したことに、レイナースはそれを為した2人の特徴に酷く驚きを見せていた。
「ああ、間違いなく、テルユ村でデスナイトを屠ったのは、ヘロヘロとソーイだろう…。デスナイトを一撃で倒し、爺が見たこともないアイテムを持っていた人物が、別人な訳はない…。ここまで特徴が似ていれば、なおさらだ…」
「つ、つまり…。少なくともヘロヘロ様は、私やフールーダ様よりも上の力を有していると…」
「そういうことになるであろうな…」
ジルクニフ達は、沈黙を余儀なくされた。
それぞれ思惑は違えど、絶対に逃がしてはならない…。そう思っていたのだ。
そんな矢先、何者かが執務室のドアを叩く。
「陛下、秘書官のロウネ・ヴァミリネンです」
「入れ」
「失礼いたします」
ジルクニフの許可の元、ロウネはゆっくりと扉を開き、入室する。
そして、一礼後、口を開いた。
「皇帝陛下、闘技場八代目武王ゴ・ギンに挑戦したい、という男が現れたのですが…」
「ほう?確か、最近武王への挑戦者はいなかったな…」
ジルクニフは新たな興味を抱いたように目を細める。
「はい、興行主筆頭であるオスク殿も認めるか決めあぐねているとの報告を受けまして…。その…挑戦者がカッパーの冒険者なのです…」
その報告を聞き、ジルクニフ達は大きく目を見開く。
「な、何だと⁉…そ、その男の名前は⁉」
ロウネは、ジルクニフの狼狽に少し驚くが、求められた返答を即座にして見せる。
「え、えっと…ヘロヘロという名にございます…」
秘書官の言葉を聞いたジルクニフ達は、あんぐりと大口を開けて固まってしまった。
「はぁ…闘技場の王者がどれほどのものか、興味があったんだけどなー…」
ヘロヘロは、冒険者ギルドの酒場で、不貞腐れたように果実酒を煽る。
「…今から闘技場の者達を脅してきますか?」
「そんなことしたら、この帝都に居場所がなくなるでしょー」
ソーイのビックリな提案に、ヘロヘロは苦笑いをしながら、呆れたような声を出す。
「…申し訳ありません、お兄様」
ソーイはヘロヘロの感情に気付いたのか、ションボリとした表情を浮かべる。
そんなソーイを宥めていたヘロヘロであったが、ギルドに現れた一人の少女に声を掛けられ、それは終わりを迎える。
「…見つけた」
「…?あなたは確か…村にいた…」
金髪のショートカットを有する少女であった。
彼女の仲間が名前を叫んでいたことを思い出すが、覚えておらず、一向に出てこない。
「アルシェです。アルシェ・イーブ・リイル・フルトと申します。…あなたのお名前をお聞きしたくて、ここまで来ました」
アルシェと名乗る少女は、少し顔を赤らめながらヘロヘロを見つめていた。
なにやらソーイが不穏な視線を向けているが、ヘロヘロはそれを片手で宥め、アルシェに視線を移す。
「アルシェさんですね…。なぜわざわざ私の名を聞きにここまで?」
「…命を助けてもらったお礼をしていなかったから…。それに…あなたと会いたかった…です…」
アルシェは些少の言葉の詰まりを見せながら、もじもじとして見せる。
再びソーイが不穏を通り越して殺気に似た視線を有する。
ヘロヘロは、あー…と少しやってしまった感を出す。
「そうでしたか…。私はヘロヘロと申します。あの村での一件でしたら、お気になさらずに…」
「ヘロヘロさん…ヘロヘロさんですね…。あなたが居なけらば、私は今頃死んでいました…。本当に、ありがとうございました…」
「本当にお気になさらずに…ただの通りすがりでしたから…」
「で、でも…」
アルシェは、食いつくようにしてお礼を述べたが、ヘロヘロの言葉に気持ちを落ち着かせ、微笑んで見せた。
「わかりました…。で、では…その、お、お礼に…えっと…」
恩人にささやかでも食事に…と思っていたアルシェであったが、再び声を掛けてきた者によって遮られる。
「ヘロヘロ様ッ!」
その乱入者は女性であった。
茶色の全身鎧に身を包み、長い金髪を有していた。
会話を遮られたアルシェが、ジトっとした目で彼女を見つめる。
言うまでもないが、ソーイも同じような視線を向けていた。
「レイナースさん…でしたよね?」
「はい!レイナースです!」
レイナースの顔は、満開の桜に似た美しさを誇っていた。
その顔に、呪いによる膿は見られなかった。
「その様子だと、お渡しした薬が効いたようですね」
「はい!ヘロヘロ様が下さった薬で、完全に呪いを解くことができました!改めて、感謝申し上げます!」
「いえいえ、お役に立てたようで、よかったです」
「それで、ヘロヘロ様に2つほどお伝えしたいことがございまして、参上いたしました」
レイナースは、些少の笑顔を保持しながら、それでいて真剣な様相で話し始める。
「ヘロヘロ様は、八代目武王である、ゴ・ギンと戦いたいとか…。その試合を、皇帝陛下がお認めになられましたので、それをお伝えさせて頂きます」
「えっ!戦えるんですか⁉」
レイナースが齎した情報は、ヘロヘロにとって歓喜を生むものであった。
「こ、皇帝陛下自ら…」
近くで話を聞いていたアルシェが、思いっきり驚いて見せている。
そんなアルシェを、レイナースは一瞥し、再び視線をヘロヘロへと向ける。
「試合は、3日後の正午…。場所はもちろん闘技場でございます」
「そうですか。いやー嬉しいです!ありがとうございます」
ヘロヘロは、まるで好きなおもちゃを見つけた子どものようにはしゃいでいる。
しかしすぐに落ち着きを取り戻す。
「失礼…。それで、もう一つはなんでしょうか?」
ヘロヘロの言葉に、レイナースは些少の言葉の詰まりを見せたが、意を決したように口を開いた。
「…ッ!呪いを解いてくださったご恩は、一生忘れません!生涯をかけて、お返しさせていただきます!私は…レイナース・ロックブルズは、ヘロヘロ様に忠誠を誓います!!」
レイナースはバッと片膝を突き、ヘロヘロに平伏して見せる。
突然の平伏と、大声に、ヘロヘロだけでなく、ソーイやアルシェ、冒険者ギルド内にいる全員が目を見開いて固まって見せる。
些少の静寂…。
そして…。
「「「「ええええええええええっっっ!!!!!!」」」」
ヘロヘロを含む、ソーイ以外の全てのものが叫び散らかした。
※現在の弐式炎雷のレベル
・Lv97
※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)
・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1 ・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M ・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M ・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M ・水遁忍術Lv2 ・土遁忍術Lv1