気がついたら古墳時代レベルの異世界に   作:はるゆめ

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第十七話 滅びの始まり

 あれから一年。

 『き』だけじゃなく、この国は大きく様変わりした。

 

 俺たちの国は正式に『まと』となった。中央でかなりゴタゴタがあったらしいが、あの王が流石の手腕でまとめたそうだ。

 支配部族『まと』はそのまま中央政府になった。

 

 ガイザ国へまと王が表敬訪問し、友好的な同盟条約を締結した。

 両国はダンジョンの転移門を通じてしか行き来できないため、互いに国防を考えなくていいのがその背景にある。

 

 転移門をくぐったところでそこはダンジョンの中。入り口を塞がれたら侵攻なんて不可能。

 海路にしたって『まと』の造船技術で、南大陸まで行くような船なんて夢のまた夢。ガイザ国には造船技術そのものがない。

 

 ガイザ国との交流はますます活発になった、規模も頻度も。

 農産物から生活雑貨に至るまで多岐に渡り、また農業、土木の技術、果ては料理に至るまで互いのものが行き来する。ユリーカは高待遇と引き換えに国営のひとり送迎輸送部門と化した。

 

『まと』にとって一番大きな収穫は製鉄技術がもたらされたことだろう。

 

 ただ製鉄が盛んになると燃料となる山の木が大量に必要であり、その結果ハゲ山が増えては困る。土砂災害怖い。

 計画的な伐採と植樹のことを上申しておいた。大巫女さまの言ことは必ず王へ通る。

 

 ドラゴン皇女は、妖術部族『きさ』から派遣された術師が何かしたらしい。

 秘術だから詳しいことはわからないが、随分と協力的になりディザ帝国の情報を話してくれた。

 秘術は催眠か強力な洗脳なんだろう。

 

 気の毒だが殺意剥き出しで襲ってきたのは彼女だから同情はしない。

 彼女は自由奔放に帝国のあちこちへ出歩いていたそうで、帝国各地についてかなり詳しかった。

 

 転移という能力のため、作戦行動時以外は文字通り籠の鳥だったユリーカとは対照的だ。

 

 ドラゴン皇女の情報を元に、長距離偵察部隊が大森林を越えて、ディザ帝国の領土まで行くことになった。

 この一年、帝国の鷲騎兵も全く現れていない。

 

 そして俺たちがいる簡易拠点はもう集落どころか、街と呼ぶにふさわしい規模になった。

 明日はオウルグ将軍が久しぶりに訪ねてくるので、迎賓天幕内で準備する。

 

 その夜、俺は中央政府から派遣された記録編纂係の言葉をぼんやり思い出す。

 記録を始めて以来の大事件が立て続けに起きた。これは数十年前、国が荒れた時期の星巡りと同じだという。

 

 違うのは死者の数。

 ユリーカの出現、ドラゴン皇女の襲来、ダンジョンの出現、オウルグ将軍との出会い。

 幸い死者は一人も出ていない。

 だから死者が大量に出るような災いが起こるのではないかと予測しているらしい。

 

 うーん。

 そんなこと聞かされると普段考えもしなかったことが浮上してくる。

 

 自分の天幕に戻って、すやすやと寝息を立てているミサを眺めながらつらつらと考え込んでしまった。

 

 そもそもだ。

 なぜ俺は前の人生を思い出したのだ。

 何によってそれは起きた?

 こればかりはわからない。

 

 何か徳を積むようなことをした覚えはないし、逆にろくでもないこともやってない。

 平凡と言っていい人生だったと思う。

 特別な人間じゃない。

 

 以前大巫女さまに尋ねたことはある。

 

『お前が今を受け入れているなら、何も気にすることはない』

 

 それだけ言われた。

   

 考えたってしかたのないことなのか。

 そうか。

 そうだな。

 そして。

 俺に何が出来るのだろうか。

 ここにいる誰もが無事で済むように頑張ろう。

 そう決意して眠りにつ……痛っ! ミサの腕が俺の鼻にヒット! 涙が出るぐらい痛い!

 こいつ!

 

 実はミサ、寝相がすこぶる悪い。足で蹴られる、上に乗っかられるなんて毎日のことだ。

 ミサも立派な女の体となったから、俺へのダメージも子どもの頃に比べて倍増だ。

 

 あまりに頭に来た時はミサを寝床から追い出す。

 朝怒られるけどな、しゃーない。お前が寝相を直せ。

 

 翌日、オウルグ将軍とラミテス、ガイザ国大使の王女様を迎賓天幕にて接待。

 重要な話とのことで、中央政府から派遣された文官と大巫女様も同席。

 

「実は最近我が国に漂着したディザ帝国の人間が驚くべきことを話したのだ」

 

 要約する。

 ディザ帝国にいくつかのダンジョンが出現した。

 そこからは見たこともない怪物が帝国全土に現れ、殺戮の限りを尽くし始めた。しかもそいつらは転移能力を持っていて、仕留めるのに時間がかかる。

 

 神出鬼没の怪物。

 

 帝国軍が総力をあげてそれらを排除しているが、一進一退という状況らしい。むしろ形勢は不利。

 

 彼らがガイザ国へ漂着したのは、その怪物に町が壊滅させられて、海しか退路がなかったとのこと。自警団や常駐の兵士達はその怪物に全く歯が立たなかった。

 

 帝国はユリーカやドラゴン皇女の捜索どころじゃなくなったわけだ。

 

 これ、対岸の火事じゃないよな……。

 

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 ディザ帝国領内偵察報告

 

【行程と偵察範囲】

 耳長族の支配地域と山脈北の麓にある帝国領内の集落。

 

【状況】

 我々は街道より外れた道を辿った為、気付くのが遅れたが、観察した範囲全てが壊滅状況であった。

 

 最初は長耳族支配地域。

 生きた長耳族の姿は見かけず。

 建物は全て半壊、全壊状態。

 畑は完全に荒廃しており、少なく見積もっても二年以上放置されてると雑草の繁茂から推定される。

 

 長耳族の支配地域に隣接する帝国領土へ。

 無人の集落が続く。

 長耳族の支配地域と同様の荒廃。

 

 ダンジョン発見。『き』の近くにある洞窟状のものと酷似。そこから出てきた複数の敵性生物と遭遇。

 森で見かける猿に酷似するも背中に棘が毛髪ように生えており、それを武器として飛ばしてくる。

 特筆すべきはユリーカ元皇女と同じ転移能力を使うこと。ただ連続して使うことは出来ないと思われる。

 転移距離も数歩分ほどでそれ以上の距離を転移できるかは不明。

 

 全員で戦闘。殲滅。損害は全て中央政府軍兵士。十名のうち五名が負傷。

 

『き』の部隊十名は負傷者無し。森で狩る猿と動きが変わらず、転移しても気配と獣臭で察知できるので対応は可能(『き』の戦士は狩人も兼任しているためである)。

 

 中央政府軍兵士は対人を想定しているので訓練が必要となる。

 当該生物の一部を持ち帰ることとし、記録画に残す。

 

 負傷者が出たことと、これ以上先へ進むのは領土侵犯発覚の恐れがある為、撤退を決定。

 

 このような状況がこの地域だけなのかは現時点では不明。ただ領土を荒廃したまま放置してることを鑑みるに帝国領内は異常事態になっていると思われる。

 

 ※ユリーカ元皇女や捕虜(皇女)の証言『帝国は隅々まで徹底して支配、管理している』と照らし合わせての推論である。

 

 

 報告者 マト中央政府軍 隊長 ソガ

 

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 この報告書を受けての対策会議の要約。

 

【参加者】

 まと王

 摂政五名

『き』大巫女

 各部族長

 

【ダンジョン異変とそこから出現した毛針猿】

 

 この事象がディザ帝国に限ったことか?

 

 現在ガイザ国にある七箇所のダンジョンに異常無し。

 ※大使館より伝達

 

『き』に存在するダンジョンも同様。一時的にダンジョン内の転移門の使用を凍結。

 ガイザ国の騎士隊、まと政府軍兵士による合同軍で監視中。

 

 また大森林にある遺跡は異常無し。

 ダンジョン出現、予断を許さない状況である。

 

『き』大巫女の発言。

 以前より占いにおいて北の不穏な気配を王には進言していた。ディザ帝国との戦と予想していたが、この異変のことだと確定した。

 依然として不穏な気配は濃厚。

 

【ディザ帝国への第二次偵察隊派遣】

 

 これを機に正式な使者を送るべきではないか?

 

 それを決める為の材料が欲しいので前回同様、極秘偵察が望ましいのではないか?

 

 第二次偵察隊の派遣決定。

 不測の事態に備え、ユリーカ元皇女の同行。

 前回の辺境地域より先にある帝国の人口密集地域「都市」まで偵察。

 帝国臣民に擬装した部隊を随行させる。これは毛針猿への対応可能な『き』の戦士隊とする。

 

 中央政府軍、各部族の戦士隊、『き』の戦士、これらの合同演習。

 

『き』より提案のあった避難場所の設定と避難訓練の計画と実施。

 

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 俺は第二次偵察隊に行けることになった。

 オミの部隊十人、ユリーカ、ラミテス、俺、ハバ。

 結構な大所帯になった。ハバと俺は記録観察係。ある程度自衛が出来るからという理由で同行を許可された。

 俺はメディックでもあるしな。

 

 ラミテスはガイザ国へ漂着する人民を派遣するディザ帝国の実地調査をガイザ国王からの勅命で参加。

 鎧は目立つから俺たちと同じような服を着てもらい、ギリースーツも手渡す。額の角は帽子で隠す。いざという時は魔法、頼りにしてるぜ!

 

「なぁ、船で海を渡るのを禁じてるガイザ国の神様はさ、ダンジョンの転移門で他国や他の大陸へ行くのは禁じてないの?」

「ああそうだ」

 

 謎の教義である。

 

 俺たちはユリーカの転移で移動し続け、帝国有数の都市へと到着する。

 

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