エクシリア 転生者のいる世界   作:暁の魔

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第五話 望まぬ再会

 

 

 

イラート間道をしばらく北上し続けていると、ちゃんと村に着くことが出来た。これはいかにも田舎って感じだ。

 

「果物がいっぱいだ。甘い匂いがするね」

 

「酒の匂いもな。果樹園でもやってるんじゃないか」

 

「……ここの酒、飲んでみてぇな。美味そうな匂いだ」

 

俺って結構酒好きなんだよね。今度来た時に飲もうかな?

……おっと、誰かが来た。見た目からして村長か?

 

「おやまぁ、こんな村にお客さんとは珍しい」

 

「おばあさん、村の人?」

 

「村長をやっとります」

 

よし、俺、正解。やっぱり村長(そんちょう)だった。皆の衆、俺のことを尊重(そんちょう)しなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………鬱だ。果てしなくごめんなさい。

 

「ニ・アケリアへ行くには、この道であっているか?」

 

「ニ・アケリアとは、またずいぶん懐かしい名を」

 

鬱状態になった俺に誰も気が付くことはなく、会話は進んでいく。

今の俺はどんななのかって? orz←になってる。だ~れも気付いてくれないってのはさ、かなり寂しいもんだよ。

 

「どういう意味?」

 

「忘れられた村の名じゃ。今ではあるかどうかもわからん。子供の頃に、キジル海漠の先にあると聞きましたが……」

 

「キジル海漠?」

 

「………大きな滝のことだ。ニ・アケリアに行くまでには、半端なく起伏の激しい岩場を通り抜ける必要がある。確かそうでしたよね、村長さん?」

 

「おお、その通りですじゃ」

 

俺、何とか鬱から復帰。まだ厳しいけど頑張れる。

 

「え? 何でゼニスが知ってるの?」

 

「前に一度、ニ・アケリアの近くに行ったことがある。その時に俺も通ったからだ。この村には来たことなかったけどな。とにかく、あそこを通るなら少しは休む必要があると思うぞ? かなり厳しい場所だ」

 

「ふむ。経験者がそう言うのであれば、そうなのだろうな」

 

「村には宿がないですからの。私の家に空き部屋があるので、使ってくださっても構いませんぞ」

 

「おばあさん。ありがとうございます」

 

ということで、今夜は村長さんの家に泊まることが決まった。だがまだ寝る時間ではないので、俺は一人で村を探索していた。

……すぐに飽きて、家に行くことになったけど。

 

翌朝、目が覚めて外に出ると、ジュードがミラと何かを話していた。聞き耳を立てると、黒匣(ジン)という物が何なのかを、ジュードが質問しているようだ。俺は知っていたことなので、聞くのを止めて近くの階段に座った。出るに出られない雰囲気だからな。

 

だがしばらくすると、村の入口付近が妙に騒がしくなった。何かと思って見てみると、なんとラ・シュガルの兵士がいた。もう追って来たらしい。

って、あれ? 知っている大男に似ている後ろ姿が………あ、やべぇ。ジャオだ。

 

「どうやら、これ以上のんびりしてるわけにもいかなそうだ」

 

いつの間にかジュードとミラのところへアルヴィンがいて、そう言った。俺もすぐに、三人のところへ向かう。

 

「やっぱり僕たちを追って来たんだよね……」

 

「さてな。国外捜査には早すぎる気もするけど」

 

「尋ねるわけにもいかないからな。どちらにしても見つかる前に出よう」

 

「ああ。村の西に出口があった。キジル海漠はあっちだろうな」

 

「出口が分かってるなら、さっさと出るぞ」

 

そこで俺たちは会話を止め、駆けだした。俺は今非常に焦っている。なので、村から早く出たい。ジャオに見つかる前に、早く。

村の西に着くとジュードが少し遅れてきたが、ちゃんと追いついてきた。何かしていたのだろうか? そして出口から出ようと思うが、そこで問題が発生した。兵士が既に待ち伏せしていたのだ。くそったれ、ジャオに見つかるじゃねぇかよ!

 

「もう兵士がいる」

 

「どうするよ?」

 

「強行突破だ」

 

「その案、賛成」

 

アルヴィンの質問にミラが即答し、俺も賛成する。何回も言ってるけどさ、早くここから出たいんだよ! ハリー! ハリー! ポッター!

……ごめんなさい。

 

「うん。僕もこれ以上集まる前に抜けちゃった方がいいと思う」

 

「短い作戦会議だこと」

 

それで俺たちは突撃しようとするが、後ろから声が聞こえた。

 

「あ、あの……」

 

「女の子?」

 

そう、話しかけてきたのは女の子だった。

 

「え、えと………なにしてる……んですか?」

 

「ふむ。邪魔な兵士をどうするか、考えていたところだ」

 

「……直球だね」

 

「さすがはミラ嬢」

 

ミラの言葉にジュードが少し呆れ、俺が称賛する。普通は言えねぇよ、そんなふうには。

 

「あの人たち、邪魔……なんですね」

 

彼女は何とも思わなかったのか、腕の中のぬいぐるみを見やる。するとそのぬいぐるみは目を見開き、突然動き出した。俺を含め、全員が驚く。知ってても怖いよこれ。何せ、無機物が突然動くんだもの。

 

「うわ! なんだこれ! ひぃ!」

 

「これは……」

 

そのぬいぐるみは兵士の頭上をフワフワと浮かび、兵士はそれに恐怖する。まあ、怖がってしまう気持ちは分かる。俺でも、何も知らなかったらビビる自信がある。

それを見たアルヴィンが意味深に呟くが、俺以外には聞こえなかったようだ。アルヴィンはあれを知ってるのかね?

 

「どうなってるの? ぬいぐるみが??」

 

見た目はただの……否、ちょっと怖いぬいぐるみが勝手に動くことに、ジュードは驚いている。ジュードだけでなく、ミラも驚いているだろう。

……それはそうと、近くに黄色い服を着た、横にも縦にもデカい巨漢がいる。とか言って現実逃避している場合じゃないか。はあ、ジャオが来ちまった。

 

「ここで何をしておる……っ!? お前さん、まさか……」

 

そこまでジャオは言ったが、俺は口元に人差し指を持っていく。黙って欲しいときによくつかう仕草だ。俺以外にもこれを使う人はいるはず。

ジャオはそれに目で頷き、顔を女の子の方へ向けた。

 

「こら、娘っ子。小屋を出てはならんというに。ラ・シュガルもんめ、勝手な真似を」

 

エリーゼに注意してから、兵士を見てそちらへ走って行った。その圧倒的な強さで兵士をハンマーで殴り倒している。今日の見張り役、かなり哀れだ。

そして先程の女の子は、その間に村の広場へ行ってしまった。

 

「娘っ子は、どこへ行った?」

 

「あの娘なら、広場へ行ったぞ」

 

「なに? い、いかん! お前たちよそ者だな。ならとっとと行ってしまえ」

 

エリーゼが広場に行ったことを伝えるとジャオは一瞬焦り、俺以外を見ながら、さっさと行けと乱暴に言ってから走り去った。

……一瞬俺のことを見た気がしたが……気のせいだろ。うん、気のせいだと思いたい。

 

「よくわかんないけど、手間省けたみたいだな」

 

「なら、早く出よう」

 

ジュードの提案にみんなが頷き、急ぎ足で村から出る。それにしても……結局ジャオの奴に見つかっちまったよ。後がめんどくさいっ!

 

「なあゼニス、あのおっさんと知り合いなわけ? おたくを見て驚いてたけど」

 

「知り合い……まあ、一応知り合いだな」

 

ハ・ミルを出ると、そこはガリー間道という道だった。進んでいるときにアルヴィンに聞かれたのでそう答えた。

この間道はそこまで長い道ではなく、起伏も乏しいので歩くのに全く問題ない道だった。あと今までより多少魔物が強い気がするが、俺には関係ない。ジュードやミラに戦わせているからな。俺はそれを傍観中。

 

「ね、ねえ。少しはゼニスも戦ってくれない?」

 

「何を言うか。俺は今も必死に戦っているぞ! ……睡魔と」

 

「ゼニスは何回寝れば気が済むのだ?」

 

「一日中寝ることができれば満足」

 

「おい、おたくは一応医者だろ。健康に悪いことしていいのか?」

 

「む? 一日中寝るのは健康に悪いのか? 寝る子は育つと聞いたが」

 

「えっとね、ミラ。それは赤ちゃんのことで、そもそも人間は………」

 

「ちょっと待て。一応って何だ、一応って。俺は立派な医者だ」

 

「……へぇ。立派な医者、ねぇ」

 

ジュードがミラに何か色々教え始めたけど、ああそうでしたね、常識に疎いんでしたね、このマクスウェル嬢は。それにしてもいやほんと、最近マジで眠いんだって。

そしてアルヴィン、貴様は失礼だな。何だその目は。

 

そんな会話も入れつつ、間道を東から西へ渡っていく。そして到着したのが、一面水だらけの岩場、キバル海漠。ここを超えれば、今の所の目的地、ニ・アケリアだ。幸い、ラ・シュガルの連中もここまでは追って来ていない。

 

「村の人たちに、悪いことしちゃったね……よくしてくれたのに」

 

「ラ・シュガル兵が来てるんだ。逃げるが勝ちってな」

 

「どうするか決めたのは、彼らだ」

 

「僕らを守ってくれたのかもしれないんだし、そんな言い方しなくても……」

 

これを言うのも何回目か分からんが、言わせてもらおう。ジュードはお節介だなぁ。

最近稀に見る、本当に優しい心の持ち主なんだろうけど、これが原因で医学院では陰口叩かれてたしなぁ。また間接的に注意しとくか。

 

「ジュード、今更言っても遅い。もう過ぎたことだし、気になるなら戻ればいい」

 

「ふむ、それもいいだろう。短い付き合いだったが、色々感謝している」

 

「どうしてそうなの?」

 

「……もっと感傷的になって欲しいのか?」

 

ミラのその言い方に、ジュードは気になったらしい。まあミラも悪いとまではいかないけど、ちょっとな……。

 

ミラはミラで、精霊の主としての使命がある。だからこそ、人間の言葉にもあるが感傷に浸っている暇はない、ということらしい。

 

「……使命があるから?」

 

「そうだな」

 

「やるべきことのためには感傷的になっちゃいけないの?」

 

「人は感傷的になっても、なすべきことをなせるものなのか?」

 

「わからないよ。そんなの……やってみないと……」

 

わからないと答えるジュードに、ミラは優しく微笑んだ。

 

「なら、やってみたらどうだ? 君のなすべきことを、そのままの君で。それなら答えが出るかもしれない」

 

そこまで言うと、ミラは後ろを向き、周囲を見渡し始めた。

 

「僕のなすべきこと……」

 

「マクスウェル様のようになる必要はないだろうさ。普通、ああはなれないって」

 

「俺も、アルヴィンの言葉に同意するよ。俺だってミラ嬢のようにはとてもなれん」

 

俺達の言葉に、ジュードは少し考える仕草をする。

 

「ねえ、二人にはなすべきことってある?」

 

「……さて、な。あるって言ったら余計迷うだろ。ジュード君」

 

「え?」

 

「そうそう。お前のことだから、僕も決めなきゃ~って悩むだろ。な、アルヴィン?」

 

「ああ、全くだ。そんな姿が目に浮かぶよ」

 

「…………」

 

俺とアルヴィンの軽口に、ジュードが睨んできた。怖い怖い。

 

「んで、どうすんの? 村に戻る?」

 

「……ううん」

 

「んじゃ、行こうぜ」

 

アルヴィンの問いに、ミラを見ながらしばらくジュードは黙った。だが答えは決まったらしく否定の言葉を口にする。決心を固めたようだ。ほんと、気持ちの切り替えが早い。

それにこんな流れを見てると、アルヴィンが良い兄貴分に見えてくるから面白い。実際には腹の中で何を考えているのか知らんがね。

 

……まあ、俺も人のことはいえないけどな。

 

 

 

 

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