『魔法』
それが伝説や
確認できる最初の記録は西暦1999年のものだ。
人類滅亡の予言を実現しようとした狂信者による核兵器テロを、特殊な能力を持った警察官が阻止したあの事件が、近代以降で最初に魔法が確認された事例とされている。
当初、その異能は「超能力」と呼ばれ、共有・普及可能な技術体系化は不可と考えられていた。
だが、それは誤りだった。
各国の研究により、「超能力」は「魔法」という形で再現が可能となったのだ。
そして核兵器すらねじ伏せる強力な魔法技能師は、国家にとって兵器であり力そのものだ。
2092年8月12日午前10時、正体不明の軍艦が佐渡に奇襲攻撃を受けていた。
本来であれば国防軍が対処による迎撃を行うのだが、現在は沖縄で大亜連合の海戦で意識を向けている為、人手が足りない状況に陥っている。剛毅も当然それを知っているから、佐渡侵攻の対応をしていた現地の最高指揮官酒井大佐に、新潟・北陸へ連隊規模の部隊を回してもらえるよう要請した。十師族の力を借りなければ非常に不味い状況を理解してる酒井は、彼の要請を了承したのは当然と言えよう。
了承の返事を受け取った一条家当主一条剛毅は、自身を中心に組織した義勇軍で防衛線に進駐させようとする。
その中には剛毅の息子当時13歳だった将暉も十師族に連なる者として参加するが、
「ダメだ。義勇軍参加資格は18歳からだ。見たところ君たちは小学」
「千葉の総武中学1年比企谷八幡です」
黒髪で前髪と襟足を伸ばした中肉中背で目つきのよくない、そしてぴょこんと生えたアホ毛の少年が目の前に居る面接官に言う。
「同じく千葉の総武中学1年材木座義輝です」
太めの体型と四角の眼鏡が特徴で、季節問わずロングコートと指貫グローブをしている少年も八幡に並び面接官に言う。
「いやいや……志しは立派だけどまだ中学生だろう。さっきも説明したけど参加資格は18歳からだ」
「いや……そこを何とかできませんかね?義勇軍に参加出来ないとじ……師匠に半殺しにされるんです俺ら2人」
「八幡の言う通り。我も参加出来ないと知られたらこ、殺されてしまう」
その光景を想像したのか、八幡と義輝はガタガタと体を震わせる。
「いや……君たちの様子から嘘は言っていないとは思うんだけど……ねぇ」
面接官はそう言ってどうしたものかなと考えていた。
「じ、じゃあアイツは何で参加しているんですか?見たところ俺らと年は同じみたいですけど?」
八幡は離れた場所で国防軍の兵士と歩いている将暉を指差す。
「いや……彼は十師族一条家の長男でここに居るのも十師族としての義務からだ」
「はっ?参加資格は18からでしよう?十師族だからと言って依怙贔屓じゃないですか?」
わざと大声で叫ぶ八幡。
「どうしたのかね?」
そこをちょうど通りかかった一条剛毅と酒井大佐が面接官に尋ねてきた。
「これは酒井大佐に剛毅殿。実はこの子たちが参加したいと言うのですが、まだ中学生なので参加資格は無いと説明したんですが……剛毅殿のご子息が参加出来て自分たちは参加出来ないのはおかしいと言いまして……」
「ふむ。確かにそう言われてはただおい帰すことは出来んか」
「いや、まだ若いの国家の大事に駆けつけるとは立派ではないか。どうだろう剛毅殿、ここはこの若い2人も義勇軍に入れては?」
剛毅がどう対応しようかと悩んでいたら横に居た酒井大佐は八幡と義輝のような若い者が国家の危機に駆けつけたことに感動し、剛毅に2人も義勇軍に入れようと説得する。
「……分かりました。では私の息子と組むようにしましょう」
剛毅としては目の前に居る八幡と義輝を義勇軍に入れることに抵抗あったが、ここで否定して酒井大佐と仲違いすることを恐れしぶしぶ承諾する。
「さすが剛毅殿。2人とも……ほー比企谷くんに材木座くんか。2人とも頑張ってくれたまえ」
「「ありがとうございます酒井大佐」」
酒井大佐から参加しても良いと言われて、これで師匠(八幡の祖父)に半殺しにされずに済むと思った八幡と義輝は酒井大佐に頭を下げて礼を言う。
「うむ」
八幡と義輝が頭を下げて礼を言うと満足げに頷く酒井大佐。それを横で見ていた剛毅と面接官は何とも言えぬ表情をしていた。
一条剛毅率いる義勇軍は酒井大佐率いる国防軍と2手に別れて侵攻軍と戦っていた。
が、一番の戦果を上げていたのは剛毅率いる義勇軍で、その中でも戦 わ果を上げていたのは八幡と義輝そして将暉の中学生トリオ。
侵攻軍兵士を見つけると将暉が爆裂の魔法で先制攻撃し、怯んだところを八幡と義輝が左右から持っていた刀で斬っていく。
(師の教えなのだろうが一切の迷いもなく首を斬り落とすとは……何より先ほどまでは年相応の態度だったのに今は国防軍兵士にもひけをとらない面構え。本当にあの2人は今日が初陣か?)
剛毅は八幡と義輝が一切の迷いもなく侵攻軍兵士の首を斬り落とす
のを見て思った。
その後も国防軍、義勇軍の活躍により侵攻軍側も徐々に押されていると感じたのか、佐渡島から離れた海上に停船していた軍船は
海域から離れるように消えていった。
佐渡島を奪回した国防軍と剛毅率いる義勇軍は残敵掃討に入り、多くの侵攻軍兵士を捕虜として捕らえる。
相手の言語や武装から新ソビエト社会主義共和連邦(通称新ソ連)と判断し、日本政府は新ソ連に抗議文を送るが新ソ連側はこれを全否定する。
一方で佐渡島侵攻戦で大活躍をした一条剛毅の息子将暉は「クリムゾン・プリンス」というけったいな2つ名で呼ばれるようになるが、同じく活躍した八幡と義輝のことは一切秘匿することになった。
いや、八幡と義輝が目立ちたくないので名前を伏せて欲しいと剛毅に頼み、剛毅もそれを承諾した。
しかし、人の口に戸は立てられぬという言葉があるように国防軍側から一条将暉と同年代の千葉県出身の少年2人が参加していたという話はマスコミを通して世に流れることになる。
それを後で知った剛毅はマスコミに、まだ未成年ということ、そして本人たちが目立ちたくないこともあり、名前を明かすことは出来ないと説明した。
千葉県では一時期、その話で話題になり俺たちがそうだと偽物が出ていたが、1年2年過ぎるとそういった類いは消えていった。
2095年3月某日
ー魔法科一貫総武中学校ー
今日は総武中学校の卒業式。
すでに卒業式は終わり、卒業生たちは各々別れを惜しんだりしていた。
八幡と義輝も無事卒業を迎え、4月には東京八王子にある国立魔法大学附属第一高校へと1科生として入学することが決まっていた。
「八幡よ今日師匠はご在宅か?」
「ああ。卒業を祝うって昨日から居るな。あっ、お前も連れてくるように言われてたわ」
今、思い出したかのように義輝にそう告げる八幡。
「そういうことは早く言ってくれ。我、両親に師匠に会ってから帰るって伝えねばならぬ」
そう言うとコートのポケットからスマホを取り出し八幡から離れた場所に移動する。
「「「比企谷くん(ヒッキー)(ヒキタニ)」」」
八幡が会いたくない3人が立ちふさがる。
雪ノ下雪乃と由比ヶ浜結衣は同じ部活で一緒に部活動をしていたが、2人は常に八幡を見下していた。
実際に依頼のほとんどを解決または解消していたのは八幡だったのにだ。
雪乃と結衣が八幡抜きで依頼を受けた依頼(文化祭実行委員長相模南のサポート、修学旅行での葉山グループ戸部翔の海老名姫菜への告白)は失敗し、そのせいで相模は登校拒否となり他の学校に転校、戸部の告白は海老名が断ったため、葉山グループはギクシャクとなり解散するはめになった。
そして葉山隼人、この男はそれらをすべて八幡のせいにしようと画策したが、文化祭実行委員会で真面目に働いていた生徒たちからの証言、修学旅行では海老名と戸部に問い詰めらそれらすべてが総武在校生にバレ、総武中学校のトップカーストから最底辺へと失墜した。
この3人は八幡との接触を今後禁止することを学校側、保護者を交えた話し合いで決まった。
「何の用だ?雪ノ下、由比ヶ浜そして葉山。お前らとはもう関わらないと親たちの前で誓約書まで書いたはずだが?」
この誓約書に反したらそれ相応の罰則金が支払わると明記されていたため、八幡は元より雪乃、結衣、隼人は両親にきつく言われていたのだった。
それらを踏まえて八幡は雪乃たちに忠告したのだが……。
「ええ確かにそうね。でも一つだけ確認したいことがあるわ」
「何だ?」
「どうして貴方が私を差し置いて第一高校入試総合二位なのかしら?さらに言えば実技に関しては第一高校歴代最高点なんてどう考えてもおかしくないかしら?」
今になっても八幡をいや、さらに悪くなったと言っていいぐらいに見下す雪乃。
「お前が入試の順位をなぜ知っているのかは知らんが、お前、座学は俺より上だったけど実技は俺より下だっただろう。魔法発動して10分も持たないぐらいに。それでよく俺を見下せるな?」
「ヒッキーのクセにゆきのん苛めんな」
「ギリギリで受かったお前がなに偉そうに言ってんだ」
「どうせヒッキーが卑怯な手段を使ったんでしよ」
「はっ、発想が小学生並みに低いな由比ヶ浜。第一高校の教師や試験官が何重に見張っている中、不正なんて出来るわけないだろうが」
「ヒキタニ、2人に言い過ぎだろう謝れ‼️」
「葉山、お前学習能力無いのか?俺の名前はヒキガヤだ。ヒキタニなんて名字のやっはこの学校には居ません」
ざわざわ
ざわざわ
「おい、また3人が比企谷にちょっかい掛けているぜ」
「三浦さんを女避けに使っていたクズ山が何か吠えてる(笑)」
「知ってる?由比ヶ浜さんって入学式当日に比企谷くんにペットの犬助けてもらってお礼言うのに一年経ってからだったって」
「知ってる。しかもそのことを親に言わなかったんでしよう。わたし、由比ヶ浜さんの近くに住んでるけど、由比ヶ浜さんのお母さん周りからお礼も出来ない薄情者って噂されているよ」
「雪ノ下さんなんか加害者側なのに比企谷くんのことゾンビとか言って罵倒していたって」
「嘘?普通、被害者にそんな酷いこと言わないよね」
「「「~~~~」」」
周りからの言葉に雪乃、結衣、隼人の3人は顔を真っ赤にし逃げように学校を出て行く。
「……結局何がしたかったんだアイツら?」
逃げて行く3人の後ろ姿を見てそう呟く八幡。
「八幡、待たせたな。両親から師匠にちゃんと挨拶してこいって言われたわって……何かあったのか?」
両親に電話していた義輝は八幡の所に戻るが周りの雰囲気がおかしいと感じ、八幡に聞くが、
「……何でもねぇよ、行くぞ材木座」
「ちよ、ちょっと待って」
先に行く八幡を慌てて追いかける義輝。
ー佐渡島事変・総武中学校編ー
完
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