叛逆のスティグマ   作:あや瀨

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四話 波紋

 土台が崩れ歯が抜け落ちたゾンビの歯茎のようなかつての住宅街は、鉄とアンモニアの臭いが混じって異様な臭気を醸し出していた。そこかしこで赤い粘り気を帯びた残飯が路面を汚していた。しかしそれは食事の痕跡ではなかった。魔獣はものを食べない。ただ殺すだけだ。

 

 冬矢は地べたに雑に座り込んでいて、しかし上半身だけはまっすぐ正して、手を合わせて目を閉じた。それから少し頭を下げた。しばしの祈りのあと冬矢は目を開いて全身をまさぐり、先ほどの落下時のダメージを確かめた。

 

「真銀」、と冬矢に語りかける声。

 

 冬矢は咄嗟に、はい、と返事をして、一気に立ち上がった。落下の衝撃はそれなりのものだったが、ひとまず身体に異常は見られなかった。その一方で冬矢が直撃したアスファルトの落下地点は粉砕されていた。冬矢が振り返ると女がいた。冬矢を五千フィートの高空から突き落とした長い黒髪の女。槐だ。

 

聖痕所有者(ホルダー)であれば、あの高さから降りたとて大事ない。ところが、それが一向に信じられぬと降りられぬ者が多いのだ。故に押して降ろす手筈なのだ。すまぬが通過儀礼のようなものだ。怒るなよ」、槐は悪びれもなく言い放った。

 

 冬矢は困惑の色を隠すことなく槐に尋ねた。「その、普通にパラシュートを使えば良いのでは?」

 

 槐は鼻を鳴らした。「馬鹿を申せ」と槐は言って、胸の前で腕組みをした。「此度はそうでは無いが、大群が島を埋めつくしていたとして、悠長に落下傘で降りられると思うか」

 

 それについて冬矢は考えてみた。「飛行船の高度をもっと下げるとか、せめてもっと事前に――」

 

「馬鹿め。燃料とてただではないのだぞ? もし、飛行船を魔獣に落とされてもみよ。あれを量産できるほどの余力は我々には無いのだ」と槐は吐き捨てた。

 

 槐は足早に迫って冬矢の胸ぐらを掴みぐいっと引き寄せた。至近距離で目が合った。槐は眉間に皺を寄せ、渋い視線を冬矢へ向けた。

 

「真銀。これから言う言葉を、頭に叩き込んでおけ」と槐が言った。

 

 槐の剣幕に気圧されて、冬矢は無言のまま深く頷いた。

 

「よいか、遮二無二死ぬな。おぬしは、己の身に降り掛かる火の粉をだけ払えばそれでよい。おぬしには何も期待しておらん。いざというときにはすっ飛んで安全圏まで逃げよ。理解したか? したならば頷け」

 

 槐の言葉は、冬矢が今この場に立っているのを真っ向から否定するものだった。冬矢は困惑しながらも首を縦に振った。それを見て、槐は乱暴に手を離した。

 

 役立たずと吐き捨てられて思うところある冬矢だったが、目の前にいるのは聖痕所有者としては自分よりも歴の長い戦士だった。これに対し自分は黄口児であって、そもそも正式な隊員ですらない候補生なのだから、一旦は素直に頷かざるを得なかった。しかし、先程の槐の発言に聞き捨てならない言葉が含まれていたのを、冬矢は聞き逃さなかった。

 

「敵前逃亡は、しかし、その、重罪では?」と冬矢が尋ねた。

 

 敵前逃亡は到底許される行為ではない。少なくとも冬矢が以前に所属していた軍事防衛課ではそうだった。味方の兵士がひとりでも逃げ出してしまえば全体の士気が大きく下がる。逃亡の流れは他の味方にも波及して歯止めが効かなくなり、やがて戦線は崩壊する。すなわち負ける。故に敵前逃亡は重大な軍規違反であり、脱走兵はその場で銃殺刑にされても文句は言えない。

 

 探るかのような冬矢の質問に対して、槐は深く頷いて肯定した。

 

「常ならば、そうよな。だが命令の範囲内であれば、その限りではない。これは我らが分隊長どのの方針でもある。誰ひとり死んではならぬ、とな。此度は逸る気持ちをぐっと堪え、なるべく(ケン)に徹するがよい」

 

「了解しました」と冬矢は答えた。

 

 冬矢は先輩の真意を測りかねていた。不器用な物言いではあるが、要するに彼女なりに心配してくれているのだろうか。冬矢が考えている間に、槐は冬矢に背を向けた。

 

「されば、先を行くふたりに合流するとしよう。だがその前に」と言って槐は、自身の服の前立てに両手の指をかけて左右に開いた。あらわになった胸部には、聖痕(スティグマ)が刻まれていた。

 

装纏身(そうてんしん)

 

 槐の言葉に呼応して胸部の聖痕が月白の粒子の波を放った。白が広がって槐を覆いつくした。白が晴れると、藍色の全身装甲を纏った戦士が現れた。

 

 聖痕所有者の全身を包むこの鎧を〈聖装(アームズ)〉という。聖痕を宿した者が誰しも授かる防具であり、聖痕所有者の身を守る。

 

「真銀」と槐が冬矢にくぐもった声をかけた。「おぬしも聖装を顕現させておけ。この先いつ接敵するやもしれぬ」

 

 はい、と冬矢は力強く答えた。「装纏身!」、冬矢が右手を天高くかかげると、その手の甲に刻まれた聖痕が白い波動を放出した。

 

 

 

 住宅街を縫うように疾走する影。冬矢だ。額には一本角。研ぎ澄まされた刃物を想起させる白磁色の聖装。それに先行して、藍色の聖装を纏った槐が駆ける。

 

 ふたりが移動を開始してから間もなく、槐が()()に気付いてすっと立ち止まった。後を追っていた冬矢も強引に踏ん張って急停止した。

 

「敵だ」と槐が囁いた。「二時の方向。数は三」、かすかな声だったが、冬矢にはよく通って聞こえた。

 

 冬矢は槐の指示通り斜め右前方を注視した。しかし影も形も見えない。冬矢は目を細めて集中した。やがて小さな足音が聞こえてきた。それがどんどん近付いてくる。

 

「来るぞ」と、槐がフルフェイスの中で口を動かした。声は周囲に響かなかったが、冬矢の耳にだけは聞こえた。

 

 槐が左手を腰に添えると、白の粒子をともなって虚空から大太刀が現れた。鯉口に左手を添えて、右手で柄を握った。大太刀を鞘から抜き放ち、両手で持って上段に構え、そのまま真下に振り下ろした。瞬間、瓦礫の物陰から一体の猟狼種(ガルム)が飛び出した。同時に、その首が千切れ飛んだ。冬矢は軽い耳鳴りを感じて、顔をしかめた。

 

 さらに二体の猟狼種が物陰から駆け出してくる。槐は大太刀を右に構え、左へ水平に振り払った。冬矢はまた耳鳴りを感じた。猟狼種二体の頭の上半分が千切れ飛んだ。三体の魔獣はあっという間に塵に返り、あとには黒い鉱石だけが残された。

 

 冬矢はぎょっとして槐を見た。それから塵となった魔獣の跡地を見て、再び槐に視線を戻した。槐の行動にはあきらかに不審な点があった。中でも特に冬矢が見過ごせなかったのは、槐の振るった()()()()()()()()()()()()という点だ。それは決して目の錯覚ではなかった。槐のいる場所と魔獣が斬られた場所は二十メートル以上の距離があるのだから、元より届くはずがなかった。

 

 不審な点はまだある。足音すら聞こえていない段階で、槐は魔獣の接近を察知し、それを冬矢に通知した。魔獣の数すら的中していた。その原理が冬矢にはさっぱりわからなかった。あるいは自分には聞こえないほどの小さな音やわずかな臭いなどの要素から予測できるかもしれないが(それにしても常人のそれではないが)、槐の場合は数までピタリ当てているものだから、理解の及ぶところではなかった。

 

 槐は周囲に視線を巡らせたあと、大太刀を鞘に収めた。大太刀は粒子をともなって鞘ごと虚空に消えた。

 

 

 

 例外なく、聖痕所有者は専用の〈能力(ギフト)〉を得る。現実の物理法則に反した事象を引き起こし、まるで魔法のような出来事を現実にする能力を。

 

 能力に同じものはひとつとして無いと言われているが、そもそも例が少ないだけで、あるかもしれないとも言われている。要するに人類が能力について知っているのはその程度で、ほとんど何も判明していない。そういう超常的な力だ。

 

 ともかく、槐の聖痕は彼女に〈(サウンド)〉という能力をもたらした。

 

 音。すなわち空気の振動。それを槐は攻撃力へと昇華した。大太刀を振るい、指向性を持つ衝撃波(ソニックブーム)を放つことで、触れることなく敵を破断する。槐はこの技を〈斬空剣〉と呼んで愛用していた。

 

 また、超音波による〈音響探知〉を行うことで、槐は目に頼らずとも障害物を越えて敵を感知できる。この能力は自然界にも使い手が多く、コウモリやイルカはソナーのようにそれを用いて地形を把握し、餌を探す。

 

 槐の声が冬矢にだけ聞こえたことにも理由がある。槐は声の届く距離や範囲を自在にコントロールすることができる。自身の声を周囲の魔獣に聞かせることなく冬矢にだけ届けるのは、先述の技に比べれば容易いことだった。

 

 さらに言うなら、槐の持つ大太刀も聖痕由来のものだ。これは〈神器(レガリア)〉と呼ばれるもので、聖装と同様、すべての聖痕所有者が授かる専用の武器であり、たとえば冬矢の持つ大剣や、冬矢の幼馴染である茉希奈が持っていた鉄杖もこれに該当する。

 

 

 

 二度目の接敵。今度は猟狼種が七体。正面から向かってきていた。

 

「当たりですね」と冬矢が先行する槐に声をかけて、大剣型の神器を出した。

 

 槐は鼻を鳴らした。彼女は今回も敵の接近と数を言い当てていた。

 

 槐は大太刀型の神器を出して、猟狼種の群れの先頭に向かって突貫した。大太刀の刃が閃いた。先頭にいた猟狼種の頭が叩き斬られた。

 

 魔獣の弱点は頭部だ。可能であれば頭部を狙うのが定石だ。あるいは首でも良い。体と切り離せば、その機能を停止する。これは魔獣に関する基礎学習の段階で教わるものだ。実際に槐が冬矢の前で魔獣を斬ったとき、その攻撃のどれもが必ず頭か首に浴びせられていた。

 

 猟狼種の群れが散開し、槐を取り囲むように動いた。しかし、その内の一体だけが槐を通り過ぎていくのを、槐はひと目見て、()()()()。見逃された猟狼種の目の前には、冬矢がいる。

 

 さらにもう一体。槐の包囲から離れて冬矢の方へ向かう猟狼種がいたが、槐はそれに向けて斬空剣を放った。剣筋の直線上にいた猟狼種の首が、衝撃波で千切られた。

 

 四体の猟狼種が槐を取り巻いた。冬矢は一体の猟狼種と対峙した。

 

 槐があえてこの一体だけを見逃したということが、冬矢にはよくわかった。冬矢へ向かって走る猟狼種は他にもいたが、槐はそれを通さなかった。一体だけをわざと無視したのは、そういうことだろう。

 

 冬矢は猟狼種を見据え、大剣を真正面に構えた。手に思わず力が入った。対峙する猟狼種の向こうに、四体の猟狼種をあっさり殲滅する槐の姿が見えた。槐は大太刀を鞘に収めて、それから冬矢の方を見た。

 

(やっぱりそうか)、冬矢は確信した。この先輩は、この場で自分を見極めるつもりなのだと。

 

 冬矢は空気を鼻から深くゆっくりと吸って、さらにその倍は時間をかけて口から息を吐いた。いざとなったら槐は助けに入ってくれるかもしれない。いや、助けてくれるだろう。しかし、だからと言って、それを――

 

「あてにする訳にはいかないよな!」

 

 冬矢が吠えた。大剣が白く煌めいた。猟狼種が飛びかかった。冬矢は気合い一声、大剣を右上から左下に振り抜き、猟狼種の頭を胴ごとかち割った。猟狼種は塵となって消滅し、あとには黒い鉱石が残された。冬矢はほっと一息ついた。

 

「見事。迷いの無い、よい一撃だった」と槐が喜色をはらんだ声をかけつつ、冬矢のもとへ歩いて近寄った。

 

 はい、と返事をしながら冬矢は、その内心で(呆気ない)と思っていた。魔獣との戦いでは都度、死を覚悟しなければならないと考えていたが、実際にやってみると、想像していたよりもずっと簡単なことのように思えた。

 

「されど、猟狼種程度で思い上がるでないぞ」と槐が鋭い声を投げかけた。「中には私や隊長殿でも敵わぬような種もいる」

 

 冬矢は苦笑いをして、「はっ、了解です」と答えた。

 

 それから冬矢は魔獣の残した黒い鉱石を拾おうと手を伸ばした。鉱石は〈黒晶片(ダークジェム)〉と呼ばれるもので、すべての魔獣の体内に存在するとされている。魔獣が死ぬとその肉体は塵となって空に還るが、この黒晶片だけがあとに残される。

 

 黒晶片についても聖痕所有者やその能力と同じく未だ解明されていないことばかりだが、発見した場合には回収が義務付けられており、持ち帰って研究開発局に回すこととなっている。

 

 ところが、それを槐が制止した。「真銀、黒晶片は捨ておけ」

 

「えっ? はい。良いんですか?」と言って冬矢は手を止め、槐の方を見た。

 

 黒晶片は回収する物だと聞かされていた冬矢だったが、その認識に齟齬があったかもしれないと思って、槐の言葉を待った。

 

 うむ、と槐。「黒晶片の回収は支援課の担当だ。制圧後にやってくる手筈だ」

 

「なるほど、わかりました」と冬矢は答えた。

 

 脅威対策特務局は〈特別作戦部〉と〈特別支援部〉にわかれている。機動課は作戦部の中にある。特別支援部は〈現地支援課〉と〈後方支援課〉にわかれており、黒晶片の回収は現地支援課の担当となっている。

 

「我々は戦闘にのみ専念すればよいという粋な計らいだ」、槐はフルフェイスの中で口の端を上げた。「わかったなら、行くぞ」

 

「了解です」、冬矢が答えると、槐は冬矢に背を向けて走り出した。冬矢もそれを追って地を蹴った。

 

 その後ふたりは移動の途中で六度、猟狼種の群れと交戦した。槐は二十五体、冬矢は十二体の猟狼種とそれぞれ戦い討伐した。また冬矢は三体の猟狼種を同時に相手取ったこともあったが、それほど苦戦はしなかった。

 

 そうして合流する頃には、猩狒種(トロール)が追い詰められていた。

 

 猩狒種の体が何度も爆発した。猩狒種が姿勢を崩したところに、黒い影が迫った。影が猩狒種の頭上を飛び越えて着地すると、猩狒種の頭が胴から離れて転がり落ちた。猩狒種は霧散して消滅し、その場に黒晶片を残した。

 

 それを見ていた、二丁拳銃を携えた赤橙色の聖装の女、ナコルが、冬矢と槐に気付いて振り返った。ナコルはふたりに向けて手を大きく振った。

 

「遅いわよ、ふたりとも。もう一匹やっちゃったわよ」と責めるようなナコルの声は、しかし嬉しそうだった。

 

「ナコル。猩狒種との戦闘で横槍が入らなかったのは、エンジュとマシロが周辺の猟狼種の対応をしてくれていたからよ」と、黒い影が答えた。影は二メートルはある大鎌を携えていた。

 

 猩狒種にとどめを刺した黒い影、フード付きの黒いロングコートを羽織った片目隠れの女は、隊長のドーリスだった。彼女は聖装すら纏っていなかった。

 

「でもザコでしょう? こっちは大物だったのよ」とナコルが反論した。

 

 対して、槐は素直に頷いた。「むべなるかな(もっともだ)。ふたりの戦果には及ぶまい」

 

 ナコルは槐の言葉を聞いて、顎をぐっと上げた。

 

「でしょう? ほら、エンジュもこう言ってるわ」と、自慢そうに報告するナコルに、ドーリスは、ええそうね、と微笑みかけた。

 

 

 

 それから四人は休息をとった。冬矢は地べたに座り込んで、崩れた町並みをぼうっと眺めていた。

 

「トーヤ。調子はどうかしら?」と、ナコルが声をかけた。

 

「あ、あぁ」と冬矢は慌てて答えた。「取り敢えず、今のところは大丈夫だよ」

 

 冬矢は反射的に無難な返事をしたものの、まったくの強がりというわけでもなかった。戸惑いはあるものの、ひとまずは問題なくやれている実感があった。

 

「そう? なら良いんだけど」とナコルは冬矢の言葉を聞いて笑顔を浮かべ、よっこいしょ、と隣に腰を下ろした。

 

 そんなナコルを見て、冬矢はふと疑問に思った事を尋ねてみることにした。

 

「なあ、特務機関(アマデウス)の仕事は、いつもこんな感じなのか?」

 

「ん?」、問いかけられたナコルは、質問の意図がわからなかった。「こんなって、どんな?」と、ナコルは冬矢に聞き返した。

 

「なんと言うか、ろくにブリーフィングもしてないのに……」、言葉が出てこず、冬矢は尻すぼみになった。

 

 ナコルが口を挟んだ。「上手くいってるって?」

 

 冬矢は我が意を得たりと頷いた。今回の任務において、事前に標的や地形などの情報は共有されていたが、戦略や戦術に関しては一切触れられていなかった。にもかかわらず、今のところ順調に進行している。冬矢にはそれが不思議なことのように思えた。

 

「頭を使うのは作戦課の仕事なのよ。あたし達は既に決められた戦場に降りて、敵を叩くだけ。戦術レベルでの行動を要求されるときもあるけど、その場合は事前に通達されるから。今回は本当に目の前の敵を倒すだけの、特に簡単な仕事ね」

 

 ナコルの詳しい説明を受けて、冬矢は「なるほど」と頷いた。

 

 特別作戦部は〈特別作戦課〉と〈特別機動課〉のふたつにわかれており、冬矢の所属する機動課は実地での戦闘を、作戦課は戦略面・戦術面を担当する。脅威対策特務局の中でも聖痕所有者が所属しているのは機動課のみで、その他の課には聖痕所有者は所属していない。

 

(しかし、これが簡単な仕事か……)

 

 冬矢は考えた。つい先日までは、魔獣の中でももっとも弱い種だとされている猟狼種ですら、ただの兵士の冬矢には手に余る存在だった。聖痕所有者でない人間にとって魔獣との出会いは死を意味する。脅威度で言えば猟狼種の数段上をいく猩狒種に対して簡単というナコルの言葉に、冬矢はひどくギャップを感じた。その上、猟狼種との戦いが実際とても簡単に感じられたもので、それも違和感を生む原因となっていた。

 

「まあ、あんたはとにかく、生き残るのが第一ね。危なくなったら、とっとと下がりなさい」とナコルが言った。「()()()()()()ベテランなんだから」と、殊更シニカルな笑みを冬矢に向けて、ナコルは言い放った。「あたしたちに任せておきなさい」

 

 ナコルはその小さな体を弾ませて反動をつけ、飛び上がるように立った。それにつられて、冬矢も立ち上がった。

 

 槐に言われた内容と酷似した言葉がナコルの口から出てきたのを聞いて、思わず冬矢の頬が綻んだ。いきなり実戦に立たされて不安を抱いていた冬矢だったが、今ではその気持ちが幾分か和らいでいるのを感じていた。

 

 

 

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