コンビの片方を闇堕ちさせないと生きていけない魔神系TS転生者   作:鐘楼

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まじん への りかいど が あがった

「……大丈夫かい? カトル」

「スティーア様……」

 

 ヤキメの本性……という表現は適切じゃないな。別に隠そうとしてるわけでもないし。うーむ……そう、あいつの二面性にショックを受けているカトルに声をかける。

 

「カトル。言ったはずだよ。ボク以外の魔神を信用してはいけない、と。魔神というのは、概ねああいうものだ」

「そう……ですね。改めて理解しました」

 

 ここに来るまで気さくに雑談していた相手がアレだったというのはそれなりにショックだったみたいだが、次に面を上げたカトルはすべてを飲み込んだ鋭い目をしていた。

 

「ただ……思うところがあります」

「思うところ?」

「聖騎士としての正義に則れば……つまり、人に与することこそを善、害するを悪とするならば、今の私は間違いなく悪です」

「……」

 

 実際、俺とカトルが教会の機能を麻痺させた結果がこの村での惨劇だ。人間にとって悪と言われても仕方がない。そのことを、カトルはとっくに受け入れている。

 

「ですが、ヤキメ様は……あの方の気の赴くままの行動は善にも悪にもなり得る。現に、今日この場でのあの方の残虐な行動は、人類にとっての善行にあたるでしょう」

「まぁ、そうだね」

 

 実際、ただでさえあいつは良いことも悪いこともする。見る立場が変われば悪行も善行になったりするのだから、善にも悪にもなりうるという捉え方もできるだろう。それは単に何しでかすか分からん奴じゃんって? そうだよ。

 

 あいつはよく男漁りをするのだが、それは戦場に乱入して戦況をめちゃくちゃにしながらお眼鏡に適う英雄を探すというものだ。そのせいで勝敗がひっくり返って泣く奴も笑う奴もいるだろう。……なんでこんなことしといて魔神の存在が露呈しないんだ? めっちゃ強い魔族を装っているんだろうか。無理があるだろ。

 

 ちなみに気に入った男はその場でワンナイト殺し合いするか、発展途上なら修行をつけて見逃すって場合が多くて、女の場合は持ち帰って屈服調教をするパターンが多いらしい。マシとは……?

 

「確かにヤキメを……いや、魔神というものをそういう風に捉えることはできる。それを踏まえて、カトルの結論は?」

「ヤキメ様には、受け入れ難い一面もありました。ですが、必要以上に嫌う必要はない、とも思います。ヤキメ様は独自の理屈で動きますが、付き合い方を間違えなければ、今回のように味方にすることもできるはずです。幸い、私もスティーア様も気に入られているようですし……」

「なるほど、したたかだね」

 

 したたかなのは良いんだけど、ちょっと考えが甘い。ヤキメ、基本気に入られる方が危ないし。本人も弱い者いじめには興味ないと言っていたとおり、あいつはどうでもいい相手には何もしない。でも、一度気に入られちゃったら下手に失望される方がリスキーなのも事実で……結局、カトルの言うとおり上手く付き合って利用していくしかない。

 

「まぁ、ヤキメの件はそれで良いとして、ボクらもそろそろ出ようか。いないとは思うけど、生き残りを探したいだろう?」

「……いえ、そちらはヤキメ様に任せて、先に埋葬を……」

「……あぁ、そうだったね」

 

 ヤキメによってグチャグチャにされた魔族はともかく、ここにはその魔族によって無惨な死体に変えられた者たちがたくさんいた。カトルであれば、彼らの弔いを願い出るのも無理はない。

 

 そうして、俺の協力によって短時間で墓穴墓石完備の埋葬を済ませ、俺たちは廃墟を後にした。村の炎は完全に燃え尽きていて、辺りは灰と瓦礫の山だ。

 

「この分だと望み薄だけど、ヤキメはまだ戻ってこないのかな」

「そうですね……」

 

 ヤキメが帰ってこないことでは当然なく、生き残りなどいなさそうなことに顔を暗くするカトル。今のうちに二人で帰っちゃおうかなと考える俺。とりあえず外に出ようと揃って歩いていた、その時だった。

 

「……カトル」

「っ! はい!」

 

 飛び退く。俺は軽く右へ、カトルは大きく左へ。次の瞬間、俺たちが立っていた地面から火柱が上った。火属性魔法による奇襲攻撃。反射的に、俺たちは魔力を辿って使い手の方へと視線を向けた。

 

 そこにいたのは、人間の少年だった。聖騎士ではない。服装は綺麗な上、この国ではあまり見ないデザインだ。生き残りではないだろう。通りすがりの一般魔法使い、といったところだろうか。いや……一般どころではないか。今の魔法は年齢を考慮せずとも素晴らしい完成度だった。天才レベルだ。

 

「お前たちが……お前たちがこれをやったのか……!」

 

 少年は溢れんばかりの義憤を顔に浮かべ、叫んだ。

 

「ちがっ……!」

 

 カトルは咄嗟に否定しようとして、言葉に詰まる。この事態を間接的に引き起こしたのは自分だという負い目と、今の自分が魔族である事実が言葉を詰まらせたのだろう。カトルのそういうところは好きだけど、今回ばかりは普通に否定しておいた方が良いと思う。

 

「許さないぞ……!」

 

 カトルの態度を肯定と受け取った少年は、その手に魔力を編む。

 

(ほとばし)れ! 地より(いなな)火砕咆(かさいほう)!」

 

 咆哮の如き灼熱の濁流が、俺たちに襲いかかった。

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