「んんんんめへへへエ~~!!ヤバうま!」
「何ィ!?そんなにか!?おれもおれも」
「おい、これもあけてくれ!」
「はい、少々お待ちを……?」
空島のビーチをコナッシュのジュースとともに楽しんでいると、どこからかポロンポロン♪と弦楽器の弾かれる音が聞こえてきた。ゾロがスースー!と鳴く狐のような生き物と戯れているのを横目に、サンジとともに音の発生源を探すと近くの丘に人影を見つけた。
「おい、あそこに誰かいるぞ!!」
「また…!ゲリラか!?」
「笛!笛は!?」
「待て違う!!…………天使だ!!!」
「天使!?」
サンジの言葉に何事だと疑問に思いながらも、一同が指さされた丘の方向に視線を向ける。
こちらからの視線に気が付いた人影は、背中に羽のような意匠を付けた少女だった。少女はこちらに会釈して、一言。
「へそ!」
いきなり何だ?
一瞬思考が停止している一味の様子に気づいているのかいないのか、少女はをフカフカと空島の雲特有の足音を立てながらにこやかに近づいてきた。
「青海からいらしたんですか?スー、こっちへおいで」
「……下から飛んで来たんだ。お前ここに住んでんのか?」
「はい、住人です。ここは“スカイピア”のエンジェルビーチ。ふふっ、コナッシュ美味しいですよね?」
少女は奏でていたハープを背中に背負い、ペットらしきキツネらしき生き物を抱き上げて自己紹介をする。
「私はコニス。何かお困りでしたら力にならせてください」
「ああ、それが君の視線で心にやけどを……………!!!」
「邪魔」
いつものようにレディにメロリンとなり口説こうとするサンジを、一言で切って捨てたナミがサンジの耳を引っ張って阻止する。耳が赤くなるまで引っ張られたサンジは声こそ出さなかったが、おそらく「あああああぁぁ」と悲鳴を上げていたのではなかろうか。その様子を「うわぁ…痛そう…」と思いながらも放っておくことに決め、マリーはナミとともにコニスとの会話に加わる。
「わたくし達、ここに来たばかりでして。いろいろ教えていただけませんか?」
「はい、なんでも聞いてください」
その後、海からやってきたコニスの父・パガヤも加わり、空島での生活などについて教えてもらえることとなった。
ちょうど漁から帰ってきたところらしいパガヤが“空の幸”をごちそうすると言い、ルフィとウソップに加えサンジもそちらに向かう。
その間にナミはパガヤの乗ってきた“ウェイバー”という乗り物について尋ねていた。風が無くても自在に走れる船というものに夢中になったらしく、しばらく一人で海を走ってくるとのこと。
到着したパガヤ宅で
「パガヤ、貴重な本を読ませていただきありがとうございます」
「いえいえ。こんな本しかなくてすいません」
「いいえ、卑下しないでください。仕事にかかわる知識を見せていただけるだけで幸運です」
バクバクと空島の食材を満喫するルフィ達を見ながら、テラスで本を読み進めているマリー。そこに料理を作り終えたサンジがナミを呼ぼうとテラスに近づいてきた。
「ナ~ミすわぁ~~ん、お食事が出来ましたよ~~、お?」
呼びかける声が疑問の声になったことに気づき、マリーも海に目を向ける。そこには先ほどまで海を駆けていたウェイバーの姿はなかった。
「おい、ナミさんはどこに行ったんだ?」
「いるだろ海に」
「いや、いねェ……」
「じゃちょっと遠出してんだよ、放っとけって!」
料理に夢中で興味なさそうに生返事を返すルフィたち。彼らとは対照に、コニスとパガヤは顔を青くさせた。
「ち…父上…大丈夫でしょうか…!?」
「ええコニスさん。私も少し悪い予感が……」
「何だ?どうした?」
「このスカイピアには何があっても絶対に足を踏み入れてはならない場所があるんです。その土地はこの島と隣接しているので、“ウェイバー”だとすぐに行けてしまう場所で……」
「足を踏み入れちゃならないってなんだそれ?」
「……聖域です。神の住む土地……”アッパーヤード”」
「神がいるのか!?
「はい。ここは神の国ですから、全能の神“ゴッド・エネル”によって治められているのです」
「…ああ、なるほど。ここでは支配者の事を神と呼ぶのですね。
「……ハッ!おいルフィ!てめェ今何考えてる!?話をよく聞けよ!?足を踏み入れちゃならないっていうのは絶対にそこに入っちゃならないって意味なんだぞルフィ!!」
「あーーそ~~~……入っちゃいけない場所があるのか。そうか…絶対に入っちゃいけねェ場所かァ……」
((((絶対入る気だ/ですね…))))
キラキラとした笑顔で聖域についての情報を噛み締めるルフィの様子に、一味は同じことを思った。マリーもテレパシーを使うまでもなく、ルフィの考えを読み取っていた。
「ん?でも神様なら入っちゃいけねェとことかはいっても許してくれんじゃねェのか?優しいだろ?」
「いえ…でも神の決めたことを破るのは神への冒涜ですし…」
「…そうか。まあいいやどっちでも」
「船長さん…わたくしのところでもそうですが、聖域という場所に入るのは、そこを守る人たちを納得させてから入るべきですよ。わたくしは止めませんが、守る人たちと戦えというのはお断りします」
「ええ~~~。おれ、マリーのところの聖域にも行きてェぞ!」
「事前に行きたいと言えば許可される可能性はありますが…無理やり押し入って王の逆鱗に触れるのは嫌ですよ、怖いので」
「ちぇ~~」
王の逆鱗とやらを想像したのか、ブルッと体を震わせるマリー。それに対して、ルフィは不満げにため息をつく。
しかしすぐに切り替え、ナミを探すという名目で神の島に向かうため船に乗り込むルフィ達。マリーはそこから一人抜け、パガヤとともに古いウェイバーを直すためにビーチに残るといった。
「ええぇ~~!?冒険に行かないのかァ!?」
「ナミの捜索であれば、戦力は揃ってますし…ウェイバーの作り方を覚えたほうが、のちの航海に役立ちそうだと思いまして」
ほら、とマリーは古いウェイバーをパガヤとともに見せる。
「わたくしはここでパガヤにウェイバーについて学びたいと思います」
「んん~~~でもよ~~!」
「おいルフィ行くぞ。早く乗れ!」
マリーの冒険に連れて行こうと渋るルフィに、ナミを早く探しに行きたいサンジが声をかける。しょうがないとマリーから目線をそらして船に乗り込もうとしたルフィは、マリーの背後にあった階段の上から降りてくる不審な一団に気が付いた。
一団は階段から降りるとズリズリズリズリ…!と匍匐前進を始め、ルフィ達の目の前までやってくると立ち上がり、一団のリーダーらしき男性が「へそ!」とコニス達に話しかけた。それに対して、イヤ何言ってんだ!と声を上げるルフィだが、男は意に介さず「あなた達ですね⁉“青海”からやって来られた不法入国者7名というのは‼」と毅然として告げた。
「ええっ⁉不法入国⁉」
「ん?なんだそれ?」
「弁解の余地はありませんよ。“天国の門”監視官アマゾンより、“
ぴらっと見せられた写真には、確かにルフィ達の姿が映っていた。それに対して、何かの間違いではないかと尋ねるパガヤ。その様子をサンジ達は、入国料とやらを払っていないことを思い出しながら眺めていた。
それに対して男は、この土地の治安を守るホワイトベレー部隊の隊長だと名乗り、罰を受け入れればその場で安全な旅行者になれると言った。その方法とやらを尋ねたところ、元の入国料の10倍、つまり800万ベリーもの大金を払えという理不尽な請求を突き付けられてしまった。
それに対して高すぎるとサンジが文句を言っていたところ、ウェイバーに乗ってちょうど戻ってきていたナミが、その人たちに逆らっちゃダメ!と言った舌の根も乾かぬ間に、請求された金額に対して「高すぎるわよ!!!」と海からの勢いもそのままにウェイバーで男を轢いたのだった。ついさっきまで、逆らっちゃダメと言っていたにも拘らずの暴挙に思わずゾロとウソップがツッコミを入れる。
「「 オ イ 」」
「隊長~~!!!」
「ハッ‼しまった‼理不尽な多額請求につい……‼あ、おじさん。ウェイバーありがとう、楽しかったわ!」
「いえいえどうもすみません。そんなことよりあなた方、大変なことに…!」
「おかえりなさい、ナミ。見事な操縦でしたが、最後のひき逃げはいかがなものかと」
「今のは事故‼“神”とかってのに関わるとヤバイのよホントに!ここまま逃げるわよ!」
「待て~い!!!」
ナミにウェイバーで轢かれた男が、鼻血もそのままに逃げようとするナミたちに待ったをかける。男は、これは公務執行妨害であり第5級犯罪に値する。神の名のもとに“雲流し”に処すと宣言した。
ルフィは“雲流し“という単語から気持ちよさげな何かを想像したようだが、コニスが言うには船を空で彷徨わせる死刑らしい。空から落ちてきたあの巨大なガレオン船は、おそらく200年前に雲流しの刑を受けたものだろうとロビンは推測した。
「引っ捕らえろ‼」
「ハッ‼」
「“
「ナミ、マリー!邪魔だ、船に行ってろ!」
「はい!」
「うんっ!」
「何だアレ、雲!!?」
攻撃された瞬間、ルフィはマリーを突き飛ばしナミとともに避難させる。マリーはそのままナミをかばいながら船へと駆け出した。
そこに問答無用とばかりに射かけられる、鉄の矢じりの代わりに貝殻のついた矢。それは矢の通った軌道上に雲の道を残した。その上を、エンジンのようなものが付いた靴を履いた兵士が滑走し、直接ルフィの首を狙いに来る。
その様子を、なんで矢の軌道に雲を残すのか疑問に思っていたルフィが納得して「なーーるほど‼」と面白がりながら、ゴムの体を木に巻き付けて軽やかによける。
そのままルフィは空中で「“ゴムゴムの…花火”‼‼」と叫び全方位にパンチを繰り出し、一撃で男達…ホワイトベレー部隊を撃破してしまった。
離れたところにいて攻撃が届かなかった隊員たちもいたが、いつのまにか船から降りてきていたゾロとサンジにより同じように切り伏せられ、蹴り倒され悲鳴を上げる間もなく沈黙する。
一瞬の間、砂浜にはさざ波の音だけが残った。
「―――ところでナミ…うちの船の今の経済状況は?」
「残金25万ベリー」
「思ったより残ってたな」
「あれ、ナミさん。こないだ記録見た時には5万ベリーじゃなかったっけ?」
「うち20万ベリーは、昨日マリーとロビンが酒場で巻き上げてきた分よ。それが無かったら5万ベリー」
「なんでそんなにビンボーなんだ!?船長としてひとこと言わせてもらうけどな……おめェらもう少し金の使い方ってもんを考えて「「「お前の食費だよ!」」」…スイマセン」
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入口にいた監視員にハメられたということに気が付いたナミがスカイピアから地上へ帰りたいと声を上げるが、ルフィは聞く耳持たず“アッパーヤード”に向かう気満々である。ルフィとサンジはパガヤに料理の残りを貰いに家に戻り、ウソップは船の修理のために備品を分けてもらいに行った。
残りのメンバーは船に残り、3人を待つこととなった。その間にナミは何とか地上に帰ろうと他のメンバーを説得しようとするが、結局「ルフィが行く気なら何言っても無駄」という結論になってしまった。
「うう~~~!マリー!マリーはあたしの味方よねェ!?」
「危険を避けたいのは同感ですが…船長さんの命令が第一ですので」
「なんでよぉ!ほんとに怖いのよ!なんでそんなに落ち着いてられるのよ!」
「いえ、正直いまウェイバーの修理が楽しくて、そっちに集中したいというか…」
「裏切者ォ!」
マリーはというと、砂浜に降りてウェイバーの修理に尽力していた。パガヤから見せてもらったウェイバー修理の指南書を一瞬で覚えたマリーは、その知識と貰った素材をもとに修理に夢中だった。
見たことのない機械を相手に、マリーはご機嫌だった。工具をトンテンカンと振り下ろしながら鼻歌を歌いだすほどに。その様子を、ナミとロビン、そして地上への帰り方を伝えに来ていたコニスは眺めていた。
「クロユリさんって、ああいった機械いじりが好きなのね。長鼻君と気が合いそう」
「そういえば、猿のおじさんたちの船の船首を見た時もあいつらと同じような反応していたわね…」
「直せれば便利そうだし、しばらく放っておいたら?」
「そうね…私としても、移動の足が増えるのはいいことだし…。それでコニス、白海に降りれる特別な海流があるってホント?」
「はい。その海流を使えば、広大な白々貝を横切り白海へ、そのまま“
「やったわ!ルフィに内緒で、その流れにゴーイング・メリー号を乗せちゃえば…!」
「後で気付いても、もう手遅れってわけだな…」
「彼が諦めるかどうかは別だけど」
「ぐぬぬ…」
陰でそんなことを話している4人を、最初は意に介さずマリーは修理を進めていた。しかし、コニスの様子に、ロビンとマリーが疑問を覚える。
ロビンは、コニスの頬を伝う冷や汗に気付いて不審に思い、マリーは自分のテレパシーの能力でコニスが“罪悪感”を覚えていることが気にかかった。
ロビンはそこから“ほんとにそんな海流があるのか”という疑念に行きついたが、マリーは“まあいいか”と流した。なぜなら、彼女の感情に『悪意』が無かったので。
マリーはそのままウェイバーの修理を続け、亀裂の入った土台の板を新しいものに取り換え、折れた操縦桿に形を整えた木を埋め込み接着剤で接着する。動力となる“
「……?ナミ、何やら大きな生き物が近づいています。どうしますか?」
「え?周りには何にも見えないわよ?」
「船の下です。敵意は無いようですが……!?」
「ちょっと待って‼何これ、何なの!?」
ナミとともに船の下を覗き込んだ瞬間、ザザザザザ…!という音とともに船が勝手に動き出す。咄嗟に手すりに体を預けて、振り落とされないようにしがみ付いた。
沖のほうまで連れていかれる中、雲の中から巨大な赤い甲羅が浮かび上がる。船を両側から掴んで固定する鋏に、マリー達は既視感を覚えた。それはこの国に入るときに乗った、“特急エビ”を思わせる姿をしていたが、大きさはかなりこちらのほうが大きい。遠くでこの様子をルフィ達とともに目撃したパガヤは、「あれは…“白々海名物 超特急エビ“!」と叫んでいた。
「どこかへ連れて行く気だ、俺たちを!おい、全員船から飛び降りろ!まだ間に合う!」
「だって船は!?船持っていかれたら…!」
「心配すんな!俺が残る!」
「そんな!あんた1人残ってどうなるの!」
「いいえ、わたくしも残ります!そもそもこの雲の海に落ちては、突き抜けて下に落ちるだけですし!」
「……いいえ、そんなこともできない様に
「「「!?」」」
ロビンの言葉に、彼女の視線の先へと目を向ける。船の後方では、大型の空魚達が雲の海をかき分け、大きく口を開けながら船を追ってきていた。海に飛び込んで逃げようにも、彼らがいては食べられて終わりだろう。
このまま神の島に連れていかれるしかないとわかったナミが、ルフィ達の名前を大声で叫んだ。
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連れ去られたナミたちをルフィ達が探しに向かい森の中を進み様々なトラップを潜り抜ける中、マリー達は見知らぬ土地へと運ばれていた。大きな湖のように広がる雲の中央にある、祭壇のような場所の上にメリー号が乗せられてしまい、打開できる方法を模索している。
「あのエビめ…メリー号をこんなところに乗せやがって…」
「まるで生贄の祭壇ね」
「あんまり怖いこと言わないでよロビン~!」
「イケニエ?イケニエってなんだ?」
「生きたまま神様に捧げられるってことです」
「なんだ、生きてるんだな!おれてっきり、窯ゆでにされんのかと思った!」
「…まあ、最終的にはそうなるかもしれませんね」
「え゛~~~!そんなの嫌だぞ、っとっと!?」
「チョッパー、あぶない!」
「オレが行く!」
生贄の話に驚き、うっかり足が滑り船から転げ落ちるチョッパーを追ってゾロが祭壇を降りる。雲に落ちそうになったところを寸での所でロビンが能力で受け止めるが、そこを狙った巨大な空サメが牙をむき出しにして飛び掛かる。そこにゾロが割込み牙を刀で受け止める。
そのままゾロは雲の中へと落ちるが、何回かサメに打ち上げられるのを繰り返した後、よりによってサメを殴り飛ばして脱出してきたのだった。
「ハァ……ハァ……まいったな。これじゃ岸へも渡れねぇ、いったいどこなんだここは…」
「間違いないことは“
「まだ空サメがうようよいるぞ」
「巨大な鳥もたくさんいますね」
「……ここで飢えさせる事が天の裁きかしら」
「そんな地味なことするもんなのか?神ってのは」
「さァ…会った事ないもの」
「………」
マリーは自分の国の“神”と呼ばれている自国のリーダーを思い返して、「あの方なら絶対、自分が楽しめる方法かつ周りを盛大に巻き込んで天罰とやらを落とすな。性格悪いから」と、考えていた。神が人に裁きを下すということは、猫がネズミで遊ぶようなものである。
ひとまずチョッパーに船の修理を任せ、一同は森の中を探索することにした。
ゾロは神を探すため。
ロビンは歴史あるものを探すため。
そしてナミは、歴史に埋もれる
ちなみにマリーはナミの護衛として呼ばれた。どう考えてもバリア目当てである。
「ナミ。チョッパーを一人残すなら、瓶に貯めておいたわたくしの蜜、少し使ってよろしいですか?」
「なに?怪我でもしたの?」
「いいえ、チョッパーの護身用です」
「??? まあいいけど…」
船から岸までは、ゾロが見つけた植物の蔓をターザンロープのように使って渡ることとなった。『アーアアーー…』と声を上げてゾロが渡り、ロビンも後から渡っていった。次にナミの番となったが、移動する高低差は50mほど。失敗したら死ぬような高さに、ナミは思わず腰が引けてしまう。
「ううっ……ちょっと高いかも…」
「ナミ、わたくしが運びましょうか?」
「え?どうやって?」
「わたくしがナミを背負って向こう岸に渡れば、着地の心配はしなくて済むのでは?」
「い、いいの?お願いできるかしら」
「かしこまりました」
ナミはマリーの背中にしがみつく。マリーは片手をナミの腰に回し、もう片方の手で蔦をつかんで体を宙に投げ出した。
ブォンッ!という音を立てて進む。二人の体が大木に打ち付けられようとした瞬間、マリーは足を木に向け、まるで壁に着地するように衝撃を殺してみせた。
そのまま地面にナミの体を下ろすと、ナミはかなり恐怖を感じたのかへたり込んでしまった。
「ハァ…ハァ…!ご迷惑をおかけしました…」
「いえ。問題ありません」
「にしても、本当に大きい森ね」
「ええ、これならチョッパーの
「護衛?」
マリーは持ってきたメリアの蜜を、岸に生えている木の根もとに振りかける。
「
一言。マリーは木に語り掛ける。
次の瞬間、地響きが鳴り響く。森の静寂が、突如として破られた。
「……え?」
「なにぃ…!?」
地鳴りのような低い振動が足元を揺らす。鳥たちが一斉に飛び立ち、葉のざわめきが風とは違う不穏なリズムを刻み始める。
目の前にそびえ立っていた巨木が、軋むような音を立てて枝をねじり始めた。根が土を掘り起こしながら持ち上がり、まるで足のように地面を踏みしめる。
「う、動いてる……あんな大きな木が……!」
ナミの喉を、言葉にならない驚愕が塞いだ。
雲の海をかき分け、メリー号のある祭壇へと木が移動している。幹をよじり、枝を伸ばし、根で踏みしめる。そこにあったのは、己が動けることを知った赤子のように自由を謳歌する大樹の姿だった。
「うおぉぉ~~何だコレ~~!?」
「マリー!なんなのこれは!?」
「メリアの蜜が持つ機能の一つです。植物に振りかければ、自立して動けるようになるんですよ」
「すごいわね…こんな能力初めて知ったわ」
「人間が振りかけても意味ないですからね。木々に命令できるのはメリアだけ。人間が振りかけたところで、木たちは自分が動けるとも気付けない」
巨木は祭壇に到着すると、低い位置からも枝を伸ばし始めて祭壇を覆い始めた。乾いた音が連続して響き、目の前の枝がまるで動物のようにうねりながら遺跡の壁を這い回る。
その成長は、まるで時間が狂ったかのようだった。数秒前に出現し伸び始めた枝が、今や人体ほどの太さに膨れ上がり、祭壇を飲み込む勢いで伸び続けている。
そして枝が祭壇を一周すると、薄く鋭い笹の葉のような葉と茨のような棘を付けた。それまで生えていた本来の葉や枝とは似ても似つかないそれは、まるで侵入者を拒む要塞のようだった。
「すっげェ~~~!!」
「まるで童話に出てくる茨の城ね」
「あの木には『船とトナカイを守れ』と命じたので、何か襲ってきても大丈夫でしょう」
「じゃあチョッパー。船番頼むぞ!」
「よろしくね!」
「すぐ戻るから」
「おう!みんな気を付けて行けよ!無事に帰って来いよ!」
そうして一同は森の中に探索へ向かった。みんなの心配していたチョッパーは、少しして「一番危険なのは、一人で残されたおれだ!」と叫んでいたが、大樹は我関せずにただ風に揺られていた。