近いうちに番外編としてカナリィとかやりたいなーと思ってます。
…………どうして、こうなった?
増え続けるワイルドゾーン、凶暴性を増してゆくポケモン、安定しないエリアの環境、無駄に強いオヤブンポケモン。
それらに迅速かつ適切な対応をし続けなければならない状態、おまけに人員不足、正気の沙汰じゃない本当に。
都市再開発に向けて行動し続けるクエーサー社、表向きは人とポケモンの為にと発言しているが、裏はどうなっていたのかと数年前は俺とマチエールは推察していた。
そんな中、クエーサー社から俺に対してスカウトをしてきた。
後にミアレシティへ施設する共生区画の対応の為に優秀なトレーナーを集めてるとの事で、俺もその一員として加えたいとの事だった。
これはチャンスだ、実情はどうなっているのか……コレで堂々と探りを入れられるというもの。
マチエールにも報告し、暫くはバディとしての活動を休止してクエーサー社の社員として本当の所を探ってみると。
『……あ、そ、そっか、良い、かな』
…………そう言えば、なんだか変に歯切れの悪い返答だったな。
それからして俺はクエーサー社へ入社し、ワイルドゾーン課の一員として働いた。
当初は設置していたワイルドゾーンの数も少なく、それらに関する対処も難なくこなしていた。
これなら内密にクエーサー社を探る暇もある…………。
『野生ポケモン増加に合わせ、ワイルドゾーンの増設を実施します』
などと、その気になってた俺の姿はお笑いだった。
◾︎◾︎◾︎◾︎
「いや笑えるか馬鹿野郎……!!」
「何一人で言ってんだ先輩、とっとと終わらせてぇんで動かす動かす」
「動くわけ無いだろ馬鹿、アスレチックで軽くパルクール鬼ごっこしてからポケモンバトルの後なんて!」
「年だねぇ先輩」
「お前とそんな離れてないだろ!てかお前は指示するだけで動いてなかったじゃん!」
「あんくらい先輩一人で余裕でしょ、俺はいざって時のヘルプ待機」
クエーサー社、ワイルドゾーン課の室内で俺と後輩はパソコンに向き合い今回の報告書を書いているのだが……指が、というか身体がガダガダで動かない。
というのも今回のオヤブンポケモン、ピジョットが空を飛んで行動していた為、必然的にミアレシティのあちこちにあるアスレチックのような骨組みを経由して追いかける他無かったのだ。
ホロベーターがあればまだ余裕がもてただろうが、近くになかったりあったとしても占拠されてたり利用不可だったり……運も間も悪すぎて笑えない。
探偵のバディ時代も足を動かす依頼は多かったが、こんなパルクール紛いのことはあんなに無かったし、おまけに連勤の疲れもあるから一向に事後報告が進まない……。
ちなみにピジョットはリザードンのかみなりパンチ一発で鎮め、治療も兼ねてクエーサー社で保護し、後にまたワイルドゾーンへ放逐する予定だ。
「先輩全然進んでないぜ、こっちはもうすぐ終わるってのに」
「ごめんまじ待ってほんと」
「ったく……んじゃ仮眠室で横になって来い、俺が先輩の分やるんで」
「ま、まじ?」
「まぁあんた最近引っ張りだこだからな、とっとと寝た寝た」
「ありがとう、お言葉に甘えるよ……」
生意気な後輩だがこういう気遣いは有難い……俺は椅子から重い腰を上げて、疲労感をどっと背負いながら歩き出す。
…………そういや、仮眠室で寝るのコレで何日目だっけか…………。
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「……ふー…………」
疲れた身体を仮眠室のソファベッドに預けてもたれる。
あーダメだ、疲れでもう動かない。
てか動きたくない、もう無理、ワイルドゾーン課だけ労働環境がおかしすぎる。
この会社の仮眠室は個室のようになっているが、俺と同じ課にいる奴らは大体ここで泥のように寝ている。
すぐ隣にはシャワー室もある為、家に帰らずここで住んでいる様な状況になる社員も少なくない…………俺もなんだけど。
とはいえ……激務に見合った給与も与えられてるのは事実だ。
だがこんな状況ではせいぜい使い道は飯かコーヒーだ、そもそも俺はクエーサー社の内情調査の為にここに来たってのに……まさかそれをさせない為にこんな労働をされてるのか?
「(…………それにしても)」
思えば、クエーサー社に入社してから1年ほどか。
まさかこんな状況になるとは思わなかった、当初の目的通りに内部調査はぼちぼち行っているが……あまりめぼしいものは無い。
出てくるのは暴走メガシンカの情報隠蔽、最低限の世論操作。
社長であるジェット氏に関しても、強引な再開発による悪い噂話はあれど、その他に何か裏があった訳じゃない……と言うか、見当たらない。
人となりに関しても、本当にポケモンとのキズナを大切にしている事が伺い知れる。
…………もしかして、本当に善意で再開発を行っただけで、特に企みを企ててる訳じゃないのかもしれない。
だとしたらとんだ骨折り損だ、調査の為に意気込んで入社した結果がこれとは。
「(まぁ、それはそれで良いけどさ)」
再開発による市民から抗議の声はあれど、その結果は目に見えて良いものも沢山ある。
人とポケモンとの距離も縮まって来てるし、何より話題性でこのミアレシティにも人が集まって来てる。
ZAロワイヤルというポケモンバトルの企画で更に盛り上がってるし……俺としても生まれ育ったこの街が色んな人に見てもらえてるのは嬉しい。
「(……でもまだ、バディ復帰とはいかないな)」
仮に、このクエーサー社に裏表も無ければ……それが調査結果という事で退社しても良いと思ったが……ワイルドゾーンの危険性を考慮すれば、まだ離れる訳にはいかない。
何度も言っているがこの課だけ人員不足が過ぎるのだ、1人抜けるだけでもかなりやばい気がする。
今はとにかく、ワイルドゾーンの環境が全体的に安定するまでここで働こうと思っている。
その間、一人で探偵をしているマチエールには申し訳無いとは思ってるが。
「…………でも、今のあいつなら大丈夫だよな」
彼女は過去に、孤児として過酷な暮らしを強いられていた。そんな時にハンサムさんに拾われて……そこから色んな事件を通して、国際警察としてミアレシティでの役目を終えたハンサムさんから探偵事務所ハンサムハウスの二代目所長に任命された。
俺と同じくこのミアレシティで生まれ育った存在だからこそ、ハンサムさんは彼女にこの街の平和を託した。
そして俺も二代目所長のバディとして彼女を支えて早5年………ハンサムさんの後継に恥じない探偵となった。
もう俺の支えなしでやってもやって行けるんじゃないか、バトルの腕だって申し分ないし。
「とりあえず、俺もここで頑張るかぁ……ふぁぁあ」
あれこれ考えてたら強烈に眠くなってきた………とりあえず今は少しでも疲れをとる為に眠ろう……。
重い目蓋を閉じ、俺はすぐに深い眠りへと誘われた。
「ぐがー……」
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探偵事務所、ハンサムハウス。
ミアレシティの中でひっそりと構えているその場所で、私はレンヤが送ってきたクエーサー社の内部調査の報告書に目を通していた。
「出てくるのは暴走メガシンカの隠蔽、及び軽度の世論操作……その他ワイルドゾーン設置数の大幅増加……ふむ」
上記のものはある程度仕方ないと言える。
せっかく再開発で注目を浴びているこの街に、強大な力を持ったポケモンが暴れているなど知られては致命傷だろう。
ワイルドゾーンの設置も……これも及第点かな。
野生とはいえ、住み着いた所を無理矢理奪うのは可哀想だし、人とポケモンが共生する街を目指している以上避けては通れない。
後は………特にきな臭い行動は無し。
というか、ジェット社長は本気でポケモンとのキズナを信じている節がある……か。
「……だろうねぇ」
正直前々からそうだろうなとは思っていた。
多少強引な行動が目立ってはいたが、それは全てこのミアレシティに住む人々とポケモンを思ってのこと。
それでも以前は疑念があったからこそ、彼はスカウトの話を受けてクエーサー社へ行ってしまった。
…………私を置いて。
でも、調査結果は限りなく白。
クエーサー社に黒い裏は無かった………この結果を証明するために………私達は1年もの間離れ離れになってしまった。
「もう……レンヤのバカ」
デスクにうつ伏せになって、今ここにいないバディを罵る。
すっかり一人の探偵業もなれてしまった……正確にはもこおが居るから、1人では無いのだが。
「早く、帰ってきてくれないかな……」
私には大切な人が3人いる。
私を拾ってくれたハンサムおじさん、私にこのスーツとポケモンを託してくれたクセロシキおじさん。
そして、私がハンサムおじさんの助手の時から……二代目所長になっても私の傍にいてくれた大切なバディ、レンヤ。
おじさん2人は仕方の無い理由でミアレシティから離れてしまった、それでも彼だけは私の隣にずっと居てくれた………嬉しかった。
最初は色々大変だったなぁ………いきなり所長に任命されて頑張ろうとは思ってたけど、依頼があまり来なかったり、受けた内容がとんでもなかったり……それでもミアレシティの平和を守る為、おじさん達の為にと頑張り続けて、レンヤもそれに応えてくれた。
あの頃はずっと、頼れるお兄ちゃんの様な感覚だったけど……今思えば、私はあの時から惹かれてたのかもしれない。
親の顔も知らず、路地裏でただ自分が誰なのかも分からず……もこおと誰にも見られずにひっそりと暮らしてた私には、レンヤの隣がとても居心地が良くて、暖かくて。
少しでも離れていたら、寂しくて。
だから今も、本当に心細い。
あの時……クエーサー社に入社するから、暫くはバディとしての活動は休止するという話を聞いた時、頭が真っ白になった。
バディじゃ、なくなる?
私から……また大切な人が離れる?
そんな考えが私の中でぐるぐると渦巻いて、感情がぐちゃぐちゃになって。
レンヤがそんな事を言うなんて夢にも思わなかったから、咄嗟に何も言えなかった。
それでも彼の言葉に否定する箇所が見当たらなくて、探偵として懸念点を解消する手段でもあったから。
『……あ、そ、そっか、良い、かな』
こんな歯切れが悪く、要領を得ない言葉しか出せなかった。
本当は
『いかないで』
『はなれないで』
『バディをやめるなんていやだ』
『レンヤとはなればなれなんていや』
こんな子供みたいなわがままを叫びたかった。
でも、こらえた。
私はミアレシティの平和を、おじさん達に託されたから。
平和を守る探偵として、正しい選択をしなくちゃいけなかった。
「………迷惑、かな」
こんな気持ち、伝えてもきっと戸惑うだけだ。
彼はきっと私の事をそういう目で見ていない、何処までも相棒として……妹みたいな感じなんだ。
「…………」
らしくないかもしれない、こんな事を考えるなんて。
彼が離れなければ、こんな気持ちを自覚することも無かったのかな。
でも、確かなことが1つある。
彼が、また……私のバディとして帰ってきた時は。
私はきっと。
「はなさない」
自然と、そんな言葉が零れた。
マチエール
5年の時を経て逞しく(えろく)なった二代目所長。
この小説の中では主人公がバディとして支え続けた為、兄として慕う気持ちの裏に異性としての恋心が無自覚に芽生えていた。
ハンサムとクセロシキがいきなり自分の元から離れた事が少しだけトラウマになっており、主人公に対して依存の傾向が強まっていた。
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