最後の記憶は、黄金のリンゴが大きく口を開けたところで終わってしまったんだ。痛みとか、恐怖とか、そういうのを感じる間もなかった。いっぱいいっぱいで、二人よりも一人の方が良いでしょと、誰に対する言い訳なのか解らないことを口に出す事しか出来なかった。
「ゴホッ……!」
だからこそ、今の状況が解らない。とにかく息苦しくて、足掻くことしか出来ない。息が出来なくて振り回した手は、何かに当たる。殆ど無意識にそれを掴んで、立ち上がると。どうやら私は浴槽の中で溺れていたらしい。意味が解らない。
「ここ、どこ……」
辺りを見渡すと、崩れた家の中、廃墟のようだった。私がさっきまで溺れていた浴槽は、よく解らない赤い液体で満ちていた。その他には、木製の机と崩れた家具の残骸ばかり。
「何も残ってないのかな」
今私が持っているものと言えば、浴槽の液体によって重く湿った服だけ。武器も無ければ食糧さえない。この液体を飲むのは、流石に避けたい。とりあえずは、浴槽の他に唯一形を保っている机を調べて、後は残骸から何か無いか探すしか無さそう。
「これは、ナイフ、なんか真っ赤だけど」
真っ赤な刃のナイフが机に突き刺さっていた。その他には何もなさそう。流石に何も無しに外に出たくはないけど、この怪しいナイフが訳の解らない裏路地の発明品とかだったりすると、何が起きるか解らない。
「でも、このままで居られないし」
ここが何処か解らない以上、身を守るものは無いと。ナイフ一つで何か変わるわけでも無いけど、無いよりはマシだと思うしかないんだ。
「……あれ、これって」
ナイフを持った瞬間。これの正体がわかった。これはEGOだ。一瞬焦ったけど、即座に侵食されていないからそこまでリスクレベルの高いEGOでは無いみたい。長期的な使用は問題あるかもしれないけど、今はこれに頼るしかない。
それに、EGOなら私でも扱うことが出来る。持っただけで、その使い方が解るから。
<今度こそ、生き残れたらいいね>
「え、誰……?」
声が聞こえた気がする。なんだか、暖かくて美しくて、太陽のような声。EGOを使用すると、幻想体の声が聞こえてくる事があると聞いたことがあるけど、これはなんか違う気がする。
<あなたも、死にたかった訳では無いでしょう?>
この声を聞いていると、何だか不思議な気分になる。私の中をさらけ出したくなるような……。どう表現したら良いのか解らないけど、私はこの声を無視するなんてことは出来ないみたい。
「誰も死ぬことを望んではいなかったんです」
私だって死にたくなかった。だけど、今更どうしろと言うんですか。罪を抱えてでも、生きていたかったです。
<何を言っているの、生きたいって思うのは罪じゃないでしょう?>
「……えっ」
<生きたいって思うのは罪じゃないわ、誰でも持っている普遍的な感情だもの>
「……だけど、私は」
私が生き残るために、多くの人たちが沈んでしまったのに、だからそれを背負って、それでも生きていかないといけないのに。誰かが、そう言ってくれて
<誰も死ぬことを望んではいないわ、あなたもね。だから色々と理由なんて付けないで、ただ生きたいと思えば良いの>
「……」
<大丈夫。私が導いてあげる。重荷なんてここに置いて、あなたがあなたらしく生きていられるように>
とても、暖かい太陽のような声に、私は何かを捨てようとしたけど。誰かが私を呼び止めている気がする。誰だったか思い出せないけど、その人が呼び止めるなら、この声にはきっと従ってはいけないんだと思う。
「私は、罪を忘れてはいけないみたい」
<今は、まだ自分と向き合えないのね。でも、いつかあなたは受け入れる時が来るのよ>
それからは聞こえなくなったけど、その美しい声は私の頭の中に残ってる。今でも、私の罪は苦しいけど、でも、あの人が、罪だと言うのなら、私は背負わないと。あの人、名前が思い出せない、誰だっけ……。
「そういえば、私の名前ってなんだっけ……?」
ロボトミーE.G.O::リストカッター
生き残った ロボトミー職員 同期1
スキル1 沈んでしまった
憂鬱 斬撃 基本威力9 コイン威力-3 コイン枚数2
使用時 自身に沈潜回数2を付与
コイン1 的中時 沈潜回数2を付与
コイン2 的中時 沈潜威力2を付与
スキル2 置いていかないで
色欲 斬撃 基本威力15 コイン威力-10 コイン枚数1
使用時 自身に沈潜威力2を付与 自身に沈む職員の手1を付与
コイン1 的中時 沈潜威力2を付与 沈む職員の手1を付与
スキル3 未開放
防御スキル 誰かが証明した罪
防御 基本威力10 コイン威力4 コイン枚数1
使用時 自身に沈潜威力2を付与 自身に沈潜回数2を付与
沈む職員の手 3になった時、これを除去し沈潜回数3と無抵抗を得る
無抵抗 ダメージを50%軽減する
ターン終了時にこれを除去し、沈潜回数と沈潜威力を、出血回数と出血威力にする
装着EGO ある日突然