sudoの先に在るもの   作:わるいおとな

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第三章 3話

コユキちゃんの騒動から1ヵ月が経った頃。私ことノアは、シャーレの当番に来ていた。

D.U.地区、連邦生徒会拠点から約30km離れた外郭地区に聳え立つビル、私はそのビルの中に入る。エントランスを左に抜け、先生が仕事をしているであろう事務室へと足を進める。そして、事務室のドアをノックし、扉を開ける。

 

「おはようございます、先生。」

 

"おはよう、ノア。今日もいい天気だね。"

 

シャーレの当番をするのは何も初めての事ではない。ユウカちゃんと比べたらまだ多くは無いけど、それでも私は今日で17回目の当番、もう緊張など当に忘れていた。

 

「では、本日はどの業務から始めれば良いでしょうか?」

 

私はいつも通り、先生から渡された業務に手を付けていく。すると、私は先生の振る舞いに違和感を覚えた。

 

「──?先生、どうかされましたか?」

 

"いや、何もないよ。気にしないで。"

 

......嘘だ。先生は先ほどからずっとスマホを気にしている。約5分に1度、スマホを確認しては心配の顏を浮かべながら自分の仕事に戻っている。一体何があったというのか。私は好奇心で先生に質問をすることに決めた。

 

「それにしては、約5分に1度スマホを確認していますが?表情を見るに、私たち生徒関係の問題でしょうか?」

 

"き、気のせいだと思うよ?"

 

どうやら図星らしい。

 

「先生、私もお話を聞くくらいならできます。話して頂けませんか?」

 

さらに追い立てると、先生は勘弁したかのように両手を上げ、言葉を返した。

 

"あはは......。ノアには敵わないね。うん、ノアになら話してもいいかもね。むしろノアが適任なのかも。"

 

そう言った先生は、私に質問をしてきた。

 

"ノア、最近コユキに会ったかい?"

 

コユキちゃん?確かにあの一件以降私もセミナーの業務に追われ、話す機会も無かったが......。

 

「いえ、最近はセミナーの業務も滞っていまして......話せてはいないですね。」

 

そう言えば、コユキちゃん......彼とは定期的に反省部屋で二人だけの会議を開いていた。内容は、ありきたりな事や今後の動き方、現在のミレニアムの状況など、多岐に渡るが。最近はその定期的な会議すらも出来ていなかった。理由は明確だ、彼が問題をわざと起こし隔離されている状態で、当然会議を行える状況じゃないからだ。そういえば、今日彼が反省部屋に戻される日だったか。

しかし、ここで彼の話題が出てくるという事は、彼に何かがあったのだろうか?私が思考を巡らせていると、先生は話を続けた。

 

"いや、私は彼女をよく知っている訳ではないんだけれどね......。今の彼女に私は少し違和感を覚えてしまってね。コユキ本人に連絡を取ってみて何があったか聞こうかなと思ってね。"

 

彼に違和感?先生にも感じるほどとは...。つまり──。

 

「──つまり記憶力の良い私がコユキちゃんに会いに行って、おかしな事が無いかを見極めてほしい...と。」

 

"ごめんね、こんな事押し付けてしまって。今の私はあまりここから動けそうに無いから...。"

 

それはそうだろう、机には大量に積まれた書類、濃密過ぎるスケジュール、すでにオーバーワークと言っても過言ではない状況なのに、先生は彼の心配をしている。そんな彼女の期待に応えられるなら、私は何だってやれるだろう。私は決意を固め、先生に返答を返した。

 

「分かりました。私で良ければ、彼女......コユキちゃんにコンタクトを取ってみますね♪」

 

"うん、ありがとうね。"

 

そう言って私たちは再び業務に手を付けるのだった。

 

──あれから3日後、ある程度セミナーの業務が片付いた為、私は彼に会いに反省部屋まで来ていた。

 

「失礼します。お久しぶりです、コユキちゃん。」

 

反省部屋に入った私を見た彼は、様子がおかしかった。

 

「ひぃ!!の、ノア先輩!?な、何の用で......?」

 

いつもの彼なら、私が来たところで驚きなどしない。しかし、今の彼はまるで得体のしれない何かに怯えているような感情が見える。それはまるで、あの子......コユキちゃん本人を思わせるような...。

 

「コユキちゃん、今貴方は何をしたいですか?」

 

私は単刀直入に質問を投げかける。すると、彼...否、コユキちゃんのようなモノは困惑した表情で返答をする。

 

「......?あんまり分かりませんが、ゲームをしたいですけど?」

 

「...質問の内容が悪かったですね。」

 

私は言葉を変えて、また問いかける。

 

 

 

 

「──コユキちゃん、貴方はしなければならない事がありましたよね?」

 

 

 

 

そう言うと、彼女はまるで何を言っているか分からない様子で、答える。

 

「しなければ......ならない事?何のことですか?」

 

......何も覚えていないというのか?彼はコユキちゃんに『託された』と言っていた。その託されたものすらも忘れてしまったと言うのか?

 

「本当に何も覚えていないのですか?」

 

確かめるように彼に問う。彼はまるでなんの事かも分からないといった顔で頷く。ならば──。

 

「先日トリニティに行きましたよね?どうして行かれたのですか?」

 

彼女なら理由を答えられるだろう。そう願い、彼女の反応を待つ。すると、あっさりとした反応が返ってきた。

 

「トリニティには、遊びに行っただけですよ?確かに騒ぎなどには巻き込まれましたが......。」

 

......そうか、彼女は確かに"彼"だ。だが...どうしてこんなにも違うのか?思考を巡らせていると、彼女が質問を投げかけてくる。

 

「この話この前もしましたよね...?何かあったんですか?」

 

どうやら何の脈略もない質問に違和感を覚えたらしい。一度落ち着いて考えた方がいいでしょう。私はそう考え、部屋を後にすることにした。

 

「いえ何もありません。すいません、お邪魔しました。今後は横領などしないようにお・ね・が・いしますね?」

 

「ヒィ!?」

 

私はそう言い残して、反省部屋を後にしたのだった。

 

反省部屋を後にし、私はミレニアム学区から少し離れた場所にあるカフェで一人、情報をまとめていた。

 

「彼女...コユキちゃんに何があったのでしょうか...。」

 

前例は無く、情報も少なすぎて推測の立てようもないのが現状だ。彼女の身に一体何が起きているのか......どうしてああなってしまったのか。そんな思考を巡らせていると、突然対面の席に一人の「大人」が座った。

 

「初めまして、ですね。生塩ノアさん。」

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