スぺちゃんと一丈字トレーナー   作:ダシマ

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第7話「高知:ちくきゅう」

 

 

 ある日の事だった。

 

「えー。トレーナー科の風見天智くんが先日、ひったくり犯を捕まえた! ここに感謝状を…あの、風見くん」

 

 全校集会にて、ウララ達のトレーナーである風見天智は理事長から表彰されることとなったのだが、とてつもなくどんよりしていた。まるで犯罪を犯してパトカーに連行される犯人のように…。

 

天智「…また警察のご厄介になってしまったので」

やよい「いや君、良い事したんだよ!!?」

 

 どうやら色々あったらしい…。

 

*************************************

 

「全く何やってるの貴方は!!」

「……」

 

 朝会終了後。キングにも怒られる天智。そしてカワカミ、ライス、ウララ、琴美も困った顔をしていて、飛鳥とスぺも通りかかった。

 

飛鳥「話は聞いたよ。いきなりひったくり犯がやってきて、無意識に投げ飛ばしたんだろ?」

天智「…彼女が隣にいたのでつい」

 

 天智がどんよりしながらそう言うと、琴美は苦笑いした。

 

ライスシャワー「…お兄様。そんなに落ち込まなくても」

天智「ライスさん。昨年似たような事をして学校を追い出されたんですよ」

 

 天智の言葉にどんどん空気が重くなる一同。

 

キングヘイロー「もう!! いい加減になさい!! そんなに落ち込んでたら琴美さんだって元気がなくなるのよ!!?」

天智「……」

 

 キングの言葉に天智はふと我に返った。

 

天智「それもそうですね。もうここまでにします」

「いや、本当に大丈夫!!?」

 

 なんか急に元気になったので余計に心配する一同。これには飛鳥は困惑していた。

 

ハルウララ「そうだ! こういう時は美味しいものを食べれば元気になるよ!」

天智「…そうですね」

キングヘイロー「トレーナー。今まだお昼時じゃないって思ったでしょ」

天智「キングさん。それは言わない方向で…」

キングヘイロー「あなたに言われたくないわよ!!」

ハルウララ「こういう時はにんじん…」

ライスシャワー「ウララちゃん。にんじんは昨日食べちゃったんじゃ…」

ハルウララ「あ!! そうだった!!」

 

 実は天智のトレーナー室に冷蔵庫があり、そこににんじんを貯蔵していたのだが全てなくなってしまったのだ…。

 

天智「それもそうですが、昨日ちくわが届いていた筈なので、それを食べましょう」

スペシャルウィーク「…ちくわ?」

飛鳥「あ」

 

 ちくわという言葉に飛鳥は何か察した。

 

キングヘイロー「どうしたのよ」

飛鳥「…もしかして、そのちくわって高知から届いたのか?」

天智「はい。それとキュウリもたくさん届いてまして…」

飛鳥「ちくきゅうにするのか?」

「ちくきゅう?」

 

 聞きなれない言葉にスぺやキングが首を傾げた。

 

ハルウララ「高知のめいさんひんなんだよ!」

天智「ちくわが通常のものより大きくて、きゅうりを丸ごと1本入れるそうなんです…」

飛鳥「知ってる。竹が大きいからだろ?」

 

 すると、スぺが食べたそうにしていた。

 

飛鳥「スペ。今回オレ達はほぼ無関係だ。出しゃばり過ぎるな」

天智「いえ、ご迷惑もおかけしたので良かったら…」

 

 そんなこんなで昼休憩。あんまり時間ないけど、天智はいそいそとちくきゅうを作ることにした。だが、めちゃくちゃ慣れた手つきでスピーディである…。

 

キングヘイロー「いや、あなたが作ってどうするのよ!!!!」

天智「あ、そうですね…。でもまあ、体を動かさないとまた悪い事を考えるようになるので、皆さん食べてください」

「お、おう…」

 

 そう言って天智がどんどんちくきゅうを作ると、琴美は何も言わずに配膳していた。

 

琴美「どうぞ」

飛鳥「ありがとう…」

スペシャルウィーク「それにしてもこのちくわ。凄く弾力ありますね」

飛鳥「そういや魚のすり身が多いから弾力があって、裂けにくいんだったな…」

ハルウララ「そうなんだ!」

 

 地元の人間なのに知らなかったハルウララ。まあ、知ってる方が珍しい事もありますよね…。

 

飛鳥「あ、そういや天智と琴美も食べてるか?」

天智「あ、はい。頂いてます。美味しかったです」

琴美「先ほど1本だけ食べてました」

キングへイロー「あなたも1本だけ食べてるわね。琴美さん…」

 

 琴美が1本しか食べていない事に天智は酷く驚いていた。

 

天智「琴美…!」

琴美「あ、ううん。気にしないで。それよりも…天智くん」

天智「あ、はい」

 

 天智が急に畏まると、キングとカワカミは眉間にしわを寄せた。

 

琴美「あのね。確かに色々危なかったけど、もしあの時天智くんが動かなかったら、盗まれたものは帰ってこなかったし、他の人も被害を受けてたかもしれないから、気にする事ないと思うよ」

天智「琴美…」

 

 すると琴美は天智を見つめた。

 

琴美「今度こそ私もずっと一緒にいるから。ね?」

 

 琴美がそう言うと天智は俯いて、お礼を言った。

 

飛鳥「まあ、迷惑はかけても心配はさせるなよ」

天智「一丈字さん…」

飛鳥「さて、手が止まってるぜ。食べる時間なくなるぞ」

天智「そ、そうでした…」

キングヘイロー「…あの、それはそうとスぺさん」

スペシャルウィーク「なに? キングちゃん」

 

 スぺが結構ちくきゅうを食べていたのだ…。

 

スペシャルウィーク「いやあ、ちくわも美味しいですけど、きゅうりもみずみずしくて…あはははは」

飛鳥「安心しろ。今度スぺだけパーティに呼ばれることになってるから、そこで何か作るわ」

スペシャルウィーク「いや、ちょっとやめてくださいよお!!!!!」

 

 飛鳥の言葉にスぺが慌てながら抵抗するも、天智達は何か引っかかっていた。

 

琴美「え…?」

キングヘイロー「どういう事?」

飛鳥「いや、今度功労者を集めてパーティーをする事になって、スぺが呼ばれる事になったんだよ。で、オレが留守番」

天智「え? 普通はトレーナーも呼ばれるはずじゃ…」

飛鳥「ああ。オレが呼ばれてない理由なら分かるよ。シンプルにオレが嫌われてるだけだ…」

 

 飛鳥がどんよりしていた。

 

飛鳥「…まあ、早い話任座トレーナーから引き継いだとはいえ、レースで連勝させまくってるオレの存在が面白くないんだろうな」

 

 飛鳥の言葉に空気が重くなった。

 

飛鳥「まあ、そういう訳だスぺ。オレの分までパーティー楽しんで来い」

キングヘイロー「楽しめるかぁ!!!」

スペシャルウィーク「私断ってきます!!!!」

 

 飛鳥もまあまあ闇を抱えていた…。

 

飛鳥「ああ…ひろめ市場で酔いつぶれたい気分だ…1リットルのジョッキで…」

キングヘイロー「戻って来なさい!!!」

 

 お酒は20歳を過ぎてから!!

 

 

つづく

 

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