sudoの先に在るもの   作:わるいおとな

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出会いと安心
第一章 1話


私がコユキになってから早三日、先生はまだ来ていない。そして、分かったことが3つある。まず、コユキ自身の神秘、あらゆる暗号やパスワードが感覚的に分かる能力はそのまま受け継がれているという事、身体能力は据え置き、耐久力は分からない(自分で試すのが怖いから)、そしてコユキとしての振る舞いなどが簡単に出来るという事。

 

"コユキとしての記憶はあるけど、コユキが私に代わりを託した意味が分からないんだよなぁ....。"

 

そう、分からないのだ。本編時空でのコユキは「私ではダメでした」なんて言うはずがない。元プレイヤー、そしてコユキ推しの私が保証する。でもそんな考えになるにまで精神が憔悴しきっていたとする。そうなった原因は....

 

"前回の世界線は絶望的な破滅で終わった....のか?"

 

しかもあの言いよう、1度だけじゃなく、何度も経験しているようだった。

 

"そんな世界線で私がどうにか出来るのだろうか....?"

 

そんな事を思う。だってそうだろう、コユキという少女自体は決して弱い人ではない。むしろ強いのだ。そんな少女が追い込まれる程の事件、本当に私にどうにか出来るのだろうか?

 

"それでも....やるしかないか。"

 

そう、やるしかないのだ。好きな少女に、守りたい少女に託されたのだ。ノアやユウカ、ミレニアム、そして、キヴォトスの命運を。ならやるしかない。覚悟を決め、私は立ち上がった。

 

"よし、先ずは情報収集と行こう。反省部屋のパスワードは....よし、これで外に出られるな。"

 

部屋から出た私はまず──

 

「あれ?コユキちゃん?」

 

"ゲッ!!"

 

しまった、見つかってしまった!どうしてこのタイミングで....!

 

「また部屋から脱走しちゃったんですね」ニコニコ

 

"ノ、ノア先...輩....?"

 

まずい、怖すぎる。これはコユキが怖がるわけだ。こんなのよく耐えれたな、コユキ。尊敬するよ。

 

「直ぐにでも部屋に戻るなら見逃してあげますが....?」

 

まだ間に合うと言うようにノアは言う。しかし、私にもやる事がある。ここで部屋に戻るわけにはいかないのだ。そうと決まれば....

 

"さようなら!!!ノア先輩!!"

 

そう言い残して私は全力ダッシュでノアとは反対方向に逃げだしたのだった。

 

「コユキちゃん....何か変ですね?」

 

私はそう感じていた。というか、違う点があったのだ。私は一度見たものを忘れる事はない。人の感情や仕草すらも。そんな私が感じた違和感、それはコユキちゃんが何かに焦っているような、大きな使命感に駆られているような。そんな感情、仕草があったのだ。

 

「一体どうしたのでしょうか?」

 

私はコユキちゃんを深くは追わず、見逃してあげる事にしたのだった。それにあの顔は、悪だくみをする顏ではなかった。むしろどこか、大人びても見えた。そんな感想を胸にしまいながら、私はセミナーへの帰路をたどるのだった。

 

"ふぅ...ふぅ...キヴォトス人ではあるけど、全力ダッシュってキツイなぁ...."

 

そんな事を一人ロッカールームの扉の前にへたり込みながら零した私は一度息を整えるために深呼吸をした。

 

"とりあえず捲けたかな?"

 

(さて、これからどうしようか?まさかこのタイミングでノアに出くわすとは思わなかったな。これで反省部屋から脱走したのがセミナーに伝わったら....一気にハチの巣にされてまた戻されるだけだからな。何とかしてこの建物から逃げないと。でもどうやって建物から出る?建物から出れた後どこに行く?いっその事逃げながらセミナーに潜伏するか?確かに足は速い、出来なくもないかもしれないがいずれは捕まるだろう。捕まったら本末転倒だ。でも....やるしかない!)

 

そう私は覚悟を決め、部屋から出た。しかし、誰も追ってきていなかったのだ。人の気配すらもない。思えばそうだ、もし脱走したらサイレンが鳴るはず、それなのに一向に鳴らないのは何故なのか?それは....

 

"ノアが...見逃してくれた?"

 

そう思い出口の方へ向かおうとした矢先、突然後ろから声が聞こえてきた。

 

"君が...コユキ?"

 

私はこの声を知らない、そう知らないのだ。でも分かる。きっとこの人は....先生だ。正直一番会いたくなかった。私は黒崎コユキであって黒崎コユキではない、偽物なのだ。そんな私を先生に、プレイヤーに見せたくはなかった。でも出会ってしまった。

 

"あなたは...先生?何故ここに?"

 

何故?今日ミレニアムに来る予定だったのか?だとしてもなぜここに?確かゲーム開発部の部室に気絶して運び込まれたところからミレニアムの章はスタートするはずなのに...?

 

"ははは....ノアにコユキの様子を見てきてくれって頼まれてさ。行くところがあったんだけど、その前に様子だけ見ようかなって思ってね。"

 

そうか、道理で追いかけてこないと思った。先生を呼んでいたのか。

 

"にはは...先生は私をどうするおつもりで?"

 

そう警戒しながら私が問いかけると、先生はなんてことないと言った表情でこう答えた。

 

"特に何もしないよ?多分コユキにはやるべき事、やらないといけない事があるんだよね。"

 

"!!"

 

この人はすごい。会ったばかりの私を見てどうしてそこまで分かってしまうのか。それが先生足る、大人足る所以なのか、私にはわからない。でも、だとしたら何故...?

 

"でしたら何故私に声を?"

 

"いや、伝えたい事があってね。"

 

そう先生は言う。とても優しい声色で。

 

"伝えたい事?"

 

そう私は返す。殆ど解いた警戒をまた上げて。

 

"セミナーへ行くなら今から1~2時間後が一番手薄になるからね。それだけ伝えに来たよ。"

 

"へ?"と私が返すと先生は"それじゃ"と言い、手を振って建物から出て行った。

 

"本当に先生は何が見えているのかわからないな...あれが──この世界の大人....なのか?"

 

そんなことを思いながらあと1時間ほど、どう時間を潰そうか悩みながら出口へと向かうのだった。

 

私は見た、黒崎コユキを。そして、ノアから言われた事を思い出す。

 

「コユキちゃん、何か大きな事をしようとしているみたいです。先生、見てあげてくれませんか?」

 

生徒からそんな事を頼まれたら、断るわけにはいかないのだ。コユキも私の生徒なのだから。しかし、少し違和感があった。それはコユキが私と同じ"大人"に見えたからだ。一体なぜ?そんな違和感を持ちながら、ゲーム開発部の部室へ向かう途中、上から何か硬い物が落ちてくるのだった。

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