コンビの片方を闇堕ちさせないと生きていけない魔神系TS転生者   作:鐘楼

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嗚呼、可哀想に(本音)

「……次はなんです? 私への質問は」

 

 カトルちゃんに催促されて、意識が引き戻される。はっ……俺は今何を考えていた? 姉妹愛を目にして美味しそうとかなんとか考えてた? ……やっぱ本能に呑まれかけてるのかなぁ。俺はこんなにも嫌々やってるのに。

 

 それはそうと、次の質問か。んー、ぶっちゃけカトルちゃんに対等だと錯覚させることが目的の取り決めだから、こっちとしてはそんなに聞きたいこととかないんだけど。

 

「そうだな、聖騎士にはなりたくてなったのか、なんてどうかな?」

「? なぜ……いえ、そうですね……少なくとも、私は望んで聖騎士を拝命しました。孤児院では皆を守る聖騎士の尊さに憧れて育ちましたから」

「……なるほどねぇ」

 

 ……可哀想に。印象通りの真面目な子のようだが、今の答えでプランは決まった。即ち、いかにして心を闇に落とすか。俺が手を汚す必要も全くなさそうだ。

 

「では。……この私の身体に何をしたのか、説明を求めます」

「そうだね……でも長くなるから、場所を変えようか」

 

 そう言って、俺はカトルちゃんに場所を改めることを提案したのだった。このままだと風邪引いちゃうしね。

 

 

 カトルちゃんに服を着せて無事にえっちな雰囲気から脱却し、場所を食堂的な場所に移す。ちなみに、この場所は俺が誰もいないような未開拓の土地に現実逃避で作った宮殿だ。自分の罪深い生態に絶望しながら夢中になって作ったので、細部まで凝っている自負がある。食事しないんでこの食堂っぽい場所に食糧とかないんだけど。

 

「さて、キミの身体に何をしたのかだけど……それにはボクのことについても説明する必要があるから、サービスでそれも教えてあげよう」

「……」

 

 向かいに座らせたカトルちゃんだが、大分警戒心が和らいでいるように見える。もちろん心を許しているわけではないだろうが、ひとまず害意がないことは理解してもらえたようだった。

 

「ボクはスティーア。魔神スティーアだ」

「魔神……魔族ではないのですか」

「全然違うね。魔神についてだけど……カトルは神についてどう教えられているのかな?」「神……といえば、人を創りし我らが主と、魔族を創った邪悪なる神の争いが今まで続いていると……」

「なるほどね」

 

 別に魔族の神が邪悪っていうのは人間の目線から見た一方的な話なんだけど、それは置いておいて。

 

「確かにそれは正しい。だけど、神というのは何もその二柱だけではなくてね。彼らには及ばなくとも、力を持った神は他に何体もいて、中には現世に潜んでいる者もいる。それが魔神だ」

「なっ……では、あなたは自らが神の一人であると? 信じられるわけ……っ!?」

「……どうかな? 説得力はあると思うんだけど」

 

 力を解放してカトルちゃんを威圧する。実力でアピールする寸法だ。魔神の力は生まれた時から一定かつ強力だ。『目的』を果たさないといずれ消滅するってだけで。なんで俺の目的は『人を闇落ちさせて元仲間と苦しみながら戦わせる』なの? マジで。

 

 ともかく、人間にも魔族にも魔神に匹敵するレベルのはいないだろう。多分。カトルちゃんは割と正確に実力を測れるっぽいし、これだけで説得力はあるだろう。

 

「すっ……少なくとも、あ、あなたが私の理解の及ばぬ次元にいる超越者だということは理解、しました……」

「うん、それでいいよ。そして、基本的に魔神というのは人間と魔族の争いには無関係で中立なものだということも頭に入れておいて欲しいかな」

「分かり、ました……」

 

 重要なのはそこだ。別に神として扱ってほしいわけじゃないし。さて、可哀想だし威圧を引っ込めて、と。

 

「本題だけど、キミの身体について。ボクはキミを助けるために、性質を反転させる権能を使って蘇生を施した。人間を魔族に、魔族を人間に変える力だ。魔族に変わる過程で、キミの『炉』……心臓は再生されたんだ。これしか方法はなかった」

 

 『目的』の条件を達成するための、性質反転の権能。これに回復効果がついているおかげで、死にかけの人間を対象にするっていうプランを採用することができた。それだけは感謝。キッスが必要なのが玉に瑕だけど。カトルちゃんが美少女で良かった。いや、別に男相手でもやるけどね? 必要ならね? でも気持ち的にね? 女の子の方が嬉しいよね。俺もう性欲消えかかってるんだけど。ハハ。 

 

「……そう、ですか……」

 

 忌むべき魔族にされたとはいえ、命のためと言われれば強く文句は言えない。そんな感情を滲ませながら肩を落とすカトルちゃん。だが、不意に何かに思い当たったのか勢いよく顔を上げた。

 

「で、でしたら! あなたの力をもう一度使えば、私を人間に戻すことも可能なのでは……!」

「……なるほど」

 

 バレたか。ある一点に目を瞑った上で、できるかできないかでいえば、できる。でもそれでは俺の利害に反する。悪いけど呑めない提案だ。さてどうするか……いや、ここは正直に話そう。

 

「たしかに、それなら可能だね」

「なら……」

「だが、二つ問題がある」

「問題、ですか……」

「一つ。キミを人間に戻した場合、戦う力を失う。『炉』は戻ってこないだろう」

 

 ちなみにこれは本当だ。今の魔族の身体なら俺がオマケをした分かなり戦えるけど、人間に戻せば一般人に逆戻りだ。『炉』は元の心臓ごと壊れちゃったし。もう一度適合するかも分からない。そもそもアレは碌でもないもので……いや、やめておこう。

 

「それは……いえ、それくらいであれば……!」

「二つ。ボクに理由がない。カトル、ボクはキミにこれといった借りはないし、ボクからすると今の姿でも良いじゃないか、と思ってしまうのが本音でね」

「っ……!」

 

 梯子を外すと、カトルちゃんの顔が歪む。ちなみに本音でねとか言ったけど全然本音ではないのであった。流れからして、ここからカトルちゃんがどうにか俺に借りを作るために差し出せるものを提示するのが鉄板だ。だが……既に闇落ちまでのパターンは見えているので、ここはこっちから提示させてもらう。

 

「……けど。キミが一つだけボクの頼みを聞いてくれたら、人間に戻してあげても良い」

「ほ、本当ですか……っ! い、いえ……一体、私に何をさせる気ですか。言っておきますが、守るべき民を傷つけるようなことは……」

「そんなことはさせないよ」

 

 ここで、妹ちゃんと戦うことを強いても良いんだけど、それでは本気度に欠けて美味しくない。だから。

 

「ただ、教会から資料を取ってきてほしくてね」

 

 本当に可哀想だけど。カトルちゃんには真実を知ってもらうのだ。

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