「おお~!!やったじゃねぇかマリー!」
「濡れてしまっているからすぐには読めないけれど、本が残っていてよかったわ」
「すげ~!昔の医学の本がいっぱいだ!」
「南の海やグランドラインの海図もたくさん!お手柄よマリー!」
一時間ほど経過し、ウソップ作の潜水服が完成したため、マリーを呼んで浮上させた。その一時間の間で、マリーは船内の本を中心に集めてきたらしい。
船内にあった専門書や地図。他にも難破したときに船の所属について伝えるためのボトルなど、様々なものを持ち帰っていた。あとなぜか、船体にこびりついていた苔や草花を持ってきていた。
「うーん…一通り見てみたけど、航海日誌は無さそうね」
「本棚や机は一通り見たんですが、いくつか鍵がかかってまして…そこになら入ってるかもしれません」
「鍵付きの机ね!ルフィ!鍵付きの机を狙うのよ!」
「ん?おう!そこにお宝が眠ってんだな!」
本のタイトルを検めたところ、大本命だった航海日誌は見つからなかったらしい。古い薬学についての本や海図などの情報は残っていたため、チョッパーとナミはその解読に燃えているようだ。
「マリー、ほかにお宝はなかったのか?すんげー剣とか宝箱とか!」
「宝箱はいくつかありましたけど、調べた限りは全部からっぽでしたね。おそらくもう別の方が物色した後ですよ、あれ」
「そんな~!?」
「それならやっぱり航海日誌よ!何が起こったのか調べなきゃ!」
乾燥途中の海図を眺めながら、サルベージに熱を上げるナミ。
すぐにウソップの作り上げた潜水服をルフィたちに着せ、「ムチャさすなあー」と珍しく気乗りのしない事をいうルフィを「設計に不備はない!」と胸をはるウソップとともに送り出した。
「じゃあ、私たちはサルベージしたものを乾かしましょう」
「はい、ロビンさん」
マリーとロビンはサルベージして濡れた本を乾かすために船内に運ぶ。ロビンは本の乾燥作業も手馴れているらしく、マリーはロビンに教わりながら行った。
本を乾燥させる方法はいくつかある。おそらく一番ポピュラーな方法は、冷凍する方法だろう。濡れた本を冷凍することで、氷から素早く気化させる方法だ。今回は冷凍庫がないためその方法が使えない。その代わり日光と重石で本を乾燥させるが、その前にもやるべきことはある。
まず手始めに、流水で洗う。海水に浸かったため、塩分や泥などを洗い落とす必要があった。ロビンはそっと本を持ち上げ、優しくページを開く。湿ったページはしっとりと重く、慎重にページの間を水で洗う。マリーも横で眺めながら、ロビンを真似て作業を進めていった。
「そうそう、上手ね」
「ありがとうございます。ロビンさんは手慣れていますね」
「ええ。子供のころから、古い本の扱いは慣れているの」
「なるほど…。わたくしはあまり本を読む機会がありませんでしたので、こういった機会は珍しいです」
「あら、ならいい体験になったかしら?」
「はい、とても。わたくしの国は、文字を扱える方が少なくて。本自体がそもそも国に少ないのです」
「そう…識字率が低いのね。貴女はどこで文字を覚えたの?」
「う~ん…留学先、ですかね。お父様の勧めで別の国に暮らした際に、そこの図書館を利用できましたので、そのために。
まあ、結局あまり長く利用はしませんでしたけど。」
「楽しくなかったの?」
「…そうですね。書かれている内容がちょっと…グロテスクだったというか、書き方がグロテスクだったというか…」
「???」
雑談をはさみながら、彼女たちは作業を進めていく。次にページの間にタオルを挟み込み、余分な水分を吸い取る。その後、静かに本を平らなテーブルの上に置き、その上食堂から持ってきた皿を積み重ねて重石にした。日が差し込む窓の近くに置き、ほんのり温かい空気で乾燥が進むのを待つ。
そうやっていると、なにやら外から聞きなれない音が聞こえた。
「……?クロユリさん、何か聞こえない?」
「音楽…の、ようですね。サル…サルベージ?」
サ~~ルベ~ジ~~サルベ~ジ~~♪
サ~~ルベ~ジ~~サルベ~ジ~~♪
シャンシャンとなるシンバルの音に、ピーピーと鳴る笛の音。次第に近づいてくる音に警戒心が強まるが、緊張感はあまり無いのは歌詞のせいだろうか。
「ほかの船がやってきたのかしら。甲板を確認してみましょう」
甲板の状況を確認しに行くロビンに続いて、マリーも外に出たのだった。
・
・
・
「――で、サルベージすんのか?」
「そりゃおめェするもしねェも、そこに船が沈んでりゃ引き上げる男さおれァ!浮いてりゃ沈めて引き上げる男さ!おれ達に引き上げられねェ船はねェ!!」
「じゃあ…見学させてもらっていいですか⁉」
「……そうか!サルベージが珍しいかお前ら!よしいいだろう!見学していくがいい!」
「…誰かしら」
「お客さんですか?」
ロビンとマリーが船内から出ると、猿のおもちゃのようなものを船首につけた船が近くに止まっていた。船の見た目と大きさ、そしてリーダーらしき人物の様子に目が点になる。
とりあえず様子を見ようとマシラと名乗った男のサルベージ作業を見学していると、彼らの船員が海から引き揚げられた。
「園長大変です!!海底へゆりかごを仕掛けにいった船員が」
「海王類にやられたのか」
「いえそれが何者かに殴られた跡が……!」
「何ィ!?海底に誰かいるってのか…!じゃあ……………!!」
どう考えてもルフィ達だと思い至り、「まずい」と心の中でウソップが呟く。ギリッ…!とマシラが鋭い眼光で振り返った。
「オイお前ら!!」
「ヒィ!」
「……あ……その……!」
「海底に誰かいるぞ!!気をつけろ!!」
「「「ハーイ」」」
「さっさとゆりかごを仕掛けてこい!サルベージを開始する!」
「アイアイサ~~~~‼」
バカでよかったァ…、とウソップとナミの心が重なる。先ほどから状況についていけなかったマリーは、この間にと小声でナミに話しかけた。
「あの、ナミさん。この方たちはいったい…?」
「あの沈没船をサルベージしに来たみたい。ルフィ達の事がばれるとまずいから、なんとかごまかして!」
「ばれるとまずいんですか?」
「アイツら、ここいらをサルベージの縄張りにしているみたい…ばれたら絶対面倒なことになるわ」
「……?ここでのサルベージがルール違反であれば、彼らに任せたほうがいいのでは?サルベージしたものを後程購入したほうが…」
「何言ってんの!海賊にそんなの通用しないわよ!」
「そ、そうでした…!もうわたくしは海賊でした…!」
呑気というか、堅気のようなことを言ったマリーをナミが窘める。海賊になって日が浅いマリーにとって、違法行為自体がまだ考えとして浮かばないらしい。
「おいおめェら!! あいつらはカボチャだと思え! 見学者がいるからって……キ……ウキキ……緊張するココねぇぞおめェら!!」
「「「アアイアイガーーーーーー!!」」」
改めてサルベージの作業が進む中、マシラは満面の笑みで手を振ってくるのでナミたちも手を振り返していた。見学されながらのサルベージが初めてなのか、緊張しているマシラ海賊団は、こちらがルフィ達に給気していることに気づいていない。
マシラのサルベージ船の"ゆりかご"が海底の船を捉え、ルフィ達の目の前の壁が破壊された。配管からルフィの『なんだコリャ……!』という声が聞こえ、ウソップとナミとマリーは咄嗟に配管に手を当てる。
不審に思ったマシラがこちらを見ているのに気づき、一拍の間を置いた後、ウソップは咄嗟に相手の船首を示した。
「な…何だァ⁉そのサル‼サルは何ですかァ‼」
「ウキキ…お前…お目が高いな。そうコイツはただの船首じゃねェ‼発進だ!船体ハンター!」
「「「アイアイサー‼」」」
船首のサルが動きだすのを見て、ウソップとチョッパーが目を輝かせて「すげぇ!」とはしゃいでいる。マリーも「船首を機構にする発想、なかなかですね…!」とどこか興奮したように呟くので、少年のロマンを全く理解できないナミは「なにが?」と冷めた声であしらった。
「よーーし!“吹き込み”いくぞォ!」
「アイアイサー!」
「まさか…息を吹き込んで船を持ち上げる気…!」
「メリアの酸素生成を上回る肺活量、すさまじいですね!」
すううぅぅぅ、と思いっきり息を吸い込むマシラ。次の瞬間、プウッ!!ウウウゥゥゥと息を吹き込み「船体浮きましたーーーっ!」と部下たちの声が響く。どうやらマシラの息によって空気を送り込み、船体を引き上げることに成功したらしい。追加の空気を送り込み、着実に船体が浮き上がっていく最中、部下たちの「ギャアアア~っ!!」という悲鳴が響き渡った。
「どうした⁉何があった子分ども‼」
「船の中に何者かが!!ああァ~~…」
「おのれよくもおれの子分たちを!!何奴だァア!!」
………。
「すみません、カメラは持ってません…」
「何!?」
シャッターチャンスを作ったのかとウソップが呆れる中、再度部下の悲鳴を聞いたマシラは「今行くぞ!」と答えて部下を助けるため海底へと潜っていった。
「…ナミ、下!ウソップとチョッパーも、下を見てください!」
「今度は一体なん…だ…!?」
「ねぇ、船の下に……」
「ああ…なんかいる……」
突如血相を変えたマリーがナミたちに叫ぶ。言われるままに海面を見てみると、目の前の水面が不自然に波打ち、マシラたちの船の何倍もの大きさのある影が沈んでいた。
次の瞬間、巨大な波しぶきを立て、亀に似た山の如き大きさの海王類が現れた。その口には、先ほど降ってきた沈没船とルフィ達につながっている給気ホースが続いていた。その様子を見たマシラの部下やナミたちはパニックとなり目を剥いた。
「「「園長~~~!!」」」
「なにコレ~~~~!?コレなに!?なに大陸!?」
「知らねェ!知らねェ!!おれには何も見えねェ!!なんも見てねェ!!これは夢なんだ!!」
「夢!? ホント!!?」
「「「あーーー夢で良かった♡」」」
「……あら、あの子たち全員船ごと食べられちゃったの?」
「みなまで言うなァ~~~~!!」
「ま、まだ生きてます!殺さないでください!」
「給気ホースが口の中に続いているから「や~~め~~ろ~~‼」「生きてます!見えてますから!」」
ロビンの一言で泣きわめくウソップに、マリーが必死に声をかける。が、慰めにしか聞こえなかったのかウソップたちの耳には入っていなかった。
「うわあああ‼やっぱりルフィ達は食われたんだ~~~!!」
「だいたいお前だぞ! こんな偉大なる航路の海底へあいつを行かせたのは! 根拠もねェのに大丈夫なんててめェが言うからあいつらは……!」
「そうね……」
暗い表情で肩を落とし、俯くナミ。悔恨に満ちた表情で顔を上げたかと思うと
「ごめん!!!!」
と、あまりにも正々堂々、虚心坦懐に謝罪を告げた。
「…………! そうなんだがなんか違う……!!」
そのさっぱりとしたナミの様子に納得がいかずウソップはしくしくと涙を流す。
亀が再び海底に潜ろうとしているのか、給気ホースが引っ張られメリー号ごと揺れだした。
「いやああああ!!」
「ロビン、お前強ェんだろ!? 何とかしてくれ!!」
「あれはムリよ…おっきいもの」
「じゃあマリー、アレの血を吸ってこい!」
「亀の体調に影響が出る前にわたくしが破裂します!」
「野郎共!ロープを手繰り園長を救えェ!マシラ海賊団の誇りと名誉に賭けて~~!!」
「ウッキッキ~~~~!!」
「園長はまだ生きている~~~~!!」
「ウッキッキッ‼」
マシラ海賊団は一致団結しマシラを救い出そうと、各々の役割を果たそうと持ち場につき始める。その様子を見てハッとしたウソップも気を引き締めた。
「……!そうだ…こんな時だからこそ団結力が試される」
「ウソップ!」
「おう!」
「ホースを切り離し安全確保!」
「はい!」
「悪魔かてめェは!!そしてマリーは容赦ねぇな!?」
「悪魔だ~~~~~!!」
「あら。結構力強いのね」
ナミの指示に従い素早くホースをブチッ!と容赦なく千切るマリーに対し、ウソップが声を上げる。ロビンは亀により船を引っ張ったホースを容易く千切るマリーの力に目を瞬かせていた。
大混乱の船上が突如、パッ、と暗闇に包まれ「へ?」とウソップが呆けた声を上げる。唐突に変わった空模様に目を大きく見張るもの、逆に目をこするものと一味は驚愕をあらわにする。
「何じゃコリャ~~~!!」
「夜になった……!?」
「ウソよ、まだそんな時間じゃないわっ!」
「じゃあなんなんだ!ルフィ~!ゾロ~!サンジ~!」
「…?」
ロビンとマリーはマシラ海賊団たちが唐突な夜に恐怖している事に気づいた。
「すみません、この現象についてご存じですか?」
「アア…!今すぐ逃げな嬢ちゃん…突然来る夜は怪物が現れる前兆なんだ…!」
「怪物?あの亀以外の?」
ふん!という掛け声とともに、ルフィが甲板に落ちてくる。それに続いて、海底を警戒している様子のゾロとサンジが船に上がってきた。
「船出せ!! さっさとここを離れるんだ!!」
「やべぇぞあいつは……!!」
「おかえりなさいませ、ゾロ、サンジ」
「そうだな、とにかくあのカメから逃げよう!!」
満杯にまで膨れ上がった袋を抱えなおして、二人は口々に訴えた。
「カメ?いや、海には猿がいたんだ」
「きっと海獣の一種だ」
「そいつが途中までルフィと仲良くしてたんだが」
「サル同士だからな」
「おれ達が船から拾ったこの荷物見て急に暴れだしやがったんだ」
「暴れることゴリラの如しだ‼」
「そいつはマシラってサルベージ野郎さ!しかしお前らあのカメの口からよく逃げられたな!」
「カメ? なんだカメって」
ウソップは亀に視線を向けると、亀の様子に気が付き顎に手を当てる。「ん?亀の様子が変だな、口が開きっぱなしで…」口が開きっぱなしなことで逃げてこられたのだと納得した。
「「ウオオ‼なんじゃありゃあ!?」」
「気づけよ! お前らあれに食われてたんだぞ船ごと!!」
「あれから逃げますので、マストを引くのを手伝ってください!」
三人の無事も確認で似たので、大急ぎで逃げる準備を始める。「ぷはーーー。あり?なんで夜なんだ?」と困惑するルフィを置いて急いで帆を張る中、ザッパアァァン!と音を立ててマシラが船に乗り込んだ。
「おめェらこのマシラのナワバリで財宝盗んで逃げきれると思うなよォォォォ!!」
「財宝!?財宝があったの!?」
「ああ!いっぱいあった」
「マズイ、あいつに船の上で暴れられたら……!」
「………?…………あわわわ!?」
マリーは恐怖から後ずさり、がくがくと震えて「ア……アア…」と言葉にもならない呻き声をあげる船員たちに首を傾げ、その視線の先を追う。
そこには、巨人族でも到底及ばないほど高い、天まで届くような人の影があり、思わず悲鳴を上げる。
ロビンやチョッパーも気が付いたらしく、マシラ海賊団たちの警告の声に続いて全員がその人の姿に絶句する。
島にも匹敵するかのような威容、翼のようなものが生えた姿に、いつか伝承で聞いた天使を重ねる。巨大ガレオン船を一飲みにする海王類の亀ですら震え上がった。
ゆっくりと動き出し、槍のようなものを振り下ろそうとする姿に、全員の口から同じ言葉が飛び出した。
「「怪物だァ~~~~~~!!」」
それぞれが船のオールを全力で漕ぎ、麦わらの一味とマシラ海賊団は大急ぎでその場から逃げていった……。
・
・
・
「……あり得ねェ…」
「ああ…あのでかさはあり得ねェ…」
数時間後、外の状況を確認しに向かったロビンとマリーを様々な出来事が襲い、全員が疲労困憊となっていた。
「今日は何かがおかしいぜ…」
シュボッと煙草に火をつけるサンジ。
「巨大ガレオン船降ってきたと思ったら」
うんざりとしたゾロが言い、
「指針を空に奪われて」
ナミも膝を抱えながらつぶやく。
「猿のようなゴリラのような方が現れて…」
目が回ったようにふらふらとしながらマリーが言い
「船を息で引き揚げる」
息を切らしながらウソップも続き、
「でも船ごと喰っちゃうデッケー亀に遭って」
チョッパーもそれに続く。
「夜が来て…」
頬に手を添えたロビンが言い、
「最後は巨人の何倍もある“大怪物”」
いまだに信じられないという表情のルフィ。
「…さすがにあれにはビビったね、どーも…」
いつのまにか乗り込んでいた、猿のようなゴリラのような男、マシラが締めた。
ふう……っ。
「「「出ていけ~~~~~!!」」」
ため息の直後、マシラはゾロとサンジとルフィによって蹴り飛ばされて空に消えていった。それはもう、夕方か日朝のアニメのごとく、ピカーンと。
気を取り直し、ルフィ達が沈没船から引き揚げてきたものを広げることとなった。袋からゴロゴロと転がってくるのは古びた鎧や剣などばかり。使い道の無いガラクタばかりだった。
「大体ねーあんたたち…。何のために海底へ潜ったの!?こんなガラクタばっかり持ってきて、空への手がかりなんてひとつもないじゃない!」
「だからなかったんだ何も!」
「ああそれがホントなんだよナミさん」
ガシャンガシャンとサルベージしてきた鎧を着て歩き回るルフィを尻目に、ナミがゾロとサンジに不満をぶつける。
それに対して、サンジが必死に弁解する。船内はとうに荒らされており、目ぼしいものは全て空っぽ。襲われたのか、内乱があったのか、武器が刺さったままの骸骨や壁ばかり。鍵のついた宝箱を開けても、羽一つしか落ちていなかったことを説明する。
「だったら尚更情報が必要じゃない!いい!?これからもし私達が空へ行くというのなら、あの船に起こったことはもしかして私達の身に降りかかるかもしれないってことなの!情報が命を左右するのに何このサビた剣!!食器!!生タコ!!必要なのは日誌とか海図とかそういうの!!」
「「あああああっ!?」」
怒りのままにガンガンとサルベージしてきたものをけり砕くナミにオロオロするばかりのゾロとサンジ。その近くに近づいてきたルフィを鎧ごと粉砕し、なおも怒りを口にするナミをマリーが宥めに行く。
「まったくもうっ、どこを調べたの?本棚は?金庫は?船長室の床下は?マリーに言われた鍵付きの棚は確認したの?」
「落ち着いてください、ナミ。少なくとも情報が少ない今、今ある情報で探すしかないかと」
「うっ…そうだけど…」
「ナミさん!おれ君にきれいな貝殻を取ってきたんだ♡」
「いらないわよバカ!」
空気を読まずにナミにプレゼントを贈るサンジに怒鳴りつつ、ナミは頭を痛めながら階段を上がっていく。そこにマリーもついていき、今後の方針について話しかけた。
「まずはジャヤという、マシラ海賊団の拠点に向かいませんか?そこでなら、彼らのこれまでのサルベージの成果について聞けるかもしれません」
「……ん?あんた、あいつらの拠点について知ってるの?」
「あら、植物さんも手に入れてたの?」
手すりに腰かけたロビンが、ポケットから“ジャヤ”と書かれた永久指針を取り出すと「さっきのお猿さんの船から盗っといたの、一応」と微笑み、ナミに手渡した。
「いいえ、盗ってませんよ。彼らの船に着いている子たちと話しただけです」
「「??」」
「……ああ、言ってませんでしたね。わたくしたちメリアは、テレパシーで植物と会話できるのです」
「テレパシーで植物と会話!?」
「不思議な能力があるのね」
「彼らの船に着いていた海藻に、『どこから来たのか教えて』と尋ねたら、ジャヤという名前と方角を聞いたので、間違いないかと」
「うっ……」
マリーとロビンから話を聞いたナミは一言呟くと俯き言葉を詰まらせる。怪訝そうにナミの顔を覗き込むマリーとロビン。
「私の味方はあなた達だけっ……!!」
「……相当苦労してるのね」
「あのガレオン船から採取した苔も、もう少ししたら話せますので、少々お待ちください…」
「そっちもよろしく…マリーに便利な能力があってよかったわ…」
安心したのか、階段に座り込むナミ。ナミの逆鱗に巻き込まれぬよう息をひそめていたウソップとチョッパーも、興味深々と言った様子でやってきた。
「マリーは植物と話せるんだな!おれは動物と話せるぞ!」
「あら、すごいですね。わたくしは動物とは話せないので、二人で分担しましょう」
「情報収集にも役立ちそうね」
「というか、植物にも言葉があんのか?話せないのに?」
素朴な疑問、といった様子のウソップ。それに対して、マリーは得意げに答える。
「厳密には言語ではなく、 “感情・記憶を読み取っている”というのが正解ですね。話すことはなくとも、植物だって起こったことに対して意見を持っています。わたくし達はその電気信号を読み取るのです」
「へぇ~。不思議なもんだな。なんで動物と話せないんだろうな?」
「動物は自己認識だけで完結する思考形態なので、こちらからのテレパシーを動物側が受信できないんですよ。他人の感覚や思考を自分のものとして受け入れる土壌がないというか…」
「なるほど…?」
「…動物側の問題でテレパシーが伝わらないということは、メリア側からは読み取れるの?」
「細かい内容は分かりませんが、感情だけならば読み取れますよ。例えば、“ウソップさんは今空腹である”みたいな単純な内容であれば、人間からも読み取れます」
マリーがそう言った途端、ウソップのお腹が、グ~~、と鳴る。「やべ、たこ焼きのにおいにつられてつい…」とお腹をさするウソップのもとに、サンジがアツアツのたこ焼きを持ってきた。誤魔化す様にたこ焼きにパクつく様子に呆れて笑いながら、一行は一休みしたのだった。