コンビの片方を闇堕ちさせないと生きていけない魔神系TS転生者   作:鐘楼

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癖ジャナイヨー合理性ダヨー

 カトルに与えたドレスと共に、俺の考えたかっちょいい戦闘スタイル。ドレスの露出は多いくせして黒いウェディンググローブみたいなのを着せたのも、あくまでこのため。俺の“癖”は六割くらいしか含まれていない。

 

 人差し指、中指、薬指とグローブの術式に当てる指の組み合わせを変えることで8パターンの戦闘スタイル変化を可能とするオサレな戦い方である。

 

 まず基本的に、無詠唱の魔法はあらかじめどこかしらに刻んでいた術式に魔力を流して起動している。聖騎士の場合でも、基本的な光属性技は炉心に予め刻まれていて、彼らはそれを適宜起動している。戦闘中、臨機応変に魔法を組み立てられるのはちゃんと詠唱をする魔法使いの特権なのだ。

 

 俺は斃れた魔族に近づき、その剣を拾い上げる。確認すると、柄の部分にきっちり二つの術式があった。滞留する斬撃と飛ぶ斬撃。状況によってこの二つのどちらを起動するのか

使い分けていたのだろう。なかなか趣味が良いと思う。

 

「ぐっ……」

「ん?」

 

 急所を貫かれた魔族の喉から声が漏れる。どうやら、まだ息があったらしい。彼の目は俺ではなく、カトルの方へ向けられる。

 

「な、ぜ……我らに刃を向け、人間に味方する……!?」

「……」

 

 元人間の魔族、なんて普通はありえないのだから、この魔族くんが思い当たらないのも無理はないんだけども、その言葉はカトルにとって見当違いも甚だしい。だからか、カトルは何も答えず冷たく魔族くんを見下ろすだけ。

 

「そんなことを、しても……人間は貴様を受け入れたりはしない……絶対に、だ……! 貴様の居場所は、どこにもないのだ……!」

「……!」

 

 だが、偶然にも後半の言葉だけは核心に近いもので……カトルの瞳が、一瞬だけ揺れたようにも見えた。だが、それも一瞬のこと。

 

「……居場所なら、あります。スティーア様の下こそ、今の私の居場所」

「あぁ、その通りだ、カトル」

 

 話を振られたので、にこやかに返す。いつもの補正で、どこか胡散臭く見えるスティーアの笑顔。カトルはそれでも満足みたいだったけれども、魔族くんはその怪しさを嗅ぎ取ったのか。

 

「愚かな。()神に誑かされるなど……」

「……もういいです。眠りなさい」

 

 その言葉を侮辱と受け取ったのか、カトルは今度こそ魔族の首を跳ねてその命を終わらせた。敵である魔族を殺すことは、聖騎士として何度もやってきたことなのだろう。カトルはその幕切れに対して何の感情揺らぎも見せなかった。

 

「終わったね。お疲れ様、カトル」

「いえ。この程度……こなせなければ、スティーア様の下僕でいる資格がありません」

 

 と、クールにそう言い切るカトルだったが……段々とその冷静さが崩れ始め、どこかモジモジし始める。

 

「……カトル? どうかしたのかな?」

「あの……決して文句を言うわけではないのですが……スティーア様が考案された私の新たな戦闘技法に、このグローブが必須なのは理解しています。ですがその、敢えて黒い花嫁のような装束にする必要はなかったのでは……? 美しいですが、こんなもの似合いませんし……露出も……このまま戦うというのは、どうにも……」

「………………」

 

 どうしよう。なんて言い訳しよう。

 

 正直に、トリアの脳を破壊するのにいかにも俺に染められたみたいな格好をさせるのが効果的だったんだよね~と打ち明けるのは……やっぱり憚られる。俺の『目的』を既に明かしているのだとしても、だ。

 

 うーむ……よし、とにかく褒める方向で行こう。

 

「似合わない、だなんて言わないでおくれよ、ボクのカトル。こんなにも美しいのに……」

「う、美しい……ですか?」

「もちろんさ。側に置いておくモノには美しくあって欲しいからね。キミを引き立てる最高の衣装を、とボクが手作りで用意したんだ」

「手作り……そうだったのですか!?」

 

 はい。頑張りました。娯楽ないからね、裁縫もそれなりに楽しいですよ。ここに術式を仕込んで~、みたいに考えるのはもっと楽しい。

 

「スティーア様が、私のために……」

「カトルの為を思えば、苦ではなかったさ」

「……分かりました。スティーア様の望みのまま、この衣装に相応しい、あなたの美しい下僕であれるよう精進いたします」

「うん。期待しているよ」

 

 ……ほんとに三年限定の関係なんだよな? と思わざるをえないやり取りを魔族の死体の側で行い、一段落したところでカトルが新たな話題を口にする。

 

「そういえば、気になっていたのですが……あの魔族が最後に口にしていた()神、というのは……」

「あぁ、大した意味はないよ。魔族はボクらのことをそう呼ぶみたいだね」

 

 聞きかじった話だが、魔神という呼び名は人間が「我らの神じゃない神なんて奴ら(魔族)の味方に違いない」みたいな思い込みでつけた名前らしい。ほら、インドとは無関係のインディアンみたいな……。なので、魔族が使う亜神という呼び方の方が、どちらかと言えば正確ではあるのだ。

 

 ……なんで呼び名の成立に人間が関わっているのにもかかわらず魔神の存在が公にはなっていないのかと言えば、それは俺もよく知らない。どうせ碌でもない奴が暗躍した結果なんだろうと想像はつくが。という話をかみ砕いてカトルに説明する。

 

「……なるほど。魔族の側での呼び名……では、向こうでは魔神の存在が人間側よりも知れているのでしょうか?」

「いや、大して変わらないんじゃないかな。単に、今殺した相手がそれなりの地位にいたから知っていただけだと思うよ。……さて、話はこれくらいにしてヤキメのところに行こうか」

「! そうでした……! ヤキメ様の救援に行かなければ……!」

 

 すっかりヤキメが敵の片方を引き受けてくれたことを忘れていたのか、カトルは慌てて村の中へ飛び込もうとするが、それを制止する。

 

「落ち着きなよ。焦る必要はない。ヤキメに万が一なんてないさ」

「ですが……」

「彼女が危ないような敵だったら……それこそボクらは逃げるべき。それくらいの奴だよ、ヤキメは」

 

 スペックで負けているわけではないんだけれども。それでも俺ではヤキメに敵う気はしない。経験と、それと戦闘への意欲。好きこそものの上手なれというか、戦闘IQが俺とは雲泥の差だ。

 

 もっとも、あの玩具くんはそんなヤキメの真価を発揮させるほどの相手ではなかっただろうけど。

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