完全見切り発車なので、ご了承ください。
『星ノ塔』
それは、荒野に聳え立つ巨大な構造物である。
「うわー!なんだか凄そうな部屋!」
「いままで見てきた部屋とは違う」
「あ、み、見てあそこ!床の下にとっても大きい祈願箱が埋まってる!」
入り口は通常隠されており、運良く中に入る事が出来ても内部には多くの星骸がひしめき合い、並大抵の者ではそれらを突破する事すら難しい。
「箱が大きければ大きいほど」
「それを守る星骸はもっと強くなるってことだね」
「でもその星骸はどこなんだろう....近くには見当たらないし、なら今のうちに早く箱を...」
そんな摩訶不思議な塔の仕組みは外の常識では考えられない事象ばかりで構成されており、肝心のその塔について全てを説明できる者はいない。
「って、ちょっとデカすぎない!?」
「これは強敵」
「あはは!アヤメちゃんの願い事、ちゃんと恩恵の神様に届いたみたいだね」
「誰もこんな大きな星骸に会わせてくださいなんて願ってないんだけど!?って、わぁぁぁぁ!!!」
そんな普通の者であれば近づくことすらしない星ノ塔へ、堂々と挑戦する者達を『巡遊者』と呼んだ。
「でもこれだけ強そうな星骸がいるって事は、その箱の中身は...」
「かなり期待できるって事ね....も、もし持ち帰れたら今度こそお金に困らない生活が...!」
「アヤメ、今はこっちに集中」
巡遊者は武器や魔法を駆使しながら星骸達を蹴散らし、塔の最上階を目指し登り続ける。
「っと!やっぱり中々強いね!」
「そろそろ撤退も考える頃合い」
「あ、埋まってた祈願箱が衝撃で....ね、ねえ二人ともどうする?」
そうしてその塔に眠る″祈願箱″から神器を回収する...それが彼女達巡遊者が塔へと挑む理由だった。
「こんなに大きくて、綺麗で...ここから手に入る神器ならものすっごく高値で売れるかも.....うぅ〜...」
「うーん流石に逃げた方がいい気がするけど、ひとまず私とコハクであの星骸を食い止めるから、その間にアヤメはここから逃げ....」
「ご、ごめんふたりとも!やっぱり私諦められない!」
「ええっ!アヤメ本気!?」
「わかった、なら足止めは私がする」
そんな巡遊者達を、都市で静かに暮らす他のノヴァ人は異端者として認識していた。
「んぐぅ!お、重い...!」
「あ、アヤメ、それ本当に出口まで引っ張って逃げるつもり?」
「ん...!あの星骸、さっきよりも強くなってる。急がないと本当に危ない」
だが、彼女達にとって周りの反応はどうでもいい事。
何故なら、彼女達は他人に縛られる事はないからだ。
「絶対...絶対持って帰るわ。だって、だって....!これには私たちの幸せな未来が、詰まってるかもしれないんだからぁぁぁぁ!!!!」
それが、彼女達の人生....彼女達の生き様なのだから。
「はぁ、はぁ、はぁ!い、生きてる...?私たち生きて出られた...?」
「あんな強い星骸珍しいし、折角なら倒しておきたかったなー」
「正直最後の方は逃げるだけで精一杯だったでしょ...それよりも、本題はこの箱よ!あんなに苦労して手に入れたんだから!」
塔から満身創痍の状態で飛び出した3人の少女達は、砂漠の真ん中で膝をつきながら持ち帰った箱の周りを囲っていた。
「これだけ大きければどんな願いだって叶うはず...ふたりとも、準備は良い?」
「って言っても私とコハクじゃ上手くお願い出来ないし、いつもみたいにアヤメよろしく!」
「ううん、さっきの塔を見つけてくれたのはコハクの運の良さだし、途中の階層を突破出来たのはセイナが前線を担ってくれたからだし....今回はふたりにも力を貸して欲しいの」
「じゃあ同時にお願いする?」
「そうね、3人分の記憶を使えばその分手に入る神器の質も上がりそうだし」
3人の内の1人...アヤメはそう言って目を瞑ると、コハクとセイナの手を握る。
「いい?目的は高く売れる神器だからね?....全知全能の恩恵の神よ、願いを聞き届けたまえ。どうか我らに──」
願いの言葉を唱え始めたアヤネがそう締め括ったのを合図に、3人は同時に箱へ願いを告げる。
先程の戦闘の様に息の揃った完璧な動きで、お互いの共通の願いを口に....
「売ったら一生生活に困らないくらいの億万長者になれる神器を!」
「いつでも願い事し放題な神器を!」
「どんな強大な敵でも倒せる神器を」
「「「え?」」」
...出来なかった。
「ちょ、ちょっと!話が違うでしょ!高く売れる神器って...」
「えーだって無限に願いを叶えられればお金はいくらでも稼げるでしょ?それ以外にも美味しいご飯だったり色々手に入れられるし!」
「強い神器を使えれば、高額な指名手配犯を捕まえて沢山賞金が稼げる」
全く考えの違う2人の解答にアヤメは深く溜息をつきながら頭を押さえてしまう。
「...やっぱり3人同時は無理ね。仕方ない、ここは私が─」
そう彼女が告げようとした瞬間、″それ″は起こった。
「え、な、何これ?」
「わー!凄い箱が光ってる!これってさっきの私達の願いが叶ったって事?」
祈願箱の蓋が光を放ちながら少しずつ開いていく。
突然目の前で起こった出来事に三人は驚いた様に目を見開いていた。
「最強の神器が手に入る?」
「これで願い叶え放題!」
「ま、待って!流石にこんな事これまで一度も....お、恩恵の神よ!お願いします!どうか、どうか!!!とんでもない金額で売れる最高級の神器を!!!!」
そしてとうとう3人を飲み込むほどの光が辺りに広がり、それからバンっ!と音を立てて蓋が一人でに空中へと弾き飛ばされた。
あまりの眩しさに目元を腕で覆っていた3人だったが、徐々に光も薄れ視界が戻った彼女達は急いで箱の中身を確認する。
「.....え?」
「あれ、これ....というか...」
だがその中にあったものを見て、3人はポカンとした表情を浮かべ固まってしまった。
アヤメ達がそんな状態に陥ってしまうのは無理もない、何故なら....
「.....人?」
祈願箱の中にいたのは、眠る様に目を閉じた″2人″の男女だったのだから。
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────プロローグ、《2人の″魔王″》────