久しぶりに故郷に帰ったけどなんか変 作:ZZZAAAA
『――間もなく、ミアレシティ、ミアレシティ。終点です――』
列車内に響くアナウンスの声で目を覚ます。凝り固まった体を伸ばして解しながら車窓からの景色を見れば、5年ぶりの景色が見える。たった5年とはいえ、様々な地方を旅したからか本当に懐かしく思える。
「いやぁ、帰って来たんだなぁ……」
こうして一旦終わりを迎えた5年間を思い返すと、なんともまぁ暇しない旅路だったなと思う。5年前に比べれば結構強くなったし、久々にアイツにリベンジするのも悪くないかもしれない。
ま、旅の途中で一回色々あって連絡先消えちゃったからまずはこっちで探さなきゃなんだけどな。マジで色々と助けられたけどその点だけは許さんぞアクア団。
「っと、忘れ物が無いようにしなきゃな」
我が故郷ミアレシティまでもう少し、早めに荷物を纏めて忘れ物が無いようにしなきゃならん。一応スマホロトムにも確認して貰いながらテキパキと準備を進める。こういうのは5年の旅でだいぶ慣れたな。
「にしても到着が夕方になるとはなぁ……どっかに良い感じの当日OKなホテルでもあれば良いんだが」
ホームへと降り立ち、そのまま改札を出て駅の外へ出る。5年ぶりのカロスのなんともまぁ良い景色。ヤベ、ちょっと涙出てきた。
円形の街に蜘蛛の巣のように張り巡らされた道に、中心に鎮座するプリズムタワー! まさにカロス、まさにミアレって感じの景色は郷愁の感情を刺激される。たった5年だけどほんとに十何年ぶりじゃないかって気分。
このまましばらくこの感情を嚙み締めるのも悪くない……とはいえ、時刻はもうすぐ夜と言っても差し支えない時間だ。この時間に飯どころか宿も取ってないのは流石にまずい。宿の方に関してはミアレって結構治安が悪い方だから夜に外ってのが殊更マズい。
「うーん、どうしたもんかな」
まぁ、とりあえずは飯から確保するべき……だよな? ここはミアレらしく適当に歩いてビビっと来たカフェなりレストランで食べて済ませるとしよう。ついでに宿も探して見つかれば万々歳ってことで!
となれば足の向くまま気の向くまま、適当に歩き始める。なんだ帰って来ても結局変わんねぇなやってる事。腰のボールが「お前はバカ!!」って揺れてる気がするけど気のせい気のせい、晩飯抜くぞお前らこんにゃろ。
とまぁ、適当なカフェでサンドイッチをポケモン達と食べて。さてこれからホテルでも探すかと意気込んだその直後まで話は飛ぶ。
「こんな街だったかぁミアレって……」
「なにをごちゃごちゃと、はやくポケモンを出したらどうです?」
なにやら変な赤い光の柵に周囲を囲まれたかと思ったら、急に目の前のタクシー兄ちゃんが喧嘩を売ってきた訳で。マジで、5年前からこんなに終わってる治安だったかなミアレって……いやまぁ、割と終わってたかもしれない。ストリートチルドレンとか居たしな。
「早くしてください、こっちも暇じゃないんです」
「おっと、悪い」
さて、どうやら目の前のタクシーの兄ちゃんはもう辛抱堪らないらしい。態度と言葉ですごい急かしてくる。そんなに俺らの力が見たいのかね……。
「ま、なんにせよだ」
相手の最初のポケモンはヤドン、ちょうど良いからコイツのストレス発散に付き合って貰うことにしよう。
「待たせて悪いな兄ちゃん。それじゃ、やろうか」
「望むところ!」
「ッ! なんだ!? 速すぎるッ!!??」
異常だった。男の繰り出したポケモンはボールから解き放たれた瞬間から光かと見紛う程の速度で道を、木を、水面を、壁を駆ける。
このミアレシティの交通手段をタクシーのみにしてしまおうと企むタクシー運転手ザックと、彼のポケモンであるヤドンはナニが駆けているのかすらも判別を付けることが出来ない。
最も、自分の尻尾が切れてしまった事に気付くのにとてつもないラグを要するヤドンにこの速度で動き回るポケモンの判別を付けろというのは酷な話であるが。
「ここは……ヤドン! ねんりきで相手を捕らえろ!!」
速く動くと言う事は動きが直線になると言う事。つまり、ある程度の動きの予測は可能だ。その予測点にネットの様にねんりきを広げれば捕らえることが出来る。
「――デデンネ、躱して
そんなザックの作戦を、直角に曲がる事でねんりきの網を避けた男のデデンネがねじ伏せる。
一瞬、ヤドンと接触したデデンネが地面を滑るようにして減速し。男の前で静止する。
「一撃だと!?」
ヤドンが目を回しひんし状態となって倒れる。デデンネは誇らしげに胸を張る。
「デデッ!」
「良くやった、一旦戻れ」
コツンとボールを当てられて、デデンネはボールへと入る。
「さて、次は――まぁお前で良いか」
デデンネがボールへと入った瞬間に、男の腰に下げられた別のボールからまた1匹のポケモンが飛び出す。
「そんじゃ、そっちも2匹目を出せよタクシーの兄ちゃん」
「ッ言われなくても!」
人には
俺の
俺のポケモン達もそんな俺の憧れに答えてくれる最高な奴らばっかりだ。
「ZAロワイヤルの参加者じゃなかったなんて……!!」
「あのねぇ、タクシーの兄ちゃんそこら辺は確認しなよ」
一切の被弾も危なげもなく俺達は兄ちゃんに勝利した。んで、クールダウンした兄ちゃんに聞いてみれば、今のミアレシティではZAロワイヤルなるイベントが毎晩開催されているらしい。
この周りにある赤い光の柵……ホロってのが毎晩ランダムな区画を囲むみたいに出現する。そんで、その範囲内に居る参加者同士で潰し合ってポイントと賞金を稼ぐんだとか。
ミアレって5年前からこんな治安ヤバかったっけな……?
「最近通算100回目の昇格失敗を味わい、判断力が落ちていたか……ッ!」
「判断力が落ちているから通算100回失敗するんじゃねぇかな」
100回て……いやまぁ、そこまで失敗しても諦めないガッツは評価できるか。
「ま、そんな事はどうでも良いんだ。兄ちゃんタクシーの運転手なんだからさ、この辺で良い感じに予約なしで今から泊まれそうなホテルとか知らない?」
「あぁ、それなら近くにあるホテルZってとこがいつも空いてるよ」
「ホテルZね……」
ポケットから飛び出したスマホロトムがホテルZの場所をマップで示してくれる。なるほど、確かにすぐ近くにあるな。立地的にも穴場って感じで確かに空いてそうだ。
「うん、ありがとな兄ちゃん」
「こっちこそ、間違えて勝負を挑んでしまったお詫びが出来て何よりだよ」
兄ちゃんに別れを告げ、さっさとホロの外へ出てホテルZへと向かう。なんというか、パルデアでは目と目が合ったらポケモンバトルの文化が無かったからか、この目と目が合ったらバトルな感じはとても良い。
兄ちゃんに聞いた所によると不意打ちもOKらしいしなロワイヤル……やっぱり治安悪くなりすぎだろちょっと。100年前の開拓時代のシンオウ地方じゃねぇんだぞマジで。
「まぁ、5年もあれば変わるもんかね……いや、ここまで変わるもんか?」
こうして見上げる夜空も、月と星の光に照らされる街の風景も変わらないのに。なんかこう……変わりすぎてると思うんだ。
「お前と出会った街がこうして変わるってのもなんか……クる物があるよなぁ」
腰に下げられたボールの中で、唯一の
「この角を左ロト!!」
「っと。ちょっと風景に集中しすぎてたな……教えてくれてサンキューな、ロトム」
「ロト♪」
こういう時に実感するけど、スマホロトムマジで便利だよな。ホロキャスターからたった5年で進化しすぎだと思う。科学の力ってすげぇぜ。
頼れるロトムをポケットに入れて更に暗い路地裏を進む。
路地裏に奥に見えるのは蔦の這ったオンボロなホテル。
「なるほど、これは確かに空いてそうだ」
重いのか建付けが悪いのか、多分両方であろうオンボロな扉を押し開けて中に入る。
「すみませ――」
ホテルの中を見回せば、なるほど外見に合った雰囲気ながらもしっかりと綺麗にしてある。その上ゆったりとした音楽がかかっており、お香かなにかの心地の良い香りが漂っている。
どうして人が居ないのか、そんな風に思うくらいには素晴らしい空間だ。
しかしそんな事より黒い花のフラエッテ
「――お邪魔しましたぁ!!」
「
「アイエエエエエエエエエエエエエエッ!?」
とんぼがえりの如き速度で踵を返したが、残念回りこまれてしまった。
「あれ、フラエッテが捕まえてるのってお客さん?」
「いえ、帰る様子ですし何かの間違いでは?」
「そうか? えっと……いらっしゃいませ、お客様……?」
いやまて、そこの青白茶三食団子の真ん中の君が正しい。俺は帰るんだ、帰らせろ。帰る場所無いけど、ここ以外ならどこでも良いから。
「
だがフラエッテが強い、俺には逃げられない。この身に刻み付けられた恐怖が、この俺の体を縛りやがるッ……!
「ほう、懐かしい顔だ……ご宿泊かな?」
「……ハイ」
観念して両手を上げ、無事に俺のホテルZの宿泊が確定した。
なぁんで5年ぶりにちょっとだけ帰って来ただけなのにこんな明らかな厄ネタホテルに首を突っ込まなきゃいけないんだよォ!!
「嘘だと言ってくれよ……ちくしょう」
男:カロス出身。5年前の一件に変な関わり方をしている。口八丁手八丁、騙しの手品が大好き。破滅の光をモロに食らったことがある。
デデンネ:男の手持ちの先鋒。でんこうせっかは覚えていない。
フラエッテ:おう、泊ってけよボウズ(圧)。
AZ:懐かしい顔だ。