それはある日の事だった。
「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
今日も元気よくスぺの悲鳴がトレーナー室で響き渡る。が、飛鳥は超能力でかき消したので外に聞こえることはなかった。
飛鳥「どうしたんだスぺ」
スペシャルウィーク「どうしたもこうしたもないですよ! 何食べてるんですか!?」
飛鳥「何ってアレだよ。グラタンに決まってるじゃないか」
スペシャルウィーク「だから何でグラタン食べてるのかって聞いてんだろうがァ!!」
飛鳥が何事もなくグラタンを食べているので、スぺも思わずキャラ崩壊してしまった…。
飛鳥「いやね。ばち麺が安売りしてたから買ったんよ」
スペシャルウィーク「ばち麺?」
聞きなれない言葉を聞いて、スぺは思わず正気に戻って首をかしげる。
飛鳥「手延べ麺っていう、主にそうめんで使われるんだけど、小麦粉に塩と水を加えて練った生地を、時間をかけて熟成させながら手作業で細く引き延ばして作られる麺なんだけど、その端っこの部分なんだ。本来のうどんやそうめんでは使われない部分だけあって、安いんだよ」
スペシャルウィーク「そ、そうなんですか…。で、グラタンと何の関係が?」
飛鳥「え? グラタンにばち麺入れたんだよ。氷見うどんのばち麺だからコシがあって美味いよ」
スペシャルウィーク「そうなんですか…じゃなくて! また一人分作ったんですか!?」
飛鳥「お前には寮の食事があるだろう。フジさんが可哀想だろ」
「呼んだ?」
飛鳥「いや、呼んではいません…」
スペシャルウィークが所属する栗東寮の寮長であるフジキセキが現れた。
フジキセキ「なんだかいい匂いしてたけど、グラタンを作ってたのかい?」
飛鳥「ええ…」
スペシャルウィーク「今度私も食べたいです!」
飛鳥「レースに勝ったらな」
スペシャルウィーク「またレースですか…」
飛鳥「いやあ、話がすぐに終わっちゃうからさ」
まさかのメタ発言にスぺとフジは困惑していた。
フジキセキ「そういえば話は聞いたんだけど、かなりの腕前なんだってね」
飛鳥「普通です。そういう訳なので…」
で、まあそんなこんなで数日後またレースが行われたが、ぶっちぎりの1位だった。
飛鳥「わァ…」
またしても2位と圧倒的に差をつけたので、飛鳥は言葉を失った。
フジキセキ「泣いちゃった」
飛鳥「いや、泣いてはいないんです。シンプルに何があいつが強すぎて言葉にできません」
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スペシャルウィーク「トレーナーさん! 約束ですよ!」
飛鳥「いいけど、テストもそれくらいやってくれ…おい、こっち向け」
フジキセキ「私もお邪魔させて貰っていいかな」
飛鳥「まあ、折角なので…」
ちなみにばら麺はまだまだ残っているので、3人分を作るのは造作もなかった。
飛鳥「違うよ。スぺが滅茶苦茶食べるから3人分じゃ足りないの。まあ、この際だからばち麺を全部使いきるか…」
フジキセキ「何か手伝おうか?」
飛鳥「あ、食べ終わった後の皿洗いお願いできますか?」
フジキセキ「ちゃっかりしてるなぁ…」
飛鳥「ジョークですよ」
フジキセキ「ううん。いいよ」
とまあ、そんなこんなで飛鳥はばち麺のフルコースを作り上げた。その間フジはスぺの勉強を見ていたが、事あるごとにアピールしてはスぺを驚かせて、飛鳥に突っ込まれていた。
飛鳥「出来ましたよー」
スペシャルウィーク「わ~~~~~~い!!!!」
出来上がったフルコース
・ グラタン
・ カニクリームコロッケ
・ ミネストローネ
・ サラダ(マカロニをばちで代用したもの)
フジキセキ「す、すごい…」
飛鳥「そうですかね。じゃ、スぺ。お疲れさん」
スペシャルウィーク「はい! それじゃ頂きます!!」
そう言ってスぺがグラタンをふーふーして食べる。
スペシャルウィーク「おいし~~~~~~~~~~~!!!!!」
スぺが目をシイタケにして悶絶していると、フジは心臓を撃ち抜かれそうになっていた。
飛鳥「…大丈夫ですか?」
フジキセキ「さ、流石スぺちゃん…。私が思わずポニーちゃんになってしまうとは…」
飛鳥(認めるのかよ…)
本当にスぺというウマ娘が不思議でしょうがなくなる飛鳥であったが、その後気を取り直してフジも飛鳥が作ったグラタンを食べる。
フジキセキ「あっ…美味しい…」
フジは思わず諦めたように呟いた。道理でスぺが飛鳥に懐くはずだわと言わんばかりに、グラタンを舌鼓する。
スペシャルウィーク「ばち麺もコシがあって凄く食べ応えがあります!」
飛鳥「…まあ、ばち麺は本体よりもコシがあるって言われてるし、氷見は手延べと手打ちのいいトコ取りだからな」
そう言って飛鳥がミネストローネを飲む。
スペシャルウィーク「ところで氷見ってどこですか?」
飛鳥「富山」
スペシャルウィーク「富山県ですか!?」
フジキセキ「そういえばブリが美味しいんだよね」
飛鳥「寒ブリですね。海鮮丼もいいですけど、やっぱり握りで頂きたいですね」
スペシャルウィーク「握り…」
ブリの握りずしを想像してスぺはよだれを垂らしていた。
飛鳥「やっぱり現地の方が美味しいんだろうな…」
スペシャルウィーク「富山に行く予定ありますか!?」
飛鳥「いや、ない」
スペシャルウィーク「そんな事行って、一人だけ行くって言うのはなしですよ!?」
飛鳥「いやあ、そういう時大体ゴルシがいるんだよな…。青森の時もそうだったろ」
フジキセキ「あ、そういえば聞いたよ。ファインと青森に行ったそうだね」
飛鳥「ええ。ラーメンを頂きました」
飛鳥がそう言うと、フジは笑顔だったが頭に怒りマークがついていた。
フジキセキ「じゃあ富山は私と行こうね」
飛鳥「フジさん」
フジキセキ「何かな?」
飛鳥「その時は日帰りですかね…」
フジキセキ「いざとなればトレセンセンターがあるよ」
飛鳥「…名前は聞いた事ありますけど、生徒だけで泊まれるんですかね」
フジキセキ「まあ、外泊届けを出さないといけないけど、そこは私の裁量で何とかしてあげるよ」
飛鳥(…寧ろ青森の時は良く通ったな)
と、考えていると、
スペシャルウィーク「飛鳥さん! レースも勝ちましたし、また行きましょうね!」
飛鳥「まあ、すぐには無理だけど…いつかな」
フジキセキ「うん。いつかね」
飛鳥(何故強調して言った…?)
まるでこれが伏線だと言わんばかりにフジキセキが強調してきたので、飛鳥は首を傾げた。
で、食事が終わったら本当にフジとスぺが皿洗いをしていた。
フジキセキ(本当はスぺちゃんと2人きりがいいけど、彼のお陰で取り付けられたようなものだから何も言わないでおこう。でも、渡さないからね)
ヒシアマ達に妨害されそうだな…。飛鳥はそう思った。
つづく