気がついたら古墳時代レベルの異世界に   作:はるゆめ

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第九話 報告そして備え

『ぬ』から来た調査員の中に妖術師がいた。背が高いマッチョだ。なんかイメージと違うなぁ。

 

「これから儀式でここを視る」

 

 おほっ。そんなこと出来るんだ。すごいぞ妖術師。動物のミイラとか、怪しげな粉や液体を設置してる。それっぽいな。

 

 ハバはというと、巻き物を取り出し石の配置図と見比べて調べている。

 

 ここからは専門家に任せて俺はミサと一緒に光苔集めをする。持参した袋がなくなったから遺跡の外へ。

 

 そこで待機していた荷運び担当に渡す。荷運び担当は小学生ぐらいの子どもの役目。『き』に限らず、この国の子どもは立派な労働力だ。

 

 すると目の前にユリーカが突然現れた。まるで前からそこにいたかのように。

 ……すげぇなテレポーテーション。こうやって直接見たら感激してしまう。

 

「やってるようだな」

「うん。今からちょっと休憩」

「少しは何かわかったか?」

「うーん。何もまだわかってないからね。ユリーカの転移ってさ、未知の場所でも行けるような研究とかしてなかったの?」

「転移能力そのものはかなり稀でな。歴代の皇族でも私が三人目だと言われた。それを隠し通した者もいたかもしれぬが」

「あーレアだから研究も無しってわけかぁ。ディザ帝国領土内に遺跡ってどれぐらいあるの?」

「確認されてるのはない。こちらには古代文明とやらは存在してなかったと学者は結論を出していた」

「そっかー。見てみたいなぁ、帝国。全然違う文化。どんなんだろ」

 

 ちなみにユリーカはメイクをしており、持ち込んだ化粧品がなくなる前に、俺に製作を命じてきた。

 

 この国で女は化粧をしない。あるとしたら森林での迷彩効果を目的としたフェイスペイント、祭りや儀式の時に施すど派手なメイクぐらいだ。

 

 化粧品作りは苦労したが何とか形になり、ユリーカもご満悦。すると『き』の女に同じようなメイクが流行った。そりゃもう大流行!

 

 五歳の子どもからいい年したおばちゃんまでギャルメイクをするようになって、それには俺も驚いた。

 女は幾つになっても綺麗になりたいというのを確認できた。

 

 

 

 

 少年達が寛いでいる遺跡の外。そこよりはるか離れた北の地にて。

 男二人の会話。

 

「ユリーカはまだ見つからないのか」

「申し訳ありません。最初の転移に付き従った者達ともども行方は全く知れない状況に変わりありません」

「皇帝も紫姫の能力は失いたくはないから必ず探し出すように通達が来ていてな」

「長耳含めて軍を出しますか?」

「そうまでしないと皇帝も納得はせんだろう。編成は任せる。ただし少数精鋭にせよ」

「承知しました」

「あれに付き従った皇族直属部隊も行方知れずとなると、大森林の奥に住まう何者かは厄介な相手かもしれんな。獣か人か」

「ご心配なく。鷲騎兵の手配をしております」

「そうか」

「何か面白そうな話をしておるな。私もその大森林とやらに行きたくなった」

 

 不意に少女の声が割り込む。

 

「物好きな姫がここにもいたか」

「当面戦はないであろう?新たな領土を献上となれば、お前も皇帝(ちちうえ)に良い顔ができよう?」

「今更だ。俺はこの果ての地で骨を埋める」

「ふふん。強がりを。よし私が紫姫を探し出す手伝いをしてやろうぞ」

 

 

 

 

 傭兵部族『き』大巫女へ上がった報告。

 

【遺跡最奥について】

 学術部族『ぬ』と合同調査。

 図形のように並べられた石が有り。

 他の遺跡の文字と照合した結果、部分的に一致するものがあり、それらは以下の通り。

 

『西の』 『王』 

 

 妖術師の調べによると、妖力は無し。

 推測の域を出ないが、何かの力と感応するようである。

 

 

【大森林北部】

 見たこともない大きさの鷲が複数確認された。

 遠見によるとその背に人が乗っている。

 ユリーカ皇女に確認したところ、ディザ帝国の鷲騎兵とのこと。

 長距離偵察や伝令が主な任務。

 

【ユリーカ皇女に付き従っていた兵士の死体検分】ユリーカ皇女の協力有り。

 

 鎧には鉄が使われていて、剣も鉄製。

 一名は地図を所持。大森林の北側はほぼディザ帝国の領土であり、ユリーカ皇女の言と一致。

 携行していた薬の成分分析は難航。

 火薬なるもの有り。黒色の粉。火を灯すと爆発する。検証済み。

 

 

 

 

 報告をオザマから聞かされた俺は愕然とした。まいったな、こりゃ。ディザ帝国には航空戦力まであるのかよ!

 

 鷲騎兵とやらが目撃されたのはここよりは百kmは北だ。『き』の森林部隊ってのがあって、十kmおきに配置されてる。 

 

 そのうちの一番北側にいる部隊が見つけたわけだが、近いうちにこっちへ来ると思った方が良さそうだ。

 

「先に教えてくれよ〜皇女さま〜」

「私もここまで早く捜索の手が伸びるとは思わなかった。私の作戦行動は機密なのだ。他の部隊とは接触しない。ここと近い場所にどう帝国軍が展開しているかは知らぬ」

「てっきり長耳族のところに寄ったもんとばかり思ってたよ」

「あそこは帝国南部方面軍の管轄だ。皇帝直属の私は関わることはない」

「ここが見つかったら攻めてくる?」

「私の捜索が目的だろうから、鷲騎兵による襲撃はあると思った方が良い」

 

 俺は第二次大戦でヒトラーが幽閉されたムッソリーニを救出した作戦を思い浮かべる。

 空から来て空へ逃げられたら……うん、打つ手無しだぜ。

 

 しかも火薬まであるし。黒色火薬を使われてもやばいな。

 

「いや待てよ……遺跡の奥なら安全では?」

「私もそう思う」

「いざという時には転移であそこへ行けばいいか」

 

 敵さんもユリーカがこっちに寝返ったとは思ってないだろうから、逃げるとは思わないはず。

 避難訓練やその他の対策が必要だな。大巫女様に具申しよう。

 

 内容は以下の通り。

 

 天幕のカモフラージュ。

 まず少々不便だけど、天幕は全て森の中へ移動する。その上で天幕を覆うサイズのカモフラージュネットで偽装。ギリースーツは既に生産しているから、それを大型化すればいいだけだ。

 

 釜戸はホアン・カム・ストーブを参考に煙が目立たないようにする。サバイバルゲームなんてやってるとこんな知識も知ってしまうもんだ。

 

 敵が火薬で攻撃してくることを想定して、消火訓練をしておく。防火水槽とも言うべき水の入った樽をあちこちに置く。

 

 同時に防空壕だ。地下に逃げ込めば被害はかなり減らせる。

 対空兵器。大きな鷲相手なら投網が最適か。戦士の皆さんには訓練してもらおう。

 

 さぁ忙しくなるぞ。時間との戦いだ。

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