最近あまり書きまとめる時間が取れず普段よりも間隔が空いてしまいました。
もしかすると2月まで忙しくなる可能性があるので、それまでは投稿頻度が遅くなるかもしれません。
「さあさあ、こちらですよ」
ベスティナに案内されるがまま、5人は恩恵意志の建物の奥を進んでいた。
「アヤメ、僕たちはどこに連れて行かれているんだ?」
「騙されてはいないのか?」
「た、多分大丈夫だと思います....多分」
「少し心配」
「んー、まあ悪い子じゃ無さそうだし大丈夫じゃない?」
彼女の背を追いかけながら、小声でコソコソの話し合う5人。
「お気になさらず♪別にとって食おうだなんて考えていませんのでご安心を♪」
「あ、え、えっと....すみません」
「いえいえ、警戒するのは悪い事ではありませんし....おっと、着きました着きました」
ベスティナは目的の場所に辿り着くとそのまま部屋の中へと入っていく。
そんな彼女と同様に部屋の中へ足を踏み入れたアヤメ達。
「こ、ここは!....」
「ぬ?わかるのか?」
「は、はい。ここは恩恵意志の貸金庫です、利用するのはカンパニーの中でも元老院クラスの人くらいなのに....」
「でも、警備スカスカ」
「確かにコハクの言う通り、そんなに重要な場所にも関わらず人がいないんだな」
「でも不思議ではありません、恩恵意志はノヴァ大陸の中でも最大のカンパニーですから。そんな相手に盗みに入るだなんて考えるだけでも無謀です」
「そういうものなのか....」
だがアヤメの説明を聞いていた時、突然警報の様な音が鳴り響いた。
「ひゃあ!?な、何で警報が!?」
「あ、ごめんごめん。『たまごペット』にごはんあげ忘れた音だった」
「ちょっと!紛らわしいからゲームの音消しといてよ!」
そんなどこか緊張感のない会話をしていると
「お待たせしました!」
先程部屋の中で1人奥の方に向かったベスティナが、ここに来る前に直した鍵を手に立っていた。
「あの、2人が持ってたその鍵って本当にここの金庫のものなんですか?」
「はい、確かに♪」
「....だとすると、記憶を無くす前の貴方達はここを借りられるだけの力を持ってたって事になるけど...」
「え、何々?もしかして2人とも凄い人だったり?」
アヤメの予想に青年と少女は互いに顔を見合わせる。
確かにその可能性もゼロではない、ただ記憶がない今となっては意味がないかもしれないが。
「ふふふ、まあその疑問は金庫を確認してからしても遅くないかと♪」
どこか含みのある笑みを漏らすベスティナに改めて着いていく彼女達。
奥へ奥へと進むたびに埃やカビの匂いが目立ち始める、それはまるでこの辺りだけ時間が止まってしまった様に感じられた。
やがて見えてきたのはポツンと取り残された1つの金庫。
「こちらの鍵を確認したところ、ここにある金庫の中で最も古い『1』番金庫のものでした」
「最も古い...」
「さてさて、プリチーな研修生のわたくしには検討もつきませんが....どうぞご自身でご確認を♪」
ベスティナはそう言って鍵を青年と少女に返してきた。
「...いくぞ」
鍵を受け取った青年はそのまま金庫に近づき鍵を差し込んでゆっくりと回していく、そしてガチャリという音と共にとうとう金庫が開かれた。
「これは....」
同時に金庫の中に視線を向ける青年と少女、2人の視線の先にはガラスを嵌め込んだ様な金属板と駒の様な立体物が置かれていた。
青年は駒を、少女は板をそれぞれ手に取り眺める。
「ケータイだな」
「え、それが?私達のと全然違うけど」
セイナは普段から使っている通信型神器を取り出し見比べる。
「ああ、使う時はこうして...」
「っ!ガラスが光った」
「うわぁ!何か凄いねー!」
「ぬ?このアイコンは...?」
「それは誰もが知ってる通信魔法のココロチャット、通称"ココチャ"ですね。そちらは様々な方と連絡が取れるものなので、もし前に使っていれば貴方の名前があるはずです」
「でもこの金庫を開けるための鍵はお2人がそれぞれ半分ずつ持っていたんですよね?となるとそのケータイももしかしたら共有して使ってた可能性も....」
「成る程」
2人は一緒に画面を覗き込む、するとそこには顔写真が貼られていた。
だが肝心の顔はぼやけており殆どよくわからない、おまけに名前らしきものも見当たらなかった。
「駄目だな、おそらく私か君のどちらかだとは思うんだが...」
「名前も特に無さそうだ」
「なら過去に連絡していた人はいませんか?一応メッセージ履歴を見れるはずなので、それが残っていればもしかしたら....」
アヤメの言う通り確認していくが、そちらの方も文字の大半が文字化けしており解読が不可能な状態となっていた。
「ふむ、結局手がかりは無しか」
まあ元から駄目もとで来てみたようなものだ、青年と少女は苦笑いを浮かべてケータイをもう一度調べようとする。
「おっと、すみませんお客様、管理部の方から連絡が....もしもし?プリチーな研修生のわたくしです♪今はとっても大事なお客様の対応中でして──え?」
その時、ベスティナのケータイに連絡が入り彼女は5人に頭を下げてから連絡に出た。
「はい、はい....ええこちらは『1』番金庫ですが...お客様方に重要な連絡を?」
だが話を進めていくうちにだんだんと彼女は眉を顰め始める。
「あ、あの、重要な連絡とは何ですか?まさかこの金庫の保管料だったり...も、もしそうならとんでもない金額の請求が....流石にそんなお金は立て替えられませんよ!?」
「コホン....お待たせいたしました、そしてお待たせついでに申し訳ないのですが、もう少しだけお時間を少々いただきたいのですが...どうやこの『1』番金庫のお客様方にとても重要な書類をお渡ししたいとの事で、ただ今別の者がこちらに向かっております」
「あ、ちなみにこちらの金庫の使用料に関してはご心配なく♪既にお支払いは終わっているようですので」
「よ、良かった...今度こそ本当に破産するかと」
「ベスティナ!」
アヤメは降りかかるかもしれない借金に怯えていたが、ベスティナの発言に安堵し床にへたり込む。
だが丁度そのタイミングで先程青年と少女の心相石を作ろうと手伝ってくれた職員が血相を変えてやって来た。
「あ、お、お客様も一緒でしたか!丁度良かったです!」
「何々ー?私達に何か用事?」
「そ、それが....お外に停めてある緑のキャンピングカーはお客様のお車ですよね?」
「え、ミドリちゃんのこと?」
「何かあった?」
「ええっと...詳しい事はよくわからないのですが....」
職員は困惑しながら、5人の顔を見てそれを告げた。
「誰かがお客様の車を持ち去ろうとしている様なんです...」
「「「「「.....え?」」」」」