気がついたら古墳時代レベルの異世界に   作:はるゆめ

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第十六話 国交樹立へ

 翌朝。ダンジョンから別の人間が現れた。そいつは入り口で見張りをしていたオミの部隊と交戦を始める。

 

 鎧姿のそいつはかなり強くて、オミ達は総がかりでどうにか取り押さえることに成功。直ちに拘束して連れてきたところ、オウルグを見た途端にまた暴れだす。

 将軍が一喝して大人しくさせた。彼の部下で副官ポジションとのこと。

 

 兜を脱いだら女だった。たった一人でオミ達と渡り合える猛者だ。

 拘束を解かれオウルグ将軍に詰め寄る女騎士。

 

「閣下、ご無事で!」

「心配かけたか」

「それはもう。随分と探しましたよ。すぐにお戻りにならないのですか?」

「まぁ待て、ラミテス。期せずして大陸外の国に来たわけだ」

「大陸外ですか!」

 

オウルグに言われた女騎士――名前はラミテスと言うらしい――は周りを見渡す。

 

「それゆえに慌てて帰ることもあるまい」

「ですが……」

「別大陸への訪問はガイザ帝国始まって以来のことだ。この価値がわかるか?」

 

 オウルグの言葉にラミテスは目を見開く。

 

「この邂逅が今後良き関係の礎となるか否か、その見極めの第一歩。私の責任は重大だ」

「かしこまりました。閣下の右腕として相応しく役目を全う致します。それと閣下の身の回りのお世話も……」

「それは不要だ。こちらの方々が手を尽くしてくれている」

 

 そう言ってオミの方を手で示すオウルグ。その背後にはユリーカが立っていた。

 女騎士ラミテスは目を細めてオミとユリーカを見つめた後、将軍に返事をした。

 

「了解しました。何かご用命あればすぐにお申し付けください」

 

 さっきと違い熱い視線を向けるラミテス。あーなるほど。

 オミとユリーカに向けた敵意の視線、一転してオウルグに向けたラブラブな視線。 

 どんなに鈍感なやつでもわかる恋心。

 

 オミに目を向けたら『女心だねぇ。可愛いものさ』という笑顔で頷き、ユリーカは『仮にも重職の副官が私情丸出しの態度を見せるのは感心せんな』って感じでラミテスを見ている。

 

 そして全員ニヤニヤが止まらない。俺も。

 

 オウルグ将軍は施政者としてここへ来ている。取り繕っても仕方ない、ありのまま見てもらうしかないよな。

 

 あの転移門で常に同じ場所へ行けるなら、交易は出来そうだと思うけど。その辺はお偉いさんの判断次第だ。俺の考えることじゃない。

 

 オウルグは俺達の調合した薬の数々に興味深々だからな。ディザ帝国と違って友好関係を結べそうなのは間違いないさ。

 

 それから一ヶ月。

『まと』から国交樹立の為にガイザ国へ赴く特使の一行がやって来た。『き』はその護衛を命じられる。

 

 オミ達が護衛として、俺とハバが記録係、いざという時の保険でユリーカが随行する。

 ミサが一緒に行きたがってぐずったけど、オミがうまいこと慰めてくれた。

 

 遺跡へ再び入っていく。タコ型クリーチャーは女騎士ラミテスがあっさり倒した。

 何でもないことのようにピカッ、スパッと。数秒だ。

 あまりの手際良さに俺たちが呆然としていると、その視線に気付いたのかラミテスが語り始めた。

 

「長年の研究によって最も効果的な対処法が確立されているのだ」

 

何でもないことのように淡々と説明されてオミ達は思うところがあるのか神妙な顔になる。

 

「研究され尽くしているから他にも対処法はある。閣下はきっとお前達にも伝えるだろう」

「ラミテスの言う通りだ。国交が成立した暁には、その情報を開示しよう。協力して管理すれば互いに益となる」

 

オウルグ将軍がラミテスの言を受けて頼もしいことを言ってくれた。将軍を熱い瞳で見つめるラミテスに俺は頬が緩みそうになるのを我慢する。

 

 転移門の位置へ立つと目の前の風景が一瞬で石造りの部屋へと変わった。

 

 そこからさらに別の転移門で俺たちは地上へ出る。

 素直な感想を言うとジャングルだ。

 陽射しは強く、蒸し暑い。木や草も俺たちがいたところと種類も違うし、大きい葉っぱなものが目立つ。

 

 整備された道を少しだけ歩くと、でかい城が見えてきた。かなり複雑な建築様式でその手の技術は進んでるみたい。

 

 ユリーカも「様式こそ違うが、帝国のものとそう変わりない」って言ってたしね。

 

 オウルグ将軍、ラミテスに続いて俺たちは歩いていく。

 城下町へと入る。住宅は木造。高床式。

 往来にいる人々が物珍しそうに俺達を見ている。

 小さい子に手を振ってみる。あちゃー。お母さんの後ろに隠れちゃった。小さい子の額にも小さいながら角がちゃんとあるんだね。

 

 街にいる人、全員額に角があるし、背中に小さな翼や尻尾がある人もいる。

 それとダンジョンで見かけた小人にそっくりな一団も見かけた。彼らは柔和な表情をしていて、明らかに違うとわかる。あとでスケッチしておこう。

 

 街並みは清潔、街路樹や花が石畳の街道沿いに植えられてそこを歩く身綺麗な人々。その光景に、いやでもここは文明社会だと思い知らされてしまう。

 城の入口にはやたら体格のいい騎士達がずらっと整列して俺たちを出迎えた。

 そこで彼らに武器を預け、そのまま大広間に通される。 

 国交を結ぶ調印式の始まり。シンプルでスピード優先。いいね。

 

 スムーズに互いの書簡に調印が行われ、正式に国交が結ばれることになった。後は事務レベルの交渉に入るとのこと。

 

 ちなみに俺達の国は仮名称『まと』になってる。

 もうそれでいいのでは? と思うが『まと』以外の部族がまだうるさいんだろう。

 

 オミ達は案内され湯浴みに行き、将軍と俺は色々と話し込む。

 

「どうだ? 我が国は」

「人々の顔見ればわかります。名君ですね、将軍は」

「ほぅ」

 

 ちなみにオウルグ将軍には俺の転生のことを伝えてある。長い付き合いになりそうだし。

 

「上に立つ人のやる事一つで、住民の顔つきや色々なものが変わるんです。それが外部から来た人間にはすぐ目に付く」

「子どもらしからぬ物腰だと思っていたが、本当に大人なのだな」

 

 こっちの人たちの強さを見るに、ディザ帝国が侵攻したとしても、押し返すのは難しくないと予想する。

 まぁ実際やってみないとわからないが、それも帝国が造船、航行技術を発達させて無事にここまで辿り着ければの話。

 ユリーカが言っていた、船がことごとく未帰還なのは何故だろう? 激しい海流とかあるのかもしれない。

 

「お前達からもたらされる薬は魅力的だ。この国で薬学はあまり発達しておらんのでな」

「魔法を当たり前のように使える弊害ですか?」

「ふふっ。わかるか」

「何となく言ってみただけですけど」

「その通りだ。それはそうとこちらから出せるものを協議しておるが……」

「国王からはそれを調べ記録して帰ってこいと言われてます。この大陸の動植物を色々調べたいですね。薬の材料なら互いに価値が見合うでしょう」

 

 薬はほぼ生物由来、あとはほんの少し鉱物があるだけだ。薬草類は栽培が難しいものが多く、動物や昆虫の飼育も成功例は少ない。だから薬の生産量は安定しない。

 

 将軍との打ち合わせの後、ラミテスに捕まる。

 

「お前からオミとユリーカに伝えろ。閣下に色目を使うな、と」

 

 恋する乙女のアホな嫉妬心にとばっちりを喰らう。

 

「断言してもいいよ。その心配ないから」

「なぜ言い切れる?」

「あのさ、オミもユリーカもそれどころじゃないの。ディザ帝国への備えで手一杯だから、色恋に呆けてる時間なんてないよ」

「そ、そうか」

 

 やっと納得してくれた。恋愛脳女騎士め!

 

「ところでさ、俺達って魔法を使えるようになれるの?」

「無理だな。我々は体に纏う波動を操作して魔法を使うが、お前達ツノ無しからは波動を全く感じない」

 

 バッサリだった。不可視の何かを感じ取ること、それに内心驚いてしまった。

 

「ユリーカも?」

「そうだ。あの魔法とあの能力は全く別のものだ」

「うーん、残念」

「お前、不思議な鎧を纏えるそうだな?」

「あー聞いたのね。使えるよ」

「他の騎士達も見たがっててな、どうだろう、修練場で見せてはくれないだろうか?」

「見せるだけ! 見せるだけね! 俺、剣なんて習ってないし、そもそも本職の戦士でもないし」  

 

 ラミテスにグランドみたいな広場に連れて行かれ、全員に紹介される。

 彼らは笑顔だが、雰囲気からして怖い。

 

 で、騎士たちがが見学する中、パワードスーツを装着。

 

「ほんと不思議な鎧だな」

「転移技術か」

 

 見学の騎士たちがざわついてる。

 

「ラミテス、手加減頼むよ」

「ちょっとだけ! ちょっとだけだから!」

「一番信用できない言い方ぁ!」

 

 ラミテスが踏み込んでくる。速い、速すぎる。

 こんなの逃げられない! 

 ラミテスの一撃を咄嗟に腕で受けとめた。うん。剣が当たった触覚はある、しかし痛みは無い。

 

「金属ではないな」

 

 すぐに距離をとったラミテスの目が光る。怖い。

 

「俺もわからない。蟹の甲羅みたいな素材かも?」

 

 するとラミテスの剣が妖しく光り始める。

 

「おーい! それ魔法! 本気やん」

「もちろん威力は抑える。だからちょっとだけ!」

「やめろー!」

 

 ラミテスが不可視の速度で剣を振るうと、そ何かが飛んできて当たった感触はあった。しかしダメージ無し。 

 

「雷撃も効かない……」

「あのさ! これが何にどれだけ耐えられるか知らんのよ! まじで。だからやめて!」

 

 と戯けつつ、八九式をイメージする。狙いはラミテスの剣先よりちょい下。

 俺は一気に踏み込みゼロ距離で撃つ。

 威力は拳銃弾ぐらいをイメージ。

 ……折れないよな?

 

「あぁっ」

 

 衝撃音とともにラミテスの剣は弾かれた。不可視の攻撃だからな。

 

「これで満足してくれ!」

「まだまだぁ」

 

 と迫ってきたラミテスが、飛んできた稲光に打たれてそのまま地面へ倒れた。

 見るとオウルグだ。

 

「すまんな。ラミテスは馬鹿がつくほどの武芸の求道者なのだ」

 

 オウルグに謝られる。

 

「かっ、閣下! そんな!」

 

 倒れたままのラミテスが焦っているが、身体を動かせないらしい。

 

「お前も自重しろ。ハヤが客人だと忘れたか」

「将軍さま、騎士って怖いです。俺死にそう」

 

 

 

 それからオミ達と騎士達の模擬練習となった。スタイルが全く違う者同士の戦いは得るものがあったはず。

 

「この国の剣術はディザ帝国と似ているが、全く違う動きもある」

 

 解説のユリーカさん、ありがとうございます。

 

 そして閃いた。

 八九式アサルトライフルと同じように、このパワードスーツって剣や槍も取り込めるのではなかろうか。

 

 帰ったら試そう。

 あ、それなら剣を、習いたいな。無理だ……その暇がないか。よしっすっぱり諦める!

 

 その後、侍女さん達に連れられ俺も湯浴みすることに。風呂はいいなぁ。

 

 帰還した俺達の周囲は一気に騒がしくなった。

 まず俺たちの天幕近くにガイザ国の大使館が建設された。ダンジョンから二百を超す職人、数百の荷馬車が行列をなして出てくるのは壮観だった。

 

 二ヶ月ほどのスピード建築で大使館は出来上がったが、ディザ帝国に見つからないよう擬装を依頼。

 ちょっとした小山ができた。

 

 国交窓口としてガイザ国第八王女が赴任。

 護衛兼ダンジョンスイーパーとして騎士が二十名が常駐、あのラミテスが隊長だと。嫌な予感しかない。

 

 使用人として『まと』から女子衆が十名、文官が五名、ユリーカも付くことになった。

『まと』から来たのは間諜だろう。

 

『ぬ』から研究者が一人追加。こっちは魔法の記録だそうだ。何でも研究だ。

 

 さらに行商が直接ここへ来ることになった。

 もう集落というかちょっとした街になった。

 

 オウルグ将軍曰く、ダンジョンは変化することもあり、今のところあの海がある階層が突き当たりだが、さらに階層が増えることは十分あるだろうとのこと。

 

 そうなると『き』で抑えるのには戦士が足りないとのことで、あの常駐騎士が派遣されたのだ。

 

 またこちらの戦士との合同訓練も行われ、互いに切磋琢磨することになる。『まと』からも兵士が時々訪れる。

 

 もう擬装は無駄かも。目立つよなぁ、ここ。

 俺とミサは薬の調合に追われ続け、模擬戦を求めるラミテスから逃げ回り、日が暮れて夕食とったらすぐに寝落ちという日が続くことになる。

 

 秋も深まりもうすぐ冬が来る。

 

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