sudoの先に在るもの   作:わるいおとな

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第三章 5話

「......さて、では参りましょうか。」

 

先生と生塩ノアさんと別れてから数十分が経過したころ、わたくしはカフェを出た。

 

「期待していますよ。先生、コユキさん。」

 

わたくしの......いえ、私たちゲマトリアの目標は"崇高"へ至る事。その為には、先生の協力も必要不可欠だろう。それに、彼女達が"崇高"へと至れば自ずとわたくしたちの"崇高"への道が開かれるだろう。

思考を巡らせ、路地を歩いていると、端で座り込んでいる生徒が目に入った。制服を見るに、アリウス分校だろうか?確かアリウス分校の最後の内戦の中で、彼...コユキさんが逃がした生徒が複数人いた筈だ。恐らく、その一人だろう。しかし、様子を見るに外の世界に順応出来ず、放浪の一途を辿っているようだ。それもそうだろう、少し前まではベアトリーチェに支配されていたが、彼のお陰でアリウスにも陽の光が差し込んで、まるで水を得た魚みたく自由になった。しかし、ただ水を得ただけなのだ、それ以降は餌を与えられる事も無い。狩りの仕方を学ばなければ生きてはいけない弱肉強食、右も左も分からない彼女達アリウス分校の生徒達には少し難しい世界だろう。

 

「そこで蹲ってどうかしましたか?」

 

わたくしは興味本位で彼女に声をかけた。しかし、反応は無い。よく耳を澄ませると、ぶつぶつと何かを言っているようだった。

 

「夢が......楽園があると思ったのに。結局希望は無いの?すべては...虚しいだけなのかな?」

 

......これは相当やられているな。外の世界は、彼女にとって刺激が強く、難しかったらしい。

 

「今の状況では会話は無理でしょうね。ならば、書置きでも残しておきましょうか。」

 

そう言って、手元にあったメモ用紙をちぎり、書置きを残してその場を去るのだった。

 

「...お腹が空いたな。」

 

座り込んで、すべてに絶望をしていたら、どうやら1時間も経っていたらしい。

 

「食料を探しに行かないと。」

 

そう思い、立ち上がろうとした途端、目の前にメモ用紙が置いてある事に気づいた。

 

「これは...なんだろう?」

 

[ミレニアム学区に行ってみてはどうでしょう。面白い事が起こるかもしれませんよ。]

 

一体誰がこんな書置きを残したのだろう。路地で一人蹲っている少女にこんな書置きとは...物好きの人もいるものだな。そう思った。結局行く当ても無いのだ、この書置きに書いてある通り、ミレニアム学区へ行ってみよう。それに一回行ってみたいなと思っていたしね。

そう思い、私は路地を出てミレニアム学区へと足を進めるのだった。

 

"......私はどうすればいいんだろう?"

 

一人、シャーレの事務室で私は頭を抱えていた。理由は察しの通り、コユキに関してだ。

先日、ゴルゴンダとの話し合いで啖呵を切ったものの、具体的な解決策は未だに思い浮かばない。

 

"確か...彼は崇高とか堕とすとか言っていたよね...。"

 

あれは一体どういう事なのだろう。

 

『ならば!唯一の変数であり、事象の改ざんをもしてしまう貴方が彼を『崇高』へと導いて見せるのです!』

 

文字通り捉えるなら、コユキを偉大な存在...神に等しい存在まで導けと?

 

"流石に無理があるよね。"

 

私は何処まで行っても"先生"という一人間だ。あくまで生徒の味方、そして子供を導く立場だ。そんな私が神を創造しろと?夢物語にも程があるだろう。私はそんな大層な事は出来ない。かと言って、コユキを絶望の崖に突き落すのも絶対にダメだ。何か正解は無いのだろうか?

 

「先生、何かお困りですか?」

 

ふと、タブレットから声が聞こえた。シッテムの箱のOS、アロナからだ。

 

"あぁ、アロナ。何もないよ、心配しないで。"

 

適当に誤魔化すと、アロナは全てを見透かしたような顏で、私に言ってきた。

 

「あー!また誤魔化しましたね!そういう時の先生って大体大きな問題を抱えてるじゃないですか!ちゃんと話してくださいよ!」

 

流石自称スーパーAI、痛い所を突いてくるな。しかし、このことを話してもいいのだろうか?それに私だってちゃんと理解出来ていないのに、ちゃんと説明出来るのか?そんな事を考えていると、彼女から言葉が発せられる。

 

「私は先生の為のAIなんです!先生が困ったことがあったら私も力になりたいんです、なので話してください!」

 

"...はは、アロナには敵わないね。"

 

正直、一人で悩んだところで何も思い浮かばないだろう。ここは正直に話してしまおうか。

 

"──正直に話すよ、あんまり言語化出来ないかもだけど。"

 

「はい!このスーパーAIのアロナにお任せください!」

 

そのセリフは普段の青封筒の時にも言ってほしいけどね。

 

それから私は、彼との話し合いの内容を出来るだけ事細かにアロナに説明をした。すると、アロナから怒号が飛んできた。

 

「物凄い大事件じゃないですかぁ!!なんで相談してくれなかったんですか!」

 

"返す言葉もございません......。"

 

まだ何も起こってはいないが、大事ではあるのだ。だって、一人の命と...その存在が抹消されようとしているのだから。

 

「ですが、先生が悩むのも分かります...。確かに難しいですね。」

 

それはそうだろう。いくらアロナが賢くても、この詰みの状況をどう覆せるか...その答えを導き出す事は至難の業だろう。そう思っていると、アロナから提案が飛んできた。

 

「...そうですね、では発想を飛躍させてみましょう!」

 

"と言うと?"

 

「コユキさんは現在、エデン条約での騒動で他校との関わりが多いと思います。コユキさんと関わりのある方たちを集めて、海に行ってみてはどうでしょう?」

 

あれから私は海に来ていた。面子は以下の通りだ。

ノア、ナギサ、ミカ、セイア、ミドリ、モモイ、コユキ、私

の8人だ。

 

「せんせー!楽しんでるー?」

 

ふと、後ろから声がかけられた。ミカだ。どうやら、楽しんでもらっているらしい。

 

「にしても先生から海へのお誘いなんて、珍しい事もあるもんだねー☆」

 

それはそうだろう。私は生徒の誘いは受けても、私から誘う事はあまりない。それに理由はしっかりとある。

 

──時は遡り、アロナに相談した日──

 

『コユキさんは現在、エデン条約での騒動で他校との関わりが多いと思います。コユキさんと関わりのある方たちを集めて、海に行ってみてはどうでしょう?』

 

...海?何故?

 

『あ、なんで海なのって思いましたね!理由は単純です、私が海に行きたいからです!最近暑いですからね...。』

 

"あのー、アロナさん?一応コユキの中の彼を取り戻すためなんですよね?"

 

そんな事を質問すると、彼女は勿論と言った表情で答えた。

 

『それはそうですよ!まぁ、私が海に行きたいのも本音ですが...。あ、話が逸れましたね。理由は単純です、エデン条約時のコユキさんを知っている方たちを一時的に身近に置く事で、本来の彼女の人格に刺激を与えるのです!そうすれば、自ずと自分を取り戻せるのではないでしょうか?』

 

──現在──

 

って感じの会話があって、私達は海に来ていた。期間は3日間、その間にコユキを元に戻して見せる。その為には──。

 

"ノア、ナギサ、ミカ、セイア、ちょっといいかな?"

 

4人を少し拠点から離れた海の家に誘い、話を始める。

 

"こんなに楽しい時にごめんね、折り入って皆に協力して欲しい事があるんだ。"

 

私は彼女達に現在のコユキの状況を事細かに説明するのだった。

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