福音くんの血を飲むようになって、もう数年が経ちました。
今では毎日、合法的に飲んでいます。
だから私は今日もとっても健康で、精神的にも安定していて、
つまり──大変満足しているトガヒミコです。
さて、ここ最近の一番大きな出来事といえば──
中学校に入学したことです。
制服も新しいし、クラスメイトも新しいし、
福音くんと同じクラスに通えるし、
なんと新しいお友達もできました。
声田さんと池帆さん。
2人ともちょっと変わってますけど、いい人たちです。
そして私たちは部活にも入りました。
放送部です。
でも──今日のは、さすがに想定外でした。
まさか、入部初日からいきなり 校内放送デビュー だなんて。
いや、私はまだマシでした。
私はあくまでサポート役ですから。
しゃべるのは福音くん。
……というか、彼に「話し方の指導」なんて要るんでしょうか?
普段から誰よりも“語り”をしてる気がします。
(声だけならプロヒーローでも勝てないと思います)
でも、わかりました。
今日の福音くんは相当まいっていました。
姿勢こそいつも通り静かだったけど、声が少し固くて、
台本を持つ手がほんの少し震えてて──
そのくせ、途中でなぜか小さく独り言まで言っていて。
「僕は渚カヲル……」「最後の使徒……」とか。
その言葉を聞いた瞬間──
私の体に、“個性を発動したときの感覚”が走りました。
でも、体は変わっていません。
なのに私の「どこか一部」だけが、
別の姿に変身したような感覚がしたんです。
知らない単語のはずなのに。
初めて聞いた言葉のはずなのに。
──なにか、知っている気がする。
訳がわかりませんでした。
心臓がどくん、と跳ねて。
でも意味が追いつきませんでした。
そのあと、福音くんが質問していました。
「誰に向けて話すつもりでやればいいですか?」
いつもなら、私は静かに横で見ているだけだったはずです。
でも──口が勝手に動きました。
「碇くんはどう?」
その言葉は、完全に“無意識”でした。
碇くん?
誰、それ?
私は、知らない名前を言いました。
どうして? なんで?
福音くんだって、困るはずです。
「誰それ?」って聞かれるのが普通です。
だけど。
「シンジくんか。確かに、その方がしっくりくる」
彼は──
まるで 最初からそう決まっていたかのように、自然に受け入れました。
戸惑う様子なんて、少しもありませんでした。
そして一呼吸置いて──
彼の雰囲気が変わりました。
私の目には、ほんの一瞬だけど、確かにそう見えました。
──白くて細長い装甲の顔じゃない。
──昔の包帯姿でもない。
銀髪の、知らない少年。
でも。
私は、彼を“知らない”はずなのに。
「知ってる」気がしたんです。
胸の奥に、出口のない迷路が広がったような。
どこかで何かを忘れているような──
そんな感覚だけが、ずっと残りました。
◇◇◇◇
「今日はなんか疲れたな……」
服を着替えて、ベッドに倒れ込む。
ぼんやり天井を見つめながら、私はひとりごちた。
──今日のお昼。
放送室で起きた“あれ”はいったい何だったんだろう。
私は知らない人の名前を口にして、
福音くんはそれを疑問に思わず受け入れて──
何もかもが、ふわふわしたまま。
考えても答えは出ない。
もやもやした思考を抱えたまま、まばたきをした次の瞬間──
私は眠っていた。
◆◆◆◆
──意識が、浮き上がった。
体が動くより先に、夢だと気づいた。
私は、見知らぬ場所に立っていた。
膝まで浸かった、オレンジ色の液体。
温かいようで、冷たいようで、でも不思議と怖くはない。
地面も壁も存在しない。
どこまでも広がるのは、波紋だけがゆらめくオレンジ色の海。
見上げれば──空は真っ赤だった。
そして。
鼻をくすぐるのは、嗅ぎ慣れた──血の匂い。
私は、ほんの一瞬だけ安心してしまった。
こんなに濃い血の匂いに包まれているのに、
怖くないどころか、落ち着くなんて。
ぽちゃん、と小さな音がして振り返る。
そこにいた。
白いヒーロースーツのような服。
そして──青い髪の女の子。
私は、息を飲んだ。
知っている。知っている。知っている!!
“私が変身した姿”の彼女だ。
鏡越しに何度も見た、でも“私じゃない誰か”の姿。
だから私は聞いてしまった。
「あなたは……誰?」
問いは震えていた。
夢なのに、現実みたいに緊張していた。
少女はゆっくりと顔を上げて、私を見た。
静かで、澄んだ瞳。
そして──
「──私はあなた」
「え……?」
喉の奥が勝手に震える。
意味がわからない。
でも、わかりたくないという気持ちもある。
少女は、ゆっくりと言葉を継ぐ。
「正確には、“あなたと”」
「わたしと……?」
「“あなた”であり、“あなたではないもの”」
淡々としているのに、
なぜだかその声には“嘘がひとつもない”気がした。
ぞくり、と背筋に冷たいものが走る。
この子は、冗談を言っているわけじゃない。
「彼からこぼれ落ちたものが……あなたに溶け合ったの」
「……彼?」
「新世くんのこと」
その名を聞いた瞬間、
福音くんの横顔が“映像みたいに”脳裏に浮かぶ。
「……どういうことなの?」
問いかける私の声は震えていた。
少女は、それを肯定するように静かに頷く。
「あなたが彼の血を飲んだことで──私は“生まれた”」
「えっ……まって。変身できるのはわかるの。
でも……どうして“あなた”が生まれるの?」
問い詰めるように言ったわけじゃない。
ただ、怖い。
知りたくて、でも知りたくない。
そんな、自分でも抑えられない気持ちがぶつかっていた。
少女は、感情を持たない天使みたいに答える。
「元の私と、あなたの“個性”が似ていたから」
「……似てた?」
光のない赤空に、少女の髪が揺れた。
「私は──侵蝕し、溶け、融合するもの」
あなたは──飲み、混ざり、変身するもの」
「……」
「だから私は落ちた。
彼の血と共に、
あなたという容れ物の中へ」
その言い方があまりに“自然”で、
私は息を呑むことしかできなかった。
少女は、私の目をまっすぐ見て言う。
「あなたが私を“姿”として使うたび、私は形を持ち始めた」
「……それで、あなたは今ここにいるの?」
少女は、ほんの少しだけ──微笑んだように見えた。
「そう。
私はあなたと彼の“混ざり物”。
名前のない、新しい存在」
赤い海の波が、さらりと揺れる。
少女の言葉が落ちた瞬間──
私の頭の奥で、何かが弾けた。
“映像”が、勝手に流れ込んでくる。
空の上に浮かぶ、光の円。
白い光で、二重らせんみたいにねじれながら
ずっと輪になって回っている。
それはまるで──
巨大なDNAが空に浮いているみたいで。
私は思わず息を呑んだ。
「……これ……あなた?」
思わず口が動く。
少女はゆっくりと目を閉じて、淡々と言った。
「──それは、“前の私”」
「……じゃあ今のその姿は?」
気づけば、私はそう口にしていた。
目の前の青い少女──
私が何度も変身してきた“誰かの姿”。
だけど彼女は、“私の個性が作った幻”じゃない。
私の中で“生まれた存在”そのもの。
だからこそ、聞かずにはいられなかった。
「あなたは……誰の姿なの?」
少女は、一瞬だけ目を伏せて。
それから、静かに答えた。
「──私が“いっしょになろう”とした子」
「……なろうとした?」
思わず聞き返す。
“いっしょになる”。
言葉の意味が、普通じゃないと本能で理解する。
少女は、赤い空を見上げながら続けた。
「そう。私は……彼女と“ひとつになりたい”と思った」
彼女。
まるで懐かしむように、その言葉を口にしている。
私は息をのむ。
「それって……」
少女は少しだけ、切なげな顔をした。
「私は、彼女の“碇くん”と一緒になりたいと思った心を知った」
──碇くん。
私の知らない名前。
けれど、耳に入った瞬間、胸の奥がざわりと揺れた。
「“いっしょになりたい”って……」
「あなたと同じ」
少女は私を見る。
まるで鏡みたいに、同じ感情を映す瞳で。
「好きな人と、ひとつになりたいと思う気持ち」
「……っ」
心臓を掴まれたみたいに、息が詰まった。
だってそれは──
私がずっと抱えていた“どうしようもない願い”と同じだから。
福音くんが好き。
彼と“混ざりたい”。
それは私だけの欲望だと思っていた。
けど──
「私は“彼女”になりたかった」
少女は手を胸に当てた。
「知りたかったの」
静かな声だった。
けれど、その“願い”は確かに私の胸を撃ち抜いた。
ああ──
この子は、私と同じなんだ。
欲望も、救いも、渇望も。
全部、私と同じ“形”をしている。
「……どうして、“知りたい”と思ったの?」
思わず問いかける。
少女は一瞬だけ目を伏せ、静かに答えた。
「──寂しい」
「え……?」
「ひとりは寂しいから」
心臓を握られたような感覚が走る。
その言葉は、私の奥の奥にある何かを鋭く突いてきた。
誰にも理解されない
誰にも“普通”じゃないと言ってもらえない
だから、混ざりたかった
溶けたかった
愛されたかった
少女は続ける。
「でも──今は、少し違う」
「……違う?」
少女は、私の目を見て微笑んだ。
「あなたの中で“彼”を見た」
「福音くんを……?」
少女はこくりと頷いた。
「あなたと彼の生活を見て……私、すこし考えが変わったの」
「……どう、変わったの?」
「“ひとりは寂しい”──でも、“ふたりでいること”は、ただ溶けることじゃない。形が違っても、ちゃんと繋がれる。あなたたちを見て、初めてそう思えた」
胸が熱くなる。
気づけば呼吸まで止めていた。
「だから私はあなたの中で、あなたと“並んで”彼を支えたい。もう、すべてを同化させる必要はない。だってあなたが……」
いったん言葉を切り、少し照れたように言った。
「……ちゃんと彼と“繋がってる”から」
私の頬が熱くなる。
少女はそれを見て、安心したように目を細めた。
「だから私は──“あなたの味方”でいるよ」
そこで、世界が波のように揺れた。
胸の奥がじんわりと熱くなる。
「……ありがとう」
気づけば、自然に声が漏れていた。
けど、どうしても気になってしまって、思わず続ける。
「ねえ、どうして……今日、こうして話せたの? 今までずっと、ただ姿が変わるだけだったのに」
少女は、一瞬だけ静かに目を閉じる。
そして──迷いのない声で答えた。
「彼の力が強まったから」
「……福音くんの?」
「ええ。彼が“覚醒”に近づいている。それに連鎖するように、私という存在も力を増しているの」
私は息を呑んだ。
「じゃあ……あなたは、福音くんの力の一部、ってこと?」
「そう。そして同時に──あなたの中にいる“もう一人のあなた”でもある」
少女は、赤い空を見上げる。
「彼の力が強くなればなるほど、私も“形”を持てるようになる。きっと……これからもっと深く関わるようになると思う」
「……関わる?」
「そう。あなたと、彼と。私はその両方を“内側”から繋げる存在になる」
「ねえ……あなた、名前は?」
気づけば、私はそう問いかけていた。
少女は一瞬だけ瞬きし──そして静かに答える。
「私は“名前”を持っていない。彼らは……“私たち”を〈使徒〉と呼んでいた」
「……使徒?」
その言葉を聞いた瞬間、胸にいやな冷たさが走る。
でも──私はすぐに首を振った。
「そんなの、カァイくないです!」
思わず語気が強くなる。
少女はきょとんとした顔で私を見つめた。
「かわいく……ない?」
「ないです!」
即答した私に、少女はほんの少しだけ目を丸くした。
「初めて言われた……そんなふうに」
私はしばらく考える。
──名前がない。
──存在として“使徒”と呼ばれてきた。
それって、あまりに味気ない。
私がトガヒミコとして“名前”を呼んでもらえるのが嬉しかったように──
「……なら」
私は一歩近づき、笑顔を向けた。
「私が名前をつけてもいいですか?」
少女の瞳が揺れる。
その反応は、驚きでも警戒でもなく──ただ、純粋な戸惑い。
そして、かすかに……憧れのような色があった。
「……私に?」
「はい!」
少女は、ほんの一瞬、言葉を失ったように見えた。
そして──
「……人から何かを“もらう”のは初めて」
かすかに、震える声。
でもその表情は──はっきりと“嬉しそう”だった。
「……お願い。あなたに任せる」
私は胸の奥がじんわり温かくなるのを感じた。
「任せてください。ぜったい、カァイイ名前にしますから!」
少女は小さく頷いた。
その仕草が、なんだかとても愛おしく思えた。
……名前。
彼女の名前。
考え始めた瞬間、頭の奥にさっきの映像がよみがえる。
──空いっぱいに広がっていた、光の輪。
二重らせんみたいにねじれた、白い光の鎖。
ぐるぐる回りながら、あの空に浮かんでいたもの。
(あれ……何だったんだろう。まるで……)
そこで、私はハッと息を呑んだ。
「……アルエ……」
思わず声が漏れる。
少女がまばたきしながら、少し困ったようにこちらを見る。
「アルエ……?」
「そうです!」
私はぱっと笑顔になって、
「アルエちゃん!」
と、両手を胸の前で組んだ。
「あなたの名前、“アルちゃん”です!」
少女はぽかんと口を開けたあと──
ほんの、ほんの少しだけ。
表情のない顔に、じわりと温度が灯った。
「……アルエ、ちゃん」
その声は、小さくて不慣れで、
それでも──
なんだか、とても嬉しそうだった。
「ふふっ。カァイイです。ぴったりだと思います!」
少女──いや、“アルエちゃん”は
胸に手を当てながら、ゆっくりとつぶやいた。
「ありがとう」
アルエちゃんは、不慣れな笑顔をほんの一瞬だけ浮かべた。
だけど次の瞬間、表情から色がふっと抜け落ちる。
「あなたには──新世くんを助けてあげてほしいの」
「……助ける?」
私は首をかしげる。
だって、私はいつだって福音くんを助けたいと思ってる。
けど、アルエちゃんの声はそれよりずっと切迫していて
「どうして今、それを言うの?」
問いかけると、アルちゃんはゆっくり瞬きをした。
「いま彼は、“境界線”の上に立ってる」
「境界線……?」
「ほんの少し踏み外せば、もう戻れない場所よ」
背筋が、ぞくりと震えた。
「そして今の彼は、自分自身を“さらに覆い隠そう”としている」
「覆い隠す……?」
「あなたも感じたはず。マイクの前で話す練習をしていたとき」
私は息を呑む。
そうだ──あの瞬間。
福音くんの雰囲気、別人のように変わっていた。
“知らない誰か”が喋っているみたいで
「彼は、自分が“人間”であることを信じるために」
アルエちゃんは淡々と言葉を紡ぐ。
「別の“形”を、心の手すりみたいに掴んでいるの」
「形……?」
「そうすることで、何とかバランスを取ってる」
私は思わず奥歯を噛みしめた。
無意識のうちに、そんなことを──?
「もし彼が、“誰かそのもの”になろうとしてしまったら」
「……!」
「もう、自分の場所に戻って来られなくなる」
言葉の意味は、全部は理解できない。
けど、胸の奥がぎゅっと縮む。
私──あの瞬間。
確かに福音くんのことを、“知らない銀髪の誰か”のように感じた。
「あれは……危ないこと、だったんですか?」
「危険というより──“消える”ことに近いわ」
アルエちゃんは、まっすぐに私を見つめる。
「だからお願い」
「彼が迷って、誰かになろうとしたら」
「“あなたはあなたのままでいい”って」
「“私は、それが好きだから”って」
「──あなたの言葉で、強く引き止めて」
私の息が詰まった。
胸の奥が熱くなる。
「…………わかりました」
気づけば、私は頷いていた。
「絶対に言います。
彼が誰かの真似をしても、私は“福音くんがいい”って言う」
アルエちゃんは、ふっと目を細めた。
その笑顔は──これまでで一番、人間らしかった。
「あなたがそう言ってくれるなら──私は安心していられる」
◇◇◇◇
目が覚めた。
ぼんやりした頭がゆっくり現実に沈んでいく。
天井の模様を眺めながら、私はさっきまで見ていた夢を思い返した。
──アルエちゃん。
小さく呼ぶと、不思議と胸の奥があたたかくなる。
体の中を流れる何かが、昨日より“濃く”なっている気がした。
あの夢の中で聞いた言葉が浮かぶ。
『彼を助けてあげて』
私は布団を握りしめ、静かに息を吸い込んだ。
「……うん。私の意思で守る。絶対に」
◇◇◇◇
放課後。部活が終わり、福音くんと並んで帰っていた。
「今日は昨日みたいに突発の放送がなくてよかったよ」
福音くんが胸をなで下ろすように笑う。
「はい。部活内容も、全体的な説明だけでしたし……助かりました」
歩きながら話す声が心地いい。
でも──私は途中で決心して、足を止めた。
「……福音くん」
「ん? どうしたの、ヒミコ」
振り返る福音くん。
私はぎゅっと拳をにぎって、覚悟を決めた。
「……昨日のことで、相談があります」
「昨日のこと?」
福音くんが首を傾げる。
私はぎゅっと制服の端を握りしめて、言葉を続けた。
「昨日、放送室で……福音くん、マイクの前に立ったとき。
──まるで“別人”みたいになってました。
雰囲気というか……声の色というか……全部、いつもの福音くんじゃなくて」
福音くんの片目がわずかに伏せられる。
「……そうだったのか」
私は強く頷く。
「福音くん、最初に出会ったとき言いましたよね。
“仮面の君”じゃなくて、“本当の君”と話すのがいいって」
「……ああ、言ったね」
「だから、昨日の福音くんを見て……すごく、胸がざわざわして。
福音くんが“福音くんじゃなくなっちゃう”みたいで、怖かったんです」
彼は何も言わず、ただ静かに聞いてくれている。
その優しさが逆に胸に刺さる。
だから、私は真正面から言った。
「──だから。
私は、福音くんには“福音くんのままで”いてほしいんです」
声が震えた。
でも、気持ちは揺れていなかった。
「誰かになりきるんじゃなくて。
そのままの福音くんが……私は、一番好きですから」
夕焼けのオレンジが、福音くんの包帯越しに揺れる。
しばらく沈黙したあと、彼はゆっくりと口を開いた。
「……そうか。
……確かに、そうだね」
福音くんが柔らかく答えてくれる。
安心したような、どこか照れたみたいな声だった。
私は胸を撫で下ろし──でもすぐに、申し訳なさがこみ上げてきてしまった。
「まあ……昨日は、その……私が変なことを言っちゃったのが原因なんですけどね」
「え? そうだっけ?」
福音くんは本当に心当たりがないらしく、首をかしげた。
──覚えていない?
その瞬間、胸の奥がひやりとした。
昨日の、あの“雰囲気の変化”。
(……これが、“境界線の上に立ってる”ってことなんですね)
アルエちゃんが言っていた言葉が、頭の中で静かに繋がる。
福音くんが、どちらへ傾くかで決まってしまう“なにか”がある。
私はそっと息を整えて、悟られないように笑った。
「本当に、福音くんって……そのままが一番なんですよ」
彼が少し照れたように目を逸らす。
「……そう言ってもらえると、なんだか安心するよ」
(……守らなきゃ。絶対に)
私は心の中で改めて強く決意した。
昨日投稿しようと思ったら、サーバーエラーで投稿できませんでした
その空いた時間で気分転換に画像を作っていたので、せっかくだしここに載せておきます。
※挿絵はNovelAIにて自作生成したものです。
【挿絵表示】