それは夜中に起きた。
すぐ近くで雷が落ちたような轟音。
黄色い閃光で照らされる空。
俺たちは跳ね起きて天幕の外に出た。
ミサ、お前……起きないのかよ……大物だな……。
「見てっ!」
「何だありゃ!」
オミの指差した方向、山の頂で光っていた黄色い光が徐々に消えていく。
イメージとしてはオーロラだが、ここは極地じゃないし、黄色い単色ってことはないだろう。
「見てくる。ここにいて」
オミと二人の戦士が走っていく。
「俺も行く!」
パワードスーツを呼び出しオミ達に遅れることなく着いていく。
二十メートルはあろう大木を飛び越える。
ここ最近の特訓の成果見てくれ!
現場はおかしな光景だった。
まるで黄色い蛍光塗料を撒き散らしたかのような木や草。
そして直径五十メートルはありそうな大きな穴が、まるで最初からそこにあったかのように口を開けてる。
「深いね……」
「うん。夜だし、調べるのは明日の朝でいいんじゃない?」
穴の奥は底がしれないことがわかる。
そう、わかるんだ。パワードスーツのおそらくセンサーが俺の脳とリンクしてる。
「じゃ、朝まで交代しながら見張って」
オミが二人の戦士に命じて、振り向く。
「ハヤ、あんたは私と帰ろう」
「わかったよ。なんとなくだけど今のところ危険はないよ」
「わかるの?」
「うん。この鎧ってさ、獣並みに感覚が鋭くなるんだ」
「へぇ、それはすごいねぇ」
「あの遺跡を残した古代人は、俺がいた世界よりもずっと進んでるよ」
この大穴、帝国は関係ないだろうな?あったとしたら、奴らすげぇテクノロジー持ってることになるぞ。
天幕へ戻るとミサが起きてた。駆け寄ってきて俺に抱きつく。
「ミサ、今んとこ大丈夫。だからおやすみ」
「…………」
無言で頷くミサ。
「目が覚めたらハヤがいなかった。なんかイヤ」
「あーすまん、お前寝てたからさ」
「どこか行くなら起こして!」
「お前起こすの大変だし……」
「いいから起こして!」
「へいへい。俺がお前を残していなくなるのはこれっきりな?」
「約束だよ!」
ミサの頭をそっと撫でる。
何か大きくことが動く気がするなぁ。
俺は朝方まで寝付けなかった。
翌日。
『き』のみならず続々と周辺の部族から人が集まってきた。
夕方には百人を超えるまでになり、夜にはどうするかの会議となる。
オミ達、俺、ミサも参加した。
「これは全く前例のないこと。さてどうすべきか意見が欲しい」
「何か良くないことの前触れでなければ良いが」
「それを明らかにする為にもまずは穴の奥がどうなっているか調べた方がよかろう」
「我ら『ぬ』は人員を出す用意がある』
「『き』も出す」
「すまぬが、我らとしては人は出せぬ」
結局『き』と『ぬ』のみとなる。まぁ余分な人手は出せないのはどこも同じだろうし。
この辺は仕方ないだろうね。
学術部族『ぬ』と『き』の合同調査隊が潜ることになった。
俺の提案が通り、有毒ガス検知のために小鳥を持った俺が先頭を歩くことになる。
パワードスーツ着てたらその辺は大丈夫な気がするんだ、多分。
穴というか巨大な洞窟だ。
中は暗いので光苔を使った照明器具を手に進む。
俺は照明器具要らず。
見えるんだよ、暗闇の中でも。
オーパーツ万歳だ。
紐に繋いだ小鳥(雀っぽい)を肩に乗せて歩く。俺から十メートルほど後から皆が続く。
オミ達、ミサ、お馴染みの『ぬ』からはハバ達五人。
洞窟内部は滑らかで、まるで鍾乳洞のようだと思った。長年水の浸食で磨かれたって感じ。
これってさ、転移してきたんじゃねぇの?
そうだとしたらとんでもないテクノロジーだわ。
奥へ進むにつれ、光苔が増えてきた。
他に特に目立つものはない。
もう一時間は歩いてる。休憩だ。
ここは詳しそうな人に訊くとしよう。
「ねぇ、ハバ。この手の洞窟って他にある?」
「無いな。地勢調査が始まって三年になるが、今のところ見つかってない。それよりその鎧、この中で何ができる?」
「んー、灯りなしで見えることぐらいかな。あ、これはあくまでも何となくだけど、ずっとずっと奥まで続いてるっていうのがわかるんだ。鎧が教えてくれる感じで」
「ほう。本当に不思議な鎧だな」
「んーとね、俺がいた世界では、この鎧の機能をある程度は作ることが出来るよ。遠くを見通す目とか」
「それはそれは……」
「今のところ危険は無いと思うけど、あまり先には行かない方がいいと思う。まずは俺がひとっ走りしてくるからさ」
「危なくないのぉ?」
オミが心配そうに訊いてくる。
「多分ね。これを着てたら大抵のことは大丈夫だと思うんだ。いざとなったら逃げてくればいいし」
毎日のトレーニングのおかげで、パワードスーツを着たらオミ達よりずっと速く動けるようになった。装着者の身体能力に左右されるらしい。
オミが装着したらもう超人誕生だろうね。
「じゃちょっと行ってくる」
「気をつけてね!」
ミサに手を振り、俺は駆け出す。
そして一気に加速する。
凄い勢いで後ろに流れていく風景、視野が狭くなる。あ、これ高速道路を走ってた時っぽい。
じゃ時速にしたら百kmぐらいは出てるんか?
そのスピードで走り続けても景色は変わらず。十五分は走っただろうか? こういう時、無性に時計が恋しくなる。
先の方に光苔とは違う色の灯りが見えてきた。
薄く光る装飾が施された巨大なマンホールの蓋、そうとしか表現出来ない円形のオブジェが宙に浮いていたんだ。
表面には何かの図形が描かれている。
金属製。
触ったり叩いてみた感想として、チタンが近いかな。
直径は十メートルぐらい?
それが聳え立っている。
マンホールの蓋の裏側へ回ってみたが、同じ図形があるだけ。
なんだこりゃ。
試しに蹴ってみる。
おうっ。
びくともしない。
俺の蹴りは現在、広葉樹の大木でもへし折ることが出来るんだが……。
するとマンホールの蓋が光を帯びてきた。
俺は距離を置く。
強く光った後に……何かが見えてきた。