花人間が麦わらの一味に加入したようです   作:絹毛鼠

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リリィ・スカイ(空島編6)

 その後の戦いの後処理は、まあそれなりに大変だった。怪我をしたゾロとワイパーの治療に奔走するチョッパー。

 ゲリラたちは雲流しの刑に処すために、神官たちを急いで探す。

 ルフィとナミは戻ってくる途中で神官たちの食糧庫を見つけたらしく、コニスとともに食料を運んできたようだ。

 なお、パガヤは白海に叩き落されただけで無事だったらしい。パガヤを悼む会話の中にしれっと紛れており、ルフィ達から「おめェの話だよっ‼」とツッコまれていた。それにはパガヤも「生きててすいません!」と、本来なら後ろ向きすぎる謝罪をしていたが、この場では適切だったかもしれない。コニスが喜びのあまり、父親の膝に突っ伏して泣いていた。

 雲の果て(クラウドエンド)に避難していた者たちは、白々海からの雲貝(ミルキーダイアル)を受けて、続々と神の島(アッパーヤード)に向かっている。エンジェル島とシャンディアの住む雲隠れの村が無くなったため、双方が神の島(アッパーヤード)に向かっていた。

 神隊の人たちは、方舟を作るための労働施設で倒れていたところをガン・フォールに拾われ、一命をとりとめた。その後神隊の人たちは、神の島(アッパーヤード)にやってきた家族との再会に沸いた。

 

 

 夜も更け始めたころ、ナミが船に戻るかとルフィに尋ねたが、ルフィからは「お前何言ってんだ」と言われ、ウソップからは「あれ見て何も思わないとか、人間失格だな…」なんて言われる始末。

 

「こんなときはやっぱり、宴だ~!」

「黄金の鐘を鳴らした記念、ですかね」

「おう!鐘を鳴らして、エネルもぶっ飛ばした!肉もいっぱいあるんだから、宴をやるべきだろ!」

「そうだな。せっかくたくさん珍しい空の食材があるんだ!」

「酒もあるし、飲むしかねぇよな!?」

「よっし、じゃあ準備だ!お前ら手伝え!」

「何より、おっきなキャンプファイヤーの組み木がもうあるんだ!使わなきゃ損だろ!」

「組み木?そんなのどこに――」

 

 あるのか、というナミの言葉は途中で途切れた。ウソップとルフィが指さすのは、ゾロとワイパーが切り倒した巨大な豆の蔓(ジャイアントジャック)。ルフィ達はそれを組み木代わりにして宴をしたいという事らしい。

 発想の規模に思わずあんぐりと口を開けるナミ。しかし、ベッドでゆっくり休みたいと言っても止まらないだろうな、と諦めたナミは、大人しく準備を手伝った。

 そのまま火をつけてもなかなか燃えなかったので、食糧庫から拝借した油を全体にかけてから、ナミの“サンダーボルト=テンポ”で一気に点火した。火が付いたらそのままの勢いで食事を再開し、仲間内で踊って笑った。

 

 すると、巨大な火が気になったシャンディアと空の民がやってきて、そのまま宴に引き込まれる。大蛇もその様子が気に入ったのか、燃えるジャイアントジャックを楽しげに眺めていた。

 

 気づけばシャンディアたちのかき鳴らす太鼓の音も相まって、身内だけの小さな宴は大宴会へと変わっていった。

 ガン・フォール(空の民の長)もシャンディアの酋長も、宴の中で呵々大笑。

 パガヤや天国の門にいた老婆、アイサに雲ウルフも踊りに加わり、今まさに目の前ではシャンディアの戦士が空の民を踊りに誘っていた。

 ゾロはシャンディアと戦士と飲み比べを始め、サンジとチョッパーが空の民の中年女性と踊り、パガヤは自分の顔を腹に描いて踊っていた。マリーとロビンはそんなみんなの様子を、少し離れたところで楽しげに眺めていた。

 

 それは、400年間続いたスカイピアでの戦いの終わりの宴となった。そんな宴が一日で終わるわけもなく、連日連夜どんちゃん騒ぎのまま3日が経過した。とはいっても、流石に人間、不眠不休で動くには限度がある。宴が始まって4回目の太陽が昇り皆が眠りについている頃、こっそりルフィが起きだしてきた。

 

ーーーー!ーーーーーーー(おいナミ!みんなを起こせ)

「ん…なに?」

ーーーーーーーーーー!(黄金を奪って逃げるぞ!)

「え⁉黄金があるの⁉」

「ばかっ!声がでかい!」

「あんたのほうがでかいわよ!」

 

 こっそり行動しようとしたようだが、そこはルフィ。今回は半分ナミが原因ではあるが、隠密活動など土台無理な男である。ルフィ達の大きな声に、次々と目を覚ますシャンディアと空の民。

 その中でも(なるべく)こっそり今後の行動について決めたルフィ達は、各々行動を開始した。

 

 ルフィは大蛇の中で黄金を発見していたのだ。大蛇が宴で疲れて眠っているうちに、中から黄金を取り出して空島を後にしようという作戦である。ルフィとサンジ、ナミとチョッパーは大蛇の中で探索組。ゾロは念のための見張り役、ウソップは(ダイアル)の取引に。ロビンとマリーは本人たちの希望で自由行動となった。

 

 マリーとロビンは探索中、西の海岸へと急ぐ人たちを見つけた。どうやら、白々海へ落ちたはずの鐘楼が見つかり、引き上げるための人員を募っているらしい。着いていくと、そこには多少傷ついていようともかつてと同じ威光を放っていた黄金の鐘楼が鎮座していた。

 そしてその鐘楼の土台に組み込まれるようにして、謎の文字が刻まれた未知の鉱石――歴史の本文(ポーネグリフ)――が埋まっていた。

 

「一体、何が書かれているんです、酋長」

「知らずともよいことだ……我々はただ―――――」

「『真意を心に口を閉ざせ

我らは歴史を紡ぐもの

大鐘楼の響きとともに』」

 

 シャンディアの酋長の言葉を、ロビンが引き継ぐ。歴史の本文(ポーネグリフ)が読めるのかと問われると、ロビンは簡潔に答えた。

 

「神の名を持つ古代兵器『ポセイドン』…そのありか」

「……!古代兵器!?」

「なぜそんなものについてなど…!」

「…………ロビン」

「やっぱり外れね」

 

 外れだと言い、踵を返そうとするロビン。その瞬間、マリーが言った言葉に目を向いた。

 

「クロちゃんも、これを読めればよかったのですが」

「………!?」

 

 マリーにとって、『クロちゃん』という言葉が誰を指すかを思い出す。モックタウンからクリケットのところに向かおうとしたときに出会った、ショウジョウとの会話に出てきた言葉。

 

「クロユリさん、貴女……クロコダイルに読ませてもいいと思うの?これを?」

「……?ええ。彼、古代兵器を欲しがっていたんです。だからアラバスタのポーネグリフを教えてあげたのに、失敗したようでしたので」

「貴女っ、あの歴史の本文(ポーネグリフ)に何が書かれているか知っていたの!?」

 

 ロビンがマリーに掴みかかる。その様子に、空島の人間はオロオロと視線を揺らすばかりだ。

 

「わたくしは文面を読むことは出来ません。ですが、『どこに何が書かれたポーネグリフが存在しているか』は知っています。…いえ、『知っている人を知っている』というところまでです」

「…じゃあ、この空島に歴史の本文(ポーネグリフ)があることも知っていたの?」

「いいえ、知りませんでした。ですが、私の故郷に歴史の本文(ポーネグリフ)の蒐集家がいまして。以前その方に尋ねたのです、『古代兵器のありかを示す歴史の本文(ポーネグリフ)の場所を一つ教えてほしい』と。

 わたくし個人が知っているのはそこまで。歴史の本文(ポーネグリフ)の場所を尋ねたのだって、クロちゃんに頼まれたからですので目的は知りません。古代兵器とやらについても知りませんし」

「以前、私の師が言っていたわ。『植物は歴史を語らない』ってね。知っているからこそ語らないのではと思っていたけれど、それは間違いだったって事かしら…」

 

 考え込むロビンに、困った表情を浮かべるマリー。やがてやれやれと言った表情で、マリーは口を開いた。

 

「ここシャンドラに伝わる言葉のように、わたくしたちメリアにも、生まれた時から命じられる言葉があります。」

 

『契約の時を始祖と共に待て

我らは滅びの次を行くもの

その時まで星と人は歴史を分かつべし』

 

「…少なくとも、わたくし自身はなにも知りません。歴史の本文(ポーネグリフ)の読み方も、文面も、この言葉の意味すら」

「…………」

「ですが、故郷の同胞たちは別です。『契約』のことも、歴史の本文(ポーネグリフ)の全ても、彼らなら知っているでしょう。それを語ることは無いとしても」

「なら…いつかクロユリさんの故郷に行ったときに、出来る限り話を聞かせてもらいましょうか」

歴史の本文(ポーネグリフ)の場所くらいなら、なんとか聞けるかも…交渉次第でしょうが」

「ふふっ、楽しみね」

 

 緊張が走っていた空気が弛緩し、周りの者たちは賑やかさを取り戻す。

その賑わいの中で、シャンディアに見逃していた部分を指摘され、ロビンはかつて海賊王ゴール・D・ロジャーがこの地へとやってきたことを知る。

 ガン・フォール曰く、かつて20年以上前にやってきた海賊がその名前だったらしく、その海賊がこの黄金の鐘楼を見つけ同じ文字で刻んだらしい。

ロビンは、歴史の本文(ポーネグリフ)には2種類の石があるという。“情報を持つ石”と、”その石のありかを示す石“。そしてロジャーの遺した「我ここに至り。この文を最果てへと導く」という言葉で、何か合点がいったらしい。

歴史の本文(ポーネグリフ)は繋げて読むことで空白の歴史を埋める文章になり、真の歴史の本文(リオ・ポーネグリフ)になるのだと推察した。

このことに気づいたロビンは何やら決意を固めたような表情をしていて、マリーはそれを穏やかに眺めていた。

 

「時に娘、あんた達オーゴンを欲しがっていたな。青海では、大地(ヴァース)より価値があるのだと。この折れた鐘楼の柱はいらんかね?」

「いいの? それはみんな喜ぶわ」

「船に乗りますかね、これ?」

「黄金なら加工は簡単だし、最悪溶かして船に乗せましょう」

 

 そういって、集まった人たちは黄金の柱を布でくるみ大人数で抱えて船に運ぶ。船が見えてきたころ、慌てたように船に逃げようとするルフィ達が見えた。どうやら黄金の柱を大砲だと思い、自分たちを捕まえに来たと勘違いしたらしい。

 

「船に乗れ! もうここにはいられねェ! ほら見ろ大漁‼ 金持ちになった‼ 袋にパンッパン」

「ほらみろバレたぞ!」

「待て待て待てと呼ぶがてめェら!!」

「おォ!! 言ってやれウソップ!!」

「命を賭けて!! はるばる来たこの空島の!! 世に伝説の”黄金郷”!! 誇り高き海賊様がっ!! 手ぶらでオチオチ帰れるかってんだァ!!」

 

 早く船に乗るために急かすルフィ達と、決め台詞を叫ぶウソップ。もう大蛇の中から大量の黄金を見つけていたらしく、背負った袋いっぱいに黄金を詰め込んでいた。

 あれだけ黄金を手に入れたのならもう船には乗らなそうと判断したマリーと、やっぱりお宝は貰うより手に入れる方が嬉しいだろうと感じたロビンは二人そろって「「いらないみたい/ようです」」と笑って船に駆け込んだ。

 

そのまま急いで出航し、パガヤたちの案内で雲の果て(クラウドエンド)という青海に戻るための場所にたどり着いた。

激動の空島での日々だったが、いざ降りるとなると名残惜しいと各々が呟く。

 

「ではみなさん‼ わたしたちはここまでですので!」

「お元気で皆さん‼」

「何から何までありがとうな!」

「送ってくれてありがと!」

「コニスもおっさんも白いのも元気でな!」

「ええ!ではすぐに帆を畳んで、船体にしがみついてください!」

「おい! おっさんの言う通りに! だいぶ高速で行くみてェだ!!」

「そりゃ7000メートルの坂道だもんな!! 急げ!!」

「黄金も部屋に運んじまえ!!」

 

 急いでパガヤの言うとおりに帆を畳み、黄金を船室に移動させる。その最中、じょ~~!じょ~~!と聞き覚えのある鳴き声が聞こえてきて、ルフィにその鳴き声の主が激突する。

 サウスバードの言葉を聞いたチョッパーが、「あっ!」と声を上げた。

 

「『おれを忘れるな』って」

「あ…空に一緒に連れてきちゃったサウスバード!」

 

 青海に戻るメンバーも揃い、次の島への記録(ログ)もばっちりだとナミが告げる。ここを降りたらまた新しい冒険が始まるとルフィが言い、そのまま「青海へ帰るぞォ!!!」と宣言した。

その直後にコニスから「みなさん、落下中お気をつけて!!」と言われ、呆けた声がハモった。

 

「「「「落下中??」」」」

 

 スポーン!と船体が宙に浮く。下ではゴゴオオォォ…とすさまじい風が鳴る。メリー号が、大空の真ん中へ放り出されたことに理解が一瞬遅れた。

 ルフィ達は目ん玉をひん剥き、どころかメリー号含めて目ん玉が飛び出す勢いで叫び声をあげた。マリーは声も出せず、心の中で絶叫していた。

 

「「「ああああああああああぁぁぁ………!!」」」

……………………ッ(どうしてこうなった)!?」

 

その様子を、コニス親子は「へそ!」と挨拶しながらにこやかに送り出した。

 

「いきますよ!空島名物、タコバルーン!」

 

頭上でポ~~~ッ!と笛の音が鳴り響く。すると雲の中から巨大なタコが現れ、船体を包み込む。ゾロが敵と認識して切り捨てようとするが、タコが船をつかんだ瞬間急激に減速したことで甲板に沈む。

それに気づいたルフィが周りを確認してみると、どうやらこのタコのおかげでゆっくりと青海に戻れることに気が付いたようだ。

 

「バルーンだっ!」

「減速した…」

「何だコリャ!」

「うわ~!面白ェ~~~‼」

「お…おれァ、おれァついにあの世に逝ってしまうのかと…」

 

 その時、あの美しい鐘の音がカラァー…ン‼カラァー…ン‼と響き渡る。

 ルフィ達は知るよしもなかったが、それはシャンドラと空の民が麦わらの一味を送り出すために鳴らした鐘の音だった。

 ルフィ達はその鐘の音に聞きほれながら、空島を後にしたのだった。

 

ふと見上げると目に映る空

夢か現か、雲の上の神の国

はるか上空1万メートル

耳を澄ますと聞こえる鐘の音

今日も鳴る

明日もまた鳴る

空高々に鳴る鐘の音が

彷徨う大地を

誇り 歌う

 

 

 

 

 

 

 

 余談ではあるが、このタコバルーンは途中でしぼんでしまい、船は勢いよく海面に叩きつけられ全員水浸しの状態からまた青海での旅が始まったのだった。

 

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