sudoの先に在るもの   作:わるいおとな

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第一章 3話

あれからゲーム内本編と同じルートを辿った私達は無事アリスを回収し、ミレニアムまで戻ってこれていた。戻っている最中はびっくりするほど何もなく、本当にさっきまで戦闘していたのか不思議に思うほどだった。斯くして、私は先生達とは別れ反省部屋に戻ってきていた。

 

"ふう...帰ってこれた......流石に疲れたな。"

 

でも安心は出来なかった。ずっと『未来は変えられない』そんな言葉が私の髪を引っ張るようにくっついて離れないのだ。何れ破滅的な何かに滅ぼされる運命であろうこの世界から、皆を守れない。

 

"一体どうすればいいんだ..."

 

そんな独り言を零していると、いつの間にか辺りは暗くなっていた。そうか、もうそんなに時間が経っていたのかと私は思う。

 

"今日は色々あったな。疲れたし寝るか...。"

 

"そうだ、こういう時こそ寝て整理させるのが大事なのだ。"そんな事を誰もいない空間に吐露しながら、私はこれからの不安を抱えて眠りについたのだった。

 

それから2日後、先生達はエンジニア部の所へ行っている頃だろうか?そんな事を考えていると何故かノアが私の部屋に来ていた。

 

"えっと...ノア先輩?何故ここにいるんですか?"

 

何故なのか、私にはわからなかった。それに対してノアは何でもないかのように答える。

 

「あら?私はここにいては行けませんか?」

 

"ひぇ...いえ、そう言う訳では..."

 

やっぱり怖いなこの人。そんな事を頭の中で思いながら私はそこら辺に放ってあったクッションの上に座り込むのだった。

そんな私の目の前に座り込んだノアは急にとても真面目な表情で私に問いかけてきた。

 

「貴方は本当にコユキちゃんですか?」

 

その質問は深く私の胸を突き刺した。バレてしまった、絶対バレちゃいけないのに、どうしよう、どうやって誤魔化す、何故気づけた、いや気づけて当たり前か。そんな思考を巡らせながらありきたりな返答で私は返す。

 

"にはは?ど、どうしてそう思ったんですか...?"

 

そんな私を見てノアは確信したように切り出す。

 

「これは私が単独でしたことですが昨日、先生達と共に行動していたようだったので、少し調べさせていただきました。廃墟に行ったそうですね。どうやらひと悶着あったようでしたが。でもコユキちゃんは一人でに脱走して他の人と行動を共にするという事はしないのです。」

 

鋭い推察が私を襲う。

 

「その前に反省部屋の前で出会った時に私は初めて違和感を感じました。私の知るコユキちゃんは、反省部屋から脱走すると大抵良からぬ事をしでかす子なのです。でもあなたはそうしなかった。私にはまるで大きな使命があるように感じたんです。」

 

流石完全記憶能力者、どうやら隠し通すのは不可能のようだった。マズイ、これでは本編から逸脱してしまう、世界が崩壊してしまう、でも誤魔化すのは無理だ。そんな思考を巡らせているとノアは少しの笑みを浮かべて言った。

 

「でもあなたは悪い人ではない。」

 

"え?"

 

私は困惑した。どうやら顔にも出ていたらしく、ノアはこう続けた。

 

「きっとあなたはコユキちゃんの為、引いてはミレニアムの皆の為に行動しているんですよね。話せない内容なのかもしれないのは分かっています、でも協力は出来ます。なので是非私にも頼ってください。」

 

あぁ、なんて優しいのだろう。そんな事を思っていると目から雫が垂れてきた。ノア、君は私が「黒崎コユキ」ではなく、別人であるのにもかかわらず手を差し伸べてくれるのか。そんな彼女を見て私はこのキヴォトスでコユキになってから初めて......心底安心した。そして押し寄せる感情の激流に私はもう逆らえなかった。

 

"...全部...分かってたんですね。"

 

涙を流しながら言う。

 

"みんな私を「黒崎コユキ」として見ていてもあなたは...ちゃんと"私"を見ていてくれたのですね。"

 

やがてその涙は大粒となり、いつの間にかノアに抱き着いていた。

 

"すっごく怖かったんです。もう何も変えられそうにないって思って、どうすればいいのかわからなくて、頼れる人もいないのに。"

 

そんな私をノアは優しく包み込んで、すべて受け止めてくれた。あぁ、久しぶりだなこの感覚。

 

これが「安心」か。

 

ひとしきり泣いたあと、私は今話せる内容だけをノアに打ち明けた。

まず、私は黒崎コユキではないという事、この体自体は黒崎コユキであるという事、乗っ取った形ではあるが、私の意志では決してないという事、これから未来で起こるかもしれない事、そして、これからキヴォトスには破滅的な何かが訪れるかもしれないという事。あえて、アリスの事は話さなかった。ここで暴露してはストーリーに支障が出ると思ったからだ。

 

ある程度語り終わった後、ノアは信じられないと言ったような顏で話を聞いていた事が分かった。しかし、それはすぐに心配の表情に変わった。

 

「そんな大きな事を抱えて...なるほど、通りで......。」

 

"これは大きな事だけど、コユキに託された以上、やらない訳にはいかないんだ。だからやる。その結果、私がどうなろうとも...ね。"

 

「それはダメです。」

 

ノアははっきりと、強く言った。

 

「この世界を救うために自分を犠牲にするだなんて言わないでください。私は一人を犠牲にして皆を救うよりも、誰一人犠牲にせずハッピーエンドを迎える事の方が大事だと思います。コユキちゃんも、もちろんあなたも救えるように。」

 

そう言ったノアは笑みを浮かべて、ハッキリとした物言いでこう告げた。

 

「私も協力します。出来る限りの事はやらせてください。それに、一度やってみたかったのです、裏で暗躍をするの♪」

 

そう言われた私はまた涙が零れそうな目を手で隠して"ありがとう"と言う事しかできなかった。そんな私をもう一度ノアは、その胸で優しく包み込んでくれたのだった。

 

ある程度私も落ち着いた事で、次に2人だけの作戦会議をする事にした。内容は──

 

"いづれ来る破滅をどう回避するか"

 

これに尽きる。だってそうだろう、今一番の問題点の解決策を見つけない限りはどうしようも出来ないのだ。しかし、その"いづれ来る破滅"がどういう物なのか、私にも分からないのだ。コユキの記憶はあるが、それはこれまで育ってきたかれこれ15年間の記憶のみ。前の世界線の記憶など欠片もないのだ。そんな困った表情を浮かべる私を見て、ノアはこう切り出した。

 

「でしたら、先ずはその"いづれ来る破滅"の予兆を調査するのはどうでしょうか?」

 

"...確かに、けどどうやって調べる?"

 

確かにそうだ、何もせずにその"いづれ来る破滅"を待っているだけじゃ後手に回るだけ。予兆を調査し、特定出来たのならば後は対策をすれば何ら問題はないのだろう。だが、どういう物で、何処から来るのかが全く分からない状態では、調査のしようもないだろう。そんな思考を巡らせていると、ノアは当てがあると言うように人差し指を縦て提案した。

 

「ヒマリさんに頼るのはどうでしょうか?」

 

確かに全恥、間違えた。全知の二つ名を持つ彼女ならば何か当てがあるかもしれない。だが、そう簡単に会えるのか?そんな事を聞こうとした私を見たノアに先手を打たれた。

 

「確かにヒマリさんに会いづらいのは分かります。ですが、当てはあります。」

 

"その当てとは?"

 

「一先ず2ヵ月待ってください。」

 

"分かった、2ヵ月か....2ヵ月!?"

 

そんなの待てるはずがない!そんな事をしている間に...

 

「大丈夫です。少なくとも今はあなたの知っている未来と同じシナリオを辿っているのですよね?ならば、かのエデン条約が終わるまではこの世界は安全なはずです。」

 

"!!"

 

そうだった。あくまでこの世界は私の知っているシナリオ通りに進んでいる。ならば向日2ヵ月は一先ず心配しないで良いことになる。だが、もしその間で"いづれ来る破滅"が来たら...?

 

いや、これは賭けだ、やるしかない。そうと決まれば後は私達がどう動くかだな。

 

"分かった、一先ずこの2ヵ月の間にノアはヒマリとコンタクトを取ってもらって、"いづれ来る破滅"の予兆を調査してもらう。私も単独で動きながら調査してみるよ。"

 

「...!はい、お願いしますね♪」

 

そう言ってノアは帰っていった。バレてはしまったが、一人、強力な助っ人が出来た。これで少しは動きやすくなる...はずだ。そんな淡い期待を胸に窓を眺めていると、とある建物から光のレーザーが放たれたのだった。

 

"これもシナリオ通り...か。"

 

私はそんな独り言を零しながら一先ずこの「パヴァーヌ編」は情報収集に徹する事にしたのだった。

 

第一章 完

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