草寿朗は上弦の壱、黒死牟の前にいた。
というのも、あのあと、鳴柱の継ぐ子、重三郎が声をかけてきたからだった。
「それで……」と黒死牟。
「父は牢獄に繋がれました」と草寿朗は泣きながら話した。「あんまりです。煉獄家は代々敬愛する産屋敷家に仕えてきました。一代足りとも、ご恩を忘れることなく、忠義を守り続けてまいりました。それなのにこんな酷い仕打ちを……いずれ父は死罪になります」
「重三郎……」と黒死牟。
「この者の言うことは間違いありません。皆の集まる前で煉獄は殴られ、牢に繋がれた。そのための会議だったとすらいえる。憔悴する草寿朗をあまりに見ていられず、こちらへ連れてまいりました。この者もきっと我々のために働いてくれましょう」
「重三郎が鬼だったことには驚きました。あまりに人間に擬態している。こうやって誘いの声をかけてくれたおかげで踏ん切りがつきました。私は、産屋敷を許せない……父の仇を討ちたいと存じます」
「そのためにお前は何を差し出せるというか……」と黒死牟。
「産屋敷の居場所をお教えいたします。鬼殺隊の本部です」
「ほう……私は産屋敷の首をあのお方に差し出した。お前は居場所を差し出すというか……」
「はい」
「産屋敷1人死んだところで意味はないと思うが」
「そんなことはございません。あの先見の明、財力、統率力を持ってしてでなければ、鬼殺隊は崩壊しましょう。そのことは黒死牟様も良くご存知のはず」
草寿朗のその言葉に、黒死牟は満足げに頷いた。
草寿朗は懐に忍ばせていた地図を取り出して広げた。産屋敷家の間取りが詳細に書かれた紙だった。「これは煉獄家に伝わる地図です。今回の会議の際に父が持たせてくれました。本部は大まかに三ヶ所に分かれている。この中央の入り口が手薄で侵入しやすくなっています」
「ほう、私がいた頃からは勝手が変わっているではないか。愉快愉快。では、上弦の陸を向かわせよう」
「私が道順を案内いたします」と草寿朗が言った。「重三郎、お前も来てくれないか。お前は人間への擬態が上手い。私が鬼となれば、柱に遭遇した場合、すぐに鬼だとバレてしまうだろう。」
「ほう、鬼になると言うか……」と黒死牟は唸った。「その必要はあるまい。人の姿のまま案内すればこの計画もうまくいくだろう。ことを成し得た暁には、そなたにあのお方の血をわけていただけないか相談してみよう……」
「は!ありがたき幸せ!」と草寿朗は言うと、黒死牟を前に頭を下げた。