エクシリア 転生者のいる世界   作:暁の魔

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エクシリアよ、私は(半年振りに)帰ってきたァッ!!



……。




次はいつになるかな?



第十話 危機なる樹海

 

 

 

ティポ曰く『ジュードとの喧嘩』から、数分が経った今。俺達は樹海の中を、警戒しながら進んでいた。この樹海に入った直後、狼の魔物から歓迎を受けたからだ。

 

襲われたわけではないが、狼の群れの全員がこちらをじっと凝視してくるのは、気分の良いものではない。見極めのつもりか、それとも来るなという警告か、ただの観察か。最後のは違うとして、そのあたりが妥当だろう。

 

ふと、上空から魔物の気配を感じた。しかもそこは……

 

「――っ!」

 

ジュードの、真上!

 

「ジュードォッ!!」

 

「な……がっ、は……」

 

おそらくは「なに?」と言おうとしたのだろうが、それよりも先に俺の武器、つまり鎌の刃ではない部分で、腹を殴打した。攻撃目的ではなく、回避させるために。

 

「何をしている! ゼニ……ス……」

 

一瞬だけミラが非難の声を荒げたが、その直後に降ってきた物体を見て、口を閉ざした。

落ちてきたのは、人間よりも大きな――キジル海漠で戦ったグレーターデモッシュよりは流石に小さい――木の、トレント系の魔物だ。俺が殴打したせいでジュードが痛そうにしているが、あのままでは、その程度では済まなかったはずだ。

 

決して広くはないこんな場所で戦うのはよろしくない。

横に大きい木から枝のように腕と手が生えている、そんな一目見ただけで攻撃範囲の広いことが分かるこいつと、大鎌であるが故に同じく攻撃範囲が広い俺。

 

相手は腕と手だから関節があるので、狭い場所でも充分に攻撃を仕掛けることが可能だ。だが、俺は大振りすることができない。ここは樹海。周囲に生えている無数の木が邪魔で、振るえないのだ。

よって必然的に、有利なのはこの魔物……シルヴァトレントになる。いやまあ、本気になれば素手でも倒せるだろうが。

 

先程俺のせいでジュードは軽い怪我をしてしまったようだが、治癒功で応急処置は済んでいたようである。しかし。

 

「エリーゼ、来ちゃダメだ! ……うッ!」

 

エリーゼを庇い、枝のような腕の一撃をまともに受けてしまった。

 

「ジュード!」

 

「お、おいミラ嬢!」

 

武器が大き過ぎる俺とは違って動きやすいミラが、ジュードを見るために後退してしまった。アルヴィンは俺と同じ理由で大剣が使えないので、銃弾を撃って応戦しているものの、大したダメージは与えられていない。

 

「うっう……」

 

泣きながらなのか、気弱な声を出しながらエリーゼが近づき……地面にサークルを描いた。

それは、範囲回復型の精霊術、ピクシーサークル。サークル系の回復型精霊術の中では一番下ではあるものの、12歳という年齢でこの精霊術を使えるというのは、驚愕ものだ。

 

エリーゼのお蔭でジュードが回復したので、ミラと共に前に出てくる。そこで俺は指示を出した。

 

「お前ら、アルヴィンもだが、もう一度下がれ。一気に片づける」

 

「なに? 大丈夫なのか?」

 

ミラの質問に、俺は頷くことで答えた。

みんなが疑問を覚えながらも下がったのを見計らい、俺も後退し、武器を振るうことが出来る場所まで下がった。

 

「魔神剣……」

 

そして、放つのは俺のオリジナル技。

 

「鋭牙!」

 

魔神剣・鋭牙。

もちろんただの魔神剣じゃない。通常の魔神剣よりも大きく、威力も格段に違う。

三日月を縦にしたような斬撃が一直線に進み、シルヴァトレントに命中して――両断した。

 

「ほい、いっちょあがり」

 

振り向くと、三者三様に驚いていた。大型の武器を使い、魔神剣を使えるアルヴィンの驚きようが特に大きい様子。

 

「俺の魔神剣とは別格の強さだな……おたく、何で国に仕えないわけ? こんだけ強けりゃ、出世なんて簡単だろうに」

 

「ぶっちゃけ、偉そうな無能に命令されたくないんだよ。世襲とかでそんな貴族も多いだろ? 命令するのは好きだけど。まあ、だから兵士とか騎士ってのは、俺の就職候補にすら絶対にならないね。傭兵を止めたのも、実はそれ関係だったりする。ア・ジュールだと身分関係なく上に昇れるって噂だが……どうだかねぇ」

 

「あー、そういうことか……なるほど、納得だ」

 

特に後半が嘘だらけの俺の言葉に思い当たる節があるのか、うんうんと頷くアルヴィン。

その横でジュードがエリーゼに、回復したことに関してのお礼を言っていた。

だがよく見ると、エリーゼは俯いて泣いていた。ジュードが、もう魔物はいないから大丈夫だよ、と安心させていたが、この娘が泣いていたのはその事ではなかった。

 

「ううん、ちがうの……」

 

「ジュード君とゼニス君、もっと仲良くしてよー」

 

「その、邪魔にならないように、頑張るから……だから……」

 

なんかこの謎生物……生物? に、初めて名前を呼ばれた気がする。

……って、俺?

 

「俺とジュードの仲、悪くなってるように見えたか?」

 

「だって、だって……」

 

「エリーのこと話してから、全然喋ってないじゃーん」

 

んー、そう言えば俺達、樹海に入ってから一言も互いに言葉を交わしてなかったな。

どうやらそれを、エリーゼを連れて行くことを俺が怒って会話していないのだと、勘違いしてしまったようだ。

 

原作のミラみたいに、邪魔だなんて一回も言ってないし、思ってもないんだけどな……。

 

「ゼニス……」

 

声のした方を向けば、そこには護衛の依頼主。

 

「今見た通り、エリーゼがいれば回復も楽になるだろう。それに私は、エリーゼがいても気にしない。それに免じて、許してやったらどうだ?」

 

「そうそう。このままじゃ、ちょいと大人げないんじゃないのかなぁ」

 

…………え、何ですかこのアウェー感。俺ってば何か悪い事したか? もしくは言ったか?

それにこれは本来ならミラの役目じゃなかったか? 釈然としないな……。

 

「あー、すまん、ジュードにエリーゼ。俺が悪かった」

 

でもここは頭を下げる。こうしないと、いつまで経っても進まない気がしたから。

そして笑顔になったジュードとエリーゼ。それを見たティポが、

 

「そーそー。友達はニコニコ楽しくしなきゃねー!」

 

と締めくくった。

 

 

 

さて、その話は置いといて、さっさと次に行こう。実は俺はこの樹海に入ってから、ある1つの事をずっと実践していた。

それは……高台から降りる場所は、必ず皆が降り終わってから俺が降りる。というものだ。

 

何故なのか。

覚えている原作の中で、これは嫌だなと思った内の1つが、ここにあるからだ

 

――パスン――

 

俺の目の前で先に降りたジュード達が着地した瞬間、そんな変な音が下から聞こえた。俺はこれの被害に遭いたくないから、後ろで待機していたのだ。

 

「どこ………こほっ、こほっ、どこですか?」

 

「勘弁してくれ………この煙はなんだ?」

 

下を見れば地面から煙のようなものが巻き上がり、ジュード達はケホケホと咳をしながら、その中から出てきた。

 

「彼らは犠牲になったのだ……ってか?」

 

ジュード達は着地した時に、少なからずショックを与えると催涙性の胞子を撒き散らす、ケムリダケというキノコを踏んでしまったのだ。

毒ではないが、タマネギを切ると涙が出てくるから切りたくない、と思ったことはないか? 俺はある。それと同じような感じだから、踏みたくなかった。

 

これを避けられたことは純粋に嬉しい。ただ……

 

「こうなると……僕がサイキョーだねー!」

 

宙に浮いているために胞子の影響を受けない。と調子に乗っている(……のか?)ティポと、

 

「まったく……ゼニス、人間以外なら私を守るのではなかったのか? 守れてないぞ」

 

「……ミラ嬢、それはさすがに無理ってもんだ」

 

自称精霊王の無茶振りには、少し内で心イラっとした。

でも人間相手には戦わないってのを覚えてくれてて、ちょいと感心したよ。

 

それからはキノコを踏まないように、気を付けながら進んでいた。

今までよりも時間を掛けながら、しかし慎重に進んでいけば、樹界の出口が見えてきた。しかしそこには番犬の如く、樹界の入口で見かけた複数の狼の魔物……シルヴァウルフが、道を塞いでいた。更に、その後ろからは巨漢が歩いてきた。

 

「あんたは……」

 

「おっきいおじさん……!」

 

エリーゼを保護していた、そしてガイアスの誇る四象刃(フォーブ)の1人。ジャオだ。

 

「おうおう、よう知らせてくれたわ」

 

「……相変わらず、魔物との交流が深い奴だ」

 

「やはり、あれはそうなのか……まさか、イバルの他に魔物と対話できるものが居ようとはな」

 

シルヴァウルフの頭を撫でながら礼を言っているジャオに懐かしんでいると、ミラもまた驚いている様子だ。というかア・ジュールに行けば結構いるぞ、魔物使いは。

 

「ハ・ミルの人たちに聞きました。ジャオさん、ですよね?」

 

「あれ、あいつの名前知ってたのか?」

 

「ああ、どっかの誰かさんは教えてくれなさそうだったしな。そんで、だ。どんな御用で?」

 

いやいや、物事を勝手に決めつけるのは良くないよ? 聞けば教えたよ、それくらいは。

 

「知れたこと。さあ娘っ子、村へと帰ろう。少し目を離している間に、まさか村を出ているとはのう。心配したぞ」

 

心底心配していたらしく、親が子を叱るような、しかし優しげな表情と声で、ジャオはエリーゼに手を差し出す。

 

だがそれに対するエリーゼの反応は、拒絶だった。ジャオは複雑そうに表情を歪める。

 

「なあジャオ、何故この娘をあんな場所に軟禁していた? ……いやそれ以前に、お前とエリーゼの関係は?」

 

原作のこんな詳しい設定までは覚えてないので、俺はそう聞いてみた。

 

「一つ目についてはゼニス、すまぬが今は答えられぬ。二つ目じゃが敢えて言うならば、儂は娘っ子が以前いた場所を……生まれ育った故郷を知っておる」

 

「ならエリーゼを返せば、彼女を故郷に連れて行ってくれるんですか?」

 

俺とジャオの会話にジュードが割り込む。それに対してジャオは、俯いて無言を貫いた。

 

「また、ハ・ミルに閉じ込めるつもり?」

 

「お前達には関係ないわい! さあ、その子を渡してもらおう!」

 

ジュードの責めるような言葉に、ジャオの口調が荒くなる。ジュードはそんなジャオに恐れることはなく、守るようにエリーゼの前へ手を翳した。

 

そんな空気の中、俺に小声で話し掛けてくる者がいた。ミラだ。

 

「……ゼニス。私は君に、『人とは戦わなくていい』と前に言ったな?」

 

「ああ、さっきも言ったが、ちゃんと覚えてたんだな。何だ、撤回してくれってか?」

 

「いや、撤回する気などない。ただ、このままではジャオと戦闘になるだろう。その際、樹海の魔物が私達を攻撃しないようにしてもらいたい。この狭い樹海で、あのような大男と戦っている最中に小回りの利くような輩の相手を同時にするほど、今の私は強くない」

 

そう、これはゲームじゃない。戦闘中に血の匂いを嗅ぎつけた肉食の魔物が襲いかかって来るなんてのは日常茶飯事だ。しかもこれは俺が悪いのかもしれないが、移動中に出てきた魔物の殆どが、俺によって駆逐されている。傭兵のアルヴィンはともかく、ジュードとミラは圧倒的に経験が足りてない。

 

そんな彼女らがジャオ1人と戦うだけですらヤバいのに、それに加えて複数の魔物を相手取るというのは……無謀どころか、無理だ。

 

「へぇ。自分の今の限界を判断でき、しかもそれを理由に自分の言葉を覆すこともない、か。客としては最高だね」

 

傭兵業やってるとたまにいるんだよね、己の力を過信して特攻して、ピンチになるとすぐに『早く助けろ』とかいう奴。それだけなら全然文句ないんだけど、そう言う奴に限って契約時に『全部俺だけで出来るから手を出すな』とか言ってるんだよなぁ。傭兵の仕事を減らして出来るだけ払った給料を戻させるために。

……主に貴族の坊ちゃんとかが。

 

その点、ミラのような客は嬉しい。俺の中でミラへの好感度がアップしました。やったね♪

 

「なにやら悪寒までしてきたな……それではゼニス、頼んだぞ」

 

「……やる気なくなった」

 

 

 

 

 

俺の『やる気なくなった』発言は誰かに突っ込まれることもなく、というか誰も聞いてないのかもしれないが、とにかくそれから数分が経った。依然として、彼らは戦い続けている。

 

ジャオは大振りにハンマーを振るうので攻撃力は四象刃の中で最高なのだが、いかせんウィンガルが得意とするような速さが無い。だから何人かで速さを使って翻弄すれば、普通ならば勝てるだろう。そう、普通なら。だが相手はジャオ。普通ではない。

 

それくらいで敗れるのならば、四象刃は名乗れない。その欠点を補えるからこそ、ジャオは四象刃であるのだ。

 

「ぬぅ、小癪な! 魔王地顎陣!」

 

あの巨体から発せられるパワーの全てを、地面に叩きつける。

これ以上ないほどに単純な行動だが、それによってジャオの周囲の大地が噴出した。

 

「ぐう……っ!」

 

「があっ!」

 

今まさしく、共鳴(リンク)して翻弄していたミラとアルヴィンが吹き飛ばされる。二人とも運が良かったのか、吹き飛ばされた先に木々は無く、衝突して背中に傷を増やすという事も無かった。

 

スピ―ド勝負ならジュードが最適だと思っていたので、翻弄する役目はジュードがするのかと思っていたのだが、予想が外れたようだ。血を流す獲物を狙う魔物の首を斬り落とし、これで何匹目かと呆れながらも、思わずジュードがどこにいるのかと探した。

 

そして、見つけた。いつの間にかジャオの真後ろに移動していたのだ。

とても不思議な構えをしているが、アレを俺は見たことがある。手と手の間に風属性のマナを込め、敵とすれ違う際にマナを解放することで敵を巻き上げる武身技。

 

「巻空旋!」

 

「ぐっ!」

 

ジュードの手から放たれたソレは、まるで小さな竜巻となり、俺が知る限り最大の巨躯を誇る身体が、宙に浮かんだ。

 

「ミラ!」

 

「ああ!」

 

そしてその間に行動していたエリーゼのお蔭で、動けるようになったらしいミラは素早く移動してジュードと共鳴(リンク)し、共鳴術技(リンクアーツ)を放つ。

 

「「絶風刃!」」

 

彼らが最初に覚えた、絶風刃。交差された風の刃は、地面に落ち、立ち上がったばかりのジャオに避けられるわけは無く、命中した。

 

想像以上の結果に、思わず軽く笑ってしまう。今のあいつ等では厳しいと思っていたのだが、彼らの状態はまだ互いに息が荒いくらいだ。怪我も、軽いものくらいしかない。

 

……だがここで、ふと敵意を含んだ視線を感じた。俺の背後から、俺を見ている。後ろを見ても、そこにあるのは巨木のみ。先ほど戦った、シルヴァトレントよりも大きいな木。

 

嫌な予感がした俺は、迷わず視線を上げる。そうしたら……。

 

 

 

その巨木と、目が合った。

 

「は? ……がっ!」

 

木だと思っていた物体と目が合い、一瞬呆けてしまった俺の腹に、見事な一撃が繰り出された。

 

そのまま弾かれたように、俺は飛んだ。あの巨木にぶん殴られた直後にそう錯覚してしまうほど、凄まじい威力の一撃だった。

 

俺は丁度ジャオとミラ達の中間に吹き飛ばされ、さっきとは逆に運が悪かったのか、背中と後頭部を壁に強打した。叩き付けられて響く音が、その威力を周囲に伝わせる。

 

「ゼニス!」

 

「ひっ……! あ、うぅ……」

 

俺の惨状を見て駆け寄ってくるジュードと、偶然近くにいた為に悲鳴を上げながらも精霊術を行使してくれるエリーゼ。

 

「痛ったいなぁ……あ、サンキュ、二人とも」

 

「動いちゃだめだよ! 頭から出血してるんだから!」

 

ジュードの医者らしい言葉に苦笑しながらも、俺は俺を襲った物体を再び視野に入れた。

 

そこにいたのは、さっきは暗くてよく見えなかったので分からなかったのだが、ここ周辺にある木やシルヴァトレントと比べると、配色が異なる巨木だった。トレント系魔物の、異常進化形態なのかもしれない。

 

バッチリとよく見た今では、その魔物が何なのかが理解できた。アレは、以前キジル海瀑で戦ったグレーターデモッシュと同じ、ギガントモンスターだ。

 

その名は、パーガフォート。

普段は高台にいて降りてくることは稀なのだが、サマンガン樹界に生息している生物の中で、最も出会ってはいけない最悪の魔物だ。

 

 

 





>パーガフォート
やっと原作から少し離れた展開に出来ました。
エクシリア2のギガントモンスターです。
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