sudoの先に在るもの   作:わるいおとな

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ノアと作戦会議をしてから2週間、あれから色々な書類を見て回ったが、これといった情報は何一つ手に入れられなかった。それもそうだろう、元々の情報が何もないのだから。


約束と絆
第二章 1話


"どうしようか..."

 

そう言えば、コユキになってからいたずらというものをやっていないな。そろそろやるべきなのでは無いだろうか?確かコユキが良くやっているいたずらは...

 

"セミナーの資金の横領...か。いや、規模デカ過ぎないか?"

 

どうしよう、流石に良心が痛むな。かと言って、何もしていないとユウカに怪しまれるかもしれないし...

 

"やるしかないか。"

 

腹をくくろう、これはコユキとして怪しまれないように立ち回るための犠牲だ、しょうがないのだ。だが大丈夫、裏で同時にやっていた事業である程度は稼げているから、横領した分をそこから返せばいいだろう。

そんな事を思いながら、私は反省部屋から抜け出してセミナーの資金を横領し、わざと問題を起こすのだった。

 

ノアと作戦会議をしてから大体1ヵ月と3週間が経った頃、エデン条約が目の前まで迫ってきたタイミングで私は"夢"を見た。その夢で私は「彼女」に出会った。普通なら出会うはずも、接点すら生まれないはずの彼女と出会ったのだった。

 

「やあ、初めましてだね。」

 

"あなたは百合園...セイア!?"

 

そう、私は彼女の夢に招かれてしまったのだ。「百合園セイア」、トリニティのティーパーティーでホストをしているサンクテゥス派の一人、彼女が私に夢でコンタクトを取ってきたのだ。だが何故私に会いに来たのか?それが不思議でならなかった。確か彼女は未来予知が出来るはず、つまりこれから起きる事に私が必要という事か?

それはこれからエデン条約で起きるであろう災難の為の戦いか...それとも...。そんな事を考えて警戒していると、彼女は言葉を発した。

 

「そう警戒しないでくれ。私は君を戦いに出そうとしている訳ではないさ。」

 

「ただね」と加えて彼女は言葉を続けた。

 

「君にはこれからティーパーティーに潜入してもらおうかと思ってね。」

 

"...え!?"

 

困惑するのは当然だろう。だって、エデン条約と無関係の私がトリニティのティーパーティーに潜伏するなど、もしバレたらその時点で終了だ。しかも本編のストーリーと酷く乖離する。そんな事出来るわけがない。

 

「何、簡単なことさ。私が目覚めるまでの間、私の代わりとしてティーパーティーのトップに君臨していただきたい。」

 

"そ...そんな事私に出来るわけないじゃないですか!"

 

それはそうだろう出来るわけがない。今はコユキを演じながら、情報収集をするので精一杯なのに、そんな大役を私がやれるわけがない。どうやったってストーリーから逸脱して破綻してしまうだろう。そんな事したくない。それにエデン条約は大丈夫だ、先生がいる限りは私がいなくても問題はないはずだ。あくまでコユキの「フリ」をしながら私は彼女の条件を否定しようとした矢先、彼女から言葉が発せられる。

 

「おっと、そういえば言い忘れていたね。彼女...黒崎コユキの『真似』はしなくても大丈夫だよ。私は君を"認識"しているからね。」

 

"!!"

 

まさか...こんなに早く私の正体に気づく人がまた現れるとは予想外だな....。

 

「それに君にとっても良い条件がある。」

 

セイアは続けてこういった。

 

「トリニティの大図書館、あそこにはミレニアムにはない本がごまんとある。その中には君の求めている本があるかもしれないね。」

 

"...!!"

 

確かにそうだ。ミレニアムの書物だけを漁っていても埒が明かない、いくらミレニアムといえど、情報源が狭すぎるのだ。盲点だった。だがその為にティーパーティーに潜伏するのか?いくら何でも見返りが少なすぎるような気がするんだが...?

そう思考を巡らせていると、彼女はまた言葉を発した。

 

「それに今後、君にとって利になるような事も起きるだろう。やっておくほうが得策だろうと思うのだがね。」

 

なるほど、そう来たか。確かに彼女の「未来予知」は的確だ、それに外れない。いづれなくなるであろうその「未来予知」を使って私に接触した...という事は彼女は今もトリニティの為に動いているのだろう。

 

...おかしいぞ?彼女は確か絶望的な未来を見て諦めていたはずでは?では何故今になって、トリニティの為に孤軍奮闘しているのだろうか?

 

"おかしい...。"

 

「おや、どうしたんだい?」

 

"いや、おかしいんだよ。確か君はもう未来は変えられないと諦めていたはずだ。なのにどうして今、私に接触してトリニティの為に戦っているのか分からないんだ。"

 

「──!そうだね、確かに私は諦めていた。だが、『変数』が現れたのだよ。昨日まではなかったはずのそこに、突如出現したかのように小さな希望が湧いて出てきた。ただ、その希望は私が賭けるに十分と判断した。それだけさ。」

 

彼女の言う「変数」とは、恐らく私の事だろう。だってそうだ、私はこの世界に普通は存在しない物、文字通り「変数」なのだ。彼女はそんな「変数」に賭けたいと言った。だが私は先生を、トリニティの皆を信じている。だから...

 

"その頼みは受けられない。"

 

私がそう答えると、彼女は淡々とした声で言った。

 

「それはどうして?」

 

"私はあくまでミレニアムの為に動いている。そこに他の学校も視野に入れると潰れちゃうからね。"

 

私は"でも"と付け足し、言葉にする。

 

"ティーパーティーの代理を務めるのは出来ないけど、出来るだけその見た未来が変えられるように努力はするよ。"

 

そう答えて、彼女の顏を見ると何故か笑みを浮かべていた。その顔は、心底安堵したように見えた。

 

「いや、安心したよ。その答えを待っていた。君もあの大人と同じような事を言うのだね。そうだね、じゃあこれから言う事は独り言だが、3日後にアリウス自治区の地下街道に行ったらいいことが起きるかもしれないね。」

 

そう言い残して彼女は目をつむった。そして、その"夢"の世界は段々と歪んで、光に包まれていった。

私は目を覚ました。だが、夢の内容はハッキリと覚えていた。やる事は決まった。私は決意を固め、ノアに4日間トリニティに行ってくると連絡をして、トリニティに向かうのだった。

 

あれから私はエデン条約の観覧という形でトリニティに来ていた。ミレニアムだとバレたら元も子もないので、私は私服で古聖堂から離れたカフェでゆっくりティータイムをしていた。もし、本編と同じならば、この後弾道ミサイルが旧聖堂に飛んで行くはずだ。そんなところに私は行きたくないので、遠くに待機する事にした。そして、混乱に乗じて私はトリニティに潜伏するつもりだ。

 

やはり、本編と同じように弾道ミサイルが飛んできたらしい。

 

"さて、行くか。"

 

独り言を小さく零した私は、トリニティの本校へと向かうのだった。理由は二つ、一つ目は何処かに置いてあるであろう、トリニティの制服に着替えてこのトリニティ内に潜伏する事。二つ目はセイアに言われた時間まであと2日の間、トリニティの大図書館でひたすらに情報収集を行う事。結果的に潜入という形にはなっているが、今はエデン条約の方でドンパチしているはずだから、こっちの警備は手薄になっているはずだ。そんな事を考えながら、順調にトリニティの校舎内に侵入出来た私は、更衣室を探すことにしたのだった。

 

「そこの人、止まってください。」

 

一人、校舎内を回っていると突然後ろから声をかけられた。この声は聞いた事がある。確か、救護騎士団の団長...蒼森ミネだったはず。マズイ、この人はトリニティの中でも上位に食い込むほどの戦闘狂、戦って勝てる相手ではない!

 

そう思い、私は逃げようと足に力を溜めた瞬間、「救護!」という声と共に意識が途切れたのだった。

 

目を覚ますと私は知らない教室にいた。辺りを見回しても、誰もいない。しかし、机の上に今日私が着て来ていた服装が綺麗に畳まれて置かれてあった。そう今日来ていた服が置いてあったのだ。だとしたら、私は今何を着ている...?

 

私は辺りを見回して、教室の端にあった全身鏡を覗くと、そこにはトリニティの制服を着ている私がいた。意外と似合ってるな、これ。でも何故?そんな事を考えていると、後ろから声が聞こえた。

 

「目が覚めましたか。どうですか?トリニティの制服は。」

 

唐突に後ろから声を掛けられ、びっくりした私は"ひゃあ!"と情けない声を上げて、振り向いた。そこには蒼森ミネ、本人が立っていた。

 

"な...なぜこんな格好に?"

 

素朴な疑問を投げかけると、ミネは少しため息を吐きながらその言葉を口にした。

 

「とある方に"夢"であなたの潜伏の手伝いを頼まれまして。ですが、私を見た瞬間に逃げようとしたので、申し訳ないですが気絶させてこの教室に運ばせていただきました。」

 

えぇ...そんな力業あるかよ...。そんな事を考えていると、突然ミネの携帯から着信が入った。これはおそらく...。

 

「先生が重症!?直ぐ向かいます!」

 

やはりそうだろう。おそらく向こうの戦闘もひと段落した...と言っていいのか?まぁどうでもいい、取り合えず今は大図書館へ向かうのが先だ。そう思考を巡らせていると、ミネから一言飛んできた。

 

「トリニティ校舎内は自由に動いてもらって構いません。一先ず、私は先生を救護しに行ってまいりますので、それでは!!」

 

そう言ったミネは余りにも早いスピードで教室から出て、廊下を駆けていったのだった。

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