sudoの先に在るもの   作:わるいおとな

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第一章 2話

ある程度時間を潰せた私は現在、セミナーの建物の裏口にいた。追われる身なのに正面から堂々と入るわけにもいかないので、裏口の人のいない場所から入ることにした。

 

"ロックは電子ロックなのか、杜撰だな。"

 

そうだ。コユキの神秘の前では電子ロックなど無に等しい。恰好の餌食だ。

そんなこんなで無事、セミナーの建物に侵入出来た私は書庫に向かうことにした。先生の言った通り、警備は手薄になっていた。多少怪しくはあるが、助かったのは事実である。ここは素直に感謝しておこう。

監視カメラや書庫の位置は、コユキの記憶から知っているから思いのほか早く辿り着けた。しかし、この書物の量から私の欲しい情報をどう見つけるか....そう悩んでいると、ふと気になる書物が目についた。

 

"これは....パラレルワールドの研究?"

 

ふと目に付いた書物は、パラレルワールドを研究した際の実験結果だった。書物を開け、最初の1文に書かれていた内容は、簡単にそして私の「やるべき事」を否定するように書かれていた。

 

『基本的に決められた未来は、変えられない。』

 

そう書かれていた。私はそれを見た瞬間、大きく絶望した。それはそうだろう、恐らく破滅的なバットエンドで迎えるこの世界を、未来を『変えられない』と言われてしまったのだから。しかし、その中にも少しの希望があった。そう『基本的に』なのだ。つまり、基本に従わなければ未来は変えられる。そう思った矢先、もう一つ大事な事が書かれていた。

 

『余りにも基本から逸脱してしまうと、その世界は崩壊してしまう。』

 

そう書かれていた。つまり、私がこのブルーアーカイブのストーリーの展開から逸脱して、無茶苦茶な行動をし続けるとこの世界は文字通り崩壊してしまう。それは最も危惧すべきことだ。だとしたら何が出来る?私がコユキを辞め、本編とは全く違う行動をしてしまったら世界が崩壊してしまう。かと言ってコユキの行動に縛られているとこの世界は何れ来る破滅的な何かによって滅ぼされるだろう。それは私も、コユキ自身も望まぬ事だ。

 

"これじゃあどうすれば良いんだよ...!"

 

この詰みの状態で私はどうすれば良いのだ。何も思いつかない。あの先生のような大人ならば何か打開策を練られたかもしれない。しかし私の実年齢は大人ではあるが、精神年齢は大人ではない。あの先生のような大人にはなれない。いつまでも子供のような、大人になった自覚がないのだ。そんな私にどうしろと言うのか。そんな絶望を胸に、私は一度反省部屋に帰ることにしたのだった。

 

反省部屋へ帰路を辿っている途中、ゲーム開発部一味と先生の姿が見えた。

 

"そうか、今から廃墟に行くのか。"

 

つまり、アリスと出会うという事。....これはチャンスなのでは?おそらくあの大人、先生はこの世界の常識に囚われない者。つまり、彼ならばこの現状を打破できるかもしれない。しかし、私が何か大きな事をしでかすと世界が崩壊してしまうかもしれない。だから、あくまでストーリーの進行を妨げないように....。

 

"にはは!先生!何処かに行くのですか?"

 

"ん?コユキじゃないか。私たちは今から廃墟に行こうと思ってね。"

 

やっぱり、そうだろうなと思った。そこにいるのはモモイとミドリか。ユズはお留守番と...

 

「ミドリ、この人ってだれ?」

 

相変わらず失礼だな、モモイ。そういう所だぞ。

 

「お姉ちゃん、失礼だよ!この人はセミナーのコユキさんだよ。確かセミナーの経費を横領して反省部屋にい...た....はず...?」

 

"にはは!初めましてですっけ?私は黒崎コユキです!よろしくお願いします!"

 

「先生、この人外に出てていいんですか!?」

 

あ、バレた。マズイ。

 

"んー....まぁ、いいんじゃないかな?"

 

流石先生、頼りになる。そんな事を思い、感謝しながら私はなんとか姉妹を説得し先生達と共に廃墟に向かう事にするのだった。

 

廃墟に着いた私達はロボットに見つからないように静かに移動していた。

 

「......。」

 

「......ねえ、お姉ちゃん。」

 

「一体いつまでこうしてればいいの?」

 

「静かに。あっ先生、コユキちゃん、もうちょっと頭下げて......!」

 

そんな何時ぞやで聞いたことのある会話を聞きながら、私達は着実と廃墟の奥に進んでいた。

そしてあの本にも書いていたように、当時ゲーム内で見た内容と全く同じ道を辿っていた。どうやら本当に未来は変えられないらしい。そんな事を考えていると、モモイが安心したように身を乗り出して周りを見た。

 

「......ひゅー、もう行ったかな?よし、じゃあ行こう。」

 

「よし、じゃない!いったいここは何!?あんな謎のロボットが、数え切れないぐらい動き回ってるし!」

 

「何って......もう何回も言ってるじゃん。『廃墟』だよ。」

 

"これも聞いたことあるな...。"

 

小声でそう呟いていると、どうやらモモイがロボットに見つかってしまったようだった。

当たり前だが私には戦闘経験が全くと言っていいほどない。ここで正面から戦ってもかえって戦犯になるだけ...でも戦わなければみんなに怪しまれるだけ......どうしようか、そう悩んでいると先生からの指示が来た。

 

"あっち!工場みたいなのが見える!"

 

「え?こ、工場!?」

 

「お、先生ナイス!急いで!ロボットたちを突破して、あの工場に逃げ込もう!」

 

どうやら工場に避難する事にしたらしい。ならば、私も状況を見ながら皆の支援をしよう。そう考え、私は一度物陰に隠れて銃のチャンバーを少し引いた。しっかり弾は装填されているようで、弾丸が確りと見えた。

そうして私は、モモイとミドリの進行方向とはあえて逆側に行った。理由は二つ、一つは私が正面から戦いたくない。もう一つはおそらくあのロボットたちはモモイ達を追って行くだろうと思ったのだ。

先回りをして挟み撃ちをする為に少し大回りに動いた。どうやら、予想通りヘイトはモモイ達に向かっていて、私が裏に回っているのは気づいていないようだった。ならば──

 

"後は簡単なお仕事だよね。"

 

そう一言零し、凡そ30体は居るであろうロボット達の後ろ、廃墟の柱の近くに静かに立ち、先ずは普通のサイズのロボットの頭を正確に狙い撃っていく。1体...2体と倒していくとどうやら相手は裏を取られている事に気づいたようで、私の方へ向かってきた。これも粗方予想通りではあったので、柱の裏に隠れとある爆弾を手にする。

初めて使うが、コユキの記憶が使い方を教えてくれるから使い方はあまり困らなかった。そして、敵がある程度集まってきたタイミングでその"トリッキーな変数"を敵に向けて投げた。どうやら今回は電界だったらしい。相手のロボットはその電気にやられて身動きが取れていない状態だったので、冷静に一体づつ正確に狙い撃っていく。粗方片付いた後、モモイ達も追いついてきたようだ。

 

「コユキさん、戦闘中見えないなと思ったら先回りしていたんですね」

 

"私あまり戦闘は得意ではないし、正面から突破するのは少し痛そうだったので!"

 

いくらキヴォトス人の体だからと言って、この体に弾丸を受けるのは少々抵抗がある。それに痛いのは嫌だから正面からは出来るだけ行きたくはなかったのだ。

 

「...?まあ、ありがとうございます。コユキさん」

 

無事工場まで辿り着いた私ことミドリは安堵と少しの違和感があった。その違和感とは、コユキさんの動き方だ。あれはまるで...

 

「先生が指揮しているみたい。」

 

そう、先生が指揮しているような動き方だったのだ。私はあまり先生の指揮を見たことはないけど、噂や鎮圧した事件での先生の功績を見てはいるから気づけた。お姉ちゃんはそういうのはあまり見ないから気づけていないみたいだけど。

そんな話はよくって、どうしてあんな動き方が出来たのかな?コユキさんって一体何者なんだろう?そんな事を思いながら私達は休んでいると突然声が聞こえてきたのだった。

 

「接近を確認。」

 

工場の中に入って少し息を整えていると、そんな声が辺りに響き渡る。そうか、ここはその場所だったか。このゲーム開発部のターニングポイント、あの少女が...アリスが眠っている場所。

 

「対象の身元を確認します。才羽モモイ、資格がありません。」

 

その無感情な声はそう言う。

 

「対象の身元を確認します。才羽ミドリ、資格がありません。」

 

再び声が響き渡る。私は急に不安に駆られていた。そう、私は黒崎コユキではあるが、中身は違うのだ。ならばこの身元確認はどうなるのか?そんな不安で頭がいっぱいになっていると、私の手番が回ってきた。

 

「対象の身元を確認します。黒崎コユキ、資格がありません。」

 

"!!"

 

どうやら取り越し苦労だったらしい。そうか、体自体は黒崎コユキだから心配はないのか。そんな安堵を浮かべていると、先生に入室権限が付与された。

 

「えぇっ!?」

 

「え、どういうこと!?先生はいつこの建物と仲良しになったの!?」

 

そんな声が聞こえてきた。まぁそうだろう、私でも分からないのだから。そして──

 

「才羽モモイ、才羽ミドリ、黒崎コユキの3名を、先生の『生徒』として認証、同行者である『生徒』にも資格を与えます。承認しました。下部の扉を開放します。」

 

そんな声が聞こえてきた。これは......未来が見えるな...確か床が──

 

そんな事を考えていると床が無くなり、私の体は自由落下の法則に従わされてこの世の者とは思えない叫びをあげながら落ちていくのだった。

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