スぺちゃんと一丈字トレーナー   作:ダシマ

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第11話「群馬:みそパン」

 

 

 ある日の事。飛鳥はクタクタになっていて、トレーナー室で休んでいた。ちなみに飛鳥のトレーナー室は模様替えもしており、休憩スペースが畳になっている。

 

飛鳥「フローリングもいいけど、やっぱり畳が落ち着くね…」

 

 そんな時、スぺがやってきた。

 

スペシャルウィーク「トレーナーさん!」

飛鳥「おうスペ…」

 

 なんか疲れている飛鳥を見て、スぺは不思議そうにしていると、テーブルの上にパンの袋が置いてあったので、驚いていた。

 

スペシャルウィーク「あの袋どうしたんですか?」

飛鳥「ああ。ちょっと群馬まで行ってきたんだ。食っていいぞ」

スペシャルウィーク「群馬!? も、もしかして瞬間移動で…」

飛鳥「そうなんだよ。みそパンって知ってるか?」

スペシャルウィーク「みそパン…?」

 

 聞きなれない言葉にスぺは首を傾げた。

 

飛鳥「群馬の沼田っていう…北の方にあるんだけど、そこまで行ってきたんだ」

スペシャルウィーク「そ、そうなんですか…。でも、どうしてそこまで?」

飛鳥「んー。友達の実家がパン屋さんで、そこの親父さんがみそパンを食べてみたいって言ってたんだ。で、友達に頼まれて買ってきたって訳」

スペシャルウィーク「…それで瞬間移動で?」

飛鳥「そうそう。まあ、流石に群馬、東京、広島って感じで瞬間移動してたから、クタクタになって丁度寝てたって訳だ」

スペシャルウィーク「広島まで戻ってたんですか!?」

飛鳥「ああ」

 

 飛鳥がクタクタになりながらそう答えると、スぺは広島まで長距離で瞬間移動していた事に驚いた。

 

飛鳥「食べてもいいけど、レースに支障をきたさないようにな…」

 

 そう言って飛鳥はまた眠りにつくと、スぺは不思議そうにしながらもみそパンを食べた。

 

スペシャルウィーク(おいしい!!)

 

 いつものように目をキラキラ輝かせながらみそパンをほおばっていたが、飛鳥が寝ているという事もあって流石に声を出すような事はしなかった。

 

 そしてスぺはふと飛鳥を見つめる。

 

(…そういえば、トレーナーさんと出会ってからもう結構時間経つなぁ)

 

 思えば、任座トレーナーから急に飛鳥を紹介されてから時間が過ぎていた…。

 

*******************

 

「スペ。ちょっといいか」

「はい。トレーナーさん」

 

 大分昔の事。スぺは当時のトレーナーであった任座に呼び出されていた。

 

スペシャルウィーク「どうしましたか?」

任座「突然だが、ワシは暫くの間休みを取ることにした」

スペシャルウィーク「へ?」

 

 任座の言葉にスぺは驚いていた。本当に急だったからだ。

 

任座「いやー…。お前さんがG1で勝ってから人気が急上昇しただろう。で、トラブルもあった。ワシもうちょっと疲れてな…」

スペシャルウィーク「も、もしかしてトレーナーやめちゃうんですか!?」

任座「やめんやめん。寧ろ今お前のトレーナーを務められる奴はおらん。今から紹介するヤツを除いてはな…。で、後任のトレーナーも紹介したいから、ワシと一緒に来い」

 

 そう言って任座に紹介されたのが飛鳥だった。

 

任座「紹介する。近いうちにお前のトレーナー代理を務めて貰う一丈字飛鳥だ」

飛鳥「一丈字です。お見知りおきを」

スペシャルウィーク「あ、はい! 宜しくお願いします…」

 

 最初こそ任座の代役という事で、そこそこ事務的なやり取りが多かったが、飛鳥が結構キッチンを使って料理をする事があり、そこから距離が縮んでいったのだ。

 

飛鳥「…流石にちょっと食べ過ぎだな」

スペシャルウィーク「うう…す、すいません…」

 

 食べ過ぎが原因でレースに負けてしまった事があり、飛鳥はそこから料理を封印した。

 

スペシャルウィーク「トレーナーさん。もう料理はされないんですか?」

飛鳥「ああ。スぺがレースに勝つまではやめる」

スペシャルウィーク「え!!?」

 

 自分がレースに勝つまでは料理しないという飛鳥にスぺは酷く驚いた。

 

飛鳥「まあ、バッシングも受けたからな…。こればっかりは仕方ないさ」

 

 飛鳥の言葉にスぺは発起してトレーニングに励んで、次のレースには2着と大差をつけて勝利した。これには飛鳥も面食らったが、祝福をしてくれて…。

 

スペシャルウィーク「トレーナーさん。これでまた料理…作りますよね?」

飛鳥「まあ、レースに勝ったからな」

スペシャルウィーク「またトレーナーさんの料理が食べたいです!」

飛鳥「オレの?」

スペシャルウィーク「はい…」

 

 

 

 

 思えば本当に長かった。飛鳥の手料理もそうだが、最近では色んな所に一緒に食事に行ったりしている。任座には申し訳ないが、最近はもう飛鳥と一緒にいる事が当たり前になり、寧ろいない生活なんて考えられなかった。

 

 

 

 だが、いつかは別れが来る。飛鳥はあくまで任座の代役であり、飛鳥にもトレーナーの他にやらなければいけない事があると聞いている。そう思うとスぺは切なくなった。

 

 するとスぺは立ち上がって寝ている飛鳥にそっと近づいた。

 

スペシャルウィーク「…トレーナーさん。いつも美味しいご飯をありがとうございます」

飛鳥「……」

 

 スぺが小声でつぶやくも、飛鳥は寝ているため気づいていなかった。

 

スペシャルウィーク「また一緒にご飯を食べましょうね。お疲れ様でした」

 

 そう言ってスぺは飛鳥に一礼して、トレーナー室を後にすると飛鳥はふと目を開ける。

 

飛鳥(…スぺ。お前の気持ちは伝わったよ。オレを受け入れてくれてありが)

 

「うわあああああああああああああっ!!!」

飛鳥「……」

 

 外から聞こえるスぺの悲鳴。飛鳥は何事かと思ったが、すぐに察した。

 

 

 

スペシャルウィーク「み、みんな!! いつからいたの!?」

セイウンスカイ「結構前からー。やっぱり一丈字トレーナーの事が好きなんだー」

スペシャルウィーク「ち、違うもん!! そんなんじゃないもん!!!!」

 

 スカイの冷やかしにスぺは顔を真っ赤にした。

 

エルコンドルパサー「顔真っ赤デース」

グラスワンダー「本当に違うんですか?」

スペシャルウィーク「グ、グラスちゃんまでぇ!!」

 

 と、比較的人格者であるグラスにまで冷やかされる始末。

 

セイウンスカイ「アタシとは最近遊んでくれないのにー」

スペシャルウィーク「そ、そんな事ないよ! 此間も遊んだじゃん!!」

エルコンドルパサー「え? それは初耳デスヨ?」

キングヘイロー「スカイさん? どういう事が説明してくれるかしら?」

ツルマルツヨシ「そうだよ!!」

 

 とまあ、言い争いをしながらトレーナー室を離れていった。

 

 

飛鳥(…オレもそろそろ帰るか。面倒なことにならんうちに)

 

 

つづく

 

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