100年前の裏切り柱   作:高橋夏帆

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奇襲

 草寿朗は奇襲を提案した。警備が手薄になる上に、体力も削がれている夜明け前直前を狙い敢えて襲撃するというものだった。

 

 上弦の陸、重三郎、草寿朗の3人は、護衛に気づかれないように慎重に山を登った。

 

「こいつ、喰っていい?」と上弦の陸。

 

「ダメだ。あのお方にあとで鬼にしてもらうんだ」と重三郎は言った。

 

「やっぱり、重三郎に来てもらって正解だった。私と陸と2人では任務を遂行できなかっただろう」と草寿朗は言った。「それにしても重三郎はいつから鬼になったんだ?」

 

「ほんの最近のことさ。お前と一緒の理由だよ。師範に愛想を尽かして飛び出したんだ。黒死牟様が拾ってくださって、鬼になれたってわけだ」

 

「そうか。一緒か」と草寿朗は言った。

 

「黒死牟様、良い人だっただろう。忠誠を尽くせば認めてくださる。努力をすれば褒めてくれるし、褒美もくれる。俺はおかげで人間に擬態できるほど強くなれた」

 

「俺もそうなれるだろうか」

 

「なれるよ草寿朗!お前は煉獄家の子息だぞ!鬼の素質があるに違いない。ともに未来永劫励み続けようじゃないか!」と重三郎は笑顔になった。ああそうだな、と草寿朗は言った。

 

 日の出まであと1時間となっていた。

 

「本当に大丈夫なのか?1時間で足りるか?」と陸が言った。

 

「大丈夫だ。産屋敷とその子供5人を殺せばいいだけだ。この時間は警備も手薄なうえ、体の弱い産屋敷はすでに寝ている。寝込みを襲うほど簡単なものはない。5分で片付けて帰参しよう」

 

 陸と重三郎と草寿朗の3人は鬼殺隊本部の屋敷の高い壁を見上げた。

 

「ここが本部か……」と陸は言った。「確かに、なんとも言えぬ気配を感じる。これが産屋敷の気配。」

 

 草寿朗は引き戸に置いてあった藤の花の香を消した。

 

「香はそこにしかないようだな。妙だ……」

 

「この香は効き目が強い。産屋敷用に強力な香を配合しているんだ。これだけで守りは十分なんだ」と草寿朗は言った。

 

 草寿朗は引き戸を開けた。「ほら空いた。この時間は手薄なんだ」

 

 引き戸を開けて、陸と重三郎と草寿朗は鬼殺隊本部の庭へと出た。草寿朗は引き戸を閉めた。

 

 庭には大きくうねる木が置いてあり、石で囲まれた池には月が映し出されている。屋敷の扉はきっちりと閉められ、異様なほど音が全くしなかった。

 

「なんか変だぞ」と陸は言った。「おいこれ、閉じ込められていないか」

 

 次の瞬間、草寿朗は一瞬開いた扉の中へと消え去っていったかと思うと、屋根の上、壁の上から9人の柱たちが一斉に姿を現した。

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