エクシリア 転生者のいる世界   作:暁の魔

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約一年ぶりの投稿になりますね。しかもその割には文字数が少ないという……
待っていてくださった方々……申し訳ありませんでした!

次はいつになるんだろう……?


第九話 サマンガン街道にて

 

 

 

ハ・ミルの村から街道を通って、俺達はイラート海停へ戻りついた。道中に出てきた、多数の魔物は見つける度に俺が倒した。岩陰や木陰から出てくれば、その回数だけ刃を振るった。

 

「ふ~。ストレス発散終了できて満足っと」

 

運も良く、行く予定だったサマンガン海停行きの船があったので、すぐさま乗り込む。

他の海停行きは封鎖令があったらしく、どちらにせよ海路ではイル・ファンに行けなかったようだ。

 

休むくらいなら、船に乗ってからでも問題ない。疲れている顔も見えるが、まあ大丈夫だろ。その内の一人は海を見て感動してるようだし。

その『感動してる』のは言うまでもなく、エリーゼだ。海を見たのが初めてらしく、目を爛々と輝かせている。

 

「なあジュード。あの娘、監禁でもされてたのか?」

 

「その逆で、匿われてたって可能性もあるな」

 

「うん、僕もゼニスと同じことを思ってた」

 

アルヴィンの言葉に俺が付け加え、ジュードが答える。

俺達がそんな話していると、エリーゼの悲鳴が突如聞こえた。何かあったのかと思って振り返ると、大したこともなく、元気にティポとお喋りをしていた。海を見て興奮しているのだろう。

 

「でも、悪い子じゃないよ」

 

「そうみたいだな」

 

「あれが良い子を演じてるのだとしたら、大した演技力だ。世界中のスパイは涙目だな」

 

ジュードの言葉に、アルヴィンと俺が肯定する。

 

「で、ジュード。引き取り手に目星はあるのか?」

 

「ううん、まだ。良い人が見つかればいいんだけど……」

 

「そうか……なら、一つ考えがある。サマンガン海停に着いたら、その先にあるサマンガン街道を渡ろう。少し遠くてエリーゼにはキツイかもしれないが、サマンガン街道を抜ければカラハ・シャールって町がある。そこで探してみたらどうだ?」

 

悩むジュードに、一つの提案を出す。

とはいえ最寄りの町はカラハ・シャールしかないんだけどな。

 

「分かった。じゃあ、そうしてみる。ありがとう」

 

俺の提案を聞いて、礼を言ってくるジュード。どういたしまして、と返してこの話は終わった。

 

それからはミラがエリーゼに、『何故このぬいぐるみは動いている?』と至極もっともな事を聞いていたが、結局答えが出ることは無かった。

分かったのは、ぬいぐるみ……つまりティポはエリーゼの友達だという、既に知っている事だけだった。

 

 

 

そしてやっとの事で到着した、サマンガン海停。

カラハ・シャールに行くためにはサマンガン街道を通る必要がある。だが、今の俺達にとって第一に必要なのは、休息だ。船の中で休めたとはいえ、アレはアレで体力を消耗する。日も暮れそうだし、港に着いたら宿屋に行こうと前もって決めていた。

 

「……っ! ……っ!」

 

「ゼニス、何してるの?」

 

そう、決めていた。過去形なのだ。

 

「いや、あのな? 宿に泊まるのっ、今日は……くくっ、止めとこう……くっく」

 

「ゼニス?」

 

「おいおい、どうしたんだよ?」

 

言葉が途切れ途切れになり、時折笑い声が漏れる俺を心配したのか、男2人が寄ってくる。

俺は目の前のソレ(・・)を素早く取って、見つからないように懐にしまう。

 

「ふぅ、悪い。やっと落ち着けた。理由は後で説明するから、今日は街道で野宿だ」

 

「え? でも……」

 

「エリーゼ、喜べ。今日はキャンプだ」

 

「キャンプ、ですか?」

 

「やったー! キャンプなんて初めてー!」

 

ジュードはエリーゼの事が心配で口を出そうとしたのだろう。だがそれは、俺が先にエリーゼに言った事で、口をはさめなくなった。

 

「……何か、考えがあってのことか?」

 

「ああ、ここは人が多い。街道で全部話す」

 

真面目な顔で言えば、ミラは頷いた。アルヴィンも分かっていないようだが、それでも俺の意見を聞くことを優先したのか奥へ向かい、エリーゼも続く。ジュードは納得してないようだったが、俺の後ろをついてきた。

 

 

 

「さて、では何故泊まるのは止めようと言ったのだ?」

 

海停から出てしばらく、人がいない場所まで歩いてから、ミラが聞いてきた。

エリーゼはアルヴィンと一緒に、キャンプの準備をしている。派手な事はできないが、それっぽくできるようにアルヴィンに頼んだのだ。

ジュードはミラと一緒に聞いている。

 

「簡単なことだ。ミラ嬢にジュード、お前ら指名手配されてる。手配書も港にあった。このまま泊まれば、通報されて捕まったかもしれない。だからだ」

 

「指名手配、だと?」

 

俺は頷いて、手配書を出して説明しようとする。

 

「…………」

 

が、

 

「……っ! くくく……」

 

「……ん? ゼニス、どうした?」

 

手配書の絵を見て、港で我慢していたものが噴き出した。

 

「……くっくっ…アッハッハッハッハッ!!!!」

 

手配書を思わず地面に叩き付けて、大声で笑ってしまう。

俺が叩き付けた手配書は裏返しになっており、肝心なところが見えなくなっているため、ジュードはそれを2枚とも拾い上げる。

 

「……え?」

 

そして、微妙な顔になった。

ミラも後ろから覗き込み、

 

「これは……私、か……?」

 

開いた口が塞がらなくなった。

ちなみに俺はというと、腹を抱えて地面に転がり、ゲラゲラと爆笑している。

 

手配書には、確かに指名手配犯の絵が描かれている。ただし、その絵は非常に下手だ。

ミラはその特徴的な髪の毛のおかげ(?)で、まあ分かる。という具合。

これがミラだと言われれば、納得できなくても理解はできるだろう。幼稚園児並みに下手だが。

 

だが問題はジュードだ。これでは黒髪の男ということしか分からない。そもそもこれは人間なのか、というレベルだ。というか何で二人とも横顔で描かれてるんだ?

 

見つからないに越したことはないので、手配される側としては気にならないだろう。

それでも念の為に、宿に泊まらない方が良いと言ったのだ。

 

しかしこれは、人によっては精神的に来るかもしれない。『俺はあんな感じなのか……』という風に。実際に、ジュードは気にしてないようだがミラは慌てている。『私はこの絵のように魅力がないのか』と。それを直接聞かれているジュードは顔が真っ赤。それを見て更に笑う俺。

 

「とりあえず、おたくはそろそろ笑うの止めたら?」

 

「はぁ、はぁ……無理。もうちょい待って……ぷっはは……」

 

「気持ちは分かるが、いつまで笑ってるんだっつーの。エリーゼ姫は……」

 

「楽しみ……です……」

 

「おっ友っ達~♪ おっ友っ達~♪」

 

「……はぁ」

 

息切れするほどに笑った俺、呆れるアルヴィン、真っ赤になっているジュード、初心な少年に詰め寄って己の魅力について真剣に聞くミラ、初めての友達との初めてのお泊りがキャンプということでテンションの高いエリーゼとティポ。

 

現状を一言で表すなら、カオスだった。

 

 

 

……とまあそんなことがあった訳だが、今はその翌日。

キャンプでの材料はそこらの木と、俺が買っていた旅の一式。食材も海停に売っていたし、木の実とかもあったので困らなかった。特に変なことも起こらなかったので、野宿としては良かったはずだ。

 

寝るときは男女別のテントを張って、周辺にホーリーボトルを撒いた。万が一人や獣が近づいてきても、俺やアルヴィンが気配で察することができるから問題なかったからだ。

まあ実際は何も近づいてこなかったから、一応は眠れた方だと思う。

 

んで、朝になったので再びカラハ・シャールへ向かう。

昨日の内に応急処置の道具などは買っておいたので、そのまま街道を渡る。このまま行けば、あと数十分という所で町に着く……はずだった。

 

「あーらら、検問だ」

 

俺らが進む道の先に、ラ・シュガル軍による検問が行われていた。

いくらあんな絵だとはいえ、ミラの絵は特徴を掴んでいたので、捕まる可能性もゼロじゃない。そう、限りなくゼロに近いけど、ゼロではない。

 

「こうなると、こっちを進むしかない……か」

 

「こっち、とは?」

 

「サマンガン樹海。エリーゼには厳しいかもしれないが、あそこをうまく抜けることが出来れば、カラハ・シャールに行けるはずだ」

 

俺の呟きに反応したミラに、そう答える。

樹海なんて、一般人であっても非常に危険な場所だ。子供にとっては厳しいどころではなく、危険という言葉が適任だろうが、しっかりと見ていれば問題ないだろう。

 

「ならば、迷う必要はないな」

 

検問がある方向とは逆の道に、ミラは言葉通りに迷いなく進んだ。

だが、そこに待ったを掛けるやつがいた。ジュードだ。

 

「エリーゼには厳しいんでしょ? なら、手配されてないゼニスかアルヴィンが一緒に検問を通った方が安全だし、問題ないんじゃない?」

 

なるほど、エリーゼは俺かアルヴィンが連れて行く、と。そうすりゃ確かに安全だな。

だが残念。それは無理だ。

 

「ジュード、君に二つ質問だ。俺とアルヴィンの雇い主、及び依頼内容は?」

 

「え? 雇い主はミラで、内容はミラの護衛……かな?」

 

「うん、まあそうだな。つまりだ、ジュード。俺達が護る対象はミラ嬢であって、エリーゼじゃあないんだよ」

 

「な!? で、でもそれじゃ!」

 

「何か言われる前に言わせてもらうが、これで俺がエリーゼの事を任されたとする。更にその間に、ミラ嬢が魔物に倒された。こうなったら俺はどうすりゃいい?」

 

敢えて『魔物』の部分は強調する。

……だって人とは戦わなくてもいいって言われてるもんね。

 

「それは……」

 

「こっちは結構適当にやってるように見えるだろうが、最低限はこなしている。受けた仕事には、責任を持たなければならない。それが大人だ」

 

「……」

 

画面の前のみんな。『最低限』って所には突っ込むなよ、頼むから。それともう一つ。

「ア・ジュールの仕事を放っているお前が『仕事の責任』とかワロス」、とかも止めてくれ。

 

「あの……わたしなら大丈夫……です、だから……」

 

「ケンカしないでー! 2人は友達でしょー!?」

 

言い方は違えど、エリーゼとティポが喧嘩は止めて欲しいと言ってきた。

あれ、本来ならこれってミラが言われてたような……気にしたら負けだな。

 

「……エリーゼもそう言ってるし、ミラ嬢は行きそうだしな。俺らも行くぞ」

 

「……うん」

 

納得できてないのか、俯いたままのジュード。

それを見て、俺は溜息を吐いた。

 

 

 

 





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