エクシリア 転生者のいる世界   作:暁の魔

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第二話 二つの出会い

 

 

 

ジュードとミラが研究所に侵入してしまってから、何分か経過した。大して経ってはいないと思う。

俺は自宅に戻り、愛用の武器を持ち出した。イル・ファンに来てからも鍛錬を欠かさず行い、町の外に出て魔物を狩ることも多々あったので、俺の腕は衰えていないはずだ。この武器は何年も使っているが、未だに刃毀れがない素晴らしいものだ。

 

どんな武器なのかというと、かなり大きな鎌。俗には大鎌と言われるものだ。

ついでに言えば、銘はシュヴァルツ。名の通り、漆黒という言葉が相応しい程の黒色だ。

その武器を持った俺は、急いで研究所の近くに戻る。するとタイミングよく、水の中から二つの人影が見えた。ジュードとミラだ。明らかに泳げないミラを、ジュードが担ぎながら泳いでいる。器用なやつだな……。

 

「ほらジュード、掴まれ」

 

「あ、ゼニス……ありがとう」

 

浮かんできたジュードに手を伸ばして助け出す。助けなくても大丈夫だっただろうけど、人一人抱えて水から出るのは大変だろう。

……ジュードのついでにミラも引き上げることにしよう。

 

「ほれ、そっちのあんたも」

 

「む、誰だか知らないがすまない。助かる」

 

「ミラ、泳げないんだね。大丈夫?」

 

「こほっ。ウンディーネのようにはいかないものだな」

 

「やっぱり、四大精霊の力が消えたんだ……ねぇ、これからどうするの? 精霊の力が無いと、あの装置はきっと壊せないよ」

 

「あいつらの力、か。ニ・アケリアに戻れば、あるいは……世話をかけたな、ジュード。ありがとう。君は家に帰るといい」

 

「あ……」

 

ジュードの質問には答えず、自己完結してから礼を言ってミラは立ち去った。

……俺、またしても会話に参加してない。

 

「……ジュード。四大精霊やら装置とかいろんな単語が出てきたが……一体何なんだ?」

 

その答えは知っているが、あえて知らないふりをする。

 

「あ、それは……」

 

ジュードは答えようかどうしようか迷ったみたいだが、事の顛末を教えてくれた。

教授が死んでしまったことや、それを見た直後に赤い服を着た銀髪の少女に殺されかけたこと。そしてミラがその少女から助けてくれたこと。等々だ。

 

しかし赤い服を着た銀髪の少女って、間違いなくアイツだよな? 行かなくてよかった。あいつとは敵対しているわけではないが、あれはある意味敵対関係よりも面倒な間柄だ。

 

話を聞き終わり、階段を上る。すると目の前に、兵士と対峙しているミラがいた。

 

「ミラ!」

 

「不用意だな、ジュード。無関係を装えばよいものを」

 

ミラが驚いてそう言うが、全くもってその通りだ。

 

「貴様らも仲間か!」

 

ほれ、兵士さんに仲間認定されちゃったよ。つか貴様らって、貴様”ら”って、俺もかよ? すんごいとばっちりを食ったんだけど。

 

そしてミラが兵士に向かって斬りつけるが、大振りすぎて簡単に避けられる。

 

「ちょ! ミラ、剣使ったことないの?」

 

「うむ。今までは四大の力に頼って振っていたからな。あいつらの力がないと、こうも違うとは……」

 

その言葉を聞き、ジュードが俯く。

 

「覚悟しろ!」

 

「もう!」

 

どうやら覚悟は決まったらしく、ジュードは兵士に立ち向かっていく。

……『もう!』と言いたいのはこっちだ。

 

兵士の装備品は槍と盾。対するジュードは拳で、ミラは不器用な剣。ジュードがもう少し成長すれば簡単に勝てるだろうが、少し苦戦している。鎧相手に拳はきついよなぁ。

 

「はぁ……恨みはないんだけど、悪いね。魔神剣!」

 

俺は三人の間に入っていき、持ってきていた大鎌を下から振って斬撃を放つ。

この技はテイルズシリーズの中で、最もメジャーだ。テイルズを一つでもやったことがあれば、誰でも知っていると思う。

 

……ん? 武器が大鎌なのに、なんで『魔神剣』なのかって?

まあそこは余り気にしないでほしい。他作品でも武器が斧、槍、杖なのに魔神剣を使ってる人がいるんだから。『改』とか『烈』とか『超』とか『殺』とかが付属されるけど。

 

それはともかく、俺の攻撃は見事に命中し、兵士を鎧ごと切り裂いた。切り裂かれた兵士は倒れたので、死なない内に精霊術で回復させておく。

 

「はぁ、はぁ。何やってるんだろう、僕は……」

 

「重ね重ねすまない。ジュード、助かった。それに君も」

 

「どういたしまして。あと俺の名前はゼニスだ。君、じゃない」

 

「そうか、私はミラ。ミラ=マクスウェルだ」

 

こんな簡単に名前を教えてもいいのだろうか。自分から精霊の主だと名乗るとは。まあ俺は知らない振りをするのだが。

 

「精霊の主と同じ名前とは珍しいな」

 

「同じ名前というより、本人だからな」

 

折角気を遣ってやったのに……。

 

「それよりもミラ、とにかく急いでイル・ファンを離れた方が良いと思うよ」

 

「そうしよう。ではな」

 

素っ気なくミラは出口に行こうとするが、ジュードがそこに注意する。

 

「街の入り口は、警備員がチェックしていることが多いんだ。海停の方が安全だと思うよ」

 

「む、そうか」

 

ミラは返事をするも、周囲を見てから首を傾げる。

 

「……海停、知らないんだね。こっち」

 

出た、ジュードのお節介。これはジュードの良い所なんだけど、これが原因で危険へ足を突っ込むことになるんだよね……これから。

 

「すまない、世話になる」

 

「ううん。助けてもらったお礼。海停まで送るよ。海停はここから街のちょうど反対側なんだ。まず中央広場へ向かおう」

 

二人はそう言って歩き出すのだが、またしても俺は蚊帳の外。泣いてもいいっすかね? 別に泣かないけどさ。取り敢えず二人についていくことにした。

 

「そう言えばゼニス、何でそんなものを持ってるの? さっきまで持ってなかったのに」

 

ジュードが言った「そんなもの」とは、俺の愛鎌・シュヴァルツのことだ。

 

「お前がミラ嬢を追って行ったのは見えててな。な~んか嫌な予感がしたから、家に帰って持ってきたんだ。その予感は見事的中したみたいだけどな」

 

……俺のミラへの呼び方は気にするな。単なる気分だ。

 

「ふむ。だがそのおかげで私とジュードは助かったのだ。改めて礼を言おう、ゼニス」

 

「僕からもありがとう、ゼニス」

 

「どういたしまして。にしても精霊の主ねぇ。そうは見えないけど、どうせ本当なんだろうな……」

 

「おや、君は信じるのか? ジュードは最初、疑っていたのだがな」

 

「ジュードから大体の話は聞いた。その時に四大精霊を使役してたって聞いたし、さっきクシャミして、『イフリートがいれば』って言ってたからな。服を乾かすだけで火の大精霊を、なんて言ってるのを聞いたし、俺が助けた時もウンディーネがどうのこうのって言ってただろ? ただの『大精霊がいれば』という願望にも聞こえるけど、それに加えてジュードの話を聞けば信じるしかないだろ」

 

それに、俺の場合は知識があるしな。ほとんど忘れたけど、重要な部分はさすがに忘れていない。

それからもしばらく走り、海停へと到着した。状況からして、船もあと少しで出港するようだ。そして海停を歩いて船へ行こうとした時、突然怒鳴られた。

 

「そこの3人、待て!」

 

「え……何!?」

 

またしても兵士だ。つーか何で俺も? 俺の横で驚いているジュードは、まだ分かる。研究所に侵入してしまったんだから。ミラもそれに同じ。でも俺は何で? さっきの兵士を倒したから?

 

「先生? タリム医学校のジュード先生? それにゼニス先生……」

 

「あなた……エデさん? 何がどうなってるんですか?」

 

向かってきた兵士の一人は、今日俺たちが診察したエデさんだった。唯一ヘルムを被ってないのですぐにわかった。

それと遠回しに何こっちを見てんだ野次馬共。見世物じゃねぇぞ。

 

「先生が要逮捕者だなんて……ジュード・マティス、逮捕状が出ている。そっちの女もだ。軍特法により応戦許可も出ている。抵抗しないでほしい。ゼニス先生、貴方は一緒にいるようですが、逮捕対象者ではありません。ですが一応、重要参考人としてこちらに来てはくれませんか?」

 

俺は違う? あ、研究所に入ってないからか? でも行くのは面倒だなぁ。

 

「ま、待ってください! た、確かに迷惑をかけるようなことはしたけど、それだけで重罪だなんて……!」

 

兵士はジュードのその言葉には耳を貸さず、武器を構えてくる。俺は無罪らしい。が、もし俺の立場がバレれば重罪なんだけどな。だから兵士の皆さんとは話したくない。

俺の立場って何なのかって? 今は秘密。いずれ分かると思う。

 

「問答無用ということのようだ」

 

「エデさんっ!」

 

「悪いが。それが俺の仕事だ」

 

仕事と私事はしっかりと分別する、ということか。

俺には分からないな……俺、本当の仕事をサボってイル・ファンで医者していたもの。本当の仕事が何かって? これも秘密。

……秘密だらけですみません。

 

「ジュード、私は捕まるわけにはいかない。すまないが抵抗するぞ」

 

「……抵抗意思を確認。応戦しろ!」

 

エデさんの言葉で、彼の部下がファイアボールを放った。ミラとジュードはそれを避け、その後ろにいた俺も避ける。その光景を目にして、一般市民はどんどん逃げて行った。

というかおい、俺は対象外だろ。もう少し気を付けろよ。

 

「さらばだジュードとゼニス。本当に迷惑をかけた」

 

船の汽笛が聞こえ、ミラがそちらへ走っていく。船が出港していくのが見えたらしい。もう行ってしまった。

 

「さあ、先生。抵抗したら、その分罪は重くなりますよ」

 

「僕は、僕はただ……」

 

抵抗する意思なしと見たのか、ジュードに詰め寄る兵士たち。だがあと少しで捕まるというところで、助けようと俺が動き……始めようとしたのだが、横から乱入者が現れた。

その乱入者は兵士を殴り倒していき、言葉を放った。

 

「軍はお硬いねぇ。女と子どもとプラス1相手に大人げないったら」

 

……ん? おい、プラス1ってまさか俺のことか?

 

「あ、あなたは……?」

 

「おっと。話はあとな。連れの美人が行っちまうよ?」

 

「でも、僕は……!」

 

「軍に逮捕状が出て、特法まで適用されている。つまりお前はSランク犯罪人扱いだ。このままだと極刑だぞ、ジュード」

 

「そっちの兄ちゃんの言う通りだ」

 

「そんな!」

 

今日は驚いてばっかだなジュード君。というかこれ以上の厄日はそうそうないだろう。

というか俺も今日は厄日か? 今のを見て周りの兵士が集まって来たし。

 

一緒に行かないと街を出る機会を逃すので、俺は二人と共に船に向かう。この街でやり過ごしたことなんて……一つを残してないからな!

先ほど乱入してきた男がジュードの腰を掴み、船に向かって勢いよく跳躍。あの脚力は素直に凄いと思う。俺も足に自信はあるが、跳躍力は特に鍛えてないのでそんなにない。今後から訓練するとしよう。

それでどうやって船に乗り込むのかだが……よし、こうするか。

 

 

 

 

 

 

とある方法で俺が船に着くと、さっきの乱入者が自己紹介をしていた。やはりというか、彼の名前はアルヴィンというらしい。

 

「こっちはミラ。それでこっちがゼニス」

 

「今紹介されたゼニスだ。よろしく、アルヴィン」

 

「よろしくな。そして……」

 

アルヴィンはジュードの肩に手を乗せ、優しくこう言った。

 

「がんばったな」

 

俯きながらも、ジュードは頷く。

ただの一般人がこんな目に合ったのだから、本当に頑張ったと俺も思う。

 

そしてその後の俺たちを待っていたのが、船長による長い尋問だった。ま、犯罪者かもしれない輩を、自分の船に乗せたくないよな。特にミラは身分を示す物がないので、かなり時間がかかった。アルヴィンは愚痴を言うが、俺はその辺納得している。

 

「ア・ジュール行きだなんて……外国だよ……」

 

そんな中、一人落ち込んでいる人物がいる。ジュードだ。

 

「見ろよ。イル・ファンの霊勢が終わるぞ」

 

アルヴィンそう言った直後、夜のようだった空は瞬く間に青空へ変わった。

これはイル・ファン周囲にある霊勢が夜域という特殊な霊勢であり、その領域を出たから青空になった、という理屈だ。

 

「にしても、医学生と医者だったとはね。ちょっと驚いたよ」

 

俺が医者だったら驚くのか? それ失礼じゃね?

 

「ねぇ、聞いていい? どうして助けてくれたの? あの状況じゃ、普通助けないよ」

 

「金になるから」

 

ジュードの問いに、アルヴィンは即答する。ここまで早い返答も珍しい。

 

「私たちを助けることが、なぜそうなるのだ?」

 

「あんたらみたいなのが軍に追われてるってことは、相当やばい境遇だ。そいつを助けたとなりゃ、金をせびれるだろ?」

 

「でも、僕、お金ほとんど持ってないよ」

 

「生憎、私もだ」

 

「そして俺もそうだ。九割方俺ん家にある」

 

俺は犯罪者扱いされてないから、押収されることもないだろうけど。でもまあ、それはイル・ファンで稼いだ金だ。俺の他の家には、もっとあるけどな。100万以上。

いや、そもそも助けられる必要が無かった俺は払う義務もないか。

 

「マジか……なら値打ちもんでもありゃ、それで引き受けるぜ?」

 

「ないよ。あんな状況だったんだ」

 

「高く取引されそうなものなどないだろうな」

 

「俺はこの武器くらいだが……これは駄目だ。とても手放せない」

 

これ以上に大切な物はないからな。命とかは別として。

 

「ねぇ、アルヴィンって何してる人? 軍人みたいだけど……ちょっと違う感じだしさ」

 

「ジュード。今の取引の仕方からして、アルヴィンはおそらく傭兵だ」

 

「お、ゼニス正解。金は頂くが、人助けをするすばらしい仕事」

 

「ふむ。それは感心なことだ」

 

ミラは感心するが……そう素晴らしいものじゃないと思うけどな。金次第で敵にも仲間にもなるわけだし。あぁ、別に傭兵やアルヴィンを否定してるわけじゃないからな?

 

「にしても、ゼニスは俺が何をしているのか、よくわかったな」

 

「そりゃ、俺も医者の前は傭兵だったからな」

 

「えっ!? そうなの!?」

 

「ああ。傭兵の時に得た医療知識を使って、医者になったんだ。場合によっちゃ、こっちの方が儲かるし。だからこんな武器も持ってるんだよ。当時使ってたからな」

 

「どうりでな……しかし、しゃあないか。ア・ジュールで仕事でも探すか」

 

「すまなかったな」

 

金がないことミラが謝り、しばらく沈黙が続く。そこで俺はもう喋ることはないと判断し、勝手に物置部屋を借りて寝ることにした。最近は忙しくてあまり寝れなかったから、船から降りるまで寝ようと思ったからだ。

 

 

 

 

 

――船を降りる少し前のチャット――

 

出演者:ゼニス・ジュード・ミラ・アルヴィン

 

ジ「そういえばさ、ゼニスはどうやって乗船したの?」

 

ミ「ふむ、それは私も気になっていた。ジュードとアルヴィンは飛び乗ったのを見たが、ゼニスは気が付いたら既にいたからな」

 

ゼ「俺はアルヴィンほどジャンプには自信がないんでね、違う方法を使ったんだよ」

 

ア「違う方法? どんなだ?」

 

ゼ「なに、ただ水上を走っただけだ」

 

ア「……すまん。もう一度言ってくれるか? どこをどうしたって?」

 

ゼ「水上を、海の上を走って船に追いついた。ただそれだけだ。海からジャンプした方が近かったからな。だがこれからはこういう時のために跳躍力も上げなくては……ちょっと練習してくる。時間になったら教えてくれ」

 

~ゼニス退場~

 

ア「……なあジュード君? 彼、本当に人間?」

 

ジ「た、たぶん」

 

ミ「どうやら私は人間を見誤っていたようだ。まさかそのようなことが可能とは……」

 

ジ「いや、普通はできないから、そんなの」

 

 

 

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