弐式炎雷と共に! ≪一時休載≫   作:ペリカン96号

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拙い文章で読みずらい、理解しずらい点多々あると思いますが、お楽しみいただければと思います。
感想、評価、是非お待ちしております!


第38話 須佐能乎

「(ニシキ様…)」

 

瓦礫の山からゆっくりと立ち上がるニシキを見て、カルカは胸の前で両手を絡めながら目尻を下げる。

 

ニシキの力をもってして、勝率5割という話が、目の前でヤルダバオトと対峙している様子を見て、真実であると確信する。

 

そして、ニシキとヤルダバオトの会話を聞くことで、カルカの感情が激しく揺さぶられる。

 

万華鏡写輪眼の開眼に至る条件…。

 

右目に宿る『白焔』というもう一つの瞳術…。

 

そのどれもが、黙って聞き流せるものではなく、しかし状況が状況なだけに、それをのみ込まざるを得ない…。

 

だが、その中でも一番聞き流せなかったのは、イスナの攻撃によって傷ついた自身の身体と美貌を取り戻してくれた『輪廻』、引いてはそれを為す万華鏡写輪眼の使用における失明というリスクであった。

 

「(ニシキ様は…失明のリスクを負ってまで、私を…ッ!)」

 

その感情は、かつて同じように足を取り戻したケラルトも感じているのか、如何ともしがたい表情を浮かべていた。

 

…しかし、目の前で新たな動きを見せる戦いに、その思考も一度終わりを見せる。

 

ニシキの右目から放たれた『白焔』。

 

その能力を理解したヤルダバオトが、発火した自身の腕を引きちぎる。

 

ニシキと言えど、その行為は予測できなかったのか、慌てている様子であった。

 

そして、再度右目を見開こうとしていたが、反射に似た動きで右目を強く閉じる。

 

激しい痛みが右目を襲ってたのだと予測できた。

 

既に、ニシキの両眼からは、夥しいほどの鮮血が溢れ、それが頬に伝っている。

 

痛みに怯んだニシキを、それによって生まれたその隙を、ヤルダバオトが逃すはずもなく、一気に肉薄し、巨大な腕に炎を纏わせて襲い掛かる。

 

「「「ニシキ様ッ!」」」

 

カルカは意図せず、ケラルトとレメディオスと共に大声を張り上げる。

 

さすがのニシキでも、あの攻撃を、あの凶悪な一撃をまともに受ければ、ただでは済まない。

 

直感的にそう感じた。

 

衝撃と爆炎が玉座の間を襲うが、カルカ達に届くことはなかった。

 

ヤルダバオトの一撃によって齎された衝撃も落ち着きを見せ、視界が徐々に晴れる。

 

大きく目を見開く。

 

そこには、暗く輝くトパーズ色をした、巨大な何かが生まれていた。

 

それはヤルダバオトの拳を塞き止めているのか、ニシキには届いていなかった。

 

「あれは…一体…ッ」

 

ケラルトが、羽虫のようなか細い声を上げる。

 

更に視界は晴れ、その様相がカルカ達の視界に飛び込んでくる。

 

トパーズ色をした巨大な何かは、人間の肋骨のようなものを形成していた。

 

「スケルトン…⁉」

 

カルカが真っ先に思い至ったのは、スケルトンというアンデットであった。

 

色も姿も大きさも、その全てがスケルトンでないことは理解している。

 

しかし、『言葉で説明してみろ』と言われれば、それはまごうことなき、スケルトンの上半身であった。

 

「なんだ…それは…ッ!」

 

確実に攻撃を当てられたという自信があったのだろう。

 

ヤルダバオトが、自身の拳を防ぐその巨大なスケルトンに似た力に、驚いた様子を見せる。

 

「…なるほど…。どうやら、万華鏡写輪眼についての知識があると言っても、この力までは知りえていなかったようだな…」

 

ニシキが、俯きながら呟く。

 

「万華鏡写輪眼…。まさか、これも瞳術だとでも言うのか…ッ!」

 

「そうだ…。万華鏡写輪眼、左右それぞれの瞳術を開眼した者に宿るもう一つの瞳術…。第三の力…須佐能乎だ…」

 

トパーズ色を有した凄まじい魔力が、まるで炎のようにニシキの須佐能乎の周りを漂う。

 

「須佐能乎…か…。この一撃を防ぐとは…大したものだな…」

 

「須佐能乎の有する力の1つに、絶対防御という力がある…。この程度の攻撃を防ぐのは…わけのないことだ」

 

ニシキの挑発的な言葉に、ヤルダバオトが不敵な笑みを浮かべる。

 

「絶対防御か…。先の攻撃を防いだことで、天狗になっているのか?…まあいい、そこまで言うのであれば、試させてもらおうではないか!」

 

ヤルダバオトは、右腕を天高く掲げる。

 

その指先から、巨大な魔方陣が形成される。

 

「第10位階魔法!『隕石落下』!!」

 

ヤルダバオトの叫びは、首都ホバンスの全域にも届きうるものであった。

 

空の彼方…。その一部が真っ赤に染めあがったと認識したのも束の間…。

 

巨大な岩の塊、隕石が、首都ホバンス、宮殿めがけて落下してくる。

 

カルカ達は、驚愕と絶望に似た表情を見せる。

 

「だ、第10位階魔法だとッ!」

 

魔法の知識が潤沢ではないレメディオスですら、これが異常なことであると理解できる。

 

人類の限界は、第6位階魔法と言われている。

 

第7位階、第8位階魔法ですら、儀式や特別なアイテムを駆使しなければ行使できない。

 

それが魔法というモノの常識である。

 

つまり、第9位階や今ヤルダバオトがやって見せた第10位階魔法を、一個人が行使するなどというのは、神話の世界だけの話であったのだ。

 

「あ、あんなものが…落ちたら…ッ!」

 

「宮殿どころか…ホバンスが…消える…ッ!」

 

カルカとケラルトが、絶望をそのまま言葉にして漏らす。

 

徐々に隕石の影は大きくなる。

 

「これが私の最大火力だッ!絶対防御だというのならば、防いで見せろッ!…まあ、仮に防げたとしても、ホバンスは地図から消え去ることになるだろうがな…」

 

ヤルダバオトの下卑た笑みに、カルカはこれまでにない怒りの表情を浮かべる。

 

「(このままじゃ…聖王国がッ!!)」

 

その瞳に涙を浮かべ、絶望が心を支配しかけた時…。

 

ニシキが纏う須佐能乎がその姿を変化させた。

 

スケルトンのような骨であったその姿は、まるで人間のような肉体を得たかと思うと、更に鎧のようなものをその身に纏う。

 

もちろん、それは見た目の話であり、本当に肉体を得たわけでも、鎧を着たわけでもない。

 

膨大な魔力によって生み出されたものだ。

 

「防ぐことは容易いが…。わざわざ落ちてくるのを待つ必要はない…。ようは、あれを破壊すればいいだけの話だ…」

 

「…なんだと?」

 

須佐能乎の腕、掌に、三つの紋様が生み出され、高速回転する。

 

その紋様は、通常の写輪眼の紋様に似ていた。

 

須佐能乎の腕は、その巨体とは似つかない程の精密で素早い動きを見せ、高速回転する三つの紋様に似た力を放つ。

 

「『八坂ノ勾玉』!!」

 

須佐能乎から放たれたそれは、ギューンという回転音を放ちながら、迫りくる隕石に向かって飛翔する。

 

そして、隕石に当たった瞬間、一瞬の静寂の後に、一気に爆散する。

 

且つて、エスターク・イスナを屠った風遁・螺旋手裏剣と同等か、それ以上の衝撃を齎しながら、隕石を粉みじんに破壊する。

 

首都ホバンスに住まう全ての命を、悉く奪い去ろうとした深紅の隕石は、八坂ノ勾玉による力と衝撃、爆発によって、一瞬でその姿をかき消した。

 

パラパラと、もはや砂とも言えるほどに粉々になった小石が、ヤルダバオトの周りへと飛散する。

 

「バ、バカな…こんなことが…この私の最大火力である隕石落下が…こうも容易く…ッ!」

 

ヤルダバオトは、呆けるようにして、少し前まで隕石があった空を眺めている。

 

それはカルカ達も例外ではなく、先ほどまで絶望の権化のように存在していた隕石が一瞬で消失したことで、口を開けて固まっている。

 

「…素晴らしいお力です…ニシキ様…ッ!」

 

その中でも、些少の冷静さを保っていたナーベラルが、歓喜に震えるようにして呟く。

 

「何なんだ…何なのだ!!貴様はー!!!」

 

ヤルダバオトが、激高してニシキへと突撃してくる。

 

もはやその行動に冷静さはなく、ひたすらに怒りと焦りをぶつけようとしていた。

 

そんなヤルダバオトの姿を見て、ニシキはゆっくりと視界に捉える。

 

「俺は…アダマンタイト級冒険者、黒金のニシキ…。お前を、斃すものだ!」

 

須佐能乎の手に、一本の巨大な刀が形成される。

 

瞬間、その刀は迫りくるヤルダバオトを一切の狂いなく捉え、ズバンッという衝撃音と共に、綺麗に真っ二つにして見せる。

 

「あ…ありえ…ない…」

 

消え入るような声を呟いたかと思うと、ヤルダバオトの身体は、大きな爆発と共に、弾けるようにして四散した。

 

 

 

 

宮殿を取り囲んでいたゲヘナの炎も一瞬で掻き消える。

 

空中で真っ二つになり、爆散して完全にその姿を消したヤルダバオトを見て、カルカ達は大口を開けて呆けている。

 

酷く長くそうしていたようにも思えたが、実際には10秒にも満たない時間であった。

 

「か…勝った…?」

 

微かに、息を漏らすようにして、カルカが呟く。

 

その呟きに、レメディオスとケラルトは、ゆっくりと息を吐く。

 

あまりに衝撃的であったために、まともに反応することができなかった。

 

そんな中、巨大な戦士を思わせるようなニシキの須佐能乎がゆっくりとその姿をかき消し、完全な消失を見せる。

 

それからすぐに、玉座の間の真下から、歓声が沸き上がる。

 

宮殿の周り、城下で発生したその歓声は、更に大きなものとなっていく。

 

その歓声を耳にしたレメディオスが、ははっと小さく笑う。

 

「勝った…勝ったぞ…!ニシキ殿が勝った!!」

 

「はい…!勝ちました!」

 

レメディオスが次第に声を大きくして見せたことで、ケラルトも平常心を取り戻し、珍しく声を張り上げる。

 

カルカもそこに加わり、キャピキャピとした様相を見せたが、ニシキが力尽きたように両膝を突き、項垂れたことで終わりを見せる。

 

「ニシキ様ッ!」「「「ッ!」」」

 

いち早く気づいたナーベラルが、叫びながら駆ける。

 

カルカ達もニシキの様子に気付き、ナーベラルの後を追う。

 

「ニシキ様…ッ!ご無事ですか!」

 

「…ナーベラル…悪いな…ちょっと魔力を使いすぎたみたいだ…」

 

項垂れているニシキの肩に、ナーベラルはそっと手を添えて支える。

 

「「ニシキ様ッ!」」「ニシキ殿ッ!」

 

「…皆さんも、ご無事で何よりです…」

 

カルカ達は、ニシキのその言葉と、浮かべた微笑に、安心感が芽生える。

 

しかし同時に、両目から溢れ出た鮮血を見て、苦悶に似た表情を浮かべる。

 

そんなニシキに声を掛けようとしたカルカであったが、ナーベラルが先に口を開いたことで、遮られる。

 

「ニシキ様…すぐにナザ…カリンシャへと戻りましょう…。今は十分に身体を休めなければ…ッ!」

 

ナーベラルの言葉に、カルカは大きく目を見開く。

 

「お、お待ちください、ナーベラル様!十分な休息でしたら、ここでも可能です…。それに、移動する方がかえってご負担が…」

 

「私には、転移の魔法があります。一瞬でカリンシャまで飛ぶことができますので、心配はご無用です」

 

「し、しかし…」

 

ナーベラルの発言に一切の隙が無いため、ケラルトですら言葉を詰まらせる。

 

そんなケラルトに考える時間を与えないといった様子で、ナーベラルは続けざまに口を開く。

 

「それに、あなた方には今この場でやるべきことがあるはず…。自らの立場をお忘れなのかしら…?」

 

カルカ達は、「うっ…」と言葉を詰まらせる。

 

いくらヤルダバオトの討伐が叶ったとはいえ、カルカ達には、立場上、その事後処理がたくさん残されていた。

 

正直、ニシキの身を心配して寄り添う暇などありはしないのだ。

 

「…理解したようですね…」

 

ナーベラルは、ニシキの肩を撫でるように動かす。

 

その感触を認知し、ニシキは閉じかけた両目をゆっくりと動かす

 

「ナーベラル…」

 

「ニシキ様…。ここから先は、このナーベラルが御身を確実にお守り致します…。今はゆっくりとお休みくださいませ…」

 

カルカ達には決して見せない、満面の笑みをニシキへと向ける。

 

絶世の美女が齎すその笑みは、同等の美貌を持つカルカですらも惚ける程の美しさを有しており、思わず呼吸を止めてしまう。

 

ナーベラルの言葉に従うように、ニシキは一瞬口角を上げると、その頭をストンと力なく落とした。

 

カルカ達は、その様子に些少の驚きと心配をもって声を掛けようとするが、ナーベラルと共にその姿が掻き消えたことで、それが発せられることはなかった…。

 

 

 

 

 

ゆっくりと瞼を開けると、飛び込んできたのは白であった。

 

『白って200色あんねん』

 

遠い昔にとある偉人?が残した名言であったが、ニシキには目の前に映る白の区別はつかない。

 

その白が、天井の白であることに気付き、同時に自分が仰向けに寝ていることが分かる。

 

その視線をゆっくりと左へと傾ける。

 

視界に飛び込んできたのは、些少の煌びやかさを有する広めの部屋であった。

 

認知した机や椅子、装飾品から、カリンシャにある自身の屋敷、その自室であることが分かった。

 

ふと動きを見せる物体を捉える。

 

金色の髪を有するその人物は、メイド服を着用し、何か作業やら準備やらをしているのか、ニシキに背中を向けていた。

 

「…ツアレ…?」

 

その人物が誰であるのかを瞬時に理解したニシキは、小さく呟く。

 

ニシキの言葉が耳に届いたのか、ツアレと呼ばれたその人物は、瞬時に振り返り、その瞳を向ける。

 

ニシキの視界にもツアレの大きな美しい目が映る。

 

ツアレの瞳に、ゆっくりと、しかし大きな涙が溜まる。

 

「ニ…ニシキ…様…ッ!」

 

ツアレがニシキが身を預けているベッドの端に駆け寄り、その手をしっかりと握りしめる。

 

「…どうして、泣いているんだ…」

 

ニシキがゆっくりと発した言葉に、ツアレは更に涙を流す。

 

頬を伝い、ポタポタとシーツに零れ落ちる。

 

「どうしてって…ッ!ニシキ様が…ニシキ様が…ッ!」

 

その思いは激情となり、言葉を詰まらせる。

 

ツアレの様相を見たニシキは、ゆっくりとほほ笑むような表情を浮かべる。

 

「そうか…心配かけたな…」

 

ツアレは、ニシキの手を握ったまま、俯いて泣き続ける。

 

ニシキは掴まれていない左手を、ゆっくりと頭に乗せる。

 

ツアレは一瞬ビクッと身体を震わせるが、視線を再度ニシキへと向ける。

 

潤んだ瞳は宝石のように輝き、ニシキは思わず少しだけ目を見開く。

 

「無事で…本当によかった…」

 

ツアレは、ニシキの掌から伝わる熱と感触を味わいながら惚けている。

 

暫くそんな艶めかしい時間が流れたが、ニシキが思い出したように口を開く。

 

「…ナーベラルはいるか?」

 

「はい…。お呼びになられますか?」

 

ニシキが口を開いたことで、現実に戻ってきたツアレは、一つ大きく瞬きをする。

 

「ああ、頼む」

 

 

 

 

 

ローブル聖王国は建国史上最大の大混乱に陥っていた。

 

宮廷会議という、聖王国の主要貴族が顔を合わせる場で起こったクーデター。

 

南部の保守派貴族最大の権力者、カマーセ侯爵を筆頭としたその凶剣は、聖王女派閥の首元にまで迫ったといっても過言ではないだろう。

 

その大きな要因は、魔皇ヤルダバオトの力によるものだった。

 

ヤルダバオトはその強大な力をもってして、カマーセ侯爵を実質従える形で手を組み、南部貴族の保守派、いわゆる聖王女派閥への不満を抱く貴族を焚きつけたことが始まりであった。

 

デボネ近郊の村々が襲われたという虚偽の報告を利用をもってして、聖王女の護衛に当たっていた黒金のニシキの排除。

 

宮廷会議という多くの南部貴族が集まりを見せても違和感のない環境における実行。

 

ヤルダバオトの配下の悪魔による圧倒的な戦力。

 

そのどれもが聖王女、王政府の不意を突くこととなり、首都ホバンス及び宮殿の占拠を許してしまった。

 

だが、結果だけをみれば、聖王女派閥の大勝利に終わった。

 

しかし、手放しで喜べることではなかった。

 

なぜならば、その大勝利を齎したのは、黒金のニシキとナーベラルであったからだ。

 

特にニシキの活躍はめざましく、短期間におけるカマーセ侯爵とヤルダバオトが繋がっているという確固たる証拠の収集。

 

聖王女を始めとした重要人物の救出。

 

そして、魔皇ヤルダバオトの単騎討伐。

 

その活躍は、まさに法国が平伏するに足る、神の如き所業であると言わざるを得ないだろう。

 

大混乱に陥っているとはいっても、その中には興奮と歓喜が入り混じっている。

 

それが最も強い感情として抱いているのは、カルカ達である。

 

自身の地位や立場だけに留まらず、その身を汚されそうになったところを、華麗に救われたともなれば当たり前のことと言える。

 

しかも、イスナの件と合わせると、2回目の救出劇ということもあり、彼女たちの中に宿る感情は、言葉では言い表せないほどのものとなっていた。

 

だが、それと同時に、国を預かるものとして、今回の一件における功績や活躍というものを何一つ上げることのできなかったのも事実であった。

 

ヤルダバオトの襲撃の際、全くと言っていいほど被害を受けていないカルカの執務室にて、ケラルトが神妙な面持ちで口を開く。

 

「カルカ様…。今回我々が救われたのは奇跡という他ありません…」

 

そんなケラルトの表情を読み取ったカルカは、同じような表情で小さく呟く。

 

「わかっているわ、ケラルト…」

 

「確かに…ケラルトの言う通りだ…。悔しくもカマーセの罠にはまり、ヤルダバオトの力によって我々は身動き一つとれなかった…。しかしッ!」

 

レメディオスは、激しく身体を揺らし、興奮した様子で語尾を強める。

 

「神が…!正義が…!我々を救ってくださった!!…我ら聖王国の救世主『黒金』のニシキ殿!!」

 

目を輝かせ、まるで御伽噺を聞いている少女のような様相に、カルカとケラルトは思わず大きく目を見開く。

 

「ニシキ殿はすごい!!まさに、法国の言う、神そのものであると言わんばかりの御方だ!!」

 

レメディオスの言葉に、カルカは僅かに口角があがる。

 

「ええ、その通りです。ニシキ様が四大神様と同じ神であると、私は改めて確信を得るに至りました…」

 

「まさしく聖王国の救世主と言えるでしょう…。しかし…その…」

 

カルカの言葉に、ケラルトは同意して見せた者の、一つの懸念を口にする。

 

「彼の瞳術…万華鏡写輪眼のリスク…ですか?」

 

ケラルトが言葉を詰まらせたことで、カルカが助け舟を出すようにして口を開いた。

 

「むぅ…確かに…。使えば使う程に視力が低下し、最終的には失明に至る…だったな…」

 

レメディオスは、顎に手を添えながら、何とか思いだすようにして言葉を放つ。

 

「…私やケラルトの身体を元に戻した輪廻も、それにあたります…。彼の視力に一体どれほどの低下を齎しているのかは不明ですが…」

 

「輪廻、白焔、須佐能乎…そのどれもが万華鏡写輪眼による力である以上、すべからず視力低下を齎しているのは確実でしょう…」

 

暫しの沈黙が流れる。

 

その沈黙には、驚きや困惑と共に、悔しさや悲壮感にも似た感情に包まれていた。

 

そんな沈黙を破ったのは、ケラルトであった。

 

「…思うところはありますが、我々がここで考えていても始まりません。ニシキ様の回復を待ち、彼から直接聞くしかないでしょう」

 

「そうね…。それに、我々には我々の役目があります。ニシキ様が齎してくれた奇跡に、我々は答えなくてはなりません…。南部貴族の粛清をはじめ、問題は山積みです」

 

「ッ!そうだ!まずはあの裏切り者どもの処刑を行わなくては!!」

 

レメディオスの怒号が、執務室に響き渡る。

 

…しかし、彼女たちはまだ知りえていなかった。

 

宮殿の地下深くに投獄したはずの南部貴族たちが、一人残らずその姿を消していたことに…。

 

 




※現在の弐式炎雷のレベル
・Lv98

※新しく得た忍術 (Mは上限の意味)
・写輪眼Lv3M ・万華鏡写輪眼Lv1
・体術Lv1 ・形態忍術Lv2M 
・時空間忍術Lv3M ・火遁忍術Lv3M 
・雷遁忍術Lv3M ・風遁忍術Lv3M 
・水遁忍術Lv2 ・土遁忍術Lv2
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