アイリスアウトの外側で 作:アホ体験
『ハロー、ガッデムワールド! 皆さんご機嫌はいかがでしょうか?』
炎と瓦礫の山のどこかから、ツギハキの声が聞こえてくる。
その言葉達は、滑舌こそとても流暢ではあるのだが、一文字、一音階、一呼吸に至るまで、その全てが別の人間の
正に老若男女、十人十色の声色が、陽気に空気を支配する。
『今日は中東のイラクより、全世界へとお届けします!』
誰が聞いているのか分からない、こんな荒れ果てた場所で唯の一人だけ、視聴者がいた。
その人間の名前は、カラシニコフ。
ミサイルの悪魔へと変身出来る、悪魔の心臓を持った男である。
彼が、この炎と血に塗れた惨劇を作り出た張本人であった。
踏み込み、加速、そして爆発。これを繰り返すだけで、人は死に、建物は崩れ去る。
これが、カラシニコフの十八番。
誰が敵であろうとも、カラシニコフは少なくとも負けることは無いという自負があった。
このラジオ放送だって、死に損ないのイラク軍人が契約した悪魔の攻撃だろうと、カラシニコフは予想した。そしてどれだけ強力な悪魔だろうと、実質的に不死身であるカラシニコフの敵では無い。
と、思って
『おっと、タイトルコールを忘れていましたね! こほん!』
『“ジョン・ドゥ”のラジオデーモン!!』
「クソが! 逃げ────
カラシニコフは歴戦の勇士である。いや、テロリストである事を加味すれば勇士では無いかもしれないが、少なくとも歴戦ではあるのだ。
中東、ひいては世界に目を向けても名の売れたテロリストだったカラシニコフにも、恐れるものが1つだけある。
戦争の悪魔か死の悪魔か? 違う、アイツらはみんなチェンソーマンに殺された。
それならば、チェンソーマン? いや、確かに怖いが、アイツは8年前に消えた。
ならば何か
『
ジョン・ドゥ。
かつてのソ連崩壊を発端とした悪魔の心臓の大量流出。
50個もの心臓が、武器人間兵士を量産するためにソ連に作られた“契約書”と共に世に溢れたあの渾沌を、終わらせた人間だ。
カラシニコフの持つ『ミサイルの悪魔の心臓』も、ソ連から流れてきたものを、伝手を最大限に駆使して手に入れたのだ。
それが間違いだった。
ジョン・ドゥは、
その証拠であり、彼の伝説である所以として、現在までに30の心臓を破壊している。
ピストルの悪魔の心臓──2002年2月28日2時39分、破壊
リボルバーの悪魔の心臓──2002年3月7日10時11分、破壊
サブマシンガンの悪魔の心臓──2002年5月17日3時06分、破壊
機関銃の悪魔の心臓──2002年6月27日21時24分、破壊
スナイパーライフルの悪魔の心臓──2002年9月14日8時54分、破壊
ショットガンの悪魔の心臓──2002年9月14日9時01分、破壊
手裏剣の悪魔の心臓──2002年11月28日0時20分、破壊
カタールの悪魔の心臓──2003年3月20日14時04分、破壊
銃剣の悪魔の心臓──2003年8月10日9時13分、破壊
ブーメランの悪魔の心臓──2003年12月10日19時19分、破壊
スリングショットの悪魔の心臓──2004年3月14日20時52分、破壊
投石器の悪魔の心臓──2004年4月2日19時58分、破壊
自走砲の悪魔の心臓──2004年11月14日12時34分、破壊
鎖鎌の悪魔の心臓──2005年1月1日17時12分、破壊
鎌の悪魔の心臓──2005年4月18日5時03分、破壊
バールの悪魔の心臓──2005年5月5日12時44分、破壊
ガントレットの悪魔の心臓──2005年5月20日6時36分、破壊
バトンの悪魔の心臓──2005年5月30日12時06分、破壊
トンファーの悪魔の心臓──2005年7月15日6時22分、破壊
クローの悪魔の心臓──2005年9月8日14時46分、破壊
チャクラムの悪魔の心臓──2005年12月6日14時53分、破壊
ツルハシの悪魔の心臓──2006年8月21日18時07分、破壊
ボーラの悪魔の心臓──2006年9月12日5時57分、破壊
ボウガンの悪魔の心臓──2006年10月13日6時29分、破壊
ネットガンの悪魔の心臓──2006年11月11日5時41分、破壊
杭の悪魔の心臓──2007年11月11日5時41分、破壊
グラップリングフックの悪魔の心臓──2007年2月8日14時13分、破壊
スパイクシューズの悪魔の心臓──2007年4月2日7時01分、破壊
ジョウロッドの悪魔の心臓──2007年6月1日4時14分、破壊
ボルトカッターの悪魔の心臓──2007年7月13日5時31分、破壊
そして、この最後の項にはこのように記される事になるのだ。
ミサイルの悪魔の心臓──2007年8月9日11時22分、破壊。
「あぇ……?」
「手こずらせやがって、逃げるなよ。面倒くさい」
カラシニコフは地に倒れ、胸から大量の血を流していた。
おかしい、俺は確かにミサイルの悪魔へと変身して空へと逃げた筈なのに。と疑問だけが頭を支配する。
「契約通り、コイツの“ストーリー”はくれてやる。呑め、シーク」
■■■■■■の意識は消失し、ソレが何だったのかも分からなくなる。
それと同時に、興味を無くしたのかジョン・ドゥはその場から立ち去る。
「ディージェイ、報酬の声帯だ。好きにしろ」
ジョン・ドゥの言葉と同時に、■■■■■■の鼻下から首元までが消失する。
すると、ジョン・ドゥの腰に付いている小型のラジオから陽気な音楽と、それに負けない程のハツラツとした声達が意気揚々と喋り始める
『おぉ! これがワタシの新しいコエ! えぇ、えぇ、とても良いぐあいです! 1人のラジオパーソナリティとして、コエはいっそう気を使うべきですから、このコエも大事に大事に使いませんと!』
「お気に召したなら良かったよ」
「あと、19人。
ジョン・ドゥ。コードネーム、ロイ。
秘密の部屋出身のモルモット。
ロイの名前の元ネタは、ロシア語で『2番』という意味の『フタローイ』から