花人間が麦わらの一味に加入したようです   作:絹毛鼠

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リリィ・スカイ(空島編4)

 翌朝、なぜかメリー号が修理されているというハプニングはあったものの、おおむね問題なくマリー達は合流地点である東の海岸に向けて出港した。

その道中、元『神』であったという空の騎士ガン・フォールによってこの国の歴史をマリー達は教えてもらった。

 

 ごく平和な空島であった“スカイピア”は、それまで突き上げる海流(ノックアップストリーム)によって運ばれる青海のわずかな物資を重宝するだけの普通の空島だった。しかし400年前、ジャヤの一部という極大の大地(ヴァース)がやってきたことで状況は一変した。

 空島の住人は当然のように、天が与えた“聖地”として崇め、喜んだ。

 

 そこにいた先住民を押しのけて。

 

 以降400年、先住民であったシャンディアとの故郷をめぐる戦いは終わらず繰り返しているという。

 そこへ、当時神だったガン・フォールが平和的に解決しようと何度も対談を申し込んだが、交渉は決裂。今の生活を完全には手放せないため全ての土地は返せないと言うガン・フォールと、すべてを返せと望むシャンドラの長であるワイパーでは話は平行線をたどるしかなかったらしい。

 

 その話を聞いたウソップとサンジが「「じゃおめェらが悪ィんじゃねェかよ‼」」とツッコミを入れたが、ピエールに噛まれることで黙らされていた。

 そのピエールも、空の騎士ガン・フォールが「おぬしらの言うとおりだ」と認める言葉によって噛むことをやめた。

 

「それ……ちょっと切ないわね」

 

 ため息をつきながらナミがそう言う。

それを聞いたマリーが、不満げな顔で返した。

 

「そうですか?侵略戦争の遺恨をうまく処理できなかった例だと思いますけど」

「むぅ……返す言葉もない」

「ちょっとマリー、何もそこまで言わなくても!」

「いやぁ、あんまり他人事とは思えないというか、シャンドラの気持ちもわかるというか」

 

 マリーは頭を痛めた様子で眉間にしわを寄せる。

 

「シャンドラたちは奪われた側、つまり純粋な被害者なんですよ?その彼らが、何の対価もなしにいきなり『許してほしい』と言われたところで『ふざけるな!』と返すだけでしょう」

「それは…そうだけど…」

「うちの国王なら間違いなく、「奪った命の同じ数だけ、罪なき者の首をささげよ」とか返します」

「……ああ、シャンドラの戦士の長からも、似たようなことを言われた。吾輩は、それは出来ぬと答えたが…『罪なき者』を先に手に欠けたのは我らだったのも事実」

「いいですかガン・フォール。被害者という立場は、『理不尽な暴力を正当化できる』。復讐とはそういうものです。

平和という望んだ理想は間違っていたと思いませんが、話し合いだけでどうにかなる段階はとうに過ぎていると思われます。

というか、わたくしなら済ませません。大切なものを傷つけた報いは、泣いて喚いても許しません。わたくし自身の気が済むまで殴ります」

「マリー…あんた結構血の気多いわね…」

「……言葉もない。盗人猛々しいと言われても反論の余地もない。何の進展もないままおめおめと『神』の座をエネルに奪われ、シャンドラとの対話もうやむやになったままになってしまった…。それだけでなく、エンジェル島の民まで苦しめられ…」

 

 沈痛な表情で俯くガン・フォールと、複雑な心境を顔に浮かべるマリー。

 

「そういえば……今の『神』はそのエネルって奴なのよね? 何なの、“神・エネル”」

 

「吾輩がまだ『神』であった6年前、どこぞの空島より突如兵を率いて現れ『神隊』と『シャンディア』に大打撃を与え……『神の島(アッパーヤード)』に君臨した。『神隊』は今そのほとんどがエネルによって何やら労働を強いられている。詳しくは分からん」

 

 そうしてこの『神の島(アッパーヤード)』はエネルのものとなったが、シャンドラ達にとっての状況は変わらない。

 エネルにしろエネルから逃げ出す神隊にしろ、シャンドラ達にとっては敵に変わりない。空島にやってきた麦わらの一味が襲われたのも、エネルから船で逃げだした神隊と見分けがつかないためらしい。

 

 エネルは国民を武力による恐怖だけでなく、ルフィ達のような国外からくるものを犯罪者に仕立て上げ、その処罰の一部を国民にも担わせる。それによって国民に罪悪感を抱かせることによって支配している。それを空の騎士ガン・フォールは神の真似事だと評した。

 

「エンジェルビーチに着いた時にはここは楽園にさえ思えたのに、とんでもない……かつての黄金郷も、えらいトコへ飛んできちゃったものね……」

 

 顔に手を当て、嘆息するナミ。

 そこへふと思い出したように、ガン・フォールが問いかけた。

 

「……おお、そうだおぬしら。その……昨夜から騒いでおるオーゴン(・・・・)とは一体……何なのだ?」

「「「……え??」」」

 

 思ってもみなかった質問に、ナミ、ウソップ、サンジの目が点になる。マリーだけは「その可能性もあったか」と落ち着いて受け止めていた。

 

「青海において、もっとも分かりやすい(・・・・・・)価値の指標です。見つかりにくい、変化しづらい、見目麗しいの三拍子をそろえた金属で、金銭の大本の価値でもあります。こちらにも通貨があるのであれば、大体の意味は通じるのでは?」

「ああなるほど、通貨の基になる物か。そちらでは金属がそれになるのか」

「他にも、主に装飾品として使われもしますが…簡単に言ってしまえば、青海であれば『どこの地域でも高く売れるもの』という認識で間違いないかと」

「なるほど、まさしく財宝という物か。貨幣の基となる物とは別に、こちらで価値のあるものと言えばもっぱら青海由来の物か、(ダイアル)のどちらかだからな。そういうものがあるとは知らなかった。」

(ダイアル)…こちらにおける様々な動力の代わりとなっているものですね。どんなものがあるのでしょうか?」

「どれ、見せてみようかの…ちょっとその樽を貸してみるがよい。そこの金髪の男、ハンマーか何か構えてくれ」

「?? おう?」

 

 マリーは空の樽を動かして甲板の真ん中に置き、ガン・フォールがその上に己の籠手に着けていた貝を置いた。

 

「おぬしらに初めて会った時吾輩が傭兵を買って出たのも、青海人では“空の戦い”についてゆけぬからだ」

「“空の戦い”?」

 

 サンジが巨大なハンマーをもって、貝を乗せた樽の前に立つ。

 

「その貝を思いきり砕いてみよ」

「そーっとだぞサンジ!てめェ甲板に穴でも開けやがったらタダじゃおかねぇぞ!」

「思いっきりやればよい」

「てめー他人の船だと思ってテキトーなこと言うなァ‼」

「まァやれっつうんならやるが…」

 

 ハンマーを振りかぶるサンジに悲鳴を上げるウソップ。そのままの勢いでサンジは樽の上の貝をたたき割ろうとハンマーを振り下ろすが、ハンマーは貝の上でぴたりと止まった。

 甲板に穴をあける気持ちで振りかぶったというサンジは、まるで貝に衝撃を吸われたようだと困惑する。

 

「では貝の穴を空樽に向け、裏の殻頂を押してみよ…」

「? ……!!?」

 

 サンジが言われたようにすると、ボンッ!!!っという音を立てて空樽が吹き飛んだ。

 まるで貝から衝撃だけが噴き出したようなありさまだった。

 

「それが“衝撃貝(インパクトダイアル)”。与えた衝撃を吸収し、自在に放出する」

「衝撃を吸収する貝、ですか…防御にも攻撃にも有用ですね」

「本来手の平に手袋やバンテージで固定して使用するのだ。正確にヒットすれば、威力は並の人間を死に至らせる力を持つ」

 

 (ダイアル)の力に驚く一行。中でもサンジとウソップは、試練の中で相対した神官の事を思い出していた。

 ほかにも過去に存在していた絶滅種の(ダイアル)等について語ってくれた。

 

 (ダイアル)はもっと日常的なものだと思っていたというナミ。それに対してがガン・フォールが、そうだとも、と返す。便利なものには悪用方法もついて回る、という言葉も併せて。

 料理を温める“熱貝(ヒートダイアル)”は、槍に仕込めば“熱の槍(ヒートジャベリン)”に。火を蓄える“炎貝(フレイムダイアル)”は、鳥の口内に仕込めば“火を吐く鳥”を生み出す。チョッパーを襲った敵には、このようなカラクリがあったらしい。

 

「――それが“空の戦い”……!」

「そうだ。(ダイアル)の種類すら知らぬ青海の者では見極めることも出来ん。数ある“加工雲”もしかり…。

 空の戦士たちはそれらを鍛錬により使いこなす。知らぬものでは手に負えまい。」

「じゃあよ……あの、俺たちの動きを先読みするマントラってのにも何か理由が?」

「“心綱(マントラ)”か…あれは吾輩も使えるわけではないのでな、うまく説明できんのだが…“心綱(マントラ)”とは“聞く力(・・・)”だと言われている………何やら人間は、生きているだけで体から声を発しているらしいのだ」

「声?」

「あ、それはわたくしも知っています。見聞色ともいわれる能力です」

 

 手を上げて発言するマリー。まさかのマリーが知っていたということで、ナミたちは色めき立つ。

 

「知ってるのマリー!?」

「ガン・フォールの言葉を聞く限り、わたくしの知っているもので間違いないかと。青海では見聞色の覇気という、相手の気配、感情を読み取る能力です。主に索敵や相手の動きの先読みに使える能力ですね。偉大なる航路(グランドライン)の後半にいる強者はかなりの割合で納めている技能で、能力の習得具合はピンキリですけど…」

「…ってことは、これから偉大なる航路(グランドライン)を進むには、神官たちは何としても攻略しなきゃならねぇ相手ってわけだな…」

「ひええぇぇぇ~~!!おれは勝てる気がしねぇ!」

「あくまで技能なので、みなさんも頑張れば習得できますよ。たぶん」

「最後に不安を残さないでぇ!?」

「ふむ……青海の者たちも使えるとはな。神官どもは神の島(アッパーヤード)全域――エネルはこの国全域までその力が及ぶ。注意するに越したことはないだろう」

 

 神官たちの謎の力について話し合ったサンジ達。(ダイアル)の種類や心綱(マントラ)――見聞色の覇気――という能力。それらに対して警戒しつつゆっくりと森の中を船で進んでいく。

 神の島(アッパーヤード)全域がすでに感知できる範囲ということは、この船の航行も筒抜けなのだろうとは5人とも予想がついていた。しかし――――

 

 

 

「ふむ、我という神の名を発したか?」

 

 いきなり本命が乗り込んでくることは、予想外だった。

 

「貴様、エネル……!!」

「なにィ!?ってことは、こいつがコニスちゃんたちを…!」

 

 突然前触れもなく、誰一人にも感知させずに船に現れたエネルに、サンジが臨戦態勢を取る。

 驚きをあまり、ナミ、ウソップは言葉もない。

 

「このぉ……!くそやろぉぉおお!!」

 

 ここに来るまでにコニスを傷つけられそうになった場面を思い出したのか、サンジが躊躇なく攻撃を仕掛ける。

 しかしその攻撃が当たった瞬間、逆にサンジの体に閃光が走り一瞬でサンジが黒焦げとなってしまった。

 

「サンジ!」

「サンジ君!」

「ヤハハハ…馬鹿な男だな。…別に私はお前たちに危害を加えに来たわけではないというのに…」

「ならば何をしに来た‼」

「ヤハハ。冷たい言い草じゃあないか…。実に6年ぶりだぞ…‼先代“(ゴッド)”ガン・フォール」

 

この状況に、マリーは努めて冷静に、エネルの精神を読もうとしていたが…

 

(……だめですね。ノイズが多すぎて読み取れません。恐らくは電気、あるいは電磁波系統の能力者…!)

 

 心の読めない相手という初めての相手に、マリーも警戒する。

 

 メリアには、生体波動と呼ばれる能力が備わっている。

 体内に流れる生体電気をエネルギーとして利用し、電磁波の操作や読み取りができる能力である。操作した電磁波によって特殊な記録媒体に電子的記録を残したり、エネルギーを操作してバリアを張ることが出来る。バリアの能力や体の頑丈さも相まって、メリアは滅多なことでは傷もつかない。

 

 マリーは今その能力を最大限に使い、自身の防御に充てていた。

 それがまずかった。

 

 バチンッッ!!

 

「――――っ!?」

「ほう……?」

「マリー!?」

 

 一瞬の後、マリーの目の前が閃光で包まれる。サンジを死んだと勘違いしたウソップとともに攻撃されたのだと気が付いたのは、エネルの攻撃によって左腕が黒焦げになって縦に裂けた(・・・・・)後だった。

 

「見えない壁……いや、電磁波の能力か。なるほど、能力と合わせて使う私の心綱(マントラ)では、思考の読み取りやすさに差が出るのも必定」

「ぐっ、うぅ……!」

「始めは脅威かとも思ったが、興味が失せた。そこの小娘ともども黙っていれば何もしない………いいな?」

 

 ナミと二人で、首を振ることしかできない。しかしマリーは、この一撃で相手の能力に目星をつけていた。

 

(この感覚……あの女王(・・・・)の落雷と同じ。ということは、この手は落雷が落ちた木と同じ原理で裂けただけ。電磁波を操る能力では、雷のエネルギーには届かない…。痛いですが、本当に痛いですが、人間の痛覚よりはマシ…!この程度の損傷であれば3日ほどで治癒できる…今は何とかしてこの男をやり過ごさねば…!)

 

「貴様一体何を企んでおるのだ‼」

「……6年前、我らがこの島に攻め込んだ時捕らえたお前の部下どもは元気に働いてくれているぞ。腕力もある、実にいい人材だ」

 

 エネルが言うには、捕らえたガン・フォールの部下たちには6年間何かの仕事をさせていたらしい。その仕事も終わりに近づきこの島に用事が無くなろうとしているため、別れの挨拶にやってきただけらしい。

 その流れでエネルは、この島を強硬に奪い取った理由を話した。

 黄金都市シャンドラの“名残”である黄金を狙いに来たのだという。

 その存在も価値も知らないスカイピアの人間を、めでたいやつらだと笑いながら、エネルは来た時と同じように閃光とバリッ!という音とともに消え去った。

 

「消えた……って、マリー!あんたその腕!」

「ご心配なく。この程度の損傷、メリアならば3日もあれば元通りに回復します。それよりも……!」

 

 マリーはエネルがいなくなった方向とは反対を向く。そこには、玉のような体型をした男が二人並んで立っていた。

 

「ほっほーう!」

「何よ‼誰アンタたち‼」

「「何よ」じゃなーい!よくも兄貴を!」

「おれ達は「副神兵長」‼よくもサトリの兄貴を~~~‼」

「なァに!?兄貴って…!知らないわよ!」

「おそらく、船長さんたちが試練で戦ったという神官でしょう。試練を謳っておきながら負けたそちらが悪いのでは?」

「なぁ~にぃ~!?」

「言っていいことと悪いことがあるだろ女ァ!」

「おれの名はホトリ!」

「おれの名はコトリ!」

「「三つ子の兄がお前らにやられたのだ!許さ~~ん‼」」

 

 どうやら問答無用らしい。ナミは己が武器である天候棒(クリマ・タクト)を組み立て、重傷だったガン・フォールも槍を構える。マリーは徒手空拳であるが、いざというときにガン・フォールとナミを庇えるように、あいだに立った。

 

「退いておれ娘っ!」

「いやよっ!たまには私だって、こいつら……守ってあげなくちゃ‼マリー、あんたも下がってて!」

「エネルの能力には後れを取りましたが、私のバリアは健在です。二人を守るのは私の役目です!」

「……よかろう!まずは(ダイヤル)を見極めよ!」

「ええ!」

「はい!」

 

「ほっほ~う!こいつら、おれ達に勝つ気だぞ!」

「ほっほ~う!その思い上がりごと粉砕してやろう!」

 

 3人と二人の戦いが始まる。そう思われた。

 こちらに対してコマのように回ってきたかと思えば、突如進路を変えて倒れているウソップとサンジに向かっていく。

 

「まずいっ!」

 

 相手の狙いに気づいたナミが咄嗟に天候棒(クリマ・タクト)で相手を打ち据えようとするが、くるくると回って軽く流されてしまう。

 

「ナミ、こちらは任せてください!」

「ほっほ~う!女一人で男二人を庇うのか!なんとも情けない!」

 

 敵がサンジとウソップをボールのように蹴り上げようとしたところを、マリーが咄嗟に二人を抱えて避けた。裂けた左手に激痛が走るのにも構わず、ウソップを左の脇に抱える。

 男二人が一人の女に庇われている様を嗤うコトリとホトリ。

 

「いつまでもつかな!」

斬撃貝(アックス)!」

衝撃貝(インパクト)!」

「っ!!」

「マリー!」

 

 男二人の連撃に防戦一方のマリー。襲い来る斬撃と衝撃波を背中で受け止め、甲板から吹き飛ばされそうになる。だがその背には傷一つなく、抱えた二人も無事だった。

 

「何ィ!?こいつ、どんだけ固いんだ!?」

「どんな武器で貯めた斬撃、衝撃かは知りませんが…この程度の攻撃で、メリアのバリアを貫けると思わないことです!」

「くっそ~、それなら燃やしてやる!」

匂貝(フレイバー)ア~ンド!」

炎貝(フレイム)!」

「くっ…!?ウソップ!」

「この……こっちの事も忘れんじゃないわよ!」

 

 続けて、可燃性のガスを貯めたらしい匂貝(フレイバーダイアル)炎貝(フレイムダイアル)の合わせ技がマリーに襲い掛かる。その爆発によって、裂けた腕で抱えていたウソップが甲板から吹き飛ばされ川に落ちそうになってしまう。

 それをマリーは咄嗟に鼻をつかんで阻止したが、隙を晒したマリーにもう一度襲い掛かろうとする二人を、ナミが武器を振り回して牽制した。

 

「……成程…奴ら、4種類の“(ダイアル)”を…‼」

「ほほーう!そうだとも!」

「おれは左手に炎貝(フレイム)‼右手に斬撃貝(アックス)‼」

「おれは左手に衝撃貝(インパクト)‼右手に匂貝(フレイバー)‼」

「「覚えたか!?見極めは不可能だぞ!!?」」

 

 そういって、コトリとホトリは手を組んでくるくると回り始める。

 

「さァ!どっちがホトリでどっちがコトリで」

「どの手が何だ!?何が出るかはお楽しみ!」

 

「“びっくり(ダイアル)イリュージョン”‼」

 

「種類はわかった…もうぐずぐずしておれぬ!」

「どっちがどっちかなんて、もともと興味ないってのよ!……天候は、“台風”!」

 

 ナミが天候棒(クリマ・タクト)を十字に重ね、相手に投げつける。それを二人は「ハズ~レ」と笑いながら軽く避ける。

 そのままガン・フォールにどちらかが右手を向ける。ガン・フォールは咄嗟に布でガードするが、放たれたものは匂貝(フレイバー)だったため意味がない。そのまま先ほどと同じように、追加で炎が放たれガスに引火し爆発する。

 

 吹き飛んだかに見えたガン・フォールは船の端に隠れて爆風から避難しており、思いもよらないところから再出現したガン・フォールに動揺したコトリは、そのままガン・フォールの槍に貫かれ戦闘不能となった。

 コトリがやられたことに動揺したホトリは、ブーメランのように帰ってきたナミの“サイクロン=テンポ”に激突し川に落ちる。

 あともう一歩というところで、空の騎士の傷が開いて崩れ落ちてしまった。

 

「おいメリアの娘…!下にある吾輩の“籠手”でとどめを刺せ!」

「はい!ナミ、援護を頼みます!」

「了解!」

 

 マリーはピエールから籠手を受け取り、動かし方を確認し装着する。その瞬間、川に落ちたホトリが「許~~~さ~~ん‼」と川から飛び上がってきた。

 ナミはホトリが炎貝(フレイム)を使うことと、空気が湿っているこの状況が利用できると判断して「“冷気泡(クールボール)”‼」とホトリの周辺を冷気で満たす。

 

「何だァ…!?何やら寒いぞ……!これだけか!?」

「ええ……‼あなた、火を使うでしょ?」

「………!そんな冷たい空気の中で、炎貝(フレイム)とやらが使えますか!?」

「お前ナメてるな!?おれの炎貝(フレイムダイアル)にこんなもので対抗する気か!?燃やしてやる‼‼」

 

 ナミによって溜まった冷気の上をホトリの炎貝(フレイム)が走る。それによって湿った空気が凝結されることで、突如として大量の霧が発生する。これを読んだマリーが、その隙にホトリに急接近する。

 ホトリの首に足を絡め、顔面に籠手を押し当てる。そのまま「“衝撃貝(インパクト)”!」とホトリの頭に衝撃波を叩き込んだ。その反動で、マリーの体は後ろで伏せていたピエールの体に落っこちた。

 

「マリー!すごい衝撃だったけど大丈夫!?」

「問題ありません…これ、ナミは使わないほうがいいかと。かなり反動がきますよ、これ」

「みたいね……。でも、よし!船と船員(クルー)を守ったわ!初陣勝利おめでとう、マリー!」

「…ええ、ありがとうございます」

 

 船の上で、こぶしを突き合わせるマリーとナミ。その後ろで、空の騎士が慌ただしく鎧を着こみ始める。

 あっという間に鎧を着こんだガン・フォールは「すまぬが吾輩エネルを追う!」と言い出した。

 

「何言ってんのよ!レディだけにする気!?」

「だからすまぬと言うておる!吾輩の部下達の命の危機なのだ‼いや、ともすれば…この国(・・・)の危機やも知れぬ‼」

 

 そういって止める間もなく、ガン・フォールはピエールに乗って空絵と消えて行ってしまった。

 し~ん、と船の上に静寂が流れる。

 

「とりあえず、応急手当てをしないと…!マリーも手伝…いや、マリーも手当てを受ける側ね!ん~~!チョッパー帰ってきて~!」

「この程度なら自然治癒で十分ですって。それよりも、近付いてくる方たちの対応を考えたほうがいいかと」

「え…何!?また敵!?」

「いえ、この生体波動はコニスさん達です」

「コニス!?なんで!?」

 

 目の前の川に、雲の川を流しながら現れた何かが落下し大きく波打つ。落ちてきたそれは、パラパパパラパパ~♪と軽快なラッパを鳴らしながらメリー号に接近していた。その船はパガヤが運転しており、後ろにコニスと見知らぬ少女を乗せていた。

 

 

「コニス!おじさん!何でここにいるの!?ていうかラッパうるさい!!」

 

 船の上では見知らぬ少女とパガヤが言い争っていた。どうやらこの島で降りようとしている少女を、パガヤが止めようとしているらしい。

 

「誰、その子!?」

「青海人!排除してやる!あたいはシャンドラの戦士だ!」

「だから何なの、私とやんの!?衝撃(インパクト)するわよ」

「ナミ、子供の言う事です、もう少し穏便に…」

「まあっ、大変っ!お二人ともまるコゲだわ!すぐに手当てを!」

 

 船内が俄かに騒がしくなる。ナミを警戒する少女に、仲裁しようとするマリー。重傷のサンジとウソップの手当てをしようとするコニス。

 そこにパガヤが割り込んだ。

 

「とにかくすいません、今我々が来た道に進路を!雲貝(ミルキーダイアル)で新しく作った川です。直接白々海へ出られます!敵に見つかる前に(・・・・・・・・)っ‼」

「だったらもっと静かに登場してよ‼」

 

どうやら、自分たちを逃がすために外へ繋がる直通の通路を作ったらしい。敵に見つかる前に逃げてくれとパガヤは言うが、鳴り響くラッパのせいで台無しである。

 

「そうだ、あなたにお渡ししたいものもあるのです!」

 

 そう言って、パガヤは船の後ろから見覚えのあるものを取り出した。

 




マリー
ソードワールドの能力値種族ボーナスで生命力と精神力にボーナスがかかるため、安易に片腕を吹き飛ばされた。
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