気がついたら古墳時代レベルの異世界に   作:はるゆめ

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第十三話 ファンタジー世界との邂逅

 何だありゃ。 

 

 大きな洋館、そして庭園。

 そこに白いテーブルと白いチェアがり、横に立つ男女。

 

 その光景が光の輪の中に見える。

 

 女、いや少女か、貴族令嬢って感じの白人娘さん。怯えた目で俺の方を見ている。

 

 その少女を庇うように立っているのは、頭からつま先まで“日本のサラリーマン風”なおっさん。

 

 そのおっさんが構えているモノ。

 ───AKだな。

 おっさんは厳しい顔をしてAKの銃口を俺の方へ向けている。

 

 そりゃあ俺は怪しいマンホールの蓋から出てきたけどさ、そこまで警戒しなくてもと不満に思いつつ、挨拶しようと一歩踏み出した。

 

 瞬間。

 破裂音と同時にAKの銃口が火を吐いたように見えた。

 

 撃ちやがった!

 俺の足元に!

 

「近づくな! それ以上動くと次は頭を撃つ」

 

 日本語で警告されて俺はやっとにパワードスーツを着たままだと気づいた。

 すぐにパージ、手を挙げて敵意はないことを伝える。

 

「何もする気はないから! 撃たないで」 

「日本語?」

 

 おっさんが驚いたように目を見張る。

 あ、そうか。今の俺ってアフガニスタンとかその辺っぽい顔してるもんな。

 

「अरे, का तुम एक दूसरे का जानत हौ?」

「大丈夫だ。俺がいるから」

 

 おっさんの背中から顔だけ出した少女は聞いたこともない言葉で話すも、おっさんは日本語で返している。しかもそれで会話が成り立っているっぽい。

 

「と、とにかく話し合おうよ。こっちも突然こんなところに出て、わけがわからないし」

「ああ、わかった。んじゃこっち来いよ。念の為に言うが変なことすんなよ? さっきのバトルスーツ? も無しでな」

「あ、うん」

 

 大豪邸と呼ぶに相応しい屋敷、見渡す限りの庭園。はぁ。お貴族さまってやつですか?

 

 振り向くとマンホールの蓋は変わらずにそこにあった。

 異なる次元を繋ぐゲートだろうか。

 考えても仕方ないのでとりあえず白いチェアに腰掛ける。

 

「あんた、日本人だよな?」

「そうだが……、なぜ日本語を話せる?」

 

 やはり日本人とは思われていない。

 

「えっと、頭の中は日本人だよ。けど俺がいた向こう側は日本じゃないし、地球でさえないんだ」

 

 

「そうか。ここも地球じゃない」

「んん? この外人の女の子、ヨーロッパ人みたいに見えるけど……」

 

 少女の方を見ながら疑問をぶつける。少女はもう落ち着いている。

 短時間で平常心を取り戻す……この子は只者じゃないね。

 

「ここはカサバタール王国という。俺は歴史にそこそこ詳しいが、そんな国は知らない」

 

 そうか。

 ここもまた別の世界なのか。

 

「俺はさ、向こうで生まれて、途中で日本人としての記憶が戻ったんだ」

「そうか。俺は気がついたら森の中にいて、この娘さんに出会った。この子が呼び出したそうだ」

「呼び出した?」

「召喚魔法というらしい」

「魔法! そうかぁ。魔法が存在するんだね」

「俺もあまりピンときていないがな。そうするとお前さんは異世界転生ってやつで、俺は転移だな」

「実際にあるんだね、こんなことって」

「あまりのことに現実感がさっぱり湧かないけどな。ところでさっき着ていたバトルスーツみたいなの、あれはなんだ?」

 

 男は好奇心を隠そうともせず聞いてきた。

 

「古代遺跡があって、そこの奥にあったものだよ。気がついたらパワードスーツになって俺を包んでいたんだ。何を言ってるかわからないと思うけど」

「それはそれは。古代の超文明、謎のオーパーツってやつか」

「そうそう。そっちこそ、なんでAK(アーカー)持ってるの?」

「俺が召喚した。向こうで触ったことのある武器なら何でも呼び出せるぜ。八九式とかハイキャパとか」

「なんでAK触ったことあるの? もしかして反社の人?」

「違うわ! の海外射撃体験ツアーだよ」

「あーなるほど。かなりのマニアだねぇ。八九式は自衛隊の基地祭で?」

「そうだ。お前さんこそ詳しいな?」

「あっちじゃサバゲーやってたから。ある程度は」

 

 すると少女が話に入ってくる。

 

「お二人のお話、(わたくし)にはさっぱりわかりませんわ」

 

 あれ? 日本語? でも少し変だ。まるで吹き替え映画みたいに少女の口の動きが言葉に合ってない。

 

「意思疎通の魔法を使いました。あなた様のお名前を伺ってもよろしいでしょうか?」

 

 人懐こく微笑む少女。ふぁ、ファンタジー。

 

「今の名前はハヤだ。日本での名前は思い出せない」

(わたくし)はメグ・ベアターナと申します。こちらは神獣のコバヤシ様。ハヤ様もコバヤシ様と同じニホン出身ですか?」

「そう、日本だよ。それにしても……神獣? なんだそりゃ」

「俺もわけわからん」

「ファンタジーだよな」

 

 それから俺たちは互いの状況を語り合う。

 生きていた年代もほぼ同じ。首相が誰かとか国内、世界情勢についても互いに知っているのとが一致した。

 

「それにしてもお前さん、ハードモードだな。邪馬台国とローマ帝国の戦争か……」

「そそ。攻めてこられたら俺達滅亡まっしぐらだよ、マジで」

「こっちもこっちで油断ならん奴らとことを構えなきゃならんが」

「そいつらって話を聞く限りじゃ、密かに人間になり変わるエイリアンそっくりだよね」

 

 小林氏達は人間そっくりに擬態した怪物が目下の敵らしい。

 

「そうだな。言うなればモグラ叩きみたいなものだが、お前さんの方も大変だぞ? 戦争は数だからな」

「そうそれ。山脈と大森林が隔ててくれてるのが救いかもだけど、海から来たら詰むよ。こっちはろくな船がないし」

 

 するとそれまで沈黙を守っていたマンホールの蓋が再び強い光を放ち始める。

 

「お? タイムリミットか? そうだ、これをやろう。少しは役立つと思う」

 

 おっさんの手にはまるで最初からそこにあったかのように八九式小銃が出現した。

 手品みたいに。

 それを俺に手渡してきた。

 

「正直、八九式は触ったことはあっても撃ったことないんで扱いきれん。あとこれな、本物と違って無限に撃てるんだ。おまけにいくら撃ってもバレルは熱を持たないし、ジャムも全く起こらない。そういう不思議アサルトライフルだ」

「ファンタジー万歳だね。ありがたく貰っておくよ。俺は何もお返しできないけど」

「気にするな。これも何かの縁だろう」

「生き延びてね」

「ハヤもな」

 

 固い握手を交わす。

 

 メグ嬢は『ご武運を』と貴族風な挨拶をしてくれた。

 

 二人に別れを告げた俺は再びマンホールの蓋をくぐる。

 手を振る二人に俺もこたえてると、静かに元の遺跡内部の景色に変わった。

 

 手にした八九式小銃に目を落としたら、突然水飴のように変形しを始め、呼んでもないのにパワードスーツが装着される。

 やがてガンメタリックのスライムみたいになった八九式はパワードスーツに溶け込むように一体化した。

 

「はぁ? なんだこりゃ」

 

 あ、わかる。

 パワードスーツが八九式を取り込んだという情報が頭に入ってくる。

 どうすればいいのかということも。

 

 念じながら右手を上げる。

 すると指先から何かが次々と高速で飛び出す。

 それらは洞窟の壁を削り飛ばした。

 

 うわぁお。

 すげぇテクノロジー!

 つまり八九式が実装されたわけだ。拡張機能とでも言うべきか。

 

「ありがとう。コバヤシさん」

 

 俺は異世界にいる同志に礼を言った。

 さて。オミたちの方へ走って戻ることにした。

 

 

 オミ達に報告したのはマンホールの蓋があったということだけ。

 それが異世界へと通じるゲートだとか、小林氏達との邂逅については話してない。

 再現性は疑わしいし、わかってもらえそうにないから。

 

 その後の協議で学術部族『ぬ』から常駐の調査隊が俺達の天幕に隣接することになった。

 

 ハバと小さな女の子の二人組である。

 ハバはメガネが似合いそうな四角い顔のマッチョ、『ぬ』の遺跡専門家だ。女の子はハバの娘であり後継者候補。

 

『ぬ』は作物や獣の品種改良から治水工事の研究、天体観測と何から何まで研究をしている。

 だから人手不足が当たり前なのだ。

 

 品種改良と言えば、現代日本で見かけたような立派な野菜なんてものはない。

 あれらは数百年かかって品種改良されたものだ。

 

 以前、トウモロコシやゴボウの原種を調べて驚いた記憶がある。ただの草の実だとか雑草の根っこと言われても違和感がない代物だ。

 

 ここにあるものが全てその原種なので、馴染みの米、果物、野菜は諦めてる。

 

 農耕が徐々に広がり始めたばかりだもんなぁ。

 

「ハバ、遺跡がこんな風に突然出てきたってことあるの?」

「あるな。東の端にある部族『ねう』の中心にある遺跡がそうだ。遺跡のそばに記録石板があって、それによると今から五十年前に突然現れたとある」

「ふむふむ。中はどうなってるの?」

「色々なものがあったらしいんだがな。当時は『まと』の支配も及んでなかったゆえに、何もかも盗掘されてしまった」

「あー、部族間協定もなかったからか」

「そうだ。どこかの部族が隠し持ってるだろう」

「俺が着ている鎧みたいなのもあるのかな」

 

 同じものがあると考える方が自然だ。

 

「それはどうだろう。『まと』が国の統一に動き出した時に、そのような力を使って抵抗したという記録は無い」

「使い方わからないだけのような気がするな」

「そうだハヤ、お前だからあれを使えた」

「将来的には実現出来そうな技術だから、あれが何なのか理解出来たと思うんだ」

 

 用途だけは未だ不明だけど。機能から考えて宇宙服とか潜水服だろうか。

 

「それとユリーカが現れた遺跡の石群、彼女の転移を邪魔しないように解体した」

「そりゃ良かった。じゃ川のそばの遺跡も?」

「同じように処理した。配置を変えると役をなさないのも確認済みだ。追跡調査の結果、他の遺跡に石群は見つかってない。

 

「そうなんだね」

 

 これでユリーカは転移を自由に使えるわけだ。

 

 ハバが笑う。良い笑顔。

 

「ふふ、楽しそうな話をしているな」

 

 背後にユリーカが現れた!

 

「また来たのか……ってバボは?」

「昼寝してたから置いてきた。ここは息抜きにちょうど良い。アレの尋問も一段落したのでな。」

「ドラゴン皇女さんは何か喋ったの?」

「結局口を割らなかった。皇族は拷問に耐える訓練も幼い頃から受けてるからな」

「皇族怖い……」

「それが権力者の義務だ」

「もしかして帝国って考え方は結構まとも?」

「そうでなければ帝国はあそこまで繁栄出来ぬ。傘下に収めた小国の中には、義務はろくに果たさず、欲に溺れていた王族や貴族もいた」

「やっぱりそういうのもいるんだ」

「この国がそう言う道を辿らなければ良いがな」

 

 ディザ帝国も帝政から共和制へと変わった時代もあり、その後また元通りになったと以前ユリーカは教えてくれた。

 

 俺は『まと』の王を思い浮かべる。何となくあの人は大丈夫な気がするけど、権力構造が出来上がった後、国が拡大していくとどうだろう?

 

 創始者が苦労して築き上げた企業を二代目や三代目が傾かせるのもよくある話だった。

 

「ドラゴン皇女さんを差し向けたのが誰なのかだけ、気になるなぁ」

「皇族を動かせるのは皇帝、皇族だけだ」

「ユリーカは誰だと思う?」

 

 最近はユリーカ呼びである。ユリーカに『お前の“ユリーカさま”にはむしろ揶揄う気配を感じる』と見抜かれたからだ。バレたか。

 

「おそらく皇帝か皇帝に近しい皇族であろう。私を使ってきた者達でもある」

「やはりユリーカの能力が惜しい? それとも邪魔?」

「皇帝は欲しているはずだ。私は皇族の暗殺もしているからな、皇帝の命で」

「ドロドロの権力闘争やん」

 

 欲にかられた帝国の一部が強硬に南進を決め、攻め込んできた帝国軍に蹂躙される『き』、燃え上がる大森林、そんなイメージが浮かんでしまう。

 

「皇帝は元々この地に関心は無い。軍を動かすにしても費用が膨大になる。何も旨味がなければ議会の承認も得られまい」

「議会あるんだ」

「かつて皇帝の専制政治だった頃、国が傾きかけたこともある」

 

 なかなか国の運営ってうまくいかないもんだ。それはどこであっても同じ。

 

「アレと鷲騎兵が数騎。私はそれ以上の戦力はないと見ている。大規模侵攻はおそらくあるまい」

 

 大森林は広い。いや待てよ。向こうはユリーカがまさか亡命するとは思ってないだろう。

 

 目立たないように小規模部隊で動こうとするのがセオリーじゃなかろうか。

 

「それにしてもドラゴン皇女さん、どうやってユリーカを見つけたんだろ」

「私を見つけたのではない。お前達を、だ」

「あれだけ擬装したのに」

「あれと同じ種類のドラゴンを帝国は数百頭飼っている。我々とは根本的に違う感覚器官を持っているというのが結論だ。学者がそう言っておった」

 

 ほぉ。さすがドラゴン、ファンタジー生物。偵察爆撃機も真っ青だな。

 

 その夜はユリーカも一緒に夕食となった。

 オミとユリーカ、結構気が合うみたいで、何やら熱心に話し込んでいる。

 

 俺は俺でハバと夜遅くまでまだ遅くまで色々と話し込んだ。

 

 

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