相方だった探偵の様子が少しおかしい   作:グラビトン

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はい、今回はカナリィの番外編になります。
M次元ラッシュ楽しみですねー、ゲンシカイキまじで来るのか……?


番外編:カナリィ

今のミアレシティは、昼と夜で顔が変わる。

日没と共に特定のエリアに赤いホログラムの仕切りが発生し、そこはポケモントレーナー達の戦場となる。

 

 

 

⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯ZAロワイヤル。

 

 

 

ミアレシティの都市再開発を推し進めたクエーサー社が運営する、再開発計画の一端。

………まぁ諸々の要点を端折って説明すれば、ZからAのランクがあり……その頂点であるAランクに辿り着く事が出来た最強のトレーナは、クエーサー社が可能な範囲での望みを叶えられるらしい。

 

 

なんでも、叶う。

 

 

なんとも魅力的なトロフィーを巡って、ミアレシティ外の人間達もやって来て夜の街の中でポケモンバトルを繰り広げる。

その様を鑑賞する目的で来る人も数多く、そのおかげでミアレシティに人が集まりつつある……なんというか、上手い事出来てるなと感心する。

 

かく言う俺もそのZAロワイヤル参加者だ、日夜バトルゾーンを駆けずり回ってている。

何か願いがあるのか、と言われたら…………考え中だ。

 

大それた夢がある訳でもないし、まぁその時に何か思いつく事だろう。

 

という訳で、俺がこのZAロワイヤルに参加しているのは………Aランク到達が目的では無い。

このバトルロワイヤルには、もう1つ大きな特徴がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────相手を倒した分だけ、賞金が美味くなる。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「はぁっ、はあっ、はあっ」

 

一人の男が、赤いホログラムに照らされた夜のバトルゾーンを駆け抜ける。

傍らにはむしポケモンのヘラクロスが共に走っている、体の各所に傷を負いながら。

 

このバトルロワイヤルはトレーナーが相対した時、合意も無しに戦うことが出来る。

今この男の手持ちは手負いのヘラクロス一体、こんな状態でバトルに持ち込まれてしまえば……結果は火を見るより明らかだ。

 

尤も、駆け抜ける際に見掛けるトレーナー達のポケモンは既に倒れているのだが。

 

「(くっそ、なんでこんな事に……!?)」

 

事の発端は突然だった。

今夜こそランクアップするぞと意気込み、ZAロワイヤルに参加した所までは良かった。

敵トレーナーを探索しているその時、いざと言う時に出していたタイレーツが何処からとも無く放たれたれいとうビームに氷漬けにされ、そのまま戦闘不能となってしまった。

 

急いでヘラクロスに変えて応戦しようとするが、ビームが発射された方角を見ても敵がおらず、当たりを見渡しても敵らしき影もなし。

落ち着いて探し出すその時、次は水の刃がヘラクロスに直撃してしまった。

 

何処からともなく放たれる技、その正体も分からずただ手持ちのポケモンが傷ついてしまう。

分が悪すぎると思い直ぐにその場を翻し、手負いのヘラクロス共に逃げ出し……今に至るのだが、男は背中越しに感じていた。

 

「……居る、敵が……!」

 

恐らくは自分以上のランカー。

戦っても勝ち目が無いと悟り逃げ走っているのだが…………。

 

 

「──────ッ」

 

 

敵は、獲物を逃すまいとその俊足のギアを上げて……傍らのポケモンと共に距離を縮める。

 

そしてその勢いのまま跳躍し、瞬く間に男達の前へ辿り着き行く手を塞いだ。

 

「なっ…………!」

 

呆然となる(獲物)、手負いの状態ながら構えるヘラクロス。

雲に隠れていた月が徐々に晒されてゆき、月明かりで敵の素顔が晒される。

 

そこにはタンクトップの上に黒いパーカーを羽織り、フードを深く被っている男。

その前に居るのは、まるで忍びのようなポケモンのゲッコウガ。

しかし通常のゲッコウガは青色、そこに居たのは…………。

 

「黒い、ゲッコウガ……!?」

 

そう、黒。

まるで闇夜に溶け込むことを想定したかのような黒色のゲッコウガ。

所謂色違いポケモン、そして彼はその正体に気づく。

 

「(まさかアイツが、Aランクに王手を掛けていながらランクアップ戦をせずに、ZAロワイヤルで賞金を荒稼ぎしているという…………!そしてそのパートナーポケモンは、色違いのゲッコウガ……!!)」

 

「……ゲッコウガ、れいとうビームで倒せ。それでボーナスカードの条件クリアだ」

 

指示を受けたゲッコウガが静かに印を結びながら、ヘラクロスに近づく。

状況は圧倒的に不利……そして、逃げ場も無かった。

 

「そしてアンタで10人目」

 

パーカーの下の顔は詳しく伺えない。

しかし男には感じ取れた…………獲物を前に笑う、狩人の顔だと。

 

 

 

 

 

「賞金ボーナス、2倍……!!」

 

そして無慈悲に、凍てつく氷の奔流がヘラクロスを射抜いた。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

夜は明けて、今夜のZAロワイヤルが終わりを告げられる。

既にバトルゾーンのホログラムは解除され、ロワイヤルに望んだ人々は疲れを顔に出しながら歩いていた。

 

「ふぁ〜…………」

 

かく言う俺も大きな欠伸をしながら、バトルゾーンの近場にあったカフェでゆっくりしていた。

同じ席には相棒のゲッコウガが、ボトルに入れられているおいしいみずをストローで飲んでいた。

 

注文していたクロワッサンを齧って咀嚼しながら、スマホロトムに映し出された今回のZAロワイヤルの結果を確認する。

 

「今回は13人倒して、賞金メダルもカード込みでそれなりに稼いで……今回の収支は約17万円っと………いやぁ稼いだ稼いだ、なぁ相棒?」

 

「ゲコ」

 

俺がそう言うとゲッコウガも頷いてくれた。

バトルする時は凛々しく頼もしいが、そうでない時はぬぼーっとした雰囲気になる……そこも愛嬌だよな。

 

…………つーか今更だけど、敵を倒すだけでこんなに稼げるとか……タイパ良すぎだろZAロワイヤル、バトルはポケモントレーナーの専門分野だし、サイコーだわ。

 

願いを叶えてもらえるAランクまでリーチかかってるけど、特別叶えてもらいたい願いとか今は無いし……て言うか、今まで稼いだ金で大抵の事は出来るしな。

 

「ゲッコウガ、お前なんか叶えたい願いとかない?」

 

「……ゲコ」

 

「無いかー、まぁ今すぐじゃなくても良いよな」

 

可能な範囲での願いを叶える。

どんな形であれなんでもいけるとなると、逆に取っ掛りが無くて想像できない。

今の俺には何かしらの夢も持っていない、そう言う意味で俺は最終到達点のAランクに相応しくない男ではある。

 

今は願いを叶える事よりも、ZAロワイヤルのシステムを利用して賞金を荒稼ぎしてやるのが今後の目標だ。

使える金が多けりゃ多いほど出来ることも増えるしな、バトルの腕も上がるから一石二鳥…………まぁバトルの腕と言うよりは、闇討ちスキルが向上してる気もしなくもないが。

 

「……まぁいっか、とりあえず今日は帰って休…………お?」

 

残りのクロワッサンとカフェオレを平らげて帰ろうと思ったその時、スマホロトムから着信がなる。

誰だと思い画面を見るが…………あー、アイツか。

 

どーしたんもんかな、無視したら絶対面倒臭いしな…………出るか。

 

「……はいよ」

 

『おっはー賞金稼ぎ、今日も稼ぎまくったろ?』

 

「まーな、てかお前だってスパチャとグッズで俺以上にとってんだろ?」

 

『まーな、とりあえず後で来てよ、シビルドンのお土産にいつものミアレガレット買ってきてー』

 

「いや自分で買えよ、後俺眠いんだけど」

 

『こっちで寝りゃ良いじゃん、んじゃ言ったからねー』

 

「あ、おい……ったく」

 

言いたいことだけ言って切りやがった………やれやれ、自分の立場分かってんのかなあの人気者は。

……でもこれ行かなかったらぜってー面倒になるし……とりあえず、平らげるか。

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「ふぁ〜………眠ぃ」

 

眠気を感じながら約束の場所まで歩く、右手には俺が食べる分の菓子と、 ご所望のミアレガレットが入った子包を持っている。

ミアレ名物のお菓子なのだが、これはシビルドンのような硬い牙を持ったポケモンじゃなきゃ噛み砕けない程硬く焼き上げられてる。

普通の人間やポケモンが食べようものなら、愉快なアニメよろしく歯が砕け散ることだろう。

 

そうこうしている内に、目的の場所……ラシーヌ工務店へ辿り着く。

昔から馴染みのある場所で、顔見知りもこの店に数多く存在する。

 

「お、シンスケおはようさん、ロワイヤル明けだろ?」

 

「うっす、呼び出されたんで来ました、じいさんは?」

 

「親父はもう仕事に行ってるよ」

 

「そすか、んじゃお邪魔しますわ」

 

何時も外でネジを集めている従業員に軽く挨拶して中に入る。

開けて目に入る光景は……呼び出された人物のぬいぐるみやグッズ諸々、見慣れてはいるが、やっぱ多いよな…………。

 

そんなことを考えながら歩を進め、開けた場所に入る。

そこにいた従業員達に軽く挨拶しながら、目的の場所へようやく到着した。

 

「おーい、来たぞー」

 

「入ってー」

 

黄色いカーテンで仕切られた入口に声を掛け、捲りながら中に入る。

外の光が入っていた先程の場所とは打って変わって薄暗いそこは、受付でも見たある人物のグッズや、シビルドンを模したぬいぐるみがそこかしこに置いてあった。

 

そして入口のすぐ側にはパソコンが置いてあり、俺を呼び出した張本人が画面を熱心に見つめながらゲームをしていた。

 

「……前もやってなかったかそのパズルゲーム」

 

「ちょ、話しかけんな、めっちゃいいとこ」

 

呼び出しといて……まぁいつもの事だから何も言わんが。

俺は立ちながらプレイ画面をただじっと見つめる。

 

ゲームはあまりしないから何も言えないが、今やっているこの落ち物パズルゲームはそこそこ有名らしく、動画投稿や配信をしている人達が挙ってプレイしているものだ。

 

まぁ、今プレイしているコイツも人気配信者なのだが。

 

「………だぁクソ!もうちょいでハイスコアだったのにっ!」

 

「配信中なら台パンしてコメ稼ぎしてたとこだな」

 

「ぼくのアレコメ稼ぎしてると思ってたのシンスケ!」

 

「そうじゃねぇの?」

 

「素だよこのやろう!」

 

「やべーなお前」

 

褐色の肌にでんきタイプを思わせる黄色中心の服装。

半分黄色、青緑の髪色のツインテール。

 

普段から黒と黄色のマスクで素顔の半分を隠しては居るが、普通に美少女な彼女の名はカナリィ。

今ミアレシティでホットな配信者で、炎上ギリギリな毒舌が売りな人気者だ。

 

現にファンも多数存在し、ファンクラブやDG4という熱狂的な組織まで存在するくらいだ……まぁ、後者はこのラシーヌ工務店の従業員全員の事なのだが。

 

そんな彼女は、俺の昔からの幼馴染みでもある。

その事を話すと長くなるので割愛するが。

 

「ほら、ご所望のミアレガレット」

 

「サンキュー、もうひとつは何?ぼくの?」

 

「俺のガレットだよ、お前甘いもの食えんだろ」

 

「ちょっとぼくのお土産は無いの?そこは気を利かせるとこじゃないの?」

 

「既にじいさんやDG4の面々がお前に気を利かせまくってるだろ、俺は甘やかさないんだよ」

 

「うっぜ!」

 

シビルドンに食べさせるミアレガレットを手渡し、そこかしこにあるカナリィグッズのクッションを退かして座る。

俺が食べる分はすぐ側にあるテーブルに置いた、こんなとこにもぬいぐるみはあるが普通にどかした。

 

「ったく、こちとらロワイヤルの後で眠いってのに………呼び出したのは?」

 

「別に?理由は無いよ」

 

「だと思ったよ、そのくせ無視すると機嫌悪くなるんだからな、わがままめ」

 

俺がそう言うとカナリィはニヒヒと笑う、マスクで口は隠れてるがにやけてる様が目に浮かぶ、うぜぇ。

 

「それにしても、あんな夜中でよくポケモンバトル連続して出来るね、疲れるでしょ」

 

「まぁ俺は身体鍛えてるしな、それにバトルに勝ちまくるだけで金が貰えるってんならやらない手は無いだろ?」

 

「ふつー全力疾走しつつ屋根の上とか行き来して、その上でバトル連続するとか体力も気力も持たないでしょ」

 

「俺は持つ、インドア派にゃ分かんねぇよ」

 

「アウトドア派全員がシンスケみたいなフィジカルお化けだと思うなよ」

 

んな事はねぇと思うんだけどな………まぁ俺みたいにちびっ子の頃からアスレチックとかで身体を動かし続けてきた奴も早々居ないか。

 

とりあえず小腹が空いてきた為、ミアレガレットの入った子包の封を開ける。

この街の名物菓子で小さい頃から食べ続けてるが、不思議と飽きがこないのは何故だろうか。

 

「……ぼくにも頂戴」

 

「え?甘いの苦手なんだろ」

 

「ぼくもお腹空いた、ちょっとなら良いじゃん」

 

「そんな買ってきてねぇし、そこのガレット食えばいいじゃん」

 

「分かってて言ってるだろこの野郎、じゃあこうする!」

 

「は?いやおま、おい」

 

ゲーミングチェアから立ち上がりなにをするかと思えば、胡座で座っている俺の脚に頭を乗せて寝そべって来やがった。

おいおいおい、年頃の女の子がなんて事してんだよバカ。

 

DG4の面々がこの光景見ても暗黙の了解で黙ってくれるかもだが、他のリスナーやファンに見られたら炎上もんだよ、火種はお前の過激発言で十分だっての。

 

「おいこら、何してんだってんだ」

 

「ぼく達の仲じゃん、ほらちょーだい」

 

マスクを下にずらして、ニヤニヤしながら俺がガレットを食べさせるのを待っている。

……ったく、こうなったら動かないだろう、観念するか。

 

「………ほらよ」

 

「あーん……こんくらいの甘さならふつーに食べれるな」

 

「そうかい、んじゃ離れて」

 

「なんだよ離れて欲しいのかよ、じゃあもう一個頂戴」

 

「なんだってんだよお前……ほら」

 

「あーん」

 

もうひとつガレットを手に取り、カナリィの口へ運ぶ。

お前は雛鳥かと思いつつ、言われるままにされている。

 

………なんやかんやで俺も甘やかしてるような気がする、じいさんのこと悪く言えんな。

 

「もう良いか?」

 

「うんもういい、じゃ今度はぼくね」

 

「いや今度って、ちょっ」

 

何を言ってるか分からない俺を余所目に、カナリィは起き上がりガレットが入っている子包を俺の手から奪った。

そしてその中にあるガレットを手に取り………。

 

「はい、あーん♪」

 

………あぁ、そう来るのね。

これファンとかにしたら喜びで卒倒でもするのかね……生憎俺はコイツの事はただの幼馴染みとしか見てないのだが………。

 

「………美味い」

 

「ぼくが食べさせたから?」

 

「関係ねぇ」

 

「素直になれよっ」

 

「素だわ」

 

何故こいつは俺に会う度に、こうやってだる絡みするのだろうか。

長い付き合いではあるのだが、分からんな………。

 

「ったく、じゃあこういうのは?」

 

「今度はなんだよカナリィ……?」

 

訝しみながらカナリィを見るが、ガレットを口に加えて目を瞑って……

 

「んっ」

 

「アホタレ!」

 

「んがっ!」

 

アウトだ、言うまでもなく。

万が一でもそんな食べ方受け取ってしまえば、DG4とリスナー達が俺の敵になってしまう。

目の前のバカが咥えたガレットをそのままその口に押し込み、俺は阻止した。

 

「そーゆー事を軽々しくするな馬鹿、俺以外にやって勘違いされても知らねーからな」

 

「シンスケ以外にしないし!!」

 

「そーですかい、んじゃオレ寝るからな」

 

「え、マジでここで寝るの?」

 

「お前が良いって言ったんだろーが」

 

傍にあったカナリィのクッションを枕にし、脱いだパーカーを上半身に被せて寝そべった。

いい加減眠かったし今なら配信も無いだろうからな、このまま寝てやるよ。

 

「んじゃお休み、俺は寝る!」

 

はぁ、なんかどっと疲れた。

眠気が、すげぇ……………

 

 

 

 

 

◾︎◾︎◾︎◾︎

 

 

 

 

 

「……シンスケ?」

 

「………………」

 

「もう寝てるし、早すぎだろ」

 

「………………」

 

「………アンタ以外にするわけないでしょこんなの、このクソボケ………少しくらい意識しろよ……」

 

「……………」

 

「………このまま襲えば………………いやバカ、流石にバカ」

 

「………最終手段として、取っておくか」




シンスケ
ZAロワイヤルで賞金を荒稼ぎしているポケモントレーナー。
現時点で叶えたい願いもなく、ただひたすらバトル相手を倒しては稼ぐというサイクルを繰り返している。
幼い頃からラシーヌ工務店が作ったアスレチックで遊んでおり、その際に身体も鍛え上げられた。
カナリィとは幼馴染みの関係で、距離感がおかしい友達の認識で好意には1ミリも気づいていない。
パートナーポケモンは色違いのゲッコウガ。

ひかるおまもりは取れました?

  • はい
  • 取れるわけねーだろ
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