コンビの片方を闇堕ちさせないと生きていけない魔神系TS転生者   作:鐘楼

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ほう、拮抗勝負とは珍しい……

「……ま、まさか貴様らは……!」

 

 残された魔族は埒外の存在(魔神)に心当たりがあるっぽい反応をしているが、答え合わせをしてやる義理はない。

 

「カトル。危なくなったら助けるけど、ボクは魔族が相手でも殺しはやらない。取り逃したくないなら自分で片をつけるんだ。良いね?」

 

 殺しはやらない。これは俺の信条の問題というか、自分はさっき突っ込んでいったアレみたく息をするように人を壊す魔神じゃないと思いたいがための、ささやかな抵抗だ。どうせ力があるんだったら、自分と敵の命両方を取る強者の選択をしても良いだろう、とも。

 

 そこに、人間も魔族も関係がない。というか基本魔神にとって寄生対象は知的生命体ならなんでもいいので、そこの区別はあまり意味がない。俺の場合は『目的』のために片方が魔族じゃないといけなかったりでまた違うんだけど。

 

「……はい、スティーア様。お任せください」

 

 とはいえ、敵は強い。それこそ聖騎士だった頃のカトルでは、魔族特効の光属性を以てしても勝てないほどに。では今のカトルにとって敵わない相手なのかと言えば、それも違う。

 

 カトルを反転させる際に、俺がオマケでスペックを上げておいたからだ。大分ズルいが、そうでもしないと魔族特効の聖騎士を圧倒するなんてできないから仕方がない。

 

「……覚悟ッ!」

「ぐっ……!」

 

 今のカトルの()()戦闘スタイルは、盛りに盛った身体能力に物を言わせた徒手空拳に、反転した闇属性の魔力を込めたスリップダメージアタッカーというか。攻撃を当てる度に闇の魔力が相手に蓄積して身体を破壊しにかかる。やってることは大分エグいが、ドレスをはためかせながら舞うその姿は優美でもある。

 

 対する敵は、魔力を宿したサーベルを用いて応戦している。一見カトルが圧倒しているが、武器に何か属性が付与されているようには見えず、魔力を宿している意図が読めないのが若干不可解か。

 

 ちなみに属性についてだが、基本的に火と水と雷と光(人間限定)と闇(魔族限定)と万能の六つしかない。この先天性の素質に応じて使える魔法が決まり、魔法使いは各属性の魔法と汎用魔法を用いて戦う。俺も初めて知ったときは六つとか結構味気ないなとか思ったけども、個性が出るのは扱う魔法の方で、こちらは結構地域や流派で特色があったりして面白いのだ。一時期ハマって現実逃避気味に勉強してたくらいに。

 

 ちなみに魔神は万能属性固定である。名前の通り「火属性の術式は火属性の魔力でしか起動できませーん」みたいなルールを無視してすべての術式を起動できるが、その反面燃費や効果が悪化しがちで一部界隈では不遇扱いされているらしい。なお、魔神は魔力量のゴリ押しでデメリットを踏み倒している模様。ズルい? それな。

 

「──そこだ!」

 

 カトル優位で進んでいたかと思われた戦いだったが、魔族の瞳に勝機が映る。その瞬間、カトルが咄嗟に前傾していた自身の身体を捩る。

 

「くっ……!」

 

 そして、何もないはずの場所で、カトルの左肩が裂けた。

 

「置き技か……」

 

 斬撃の滞留というか。よく見れば、あの魔族が振るった剣の軌跡に魔力が滞留している。それを任意のタイミングで起動させる、汎用属性の魔法。カトルが寸前でそれを読めていなければ、あの程度の傷では済まなかっただろう。……前から思っていたが、汎用の魔法だけでも十分戦えるんだよな、この世界。

 

「なるほど……『天のさざめき、慈悲を為せ』」

 

 カトルも仕組みを理解したのか、一度後退して傷を癒す。治療魔法も汎用の領分であり、難しめではあるが練習して詠唱すれば魔力の限り誰でも使える。これやっぱ属性いらな以下略。

 

 今のは、こちらから攻めて相手が後退する形になった結果、カトルのいた場所が置き斬撃だらけになってしまっていた。仕組みが分かればこちらから近づくのは悪手だ。カトルもそう考えて距離を取ったのだろう。だが、こんな誰でも思いつく対策に対する対策を、用意していない相手ではなかった。

 

「ふんっ!」

「っ!」

 

 今度は、宿した魔力を放つ形の斬撃。距離を取られた場合は戦い方を変えるということらしい。ほぼほぼ月牙でかっこいい……じゃなくて、斬撃がカトルに襲いかかる。カトルはこれを上に跳んで回避したが、上空では逃げ場がない。

 

 当然、不可避の追撃が放たれるが……リーチを補う手札を用意しているのは、カトルも同じだ。

 

「はっ!」

 

 俺の用意したドレスはなにもトリアの脳を破壊するためだけのものじゃない。ちゃんと実用的な物だ。カトルは右手の中指を掌の、レース状のグローブの生地に仕込まれた術式に当てると、込められた魔法のモードを変える。通常のものから、遠距離用のものへ。

 

 右手から伸びた魔力はそのまま黒い手の形となり、相手の斬撃を受け止めるばかりか、そのまま敵の本体へ襲いかかる。

 

「なっ……」

 

 魔族は驚愕しつつも手をサーベル本体で受け止める。黒い手はそれすら押しのける程の威力ではないが、カトルはそこで掌に当てる指を薬指に変える。すると手を象っていた魔力は霧散し、敵を包むように広がっていく。

 

「なんだ、これはっ!?」

「……終わりです」

 

 そしてカトルは指を放し、術式を通常モードへ。闇の魔力はたちまち身体を破壊する毒霧へと変じ、魔族の身体を破壊する。

 

「ぐあああぁぁ!?」

「ふっ!」

 

 そして、カトルは当てる指を中指と薬指に切り替えて魔力を固形化する斬撃モードへ。そのまま急接近して急所へ刺突。無事勝利するのだった。




実は、現在カクヨムにて光落ちしたみたいな新作『冷徹な闇の女神様の孤独を癒したら、甘々束縛生活が始まったんですけど!?』(https://kakuyomu.jp/works/822139841085654400)を投稿しています。諸般の事情で当面ハーメルンでの投稿は予定していないので、ここで宣伝させていただきました。

本作を愛読してくださっている曇らせ玄人()の諸兄におかれましては若干の物足りなさがあるかもしれませんが、皆様もぜひ読まずに星をつけていただけると幸いです。
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