エクシリア 転生者のいる世界   作:暁の魔

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第三話 魔物との初戦闘

 

 

 

船が海停に到着し、陸に降りたつ。俺は海の潮臭さがあまり好きではないので、船から降りられて正直嬉しい。背伸びをしていると、近くでジュードとアルヴィンが話をし始めた。ここは外国のア・ジュールなのだが、ラ・シュガルとそんなに変わらないことを話題にしている。

確かにそれを聞くと、ここらはそんなに変わらないことに気付く。

 

そんなジュードだが、突然地図を見てくると言って地図まで走って行った。

傍から見てもわかるが、明らかに無理をしている。

 

「空元気、かねぇ」

 

「気持ちを切り替えたのか。見た目ほど幼くないのだな」

 

「おたくが巻き込んだんだろ? 随分と他人事だな」

 

「確かに世話になった。だが、あれは本人の意思だぞ? 私は、再三帰れと言ったのに」

 

「は~ん。それでおたくに当たるわけにもいかないから、あの空元気ってか。どっちにしてもオトナなこと」

 

そこでミラはジュードの見ている地図の所へ行き、話し相手のいなくなったアルヴィンは後ろにいた俺に話しかけてくる。

 

「で、ゼニスは何であの2人に付いてるんだ? 話を聞く限り、おたくは完全に無関係なんだろ?」

 

「全くの無関係って訳でもない、兵士を一人倒しちまったし。まあ何より、俺は大人であいつは子供。子供のお守り、みたいな感じだ。それに人生の新しい起点と考えれば、悪い事だけでもない」

 

実際は原作を知ってて自分から介入したんだから、ちょっと違う。まあ、今言ったのも全部本当に思ってることだけど。

それに、どちらにしろ俺は……いや、今はいいか。

 

「へぇ。責任感がある上に、ポジティブな性格してんのな」

 

「あはは、責任感は微妙だが、ポジティブなのは自覚してるよ」

 

会話しながら地図を見ている二人に近づくと、ミラの目指している場所はここから北だということが分かった。地図を見ていたミラの呟きが聞こえたからな。

 

「ふ~ん。それで? すぐに発つのか?」

 

「いや……アルヴィン、それにゼニスもだが、傭兵というからには、戦いに自信はあるのだろう?」

 

「ああ。そりゃあな」

 

「傭兵云々は過去形だが右に同じ」

 

ミラの質問にアルヴィンが肯定し、俺もそれに続く。

 

「私に剣の手ほどきをしてもらえないか? 今の私は、四大の力を持たない。剣を扱えないと、この先の道は困難だ」

 

「四大……? なんか、よくわかんねぇけどさ。正直、俺を雇って欲しいとこだよ。でも金ないんじゃあな……」

 

「無理だろうか? ゼニスは?」

 

「俺は別に構わないが……いや、そうだな。お前ら、アルヴィンを雇え」

 

俺のこの言葉に、頭上にハテナマークを浮かばせる三人。でもま、金がないのに傭兵を雇えとか言えば、そうなるよな。

 

「人々の中には、自分が出来ないことを依頼する人がいる。その依頼を引き受ければ、内容によっては剣の訓練にもなる。そしてその報酬をアルヴィンに払えば、利害が一致するだろ?」

 

「なるほど……だが、ゼニスはそれでいいのか?」

 

「ああ。最近ストレスが溜まってたから、発散させようと思ってね。俺は勝手についていくだけだから、報酬は不必要だ。アルヴィンもそれでいいだろ?」

 

「むしろ俺にはいいこと尽くしだから、大歓迎だ」

 

これからの方針はこれで決まった。ま、原作と同じ結果だけどな。

だが、もう一つ注意すべき点がある。それは、

 

「その前にアルヴィン。ミラ嬢に剣の基本だけでも教えてあげてくれないか? 一度だけ剣を使っているのを見たが、あれではミラ嬢が死ぬ。教えている間に、俺が依頼を探しておくからさ」

 

「そうなのか? まあ基本だけなら……わかった」

 

これも何とか解決。あのままでは、報酬を払う払わない以前の問題になる。万が一の時には俺かアルヴィン、ジュードがミラを守ればいいのだが、誰もいない時に狙われたら簡単に死ねる。

 

 

 

その後五分くらいで、依頼をしようとしている女性を俺は発見した。その人の依頼内容はこの海停の先にある間道、イラート間道にある湖にいる魔物退治だった。湖の水は大切な資源なのだが、その魔物が棲み付いたせいで問題になったらしい。

報酬は現金で払うと言っていたので、早速アルヴィンたちの所へ向かった。タイミングが良かったらしく、ちょうど基本を教え終えたようだ。

 

「お、ゼニスか。どうだった?」

 

「バッチリ。この先にあるイラート間道の魔物退治だ。この近辺にはいないはずの魔物なんだと。場所は西にある湖付近だ」

 

依頼内容を伝え、俺たちはすぐさまその間道へ向かう。

そして間道に入ると、目の前には複数の魔物がいた。ミラの剣の訓練にはもってこいだと思い、話しかけようとする。するとそこで、俺を含めた全員のリリアルオーブが光る。

 

「む、リリアルオーブが光った?」

 

「なんだ、ジュードが持ってるのは知ってたけど、ミラ嬢も持ってたのか。……まあ、アルヴィンは俺と同じ傭兵だから、持っててもおかしくないけどな」

 

「お前らもリリアルーブを持ってたのか? んじゃ、共鳴戦闘(リンク)、いってみるか!」

 

ジュードとミラは共鳴(リンク)の事を知らないようだ。今の言葉を聞いて、首を傾げていたからそうだとわかる。

アルヴィンが軽くリリアルオーブの説明を、つまりリリアルオーブを持つ者同士で、互いに感知できることを教えた。本当に軽くしか説明してないので、二人はまだよくわかってないらしい。

 

それにしても共鳴戦闘(リンク)か……。そういえば久しく使ってなかったな……最後に使ったのは確か5,6年前だったか? でも今は思い出に浸かるより、分かってない二人に教えるのが先だな。

 

「習うより慣れろ、戦って覚えるのが一番だ。ちょうど魔物もきたぞ」

 

「そういうことだ。リリアルオーブに意識を集中しろ!」

 

言葉を言い終わると同時に、戦闘が始まった。

こいつらはここら一帯にいる魔物で、かなり弱い分類に入る。戦士として、並の力があれば勝てるだろう。

 

「魔神拳!」

 

ジュードの技が炸裂する。ミラとリンクを繋げていたらしく、共鳴術技(リンクアーツ)が発動した。

 

「行くよ、ミラ!」

 

「了解した!」

 

「「絶風刃!」」

 

魔神拳とウィンドカッターによる共鳴術技(リンクアーツ)、絶風刃。エックス状の風の刃は直線に進み、魔物を切り裂いていった。

 

「やるじゃねーの」

 

「へぇ、初めてなのに凄いじゃん」

 

アルヴィンと俺は、成功に驚くというか感心する。失敗することがない訳じゃないので、初っ端から共鳴術技(リンクアーツ)を成功させたのを見て、そう思った。

 

「よし、じゃあ俺も続くぞ!」

 

そう言って、俺はわざわざ数匹の魔物が集中している場所へ行く。

 

「真空破斬!」

 

技名を言ったのと同時に、鎌を横に大きく薙ぎ払う。真空の刃が周囲の空気を真っ二つに切断し、複数いる魔物も、その全てが同じ末路を遂げる。

 

この技は単純だが、それ故に強く放つには高度な技術が必要になる。

出だしも速いので、俺の標的になった魔物は防ぐ間もなく倒れた。それに例え防がれたとしても、余程上手な防ぎ方でなければ意味が無い。

 

「ゼニス、君もやるな!」

 

「ミラ嬢に褒めらるとは、光栄だね」

 

「でも、本当に凄いよ!」

 

「ジュード……野郎に褒められても嬉しくねぇな」

 

「えぇ!?」

 

そんな談笑を戦闘中にすることができるくらい、今回は余裕だった。むしろこんな雑魚には勿体ない気がする。もう遅いけど。

それからも連携し、そこにいた魔物は全て倒しつくした。俺、今回は一回もリンク使ってないけどね。

 

「どうだった? 共鳴戦闘(リンク)ってのは?」

 

「うむ、気に入った」

 

「うん、一人じゃないって嬉しいね」

 

「ああ、いいこと言うねジュード君」

 

初めての共鳴戦闘(リンク)の説明と実践を終了し、俺たちは目的地である湖へ向かう。途中でも魔物はわんさか出現したが、先程のと同レベルだったので、俺たちの敵ではなかった。

 

「そう言えばゼニス、おたくは何で傭兵から医者になったわけ? 医者の方が金になるとか言ってたけど、切欠とかなかったのか? 医者以外でも金が手に入る仕事はあるだろ。例えば軍人とかなら、かなりの地位につけると思うんだが、そこんとこどうよ」

 

目的地まであと半分だろういう所で、唐突にアルヴィンが聞いてきた。

俺が医者になったのは主人公ズに会うためというのが目的だったが、実はもう一つ理由がある。あいつらに会うためだと言うなら、それこそ軍人でも会えたのだろうから。

 

「んー、秘密にしているわけでもないし、いっか。かなり前の事だけど、俺の命を救ってくれた人がいて、その人が医者だった。そんだけだよ」

 

「へ~、そんなことがあったんだ」

 

俺の言葉にジュードが驚いたような顔をする。それに頷いて、俺は言葉を続けた。

 

「それに、傭兵だった頃は他者の命を取る仕事もしてたからな。今度は命を拾う仕事をしてみよう。そんな風に思ったのも、理由の一つだ」

 

「なるほどね。しかしよ、戦ってるの見りゃ分かるが、お前って相当強ぇよな? それでも死にかけるようなことがあったのか?」

 

「死にかけた訳じゃないんだが、まあ、ちょっと昔な」

 

俺が言葉を濁したことに気付いたのか、それとも興味を無くしたのかは分からないが、アルヴィンはそれ以上聞いてこなかった。どちらにせよ俺も話す気はなかったのだが、ここでアルヴィンが話題を変えてきた。

 

「そう言えばよ、ゼニスの武器って俺のと同じくらいデカいよな」

 

「確かにな。まあアルヴィンの持ってる剣には負けるけど」

 

アルヴィンはそれに加えて銃を持っているが、俺は素手。違いがそれくらいしかない。

俺もアルヴィンも、大きな武器を片手で使っているから。

 

「だがゼニスの方が、足が速い。ジュードといい勝負だろう」

 

「そんな大きな物を持ってて、それでも僕と同じスピードって、ちょっと自信無くすんだけど。いやでも海の上を走ったみたいだし、無手なら僕より遥かに速いかも……」

 

でもアルヴィンのは剣で、俺のは鎌。金属を使ってる割合がかなり違う。あっちの方が、かなり重いと思う。それに……

 

「安心しろ、ジュード。それでも集中回避ってやつは、俺には出来ん」

 

俺がこの鎌すら持っていない状態なら、確かにジュードより速いだろう。だけどアレは、とても真似できない。

 

集中することによって敵の攻撃を見切って瞬時に後ろに回るとか、それも充分な神業だと思うぞ。しかも完璧に気配を隠して隙だらけの所に反撃するとか、ナニその護身術。もはや護身の域を超えてるっつの。

 

その話題も一段落ついてしばらく歩き続けると、湖が見える場所まで到着した。依頼で言われていた通り、この辺りにはいないはずの魔物がいる。

 

「さて、あれを倒せば依頼達成なんだが……これはお前らがアルヴィンに報酬を払うためだからな、お前らが戦え。実戦が一番の訓練だし、危なくなったら助けてやるから」

 

「確かにその通りだな。行くぞ、ジュード」

 

「うん、わかった」

 

二人は意気揚々として魔物に向かっていく。アルヴィンもそれに続く。

そして俺はその後方で見守っている……わけでもなく、近くの岩場に腰掛けているだけ。何かあってもアルヴィンがいれば平気だろ。

 

「まあ正直、俺が戦うのがめんどくなっただけだが」

 

ストレス発散は一応出来たし、戦う理由もないしな。

 

「それが本音なの!?」

 

「ん? おお、もう終わったのか」

 

「終わったよ……ところで大丈夫、ミラ?」

 

「ああ、ゼニスの言う通り、実戦が一番の訓練だな」

 

ジュードの言葉に、大丈夫だと返すミラ。二人とも大した怪我は負ってないし、心配はしなくてもいいな、こりゃ。

 

「んじゃ、イラート海停にもどって報告しようぜ。ゼニスが受けたんだから、報告よろしくな」

 

「了解だ」

 

「……依頼を受けた人が最後の最後に報告するだけって、いいのかな?」

 

「いいんだよ、別にそれだけでも。これはミラ嬢の訓練なんだから。そして報酬はアルヴィン行き。俺が貰う訳でもないし」

 

ジュードは微妙に納得していなさそうだ。こういう所は嫌いじゃないんだが、生真面目なんだよな……あ、この場合は俺がサボったからか? それならごめんなさい。

 

さっきの魔物でサボった罰として、イラート海停に戻るまでの魔物は全部俺が戦う羽目になった。……ジュードめ、年上の俺になんて仕打ちだ。敬意を払えよ、敬意を。とはいえザコなので、簡単に勝てるが。

 

さて、速く戻って以来達成の報告をしよう。腹が減ったし、何より眠い。船の中で散々寝たはずなのになぁ。

 

 

 

 

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