コンビの片方を闇堕ちさせないと生きていけない魔神系TS転生者 作:鐘楼
「さて、ボクの真意はどこに、という話だったね」
「は、はい……!」
話を戻すと、カトルは我に返ったように慌てて俺の抱擁から離れた。努めて真剣な態度に切り替えようとしているのは分かるが、まだ若干頬が赤い。恥ずかしかったのだろうか。許してほしい、ハグをしたのは俺の意思では……いや、どうだったか。いつものセクハラみたく
俺は望み通りに事情を打ち明けることにしたのだが、一旦ここで予防線を張っておくか。
「まず先に言っておくけど、多少荒唐無稽な話もする。一々疑われては話が進まないからね、疑うのは後にして、とりあえずこの場ではボクの言うことをすべて信じてほしい」
「……分かりました。努力します」
「良い子だ」
適当言ってるって思われたら打ち明けるもなにもないし、まず最後まで聞いてほしいというのは必須の条件だろう。
「じゃあ始めに、魔神についての話は覚えてる?」
「人間の創造主である神や、魔族の創造主である邪神と肩を並べる、この世界に潜む神であると……あなたはそのように説明していました」
「その通り。実のところその二柱は別格だから、肩を並べるという表現は語弊があるんだけど、同類には違いない」
霊長をデザインして繁栄させちゃうような神なんだから、まぁ俺みたいなのが敵うはずがない。というか俺とか『失恋』ちゃんは基本的に人間の寄生虫でしかないので、性質上頭が上がらない相手である。くやしい。
「ではそんな二柱もボクらのようにこの世界に潜んでいるのかと言えば、それは違う。この世界に存在できる神の数は限られているんだ。彼らは今この世界にはいない。魔神は無数にいるけど、実際に活動している数はそこまで多くない」
人間視点での、神と邪神。そのどっちかが復活した時点で、人間と魔族の戦争はゲームバランスが崩壊して終了である。凄まじすぎて復活したら世界のどこにいてもすぐ分かるレベルらしいが、マジでずっと眠っててほしい。
「なる、ほど……」
「そして次。神が『人』を、邪神が『魔族』を司っているように、魔神にもそれぞれ司っているものがある。それが冠であり、権能であり、目的でもある」
「冠……? 権能……?」
「冠は第二の名前のようなもので、権能はその魔神固有の能力のことさ。ボクがキミを魔族に変えた力のように、ね」
「! あれが……」
ちなみに言っておくと、俺の権能は断じて人間を魔族に変えたりするだけの汎用性の低いものではない。もっと使い方は色々ある。あるのだが、あんまり披露する機会がないのだ。スペックのゴリ押しができない魔神同士の戦いとかだと、急にバランスがとれたりとれてなかったりする能力バトルが始まるのだが、そんな危ないことはしたくない。
「そして、目的。これが問題なんだ。魔神が存在し続けるためには、それを果たし続ける必要がある。生き物にとっての、呼吸・食事に相当する行為が、魔神それぞれに定められている」
「その……あなたに課せられた『目的』が……私を救い、攫った理由と関係している、ということですか?」
「そうだ。そう……なんだけど、それを話す前にボク自身の話を聞いてほしい」
洗いざらい話すと、そう決めた。だったらこれは避けて通れない。
「ボクは人間だった。かつて人間として生きた記憶がある」
「は……?」
カトルの表情に、困惑が浮かぶ。
「ええと、有り得るのですか? 人が魔神になる、ということが……」
「いや、前例は聞いたことがない。だが、ボクは確かに異なる世界で人間として生きた記憶がある」
「こ、異なる世界……?」
「カトル。とりあえず信じてくれる、という約束だろう?」
あまりの突拍子の無さに受け止めきれなくなりそうなカトルを、約束を持ち出して黙らせる。今の話に、俺の前世のことはあまり関係がないのだ。そこは軽く流しておいて欲しい。
「言いたいことは、ボクがちゃんと人間の心を持った魔神だということだ。カトル、キミが今ボクのことをどの程度信用できると感じているのかは分からないけれど。断言する。他の魔神はそれ以下だ」
「……!」
これはマジ。『失恋』ちゃんもダメだ。『失恋』ちゃんは俺にめっちゃ優しいし、俺に悲惨な現実を教えるときは本気で心を痛めていたし、聞き上手でかわいいし、人間も魔族も愛しているが、旅の途中で一目惚れしてきた少年の脳を破壊するためだけにしばらく弄んだ後目の前で俺
「そんなボクとしては、自らの『目的』は好ましいものではなくてね。生存と『目的』を天秤にかけて、仕方なく、生きるためにキミを利用しようとした」
基本的に、生きるために仕方がなく『目的』を果たそうとする魔神なんて人間が混じった俺くらいで、普通の魔神はみんなノリノリだ。それが自らの至上命題で絶対優先なのだから。故に、生存そのものに固執している魔神も俺くらい。
「……なんなのですか、その、あなたの『目的』は」
「それは……『人間が闇落ちした元仲間と泣きながら戦う場面を見る』ことさ」
「……はい?」
「だから、『人間が闇落ちした元仲間と泣きながら戦う場面を見る』こと」
この後、カトルに闇落ちについての補足説明をした。
ついでに世界観説明できるからこっちのルートの方がええやんという