20XX年某日東京湾上空。
天気晴朗なれども波高し、虚空を斬り裂く白煙の群れが首都東京に降り注いだ。
迎撃を行うべき日米両国の軍隊は正体不明のジャミングを受け戦闘能力を喪失、世界中から打ち込まれた中長距離ミサイルを防ぐ手立てはないかと思われた。
――あの純白の騎士が現れるまでは。
その日、各国のレーダーや報道陣のカメラに収められたその人形の騎士は一振りの太刀を振るい、2200発を超すミサイルを”全て”迎撃し、世界の常識を塗り替えた。
その後、追撃に出撃した各国の陸海空軍の包囲網を突破した白騎士は太平洋方面に音速を超す速度で逃走、一切の追跡を許さずあらゆる機器の上から姿を消した。
この日、世界は確かに変わった。
白騎士が示したISの純軍事的な能力は一瞬で全世界の軍事的バランスを崩壊させ、各国の株価は一気に下落、混乱は波及し止めどなくなっていた。
最終的に世界はISを作り上げた篠ノ之束を確保し、大量のISコアを製造させることで旧来のパワーバランスを取り戻さんと動いたが、肝心の篠ノ之束は467のコアを作り上げた時点で逃亡、拘束する事に失敗した世界は467機のISコアを分散させ、日本一強とさせないためISの軍事利用を制限するアラスカ条約を国連で締結、それまでの混乱と争いに一応の終止符がつけられた。
―――私は、そんな出来事の流れをテレビで見ていた。
こうなることは分かりきった事だったし、あらかじめ知っていた。
IS…正式名称【インフィニット・ストラトス】宇宙開発のためのマルチフォーム・スーツとして開発された戦略兵器。
2000発を超えるミサイルを迎撃し、各国の包囲網を突破するポテンシャルを持ったかの兵器はこれから、15〜16歳の若い女性たちがスポーツ感覚で使う事になる。
――ん?なぜそんなことが分かるかって?普通、そんな強力な兵器が登場したらガ〇ダムよろしく、大戦争になるんじゃないかって?
でも残念、ISの絶対数が少ないから現実的ではない。
総数467機…研究や訓練に使用する分を考えれば実働機は全世界で300機あれば良いところ、現実に圧倒的な性能を有するとは言え大規模な戦争に使うには心もとない数…仮にISが単独で国家の迎撃網を突破して戦略核を首都なんかに投下したらどうなるかは分からないけど。
…まぁ、それはいいか。
私がなぜそんなことを知っているかは…単純明快、この世界を知っているからに尽きる。
前世という物を信じるかい?私は信じてる、なぜなら私自身が前世なるものを経験しているからだ。
不思議なことに今までこの世界のことを今の今までよく知らなかったが、あの白騎士がミサイルを迎撃した”白騎士事件”が起きるまで気づかなかった。
まぁ、何が言いたいかと言うと…
「どうしてこうなった」
私は今世で生活してきた部屋の中心で大の字になって呆然としていた。
今この部屋には私しかいない…というよりこの家にいるのは私だけだ。
別に孤児というわけではない、普通に親はいる。
ただ、白騎士事件がきっかけで武器の開発を行っていた父が職を失い、母はただでさえ冷めきっていた夫婦関係に愛想を尽かして父と私を捨てて出ていった。
父は多大なストレスから蒸発、この家と最低限の金銭を残して消えた。
「えーこれからどうしよう」
前世はともかく、今の私はか弱い美少女である。
年齢は7歳である、少女というより幼女だな…直近の問題は保護者がいないことだけど…まぁ、親戚とかを頼ればなんとかなるだろ。
お金は…うん、とりま義務教育の中学校までは大丈夫だし、奨学金を含めれば高校まで通える金額はある。
あとは…
「パソコン買うか…」
――数年後――
「いや〜なんとかなるもんだね」
なんとかなった。
あのあと中古の古いデスクトップPCをリサイクルショップで買ったあとに、未来で跳ねる会社の株を買い漁って今や億万長者(比喩)である。ISの登場のせいか、負ける株もあったけどそれでも大多数の株は前世と同様に成長していった。
あ、ちなみに保護者の件は親戚には断られちゃって、終わったと思ってヤケクソでゲームをしてたらフレンドの一人が後見人になってくれたよ。
いや、最初は怪しいと思ったけど前世で30年近く生きた日本人男性の視点から見ても、おかしい点の無い完璧な書類と経歴だったからね。
…まぁ、日本国籍と言いつつ、明らかに外国の人な点は気にしない事にした。
ゲーム内チャットも英語だったし、不審な点こそあるが…ま、今害にならないなら問題なし。
「いよいよ明日か〜」
新学期が始まり、原作が始まる日だ。
私はIS学園に進学した、年齢的に原作開始時点では2年生になるけど、まぁ些細なことだよね。
今のところ主要キャラクターだった人たちとは近すぎず遠すぎない距離感を維持してるし、交友関係と”趣味”の方も順調である。
ん?趣味のこと?うん、実は私ロールプレイが好きでね。
今の今までフレンドに始まり、仲間・同志・先輩・後輩・兄弟・姉妹と色んな人相手にロールプレイを楽しんできたけど、やっぱりどうせ舞台に上がるなら原作開始後にロールプレイを楽しみたいからね。
今までのは全てその下準備というか予行演習みたいなものだからね。
そんな話を昨日の夜フレンドに言ったら「つまり、ここから始めるのですね?」って向こうもロールプレイに乗ってくれてすごい盛り上がった。
うん、やっぱり持つべきは友達だね!なんか「実働部隊の準備は完璧です」ってよくわからないロールプレイもあったけど、多分同志が作ったガン〇ムとかマ〇ラヴのロボットなんかを参考にした作業用スーツのことだと思う。
いや~最初はそれ系のアニメとかゲームが何にもなくてビックリしたけど、同志に話したら滅茶苦茶そういう話が合って「それだっ!俺はそういうのを求めていたっ!」って喜んでたし、やっぱり話が合う相手がいないと大変だなってフレンドに紹介したから、多分その話かな?ISなんてSFなものがあるんだし、完成したようなら今度見せてもらおう。
「いや~長かったけど、ようやく原作が始まるし早めに寝よ」
私はこれまでのことを噛みしめながら眠りについた。
主人公とか新しいヒロインたちに合ったらどんなロールプレイで相手をするか、夢想していれば眠りに落ちるのはあっという間のことであった。
――同日某所――
「――それで姉貴はなんて言ったんだ?」
「お嬢様だ口を慎め」
「お姉様よ、あなた達馬鹿じゃない?」
薄暗い部屋、モニターの薄暗い明かりだけがほのかに照らす中、5人の男女が円卓を囲んでいた。
年齢,性別,国籍,人種そのどれもがバラバラな彼らは一見するとなんの関わりの無いように見えて、その実、一つの目的のために集まっていた。
「呼び方などどうでもいいだろ、アイツはアイツだ」
白髪に目元を黒い布で覆った女が無駄な議論を切り捨て腕を組む。
他の面子も異論はないのか、はたまた平行線をたどるだけだと思ったのか口を閉ざし、今回の議論の中心を持ち込んだ女の方を見た。
「えぇ、彼女はこれから始めると言ったわ」
女は微笑みを携えながらそう言うと手元の資料を周りに配った。
「我々直属の実働部隊はMA50機で完全充足した大隊を3つ、経150機を運用中よ」
「相違無い、付け加えるなら斬首戦術のために対ブリュンヒルデを想定した2機1編隊,4編隊8機で敵精鋭を確実に殺すための戦術を訓練中だ…半年もあれば実戦でも使えるようになるだろう」
その報告を受け周りも資料を見ながら頷いた。
「この前、
この集団の中でもひときわ若い男が尋ねる。
すると先程まで呼び方で争っていた二人が応えた。
「単純な火力では現行の軍用ISを凌駕、防御力では絶対防御がない関係で劣る」
「旧式とはいえ、やはり防御力では劣る――速度も瞬間速度では勝るが最高速では到底追いつけないな」
「新型ならある程度は出し抜けんだろ?」
一連の話を聞き、男はそう尋ねる。
「――ええ、現在充足している新型であれば防御力を除きISに見劣りしないわ」
「お嬢様と協力者の発想から生み出された純軍事目的の兵器だ、中途半端なISに比べれば火力では圧倒、速度も同格、防御力では劣るがその時は数で局地的に補えばいい」
二人の発言に納得が言ったのか男も特に何も言わない。
「全員注目」
ひとまず議論が落ち着いたと見て女が声を出し、それに全員が反応した。
女はその動作に満足すると話し始める。
「彼女の命を受けた以上、これから始めるのは決定事項よ」
全員が頷く。
「不備がなければ半年後に全面蜂起を起こします」
「異論はない」
「各地に点在する組織にも通達し、蜂起前には各国の首脳部を麻痺させるため各地で民衆に扮して事件を不規則におこさせるわ」
「なんてことのないデモや事件に見せかければいいんだろ、任せろ」
「蜂起は全世界で同時多発的に行い、3日以内に主要な国家を無政府状態にします」
「権力者の排除は任せて頂戴♪」
「えぇ、お嬢様のために」
「開戦の狼煙は――」
全員が目を光らせ今か今かと続く言葉を待つ。
「――彼女に上げてもらいましょう」
―――開戦の地はこの世の醜さを詰め込んだ地―――
―――IS学園上空で行う―――
こんな感じのネタとシリアスと勘違いが混ざった作品が書きたかったんです。
見切り発車で続きはないので誰か続き書いてくれません?