これは、ずっとずっと昔の思い出。
ずっと、みんなには見えない誰かと過ごしていたのを覚えている。
白い髪の少女と、幼いころの私。
少女は、いつも私に同じような話をして見せていた。
それはどれも、夢にあふれた楽しい話ばかり。
幼い私はどこまでも無垢で、純粋で、世界を疑うことを知らなくて。
ただ、その少女と過ごす二人だけの秘密の時間が大好きだった。
つらい日々を思い出すことなく、楽しい楽しい時間だけが過ぎていく。
それがどんな結末を連れてくるかも知らずに、ね。
+++
「
ある昼休憩のこと。チャイムが鳴るや否や、私は早々にクラスメイトにして親友の、
見た目はおとなしそうな清楚系(?)女子なのに意外とアクティブで元気あふれるタイプ。家でゴロゴロしがちな私をしょっちゅう外に引っ張り出してくれる。
さっき授業が終わったばかりだというのに、さっそく遊びのお誘いのよう。
まぁ、それが結花夏らしいといえばそうなんだけれどね。
「今日?部活も補講もないから空いてるけど…またどっか行く?」
「よかった!そうそう!ほらこれ、買いに行こー!」
にひひ、と笑いながら差し出された携帯の画面に映し出されているのは新刊発売のお知らせ。
表紙を見る限り、彼女が第一巻から毎月追っている漫画のようだった。
「新刊?あ、
「そーそー!…いっやー、ほんとに。一か月待ち続けてきたあの新刊が遂に発売なのさ!」
「いいねぇ、でも私は立ち読みでいいかなぁ。最近お金ないし」
「そか、よーし、じゃあ放課後、決まりね!」
「あはは、はいはい。」
そうして予冷が鳴り響き、結花夏はいつも以上に楽しそうな様子で席に戻って行った。
+++
そうして迎えた放課後。
結花夏との約束通り、家に帰ることなく早々に商店街の本屋へと向かった。
本屋について早々に新刊コーナーへと向かった結花夏は、お目当ての新刊を手に取り、独り言をつぶやきながらさっそく立ち読みを開始していた。
「うへへ…わはっ、書籍特典ついてるじゃん!ラッキー☆」
とか、ね。ふふっ。
授業中はあんなにぽけーっとしている結花夏だが、この時ばかりは満面の笑み。それも当然。日々を娯楽に費やして、そして楽しい日々を送っている彼女なら、本屋など幸せの宝箱。
そんな彼女と毎日を一緒に過ごしていると、こっちまで元気になってくる。それが私、二楷堂瀬那の一番の親友、菊里結花夏なのである。
こんな日々がいつまでも続けばいいのに、と日々思ってしまうくらいに、私の日常は充実していた。
邪魔するのも悪そうなので、私は適当に文庫コーナーへと向かった。
なんだかんだで数十分が経過。
漫画コーナーで立ち読みしていた結花夏が戻り、ささっとレジで会計を済ませる。
外に出てみれば、あっという間に夕空が広がっていた。
「お目当ての品は見つかった?」
「当然。しかもこれ見てよ!初回限定版~!書下ろし小説封入!マジ神!最高!」
余韻が抜けず、スキップする勢いで楽しそうな結花夏。ほんの入った紙袋を振り回していた。
「…なんか前のほう騒がしくない?」
楽しそうな結花夏の手前、前のほうからちょっとした騒音が聞こえた気がした。
はじめは雑音だと思っていたが、だんだんと前のほうから大きな音が響いているのを感じる。
「そう?いつも通りな気がするけど…。あらかたイケメンでも現れたんじゃない?あははっ」
「それならいいけど…」
「それよりさ、今からどこ行く?どこでも行けちゃうけど」
「今から!?場所にもよるけど…もう夕方だよ?」
「そうだなぁ…うーん」
「カラオケとか行くならまたあ…」
またあした。そこまで言おうとした瞬間だった。
世界にひびが走った。
自分を除くすべてが。
どこまでもどこまでも。
急な頭痛に襲われ、目を閉じた。
再び目を開けると、
真紅に染まっていた。
「した…。」
前にいた大勢の通行人もいない。
隣にいたはずの結花夏もいない。
残されたのは、自分一人。
ふと、隣を見てみた。
そこにあったのは、紙袋。
水色の表紙は、すべて真っ赤に。
「ひっ…」
こんなの認めない。
嘘だ。悪夢だ。こんなのは虚空だ。
そう思いたいのに、脳は理解を拒んだりしない。
わかりたくもない現実から、目をそらすことはできなかった。
それに追い打ちをかけるように、頭がさらに痛んだ。
「うっ…」
その頭痛に耐えられず、思わず地面に膝をついた。
なにか、開けてはいけない箱を開いてしまったような。
私はいつの間にか、禁忌に触れてしまったのだろうか。
そのせいで、呪いでも降りかかってしまったのか?
薄れゆく視界と混濁していく意識の中、目の前に何かが映った気がした。
白く長い、美しい髪。
どこか見覚えのある、紺色のワンピース。
真紅に染まった世界の中、暗闇の中の白い光の如く、それだけがやけに輝いて見えた。
ほとんどぼやけた視界。それでも白い光にすがろうと、必死に手を伸ばそうとした。
手を伸ばしてみても届くわけがないのに。
「は、…」
なすすべなく、そのまま私は意識を失った。
はじめましての方、そうでない方も、第一話の読了、ありがとうございました。
著者、桐花優羽ことペンネーム雪華恋です。
本当は一つの短編として終わらせるつもりでしたが、
いろいろあり複数話にわける形でお送りすることとなりました。
もとは簡単なSS形式で考えていた暇つぶし程度の当作品、「Dreamer.~white light~」ですが、これまで触れてきた様々な作品に感銘を受け、似通った部分が多くありつつも趣味程度に執筆を続けています。それ故に急展開や粗雑な部分も多くみられたと思います。
余談ですが、今回の第一話の執筆にかけた時間は編集添削等諸々合わせておよそ二週間。
自由時間の合間にと続けていくつもりですが、自身の都合上うまくはいきません。
各話1000字程度にまとめつつの連載形式で今後も執筆していきますので、気に入ってくださった神のような方は非常に申し訳ないですが、お待ちいただければ光栄です。
あとがきまで読んでくださり、うれしい限りです。
ここまで有難うございました。