自称クズ、聖人やってます ~ざまぁみろ。絶望さえも奪ってやったぞ~   作:杞憂谷

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第4話

気づけば花屋には人がちらほら入ってくるようになっていた。

 

どうせ寂れていた店だ。人がたくさん押し寄せてパンクすれば面白い。もうすでに親子は忙しない様子だ。

 

あの親子の悲鳴が聞きたい。俺は微笑みながら、店を出ていく人々の嬉しそうな顔を見る。

 

客も客だ。彩りを求めて、楽しそうに花を一輪一輪丁寧に選んでいる姿が滑稽だ。

 

幸せそうにしやがって。どいつもこいつも幸せに囚われている。誰もその事に気づいちゃいない。幸せに囚われた豚共だ。

 

花屋の外で、道を歩く人を観察する。

 

もう日も落ちてきそうだ。そういえば花屋ってどんくらい店を開けるもんなんだ。なんて考えていた。

 

相変わらず人々の喧騒は、勢いを止めることは無い。

 

頭上に、絶望レベル13と表示された老紳士が目に留まり、話しかける。

 

「じいさん、何か悩んでるだろ。ククク……俺にはわかるよ」

 

老紳士はピクッと反応し、足を止める。

 

「ふむ……」

 

生い先の短いじじいにもなって、悩み事か。めでたいやつだ、もっと悩め。

 

「グヘヘヘ……。とりあえず、話すだけ話してみなよ。何があったんだい?」

 

「……ばあさんと喧嘩してな。」

 

「あー、理由は知らねぇけど、とりあえず花買えよ、んで花渡して謝ってこい。ククク……」

 

「花か……」

 

老紳士は俺の背後に並べられた花々へと視線を移し、考え込む。

 

「女の子の機嫌取るには花だ。ククク……。仲直りしたらいつもありがとうって言えよ」

 

恥ずかしい気持ちになりやがれじじいがよ。

 

「……わかった、花、買うよ」

 

老人を騙すのはチョロいぜ。じじいを辱め、ばばあを驚かせる。最高だ。

 

俺は店の中の人間を呼ぶ。

 

「おーい。お客様1名、花が欲しいってさ、選んでやれ」

 

店主が返事する間もなく、アリスが駆け寄って来る。

 

「わかりました!……どの花がいいかなぁ……」

 

じじいの絶望レベルが3まで落ちたな。どうだ?絶望すらさせて貰えない気持ちは……。

 

――

 

 

辺りが暗くなってどれくらい経ったかはわからないが、花屋は格子戸を閉じ、1日を終えた。

 

「マサトさん、ありがとうございます。あんな多くのお客さん、夢のようでした!」

 

「マサトくん、是非お礼をさせてくれないか?」

 

「ククク……。お礼?いらねぇよ。じゃあな」

 

俺は足早に花屋を去る。

 

恩を返さないと、って気持ち、人間なら誰しもあるもんな。

 

俺は悪党だから恩返しはさせない。勝手にモヤモヤしとけ。

 

アリスの「待って!」という言葉を振り切って、俺は走り出す。

 

気づけば倒れ込みそうになるぐらい、走り続けていた。

 

街の外れだろうか、人の気配はない。もちろん背後にも影はない。

 

息を整えるように俺は歩き出す。

 

あの親子、絶望レベル、どちらも10以下まで落ちてたな。

 

「ククク、絶望、奪われてやんの」

 

俺はケラケラ笑いながら、適当な石段に横になる。

 

夜空を見上げ、星を見る。

 

星の数だけ不幸がある。

 

明日はどんな不幸なやつらが見れるかな……。

 

「ククク……」

 

俺は不敵に笑い、目を瞑った。

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