魔王様、2倍です   作:Mrふんどし

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強敵

「セイナ、光線を発射するギリギリまで引きつけるんだ。出来る限り一箇所に撃たせるように」

 

「おっけー!おっとっと...アヤメ、ナイスカバー!」

 

「お礼は後!まだ敵は残ってるんだから」

 

「コハク、新しく現れた星骸の足止めをしてくれ。距離を詰めて2人に近づかせないように」

 

「わかった」

 

1階層を無事に突破した5人はそれから順調に塔の攻略を進めていた。

青年と少女による指示を受けながら、他の3人が素早い連携で星骸達を倒していく。

 

時には苦戦することもあったが、それでも全ての敵や罠を潜り抜けていく....全ては奥に眠る祈願箱を回収する為に、全員が一丸となって次の階、また次の階へと昇って行った。

 

「ふー...なんだか本当に今日はいい感じだね!」

 

「確かに動きやすい」

 

「2人とも、疲れてないですか?」

 

「問題ない、私たちはただ口を動かしてるだけだからな」

 

「むしろアヤメたちこそ大丈夫なのか?ここまでずっと戦いっぱなしだが...」

 

「まあ私たちはもう慣れているので、これくらいは」

 

再び何度目かになる昇降機に乗った5人はそんな雑談を交わしていた。

塔の位置的にそろそろ半分といった所だろうか、扉が開いた瞬間新たな階層へと足を踏み入れる。

 

「あれ?あそこにいる星骸....なんだか初めて見るような?」

 

部屋の中央、そこにはフワフワと宙に浮かぶ一体の星骸が佇んでいた。

それはフロアに訪れた5人を攻撃するでもなく、ただ静かに見つめている。

 

「本当ね...どんな攻撃をしてくるかわからないし、正面からぶつかるのはやめた方がいいかも...」

 

「んー....まあでも戦ってみたらわかるんじゃない?」

 

「え、ちょ、ちょっとセイナ!?」

 

突如現れた謎の星骸にアヤメは躊躇するが、そんな彼女の言葉はセイナの前では意味をなさなかった様で、セイナは武器を握るとその星骸目掛けて突っ込んでいった。

 

「ま、待って!もし変な攻撃とかしてきたら...」

 

「大丈夫大丈夫♪あの星骸凄く強そうだし、もし倒せたら凄い祈願箱が手に入るかもしれないでしょ?それに、今回は経験豊富な人が2人もいるんだから勝てるって!」

 

「い、いや、そこまで信頼される程のものではないんだが...」

 

「....確かにそうかも。も、もし祈願箱が手に入ったら今度こそ貧しい生活とはおさらば...うん、いけるわ!」

 

「待ってくれアヤメ!君までそっちについたら駄目だ!?」

 

「それじゃ2人とも、勝ってものすっっっっごい!神器を手に入れて、美味しいものをお腹いっぱい食べるわよ!」

 

「「おー!」」

 

「さ、3人とも話を...!」

 

セイナに続き武器を構えて星骸へ向かっていく2人、そんな彼女達を青年と少女も慌てて追いかける。

 

「はぁぁ!」

 

最初に接近したのはセイナ、剣の届く範囲へと潜り込んだ彼女はすぐさま目の前の標的目掛けて横振りに薙ぎ払う。

 

「あれ!?」

 

だが攻撃が当たろうとした寸前、突然星骸が消え去ってしまった。

 

「いっ、一体どこに...」

 

「アヤメ!後ろに気をつけるんだ!」

 

「っ!」

 

姿を見失った敵に困惑する3人だったが、次の瞬間何の前触れもなくアヤメの背後に現れたそれは彼女に攻撃を仕掛ける。

その不意打ちを間一髪で回避するアヤメ、すぐさまコハクがカウンターに出るが、またもや星骸は消えるように姿を隠してしまう。

 

「今度はどこから....」

 

「3人とも、足元だ!」

 

「うわっ!?」

 

「もう全然当たらない!アヤメ、情報プリーズ!」

 

「....確か名前は『スペースウォーカー』だった筈、今みたいに空間転移能力を持つ星骸で....」

 

「来る、注意して」

 

星骸との戦闘から数分、未だに相手の動きが読めない3人は苦戦を強いられていた。

姿を消しては奇襲、それを繰り返してくる星骸に彼女達のペースは確実に乱れていく。

 

「くそ、何かないか...」

 

「このままだと彼女達が...」

 

そんな3人の戦闘を遠目で見ていた青年と少女は、何も出来ない自分達に歯噛みしながら頭を押さえていた。

先程までとは違い、目の前の星骸に対する情報が浮かんでこない....こうして何も出来ない時間が続けば続くほど、状況は悪化してしまう。

 

現に彼女達の動きもこれまでに比べて明らかに鈍ってきている、ただでさえ戦い方がわからない相手...それに加えて戦闘が出来ない自分達を守ろうと意識の半分ほどが割かれている。

 

(何か、何かないのか!あの星骸の弱点は....もし本当に経験豊富な巡遊者だったのならわかる筈だ!思い出せ、思い出せ....!)

 

「うぅ...」

 

「...?だ、大丈夫か?」

 

青年は必死に記憶を辿る...だがその時、彼の隣に立っていた少女が不意にフラフラとその場に膝をついた。

 

「....にか」

 

「え?」

 

「...何か、頭に....」

 

――――――――――――――――――――

 

『....様!ご無事ですか!?』

 

『ああ、君たちのおかげで助かった』

 

『良かった...ですが我々の部隊はそう長く持ちそうにありません、力及ばずで...』

 

『いや、ここまでで十分だ。君たちもよく持ち堪えてくれた』

 

複数の少女達が、皆自分を見つめて安心した声色で尋ねてくる。

 

『ですがよくあの敵の動きがわかりましたね...』

 

『ああ、奴の攻撃は一見避けられないように見えるが、よく見れば確実な隙が存在する。奴が多用する空間転移は無制限に使えるものではない、攻撃するにはまず相手を補足し、それから対象の位置に攻撃そのものを転移させる...』

 

『確かに避けるのは困難だ...だがその瞬間こそ最大の隙、その間奴は動けないし一度転移させた攻撃は取り消すことが出来ない』

 

『な、成る程...流石....様ですね!』

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

「なんだ、今の....私の記憶?」

 

「何か見たのか?」

 

「あ、ああ...でもあの星骸はあのスペースウォーカーよりも大きかった...それでも外見や行動パターンはそっくりだ....」

 

少女はぶつぶつと呟きながら、ゆっくりと立ち上がる。

 

そしてまだ霞む意識の中、3人が対峙する星骸へと視線を向けた。

 

「なら、同じ分類の星骸と判断しても問題ない....コハク!」

 

突然の少女の声に、戦闘中呼ばれたコハクは無言で振り返る。

 

「距離をとって相手の注意を引くんだ、攻撃はせずに止まらず動き続けてくれ!」

 

「了解」

 

「アヤメは動きを封じる為に広範囲魔法の準備を、セイナは少し奴から離れて待機、コハクが奴の注意を引いたらその隙に接近するんだ」

 

「わ、わかりました!」

 

「おっけー!」

 

いきなり動き方の変わった3人に星骸は僅かに動揺を見せ始める。

少女に言われた通り一定距離を保ちながら圧をかけ続けるコハク、更にはアヤメによる魔法で逃げ場所を潰されていき、少しずつ行動範囲が狭まっていくスペースウォーカー...

 

埒が開かないと考えたのか、星骸がまず周りを移動するコハクに狙いを定め攻撃を仕掛けようと動き出す。

 

「ギィィィッ!」

 

「今だ!」

 

「待ってたよー!」

 

その声と共に、今まで様子を見ていたセイナが星骸目掛けて駆け出した。

 

「っ!」

 

スペースウォーカーは彼女の動きに気づくが、時すでに遅し。

転移能力はコハクへの攻撃に使われ、僅かに身動きが取れなくなった....当然その隙を待っていたセイナは一気に距離を詰め

 

「さっきは当たらなかったけど...これで終わり!」

 

「ギギッ、ギギャァァァァ!!!」

 

とうとうその剣を無防備な肉体に振り下ろした。

途端に崩れゆく身体....星骸は苦しげな声を上げながら地に伏せたのだった。

 

 

 

 

 

「ふぅ....〜〜〜〜〜勝ったー!」

 

「あたしたちの勝ち」

 

「よ、良かった...って、祈願箱は!?」

 

強敵を倒し終えた3人は思い思いの反応を示しながら喜んでいる。

 

そんな彼女達を見ながら少女は安堵の息を漏らした。

 

「よかった、これで....」

 

「すまない助かった...僕は何も思い浮かばなくて...」

 

「ふむ...アヤメたちによれば私たちは同じ祈願箱の中にいたそうだが、もしかすると別々に活動していたのかもしれないな。さっき見た記憶で私はどこかの部隊と行動していたのだが、君らしき人物は見当たらなかった」

 

「そうか....」

 

青年と少女はそう会話をしながら3人の元へと歩いていく....だが

 

「.....」

 

「どうした?」

 

突然少女が立ち止まり、手を口元にやりながら何かを考え始める。

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

『星骸の消滅が始まりました!これで完全に私たちの勝利です!』

 

目の前では巨大な星骸の肉体が崩れ落ちていく光景が広がっている。

 

『ご苦労だったな、ひとまずこの戦いを記録しておくように情報班に伝達を頼む』

 

『はい....いや、待ってくださいあれは...っ!まだです!まだ奴は生きて...!』

 

『なっ!』

 

だが彼女達が帰ろうとした瞬間、今まさに消えようとしていた星骸が最後の力を振り絞り彼女達へと攻撃を仕掛けた。

 

『空間が歪んでます!まさか最後に空間転移魔法を....!』

 

『間に合わない!...様!逃げて......!

 

 

――――――――――――――――――――

 

「ほらほら、祈願箱ならみんなで探せば──」

 

「っ!駄目だ!3人とも今すぐそいつから離れるんだ!」

 

「えっ」

 

倒したと安心しきった彼女達は、祈願箱を探そうと消えかけている星骸の近くに集まっている。

そんな彼女達を急いで引っ張り後ろに下げた少女...その瞬間を待っていたかのように、崩れかけていた星骸が最後の動きを見せた。

 

「あっ!」

 

「すまない、彼女達を頼m──」

 

少女がそう口にしようとしたタイミングで、少女とセイナ達の間の空間が歪み始める。

 

 

 

そして....その歪みが消え4人の視界が晴れた後、星骸と共に少女の姿が跡形もなく消えていたのだった。

 

 

 

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