趣味は魔物ハンティングな転生者。   作:テムテムLvMAX

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一話 全て一から始めよ

「お前さん死んだよ、気づいてる?」

 

「え?」

 

 

 突然の死の宣告に戸惑いが隠せなかった……。

 

 

「いや待てここは?」

 

「ここはあの世じゃが? わからずに来たのか?」

 

 

 やけにフランクな白いヒゲのお爺さまの言う言葉を信じるなら『あの世』だとか、あの世は殺風景な雲の上でひたすら果てなく雲の地平が続いている、この現実味のない景色は自分が死んだことを自覚させるような効果でもあるのか死の前後の映像が脳裏に蘇ってきた。

 

 

 俺はとある街の出身で、それなりに豊かな生活をしてきた男だ、大学まで行ってダラダラと過ごしていた。

 

 その日は大事な用があって大学に遅くまで滞在していた、何の用があったかは思い出せなかったが大したことはないんだろう。

 

 夜遅くなってしまったので急いで帰ろうと大学の近くに借りていたアパートへ急いだ、その時だった。

 

 アパートのある住宅地の少し外れには信号のない交差点がある、そこに差し掛かった瞬間視界が何か強い光でホワイトアウトして、身体に衝撃が走った。とても強い衝撃で身体が宙に浮いていたように思う。

 

 そこからの記憶はない……恐らくその時点で死んでいたのだろう。死因はどうも事故死のようだ、死んだあとだと実感が湧かないけれども、ここにいる理由が思い出されただけでも一応の納得感は得られた。

 

 

 フランクな白ひげのお爺さまがつるりとした頭を左手でさすりながら

 

 

「すまんの〜、そろそろ時間じゃ」

 

 

 死んだ後にも時間の概念があるのかと少し感心する、だがそれはともかく死後の世界で時間に急かされる要件とはなんだろうと気になった。

 

 

「一体なんの時間ですか?」

 

「うむ、そう来ると思っとった、説明する時間くらいはあるじゃろ、よう聞けよ」

 

 

 そう言って白ひげのお爺さまは語りだす、この場所の意味とお爺さまの役割を。

 

 

「この場所はお前が思っとる通りの死後の世界であっとる……いわば人生の終着駅じゃ、しかしな、同時に新たな命への始発駅でもあるんじゃよ、魂を一処に留めず世界を巡せる事で世界はバランスを保っておるんじゃ、輪廻転生、そうやってこの世界は成り立っておる」

 

「それだと俺も、何かに転生するということですか? 一体何に? 虫? 微生物?」

 

 

 白ヒゲのお爺さまは首を横に振り俺の言葉を否定する、白ひげのお爺さまは俺の方に手を置き二度軽く撫でた。

 

 

「人間の魂は人間の器が必要じゃ、魂には形があってな、形に合致する器が必要じゃ、ワシら神とてその形を変えることはできぬ、死んだ後のこの世界で人の形をしているのが何よりの証拠じゃろ」

 

「あ、神様だったんですね……」

 

「……お主、ワシのことなんじゃとおもっとった?」

 

 

 それは……白ひげのフランクなお爺さま……言わないでおこう、そういう事を気にする人でもなさそうだが、言わないことに意味があるから……。

 

 

「まぁよいわ、そろそろ転生させる時間じゃ」

 

「転生するんですか……本当に」

 

 

 正直怖いと言うよりもどうなってしまうのかと楽しみでいる、俺の想像を超えた体験、つまり人として母親から生まれてくる以前の魂からの……どうなってしまうんだ、俺は。一応大学では生物中心に学んでたからそういうことは気になる。

 

 

「すまんがお主の思っとるよりあっけないんじゃ」

 

「あれ……心が読めるんですか?」

 

「神じゃ、ワシ……ええとな、目を閉じて一呼吸おいたらもう次の身体になっておるぞ、何を期待してなのか知らんがこっちも業務の効率化があるからの」

 

「えぇ……つまんない……」

 

「何を言うか! ワシはワンオペしとるんじゃぞ! 効率化して当たり前じゃろ! 派手な演出が好みなら追加料金取るからの! そんなものないが!」

 

 

 神様も意外に俗っぽいというか現世並みの苦労をしていると言うか、神だから楽してるとかそういうのは無さそうで、何となく可哀想に思えてきた。しかし何処かの誰かが言うには人は神に似せて作られたらしいから、仕事に追われる所も似せて作られた可能性が出てきた。嫌な可能性だよ。

 

 

「これ、失礼なこと考えておらんか」

 

「いえ全く」

 

「その割には口角上がっとるぞ、隠すつもりないじゃろ」

 

「いえいえそんな……」

 

「……まぁええわい、それじゃ目を閉じ3回数えるんじゃ、最近寝てなくてのお〜〜手元が狂ったら許しておくれ」

 

 

 聞きたくなかったな、そう言うの。

 

 

「ほれ、さっさとせんか」

 

「わかりました……しっかりお願いしますよ」

 

「寝不足でも雲の上から虫一匹見分けられるんじゃ、どうってことないわい」

 

 

 ……寒気がしてきた、しかし、神様の視線が痛い。悪寒を無視して目を閉じ3回数える。

 

 

「いち……」

 

「ようし」

 

「に〜……」

 

「ほら行くぞ〜」

 

「さん!」

 

「ほいっ! あっ」

 

 

 あっ、ってなに? あっ、て何さ、まさか失敗したのか? 

 

 ダメだ、いきなりまぶたが重たくなって目が開けられない、それにまぶたを貫通するくらいにまぶしい光が届いている、手で影を作ってやっと目を開けて、それでも眩惑されているが……視界が落ち着く、神様に一言に言ってやろうと立っていたはずの場所に視線を向けた。

 

 

「何かしら?」

 

「……ほぁ?」

 

 

 見知らぬ婦人が服を縫いながら見つめた俺の事を真っ直ぐに見返していた。

 それに婦人がいることだけではない、周りの景色も全く違うものになっていた。

 俺が先ほどまでいた雲海のような景色から一変、埃っぽい木造の小屋らしき場所にいる、それも小さめの子供用のベッドの上だ。

 

 

「アキト……目が覚めたのね、ひどい熱でうなされていたのよ……よほどの悪夢を見たのかしら……もう少し横になりなさい、お水を持ってきますからね」

 

「あ、うん……」

 

 

 あの婦人にそっとベッドへ寝かされ俺は無意識に言葉に従っていた。

 ベッドで横になりながら神様のことなどすっかり忘れてある一つの点でとても悩んでいる。

 

 

「俺、子供からやり直すの……?」

 

 

 記憶があって幸いか、それとも災いか……大学生だった俺は再び子供に戻って一から生活をしなければならなくなった。

 控えめに言ってもう既に不安がいっぱい、若返って転生するというのはつまり自分の積み上げたものを全部捨ててやり直すことと同じだ、知識があるからどうにかなると言う希望も今は幻と消えている。

 

アキトという名前は死ぬ前と同じ俺の名前だ、でも……しかし決定的に違うんだ。

 

 

 

 ここ、どう見繕っても異世界だ。

 

 

 

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